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ツルギ ノ キシ 二 タリヌコト
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とある街
日付は完全に変わり、どこからも肉と酒の匂い、酔った男達の笑い声と怒号が響き渡るまさに夜の街。
そこから路地を2本3本超えた先にある居住区・宿地区の間にあたる路地に彼女たちは身を潜めていた。
「ファ~…」
ポカン!!
「イテっ!」
「気を抜くなと言った矢先にあくびをするな。
ヤツらがどこから来るのかわからないんだぞ」
「チッ わーってるよ」
「分かっているなら初めから気を抜くな」
「つってもコレもう2日連続だぜ?
いい加減オレも寝ていいだろ」
「ダメだ、寝ている間に夜襲は起きるもの。
寝ている間にやられるような事があってはならない」
「ふーーん、サンちゃん家で何があったんだっけかな~?」
彼女の脳裏に悪夢がフラッシュバックする。
軽い気持ちで知ろうとしたばっかりに3日3晩一睡もせずに聞かされた伝送という名の悪夢とそれを語りつける鬼が。
「うっ…
ダメだっ…!やはりダメだ…!
万が一の時はアレと連絡を取れるのはお前しかいないんだぞ」
「ほえ~…おめぇもケーんこと味方って認めんのか」
「そそそそ、そんなわけあるかっ
ああアレはまだ容疑者だ。アレに頼るのは…あくまでも最終手段としてだ。」
「まだってことは近いうちにってことだろ?」
「だ、黙れっ
とにかく私は認めないからな!」
「素直に認めりゃいいのによ~、減るもんじゃねぇし。
おめぇもいい加減気付いてんじゃねぇの?アイツの人と成りによ」
「う、うるさいっ」
タタタタタタッ…
「お?」
「来た…!」
暗闇から聞こえた足音、静かにかつ確実に近づく殺気、背筋を逆撫でするような心地悪い気配に、その場の騎士は思わず剣の柄に手を置いた。
大雑把者の騎士をその場にとどまらせ、付かず離れずの距離で追跡を開始する。
黒いローブのフードを深々とかぶり、鼻から下を布物で隠したその人間は重要参考人がいる宿で止まるどころかノールックで通り過ぎ、その足はむしろ早くなる。
(なんだ?仲間の始末が目的ではないのか?)
さらに追跡を続けると路地を抜け、噴水のある広場に出た。
(一体何が目的なんだ…)
チラッ フッ…
(気づかれていたか!)
人の存在などお構いなしに懐から出した物体を水に投げ込み、謎の言語による詠唱を始める
「『~~○~~#~~・~×~~イ…
~*~~ヲ~~%~~△…』」
「騎士団だ!両手を頭の後ろで組んで跪(ひざまず)け!」
「…~~□~~#ー~¿、♤~~+~~!!」
「聞こえていないのか!!手を…」
ニィッ
「救世会ノ名ノ下ニ、神ノ裁キト救済アレ…!」
役目を終えたように目を瞑り、首元に手を伸ばす。
「よせ!!」
ボンッ!!
騎士の生死も虚しく、目の前には小さな爆炎と首を手放してしまった男物の身体が倒れるまでの数秒を鈍い音と共に数えるだけだった。
「なっ…何をしたんだ
…?!!!」
一方その頃
Zzzzzzzzz…Zzzzzzzz…
「ン~…ロー…さぁん…かえして~…」
『…!』
ペシっ
『…い!……ろ!』
ペシっ
「なんれすかぁ…といれなら…1人れ…」
『起きろぉぉぉぉーーーーーーーーー!!!』
「てゅぇったい! にゃに…?」
『目ぇ覚めたか?』
「『ザックしゃん…今何時だと思って…ムニャ~…』」
『起きろって!
またあの…なんだっけか、例のテロ連中がでやがったんだよ!!』
「『てお…てろ…?きゅ~せ~かいれすか~?』」
『それだよ!ソイツがなんかしらのマジックアイテム使いやがったみてぇで、空にきったねぇ色した雲が広がってんだ!
