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新しい装備を買いに行こう
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翌日。ひよりは、新宿にある探索者向けの実用品店を訪れていた。
ここは一流のブランド店というわけではないが、その分「実戦」に特化した、質実剛健な装備が揃うことで有名な、知る人ぞ知る名店だ。
店内には、モンスターの牙を通さない革製品や、魔法耐性のあるアイテムが整然と並んでいる。
ひよりは店の自動ドアを潜りながら、昨夜父・慶一郎に見せられた映像を思い返していた。
(父さんの言った通りだ。……視線と、オーラ。まずは形からハクをつけないと。フウくんやライくんが、俺の隣を歩く時に『俺たちのボス、格好いいだろ』って思ってもらえるようになりたいんだ)
ひよりは、Vシネマの主役たちがやっていた「顎を少し引き、視線を鋭く保つ」動作を意識した。そして、レジの奥にいた中年の店員に、自分なりの「凄み」を込めた低い(つもり)の声で話しかけた。
「……すみません。一番、凄みが出るやつを……ください」
「えっ……?」
店員は一瞬、その少年のあまりのギャップに絶句した。
女の子と見紛うような透き通る肌、柔和な顔立ち、そして鈴を転がすような澄んだ声。
それなのに、その瞳にはVシネマ仕込みの(ひよりなりの)鋭い、けれどどこか捨てられた仔犬のような懸命な光が宿っているのだ。
「す、凄み……ですか。……ああ、なるほど。お若いですし、舐められたくないというわけですね。それでしたら、こちらはいかがでしょう」
店員はプロの顔に戻り、一着のスーツを取り出した。
「最新の『防刃クロムスーツ』です。軍事用の特殊繊維で編まれており、リザードマンの爪も防ぎます。さらに、この『漆黒のネクタイ』と、物理攻撃力が微増する『魔銀のタイピン』。これらを合わせれば、見た目は一流の、そう……『組織のエージェント』のようになりますよ(あぁ、なんて可愛いんだ。無理して背伸びしたい年頃なんだろうなぁ……応援したくなっちゃうな)」
「……いいですね。それ、全部ください」
店員が心の中で温かい視線を送っていることなど露知らず、ひよりは真剣な面持ちでそれらを受け取ると、試着室へと向かった。
カーテンを開け、鏡の前に立つ。
体に吸い付くようなフィット感の黒の防刃スーツ。糊の効いた清潔な白シャツ。そして、その胸元には鋭く控えめに輝くタイピン。
これまでの「動きやすさ重視」の、どこか幼さの残るチンピラウェアとは一変した。
そこには、静かな威圧感と、どこか一線を超えてしまった者のような「危うさ」が同居した少年がいた。顔立ちは相変わらず可愛いままだが、そのギャップが余計に、見る者に底知れない恐怖と魅力を抱かせる。
(よし……。これならフウくんやライくんも、恥ずかしくないはずだ。俺、少しは『上』の男に見えるかな)
ひよりが会計を済ませ、新調した「戦闘服」に身を包んで店を出ようとした、その時だった。
入り口近くのコーナーでマジックアイテムを品定めしていた一人の女性と、ばっちり目が合った。
「……っ!? ……ふぁっ!?」
「世田谷の剣姫」こと、赤城 凛だった。
彼女は驚きのあまり、手に持っていたアイテムを落としそうになった。
掲示板で一目惚れして以来、こっそり見守り(尾行)続けていた「儚い天使」のような少年。
その彼が今、目の前で「裏社会の構成員」のような冷徹なオーラを纏って立っているのだ。
(ひ、ひよりさん……!? その格好……! 可愛いのに、なんだか凄く『悪い男』の色気が出てて……かっこいい……!)