とりあえず雲ぶった斬っからビュンバリ丸早く出してくれ!』
「『ふーらいまる…?何するんれ~すか…?』」
『だから雲ぶった斬るんだって
おめぇまだ寝ぼけてんのか?』
「『ちょっと待って…くらさいね
デッキデッキ…』」
『カードはオレが持ってんぞ』
「『それじゃあ…
てんくーざんとーふーらいまる…召…
…
…』」
『おい?まさか寝てないよな?』
「『…』」
『寝るなぁぁ!!』
「『ピャいっ!?』」
一方戻って事件現場
噴水から無尽蔵に湧き上がる謎の雲が街上空全体を覆い尽くし、人々はパニックを起こしていた。
「街の外に避難しろ!!」
「副隊長!!」
「ザックさん!!」
「ザック!!」
「あの雲はおめぇらが動いてどうこうなるもんじゃねぇ、今は街の奴らをみんな避難させろ。急げ!」
『「ハッ!!」』
「どけ!オレが先だ!」
「うるせぇ!オレだ!」
「ふェッ…エェェェェェン!」
「ちょっと押さないでよ!子供がいるんだから!」
「オレは押してねぇって!」
「ピコ!だいじょうぶ?あれ…!?ピコ!?
どいてっキャッ…!ピコ!ピコーー!!」
「ママぁーー!」
「どこまで追っかけてんだあのばか…!
おととっ!?
お嬢ちゃん1人で何やってんだ、おかあちゃんはどうした!?」
「あっち…」
「あん中に紛れたか…しゃーねぇ よっこらせっと」
「おじちゃん…?」
「一瞬でおっちゃんがつれてっててやんよ!」
空を覆い尽くす漆黒の雲は徐々に風と雷を帯びた渦を形成し、その脅威を地上に向けて伸ばしていた。
「放り込んだものを取り出さないと…!」
男が放り込んだ物はもうすでに水に溶け込んでいて液体としての形状しか残っていない。
バシャッ!バシャッ!
「雲が止まらない…!?
止まれ!止まれ!!」
当然、1人の人間がいくら噴水から液体を掻き出したところで液体の雲への昇華は止まらない。止まるはずがない。
「いた!」
「ザック…」
懐から飛び出たカードが緑色の光となって、お馴染みの武器を形成する
「やっと出たか。
フィーラ、あの雲ぶった斬る。手伝え」
「雲を…?」
「こいつぁ風と雷でドラゴンのブレスとタメ張れんだ、あんな雲のひとつやふたつ、ぶっ壊せんだろ。」
「…分かった。私は何をすればいい」
「分かんねぇけど、あれだ、真上に氷と斬撃出せるだけ飛ばせ。合わせりゃなんかしらにはなんだろ」
「力づくか…分かった、さっさと始めるぞ」
そこから先は互いに何を指図するでもなく決まったかのように距離を取り、各々剣と刀に握力を込める。
パキポキっ…ポキポキっ…!
カチャ… スーーーーー… チャキンッ…!
「うっし」
「…」
普段の言い争いはどこへやら、目線を合わせるまでもなく互いの魔力やスキルを最大限高め…
「吹き飛べ!!」
「ハァッっ!!」
あだ名の通りビュンビュンバリバリと擬音ままの音を立てる刃から発せられた巨大な斬撃は、氷の塊や斬撃を取り込みながら急上昇。
竜巻にぶつかると色違いの竜巻に姿を変え、その向こうにある大元を断ち切るべく競り合う。
間髪入れずに各々の斬撃を投げ込み続け、広場一面をも剥ぎ取った竜巻は上空からの竜巻との差を縮めていく。
しかし…
「まだまだ!こんなんじゃ足りねぇ!
もっと気合い入れろ!!」
「精一杯やってる!」
「クッソ コレいけっかな…?」
「ヤツの魔物を呼び出したりできないのか!」
「贅沢言うんじゃねぇ
寝ボケ頭に言ってビュンバリ丸が出てきただけマシだと思え!」
「ヤツは肝心な時に何寝ボケてるんだ…!」
そうこうしている間にも2つの渦は着々と成長を続け、ついにはぶつかり合った。
街を蹴散らそうとその矛を伸ばす渦
街を守るべく刃を突き出す渦
双方一見互角に見えなくない渦同士だったが、成長スピードが圧倒的に前者の方が勝っていた。
神罰を下すためにしっかり開発された竜巻と、神器級の剣を持っただけの“たかが”人間1と、周りより少し抜き出た程度の常人では力量も質量も違いすぎるのだ。
2人の抵抗も底が見え、徐々に押され始めた。
「くっそがぁぁぁぁーーーーー!!!」
「たのむ…とまってくれ!」
2人の踏ん張りも虚しく、2人が創り出した渦はその勢いを削がれ、徐々にその風色が悪くなっていき、ついには1人、力が尽きてしまった
ガクッ…
「もう…ダメ…だ…」
「ん?
おいフィーラ!おめぇはちょっくら離れてろ!」
「何をする気だ!?」
「どけ。クソ邪魔」
「や~っと来たか クロ」
「チッ…クッソねみぃ。こんな時間に分っかりにくい風で呼ぼうとすんなよ」
「悪りぃ悪りぃ
ケー起きてくんねぇとくりゃ石のやつ越しでもワンチャンあるのがクロたちしか思いつかなくてよ。」
「ま、来れただけマシだろ」
「んだな。
ってか、ケーは一緒じゃねぇのか?」
「アイツならクソヴァイスが必死こいて起こしてるがまともに話すらできそうもねぇ。
代わりになるか知らねぇが、ほらよ」
「ごヴァッ!」
「やっぱりぃん!」
「わタタイッ!?」
「雑ゥンッ!!」
「え!?おめぇら!?」
「お前達!?」
「ど…どうも」
「なんで来てんだ」
「状況分かって来ているのか!」
『「分かってます!」』
「駆け出しがきてなにウォほほおおおおお!?」
「うにゃゃあああああ!!?」
「やっぱり慣れなひひいいいいいい!?」
「『ケー!起きたなら早』くいぇえええええ!!?」
「まさかアイツまだ寝ぼけてるぅぅうううううう!?」
「お前達急に何してるんだ…?
…キモいぞ」
『「こっちに言うな!」』
「はぁ?
もういい クロ、説明しろ」
「オイ
誰が誰にクロって言ってるか分かってんのか
考えてモノ言えよクソノロマザコ。」
「そんなこと言ってる場合か!状況を考えろ!!」
「『あ“ぁ"?』」
ゾゾゾっ…!
「…!」
「何様んつもりでなんつった」
「し、失礼した…。
発言を撤回する。」
「チッ…テメェは何の役に立たねぇんだからそこらで指咥えて大人しく見てろ。
巻き込まれたくなけりゃ動くな」
「っ…
…返す言葉も…ない…」
また、一方その頃
「ケヴィンしゃんを強化レベル3…
まほぉかぁ…」
カクンっ
「寝ちゃダメでありまスルーー!!」
ドコドコドコドコ!!
シャンシャンシャン!!
パブパブパブッ!!
ビッピキピッピーーー!!!
「おーーきろーーーー!!!
頑張るでありまスル!!
フレーー!フレー!!ま・ぶ・た!!
開け開けっ!お・め・め!!」
「ベッドがひとつ…
枕がふたつ…
毛布…しょうかぁん…」
「ダメーーーーーーーー!!」
またまた戻って現場は
「よし、みんないくぞ!」
『「おう!」』
「『共鳴』!!」
この場にいる仲間の身体がオーラに包まれ、全員のステータスがさらに上がる。
「技を重ねるぞ!」
「「「ああ!!」」」
「『真・水龍の舞』!!」
一度諦めた“水竜”との共闘の代わりに、彼のスキルと水流剣によって造り出された“水龍”が天を目指し飛び上がる。
「『大地の槍砲!!』」
「『一発入魂』!!
『超成長の矢』」
矢のように放たれた苗枝は、飛翔しながら大地のの槍を苗床とし、とてつもないペースで巨大な矢へ変貌する。
「『表裏の憂鬱』…
『運子・踏邪汰スラッシュ!!』」
「「技名キモっ!」」
「こうしないと運が悪くなるんです!」
心なしか茶色がかった聖なる斬撃が先陣を飛び、鏃となる。
水龍は自然の恵みたっぷりの矢を丸呑みする。
呑み込まれた巨木の矢は水龍から水を受け取り、そのまま体内でその身を拡げ、ついには水龍より大きな龍へと生まれ替わる。
最終的に4つ技が完全にかけ合わさり、龍の矢を形成する。
『「 『森龍の矢』!!! 」』
各々の長所と短所を理解し合うことで、駆け出しだの若僧だの言われるレベルで不可能とされる技の合成を見事やってのけたのだ。
しかしその矢も前に飛ばす想定の大技、ましてや練習中の技が重力と竜巻の影響が出ないわけもなく…
「まずい…勢いが竜巻に負けてる…」
「このままでは…」
「頼む…踏ん張ってくれ…」
「ダメだ…落ちてる!」
「オレ忘れて諦めんな!!」
タッタッタッタッ!
「クロ!オレをぶん投げやがれ!!」
「ん。『変化』」
「ほっ!」
ビョイーーンっ!