ひよりは凛の視線に気づくと、Vシネマ流に「唇の端を少しだけ上げる、余裕の笑み」を浮かべようとした。
……が、やはり少し照れてしまい、ぎこちない微笑みになってしまった。ひよりは軽く会釈をすると、颯爽と店を後にした。
新宿から戻り、いつもの世田谷ダンジョンの入口に立ったひよりは、潜る前にふと自分の指先に意識を向けた。
体の奥から湧き上がる魔素が、昨日までとは明らかに違うことに気づいたからだ。
「……ステータス表示」
目の前に半透明のウィンドウが浮かび上がる。
■ 三上 ひより レベル:20 職業:構成員
HP: 180 / MP: 65
筋力: 48 / 器用: 58 / 耐久: 48
敏捷: 96 / 魔力: 0 / 知力: 60 / 運: 50
・スキル
威圧 Lv.6 / かつあげ Lv.5 / 逃げ足 Lv.5 / メンチを切る Lv.2 / 言いがかり / 因縁をつける / 指切り / 察知 Lv.2 / 盃を交わす / ケツ持ち Lv.1 / 招集
・装備
名刀・鬼灯 (筋力+12 / 器用+5)
防刃クロムスーツ(耐久+6)
防刃シャツ(耐久+6)
漆黒のネクタイ(器用+5 / 耐久+1)
魔銀のタイピン(筋力+3)
・実質ステータス(補正込)
筋力: 63 / 器用: 68 / 耐久: 61
敏捷: 96 / 魔力: 0 / 知力: 60 / 運: 50
二層、三層での激しい戦い。そして、フウとライが供給し続けてくれた膨大な経験値。
それらが臨界点を超え、ついにひよりを「次の段階」へと押し上げていた。
『チンピラ』から『構成員』へ。それは単なる呼称の変化ではなく、明確な力の進化だった。
特に追加されたスキル【招集】の説明文を読み、ひよりは息を呑んだ。
スキル:招集
消費MP:40 / クールタイム:7日に1回
効果:使用者の下位職(現在は『チンピラ』)を召喚する。さらに下位ランクの場合、消費MPは半減(Lv.1チンピラならMP20)。
派生効果【昇格】:一度召喚した者をランクアップ(進化)させることができる。消費MPは40。
「これがあれば……もっとたくさんの仲間を、守れるようになるんだ」
自分の体に満ちる力が、より重く、より冷徹に統率されているのを感じる。
ひよりは、新調した黒い袖をギュッと掴んだ。
「構成員……。俺、ちゃんとみんなを守れる、立派な大人に近づけてるのかな。……行こう。もっと、強くならないと」
黒いスーツの裾を翻して、ひよりは再びダンジョンの深淵へと足を踏み入れた。
ここは一流のブランド店というわけではないが、その分「実戦」に特化した、質実剛健な装備が揃うことで有名な、知る人ぞ知る名店だ。
店内には、モンスターの牙を通さない革製品や、魔法耐性のあるアイテムが整然と並んでいる。
ひよりは店の自動ドアを潜りながら、昨夜父・慶一郎に見せられた映像を思い返していた。
(父さんの言った通りだ。……視線と、オーラ。まずは形からハクをつけないと。フウくんやライくんが、俺の隣を歩く時に『俺たちのボス、格好いいだろ』って思ってもらえるようになりたいんだ)
ひよりは、Vシネマの主役たちがやっていた「顎を少し引き、視線を鋭く保つ」動作を意識した。そして、レジの奥にいた中年の店員に、自分なりの「凄み」を込めた低い(つもり)の声で話しかけた。
「……すみません。一番、凄みが出るやつを……ください」
「えっ……?」
店員は一瞬、その少年のあまりのギャップに絶句した。
女の子と見紛うような透き通る肌、柔和な顔立ち、そして鈴を転がすような澄んだ声。
それなのに、その瞳にはVシネマ仕込みの(ひよりなりの)鋭い、けれどどこか捨てられた仔犬のような懸命な光が宿っているのだ。
「す、凄み……ですか。……ああ、なるほど。お若いですし、舐められたくないというわけですね。それでしたら、こちらはいかがでしょう」
店員はプロの顔に戻り、一着のスーツを取り出した。
「最新の『防刃クロムスーツ』です。軍事用の特殊繊維で編まれており、リザードマンの爪も防ぎます。さらに、この『漆黒のネクタイ』と、物理攻撃力が微増する『魔銀のタイピン』。これらを合わせれば、見た目は一流の、そう……『組織のエージェント』のようになりますよ(あぁ、なんて可愛いんだ。無理して背伸びしたい年頃なんだろうなぁ……応援したくなっちゃうな)」
「……いいですね。それ、全部ください」
店員が心の中で温かい視線を送っていることなど露知らず、ひよりは真剣な面持ちでそれらを受け取ると、試着室へと向かった。
カーテンを開け、鏡の前に立つ。
体に吸い付くようなフィット感の黒の防刃スーツ。糊の効いた清潔な白シャツ。そして、その胸元には鋭く控えめに輝くタイピン。
これまでの「動きやすさ重視」の、どこか幼さの残るチンピラウェアとは一変した。
そこには、静かな威圧感と、どこか一線を超えてしまった者のような「危うさ」が同居した少年がいた。顔立ちは相変わらず可愛いままだが、そのギャップが余計に、見る者に底知れない恐怖と魅力を抱かせる。
(よし……。これならフウくんやライくんも、恥ずかしくないはずだ。俺、少しは『上』の男に見えるかな)
ひよりが会計を済ませ、新調した「戦闘服」に身を包んで店を出ようとした、その時だった。
入り口近くのコーナーでマジックアイテムを品定めしていた一人の女性と、ばっちり目が合った。
「……っ!? ……ふぁっ!?」
「世田谷の剣姫」こと、赤城 凛だった。
彼女は驚きのあまり、手に持っていたアイテムを落としそうになった。
掲示板で一目惚れして以来、こっそり見守り(尾行)続けていた「儚い天使」のような少年。
その彼が今、目の前で「裏社会の構成員」のような冷徹なオーラを纏って立っているのだ。
(ひ、ひよりさん……!? その格好……! 可愛いのに、なんだか凄く『悪い男』の色気が出てて……かっこいい……!)
ひよりは凛の視線に気づくと、Vシネマ流に「唇の端を少しだけ上げる、余裕の笑み」を浮かべようとした。
……が、やはり少し照れてしまい、ぎこちない微笑みになってしまった。ひよりは軽く会釈をすると、颯爽と店を後にした。
新宿から戻り、いつもの世田谷ダンジョンの入口に立ったひよりは、潜る前にふと自分の指先に意識を向けた。
体の奥から湧き上がる魔素が、昨日までとは明らかに違うことに気づいたからだ。
「……ステータス表示」
目の前に半透明のウィンドウが浮かび上がる。
■ 三上 ひより レベル:20 職業:構成員
HP: 180 / MP: 65
筋力: 48 / 器用: 58 / 耐久: 48
敏捷: 96 / 魔力: 0 / 知力: 60 / 運: 50
・スキル
威圧 Lv.6 / かつあげ Lv.5 / 逃げ足 Lv.5 / メンチを切る Lv.2 / 言いがかり / 因縁をつける / 指切り / 察知 Lv.2 / 盃を交わす / ケツ持ち Lv.1 / 招集
・装備
名刀・鬼灯 (筋力+12 / 器用+5)
防刃クロムスーツ(耐久+6)
防刃シャツ(耐久+6)
漆黒のネクタイ(器用+5 / 耐久+1)
魔銀のタイピン(筋力+3)
・実質ステータス(補正込)
筋力: 63 / 器用: 68 / 耐久: 61
敏捷: 96 / 魔力: 0 / 知力: 60 / 運: 50
二層、三層での激しい戦い。そして、フウとライが供給し続けてくれた膨大な経験値。
それらが臨界点を超え、ついにひよりを「次の段階」へと押し上げていた。
『チンピラ』から『構成員』へ。それは単なる呼称の変化ではなく、明確な力の進化だった。
特に追加されたスキル【招集】の説明文を読み、ひよりは息を呑んだ。
スキル:招集
消費MP:40 / クールタイム:7日に1回
効果:使用者の下位職(現在は『チンピラ』)を召喚する。さらに下位ランクの場合、消費MPは半減(Lv.1チンピラならMP20)。
派生効果【昇格】:一度召喚した者をランクアップ(進化)させることができる。消費MPは40。
「これがあれば……もっとたくさんの仲間を、守れるようになるんだ」
自分の体に満ちる力が、より重く、より冷徹に統率されているのを感じる。
ひよりは、新調した黒い袖をギュッと掴んだ。
「構成員……。俺、ちゃんとみんなを守れる、立派な大人に近づけてるのかな。……行こう。もっと、強くならないと」
黒いスーツの裾を翻して、ひよりは再びダンジョンの深淵へと足を踏み入れた。
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