「借りはコレでチャラだかんな」
「おうっ
なんなら1つ貸し付けてもいいぜ、フルスイングで頼んだ!」
「クソナメたこと言ってくれんな、どうなっても知らねーぞ」
「へっ! んなもんオレらは始めっから考えねえタチだろ、後のこたぁ動いてから考えりゃいいんだよ!」
「だな。」
「おらよ!!」
「ぅおおおーーーーー!!」
黒い巨体から打ち出された男は絶叫でも畏怖でもない新たな感覚に心躍らせつつ、超巨大な龍の矢との距離を縮めていく。
「ヒャッホーー!!
あーーらよっと!!」
ザクッ
刀身を3分の1ほど突き立て、体勢を安定させる
「よっ でっけぇドラゴンさん まだ生きてっか?
…なんだよ返事しねぇタイプか ま、なんでもいいけどよ、ちょっくらオレらの力も混ぜろ!!
『飛ぼうぜ、一緒に!』」
グルゥォォォオオオオオオオオオオ!!
「おっいい返事すんじゃねぇか
いくぜ!!」
「森龍の矢が…」
「勢いを取り戻した!?」
「すげぇ…!
いけ!!ザックさん!頑張れ森龍!」
再び天高くそびえ立つ死の矛に食らいつく二つの存在は、日本昔ばなしのOPに登場する[龍の子太郎]を彷彿させる。
もっとも、現実の激しさは[龍の小太郎]の2、3桁倍。
「いいなぁ…」
「ケヴィン、ジード、ベクター 」
「ん?」「なんだ」「どした」
「まだ、ぶち込めるか?
無理ならまじないだってなんだっていい。」
「ああ」「そうだな」
「言われなくてもやるさ!」
ベチョっ
「またベクターう○こ踏んでるぞ」
「だぁぁぁぁ!!」
「頼む…ザック、
ケぇ…くそっ」
「おおらぁぁぁああああーーーー!!」
『「いけぇええーーーーーー!!」』
龍の矢が竜巻を貫き、龍の小太郎が街を覆う雲を一刀両断。
黒々闇々した雲の隙間からは月の光柱が無数に照らしつけ、雲が四散し増えていく夜空から照らす冷たくも温かい光が、つい先ほどまで恐怖のどん底にあった街の全てを優しく包み込んだ。
「っしゃああーーーーー!!」
『「やったーーーーーー!!」』
ヘナヘナ…
「やってのけた…たかが5人の人間が…」
「月やっぱでっけーな…
ひょー!街ちっちぇーー!
アイツらどれだ?
おっ いたいたっ! おーーーい!」
バッサ バッサ バッサ
「クソ楽しそーなとこ悪りぃんだがよ、ダンナ」
「お、クロ!」
「着地どうすっか考えてきてっか?」
「ん?まぁビュンバリ丸あるしなんとかなんだろ」
「その体でか?」
「はははっ やっぱ似たもん同士相手じゃバレっか。
さっきので思っくそパワー持ってかれてよ、ちっとも体動かねぇ。
体力底なしなはずなんだがよ、それ以上にコイツのバケモン具合はヤベェぜ」
「「動いて考える」っつっといて策なしかよ」
「でもま、クロが来てくれてんなら落ちて死ぬこたぁねぇだろ。」
「…貸し1追加な」
バッサバッサバサ…
「よっ 無事みてぇでなによりだぜ」
「「ザックさーん!!」」
「「副隊長!」」
「ザック…!」
ヨロ…
「ぉっ…とと…」
「「ザックさん!!」」 「「副隊長」」
「へへへっ…」
「…」
「おうフィーラ、オレ達8人で街1個ぶっ壊れずに済んだんだぜ?
もっと喜んでもバチあたんねーぞ」
「お前達のようには喜べない…
私には…その資格がない」
「ったくノリわりーな
うっしおめぇら!フィーラとっ捕まえて宴行くぞ! こいつぁ副隊長命令だ!」
『「はっ!!おーせのままに!!」』
「やっやめろお前達、職務中だぞ!
ちょっ掴むな離せ!隊長命令だ!」
「無視して連れてけーー!!」
『「イェッサー!」』
「やめろぉおおおーーーー!!」
後日、被害が出る前に不気味な災害を止めたのは騎士団の活躍であると大きく取り上げられた。
ここまでの死闘は避難した住民の目線では竜巻に相対する一本の棒状の何かにしか見えておらず、その中にドラゴンがいたこと、召喚士が裏でサポートを(寝ながら)していたことなどの詳細情報は、救世会の暗躍加減も考慮して広げるべきではないと、隊長判断により伏せられた。
後日
「自分が寝てる間にそんな大変ことがあったんだ…」
「本気で覚えていないでありまスル…?」
「全然…」
「あれだけドンチャンピッピラ鳴らしたのに!?」
「覚えてない…な」
「その後に大きくなっていっぱいシェイクしたのに!?」
「覚えてないけど、扱いおかしくない?」
「泉に顔からドボンさせたのも!?
頬っぺを連続ビンタしたことも!?
激辛唐辛子を大量に食べさせたのも!?
全部覚えていないでありまスル!?」
「覚えてない以前に、2度と起きれなくなるからそういうことするのやめよっか。」
「け~、かえってきたって~」
「分かった。」
「今後の夜中の対応は要検討でありまスルね」
「そうだな。
このままじゃ命が何個あっても足りないからな…」
「お疲れ様です」
ツカツカツカツカ…
「どうしました?」
「早速貴様に話がある。」
「何でしょう」
「いろいろ聞かないといけないが、取り急ぎ…」
「な、なんでしょう…?」
「なぜ彼らはたったの3日間でレベル30超えしているか説明してもらおう」
「あ、そっちですか」
「そっちというのは?」
「事件の時にぐっすり寝ちゃってたことかと…」
「そのことは深追いはしないと決めている。
伝承の儀という名の仕返しが怖いからな」
「サンちゃん呼ばなくて正解ですね」
スッ
「交渉材料に使うのはやめろ!」
「で、どうなんだ?」
「ソレについて、一応報告書作りましたけど見ます?」
「ああ」
「2ページの赤い下線引いてるところから読んでください」
「1ページ目は読ま…なんだ目次か。」
[今回のレベリングについて]
その1 カタカナの限界
その2 武器についての風習や考え方
その3 自分のスキルについて。
「…」
中身をまとめると、
①カタカナの限界
そもそもこの国(この世界)には平仮名と漢字が存在しないのか、遺っていないのか、解読できる者がいない。
仮説だが、職業が分かっても正しく使える者がそう多くない。
だから合わないことを知らないままで、延々と伸び悩み続けることになり、最終的には早くに死ぬことになる。
② 武器についての風習や考え方
よくよく考えてみれば、自分が今まで出会った人達で剣以外を携えている人を一切見たことないような気がする。
予算だの、動きの不揃いなどの理由で剣以外持てない雰囲気があるからこそ、他の武器を使う人は早死にするか、騎士団以外の傭兵だとか冒険者だとかに転職してしまうんだそう。
剣を捨て、思い思いの武器を手に入れた人たちは伸びる伸びる…。
今まで何種類もカードゲームをやってきたが、普通に盾や矛、槍を持ったキャラ、モンスターはたくさん出てくる。何なら稀にハンマーとか弓、砲撃手もいるくらいだ。
素人の自分でも分かる。騎士に1番向かない性格のザックさんを副隊長にする勇気があるなら槍とか魔法の杖や盾を持たせた方が絶対早い。
③ 自分のスキルについて
召喚士としてのスキルはご存知の通りモンスターや仲間と認め合った者や武器の召喚、魔法カードの使用などがメイン。
他方で、経験値共有と成長率上昇のおかげで通常ダメージや活躍に応じた分配をされる経験値を何割か増しで仲間と均等に分けることができる。
レベリングにはこれ以上ないくらい好スキルだ。
・正しい職業の判別
・意味のない風習等のフル無視
・条件に合う武器カードの選定、実験
・現場に出て要所要所サポート
↓↓↓
◎ 楽々レベリング
◎下がりきった活気の飛躍的向上
数分後
「…おい」
「はい?」
「この報告書、嘘偽りの物ではないだろうな」
「嘘は1つも書いてませんよ。
ただ仮説6割、結果4割を感じたまま書いただけなので完璧な報告書というよりほとんど観察日記の中間報告ですけどね。」
「そこまでは聞いてない。
私はこんな夢物語のようなスケジュールで10もレベルが上げることが本当に可能なのかを聞いている。」
「そう言われても…出来ちゃったものはどうしようもなくないですか?」
「そうではない」
「え?」
「だからその…分かるだろ」
「残りの騎士団の人たちにも的な?」
「ああ。」
「次のページ目出してください。
気になっていることを何個か聞きたいので。」
厳密には2日と半日。
カード武器でそこら辺にいる魔獣を狩っては他のを試し、1番合うカードというものが1人1種類(人によって複数)を選定、必要に応じてカード合成を行った。
流剣士には
『水流剣スプラッシャー』
堅者には
『要塞機甲トー・タンクス』
狩人には
『森番の弓 ノビル ・プラント』
または
『プラントシードライフル』
万年厄年の白騎士には
『シールドクロ』
『残念な聖剣』
『アーマー・ゴーレム』
流れる身のこなし・剣撃を繰り出す水流剣使い
仲間を支える鉄壁の守りと高火力援護のタンク
木の上なら無敵の一撃必中スナイパー
見た目クソダサ、逆アンラッキーナイト
それぞれ各自の長所、短所を生かす作戦に出た。
4人の他で言えば『天空斬刀 風雷丸』を預けたザックさん。
[戦士]という職業が前衛寄りであり武器の縛りがないので最終的にはスキルと性格による相性頼りにはなる。
荒ぶる天空の刀 + パワープレイ戦士
=最強の特攻隊長
①職業&職業スキル
②固有スキル
③性格
④周囲の環境
この4点が重要なのに対し、気になることが
・なぜ剣以外持っていないのか
・職業の分類が雑すぎないか
・この現状でまともに機能しているのか
これとは別にもう一つ、
・なぜヴィクトリア王国騎士団の隊長は30歳前後と比較的若いのか
「そこを触れてしまうのか…」
「明らかに原因そこですから。
別に言いたくなければ結構です。」
「貴様のことだ、私でなくても遅かれ早かれ聞くことにはなるだろうから教えてやる。
4年ほど前だったか、当時の旧第一騎士団長と旧第四騎士団長、今で言う中隊長を含む幹部連中が姿を相次いで消した。
調べてみれば出るわ出るわ汚職の数々。
言ってしまえば騎士団員を奴隷のような扱いをして浮いた金を懐に入れていたらしい。
武具に掛ける金はナマクラ以下、設備や飯は家畜以下、睡眠は甘え、団員の家族の命すら人質であるかのように言って聞かせて…想像するだけで吐き気がするクズっぷりだったらしい。
その事件をきっかけに旧騎士団は完全に解体。
制度も一から見直され、現在の騎士団に至る。
当然大勢の団員が辞めていき、半数以上は無理がたたって病に伏したり亡くなったとも聞いたことがある。
後に残ったのは、当時の半分ほどの騎士と旧騎士団から受け継いだ偏見と「当時よりマシ」という親や学園の教育方針だけ。
カムロや私の父やダンパーさん、アベル、後から私も加わって騎士団の強化に乗り出していたのだが貴様のいう通り騎士団は剣を持っていないといけないと教えられた新人しか来ない。
というのが貴様の知りたい真相だ。…ん?」
「すみません、最後の方に新しい人物が2名…」
「あぁ、貴様は私の父とダンパーさんを知らないんだったな。
私の父は前の4番隊隊長で、ダンパーさんは3番隊の隊長だ。
父が一昨年病死して私がその役を継いだんだ。
ダンパーさんは旧第三騎士団長であり、私の父と元同じ団員同士だ。」
「なるほど…っと」
メモメモ~…
「そんなに書き込む内容か?」
「ドラゴン達でさえ多いのに人間もとなれば、こうでもしないといっぺんに名前覚えられる気がしませんからね。
よしっ…。それでは行きましょうか」
「行くってどこにだ」
「決まってるじゃないですか」
「デッキと4番隊の『編成』です。」
日付は完全に変わり、どこからも肉と酒の匂い、酔った男達の笑い声と怒号が響き渡るまさに夜の街。
そこから路地を2本3本超えた先にある居住区・宿地区の間にあたる路地に彼女たちは身を潜めていた。
「ファ~…」
ポカン!!
「イテっ!」
「気を抜くなと言った矢先にあくびをするな。
ヤツらがどこから来るのかわからないんだぞ」
「チッ わーってるよ」
「分かっているなら初めから気を抜くな」
「つってもコレもう2日連続だぜ?
いい加減オレも寝ていいだろ」
「ダメだ、寝ている間に夜襲は起きるもの。
寝ている間にやられるような事があってはならない」
「ふーーん、サンちゃん家で何があったんだっけかな~?」
彼女の脳裏に悪夢がフラッシュバックする。
軽い気持ちで知ろうとしたばっかりに3日3晩一睡もせずに聞かされた伝送という名の悪夢とそれを語りつける鬼が。
「うっ…
ダメだっ…!やはりダメだ…!
万が一の時はアレと連絡を取れるのはお前しかいないんだぞ」
「ほえ~…おめぇもケーんこと味方って認めんのか」
「そそそそ、そんなわけあるかっ
ああアレはまだ容疑者だ。アレに頼るのは…あくまでも最終手段としてだ。」
「まだってことは近いうちにってことだろ?」
「だ、黙れっ
とにかく私は認めないからな!」
「素直に認めりゃいいのによ~、減るもんじゃねぇし。
おめぇもいい加減気付いてんじゃねぇの?アイツの人と成りによ」
「う、うるさいっ」
タタタタタタッ…
「お?」
「来た…!」
暗闇から聞こえた足音、静かにかつ確実に近づく殺気、背筋を逆撫でするような心地悪い気配に、その場の騎士は思わず剣の柄に手を置いた。
大雑把者の騎士をその場にとどまらせ、付かず離れずの距離で追跡を開始する。
黒いローブのフードを深々とかぶり、鼻から下を布物で隠したその人間は重要参考人がいる宿で止まるどころかノールックで通り過ぎ、その足はむしろ早くなる。
(なんだ?仲間の始末が目的ではないのか?)
さらに追跡を続けると路地を抜け、噴水のある広場に出た。
(一体何が目的なんだ…)
チラッ フッ…
(気づかれていたか!)
人の存在などお構いなしに懐から出した物体を水に投げ込み、謎の言語による詠唱を始める
「『~~○~~#~~・~×~~イ…
~*~~ヲ~~%~~△…』」
「騎士団だ!両手を頭の後ろで組んで跪(ひざまず)け!」
「…~~□~~#ー~¿、♤~~+~~!!」
「聞こえていないのか!!手を…」
ニィッ
「救世会ノ名ノ下ニ、神ノ裁キト救済アレ…!」
役目を終えたように目を瞑り、首元に手を伸ばす。
「よせ!!」
ボンッ!!
騎士の生死も虚しく、目の前には小さな爆炎と首を手放してしまった男物の身体が倒れるまでの数秒を鈍い音と共に数えるだけだった。
「なっ…何をしたんだ
…?!!!」
一方その頃
Zzzzzzzzz…Zzzzzzzz…
「ン~…ロー…さぁん…かえして~…」
『…!』
ペシっ
『…い!……ろ!』
ペシっ
「なんれすかぁ…といれなら…1人れ…」
『起きろぉぉぉぉーーーーーーーーー!!!』
「てゅぇったい! にゃに…?」
『目ぇ覚めたか?』
「『ザックしゃん…今何時だと思って…ムニャ~…』」
『起きろって!
またあの…なんだっけか、例のテロ連中がでやがったんだよ!!』
「『てお…てろ…?きゅ~せ~かいれすか~?』」
『それだよ!ソイツがなんかしらのマジックアイテム使いやがったみてぇで、空にきったねぇ色した雲が広がってんだ!
とりあえず雲ぶった斬っからビュンバリ丸早く出してくれ!』
「『ふーらいまる…?何するんれ~すか…?』」
『だから雲ぶった斬るんだって
おめぇまだ寝ぼけてんのか?』
「『ちょっと待って…くらさいね
デッキデッキ…』」
『カードはオレが持ってんぞ』
「『それじゃあ…
てんくーざんとーふーらいまる…召…
…
…』」
『おい?まさか寝てないよな?』
「『…』」
『寝るなぁぁ!!』
「『ピャいっ!?』」
一方戻って事件現場
噴水から無尽蔵に湧き上がる謎の雲が街上空全体を覆い尽くし、人々はパニックを起こしていた。
「街の外に避難しろ!!」
「副隊長!!」
「ザックさん!!」
「ザック!!」
「あの雲はおめぇらが動いてどうこうなるもんじゃねぇ、今は街の奴らをみんな避難させろ。急げ!」
『「ハッ!!」』
「どけ!オレが先だ!」
「うるせぇ!オレだ!」
「ふェッ…エェェェェェン!」
「ちょっと押さないでよ!子供がいるんだから!」
「オレは押してねぇって!」
「ピコ!だいじょうぶ?あれ…!?ピコ!?
どいてっキャッ…!ピコ!ピコーー!!」
「ママぁーー!」
「どこまで追っかけてんだあのばか…!
おととっ!?
お嬢ちゃん1人で何やってんだ、おかあちゃんはどうした!?」
「あっち…」
「あん中に紛れたか…しゃーねぇ よっこらせっと」
「おじちゃん…?」
「一瞬でおっちゃんがつれてっててやんよ!」
空を覆い尽くす漆黒の雲は徐々に風と雷を帯びた渦を形成し、その脅威を地上に向けて伸ばしていた。
「放り込んだものを取り出さないと…!」
男が放り込んだ物はもうすでに水に溶け込んでいて液体としての形状しか残っていない。
バシャッ!バシャッ!
「雲が止まらない…!?
止まれ!止まれ!!」
当然、1人の人間がいくら噴水から液体を掻き出したところで液体の雲への昇華は止まらない。止まるはずがない。
「いた!」
「ザック…」
懐から飛び出たカードが緑色の光となって、お馴染みの武器を形成する
「やっと出たか。
フィーラ、あの雲ぶった斬る。手伝え」
「雲を…?」
「こいつぁ風と雷でドラゴンのブレスとタメ張れんだ、あんな雲のひとつやふたつ、ぶっ壊せんだろ。」
「…分かった。私は何をすればいい」
「分かんねぇけど、あれだ、真上に氷と斬撃出せるだけ飛ばせ。合わせりゃなんかしらにはなんだろ」
「力づくか…分かった、さっさと始めるぞ」
そこから先は互いに何を指図するでもなく決まったかのように距離を取り、各々剣と刀に握力を込める。
パキポキっ…ポキポキっ…!
カチャ… スーーーーー… チャキンッ…!
「うっし」
「…」
普段の言い争いはどこへやら、目線を合わせるまでもなく互いの魔力やスキルを最大限高め…
「吹き飛べ!!」
「ハァッっ!!」
あだ名の通りビュンビュンバリバリと擬音ままの音を立てる刃から発せられた巨大な斬撃は、氷の塊や斬撃を取り込みながら急上昇。
竜巻にぶつかると色違いの竜巻に姿を変え、その向こうにある大元を断ち切るべく競り合う。
間髪入れずに各々の斬撃を投げ込み続け、広場一面をも剥ぎ取った竜巻は上空からの竜巻との差を縮めていく。
しかし…
「まだまだ!こんなんじゃ足りねぇ!
もっと気合い入れろ!!」
「精一杯やってる!」
「クッソ コレいけっかな…?」
「ヤツの魔物を呼び出したりできないのか!」
「贅沢言うんじゃねぇ
寝ボケ頭に言ってビュンバリ丸が出てきただけマシだと思え!」
「ヤツは肝心な時に何寝ボケてるんだ…!」
そうこうしている間にも2つの渦は着々と成長を続け、ついにはぶつかり合った。
街を蹴散らそうとその矛を伸ばす渦
街を守るべく刃を突き出す渦
双方一見互角に見えなくない渦同士だったが、成長スピードが圧倒的に前者の方が勝っていた。
神罰を下すためにしっかり開発された竜巻と、神器級の剣を持っただけの“たかが”人間1と、周りより少し抜き出た程度の常人では力量も質量も違いすぎるのだ。
2人の抵抗も底が見え、徐々に押され始めた。
「くっそがぁぁぁぁーーーーー!!!」
「たのむ…とまってくれ!」
2人の踏ん張りも虚しく、2人が創り出した渦はその勢いを削がれ、徐々にその風色が悪くなっていき、ついには1人、力が尽きてしまった
ガクッ…
「もう…ダメ…だ…」
「ん?
おいフィーラ!おめぇはちょっくら離れてろ!」
「何をする気だ!?」
「どけ。クソ邪魔」
「や~っと来たか クロ」
「チッ…クッソねみぃ。こんな時間に分っかりにくい風で呼ぼうとすんなよ」
「悪りぃ悪りぃ
ケー起きてくんねぇとくりゃ石のやつ越しでもワンチャンあるのがクロたちしか思いつかなくてよ。」
「ま、来れただけマシだろ」
「んだな。
ってか、ケーは一緒じゃねぇのか?」
「アイツならクソヴァイスが必死こいて起こしてるがまともに話すらできそうもねぇ。
代わりになるか知らねぇが、ほらよ」
「ごヴァッ!」
「やっぱりぃん!」
「わタタイッ!?」
「雑ゥンッ!!」
「え!?おめぇら!?」
「お前達!?」
「ど…どうも」
「なんで来てんだ」
「状況分かって来ているのか!」
『「分かってます!」』
「駆け出しがきてなにウォほほおおおおお!?」
「うにゃゃあああああ!!?」
「やっぱり慣れなひひいいいいいい!?」
「『ケー!起きたなら早』くいぇえええええ!!?」
「まさかアイツまだ寝ぼけてるぅぅうううううう!?」
「お前達急に何してるんだ…?
…キモいぞ」
『「こっちに言うな!」』
「はぁ?
もういい クロ、説明しろ」
「オイ
誰が誰にクロって言ってるか分かってんのか
考えてモノ言えよクソノロマザコ。」
「そんなこと言ってる場合か!状況を考えろ!!」
「『あ“ぁ"?』」
ゾゾゾっ…!
「…!」
「何様んつもりでなんつった」
「し、失礼した…。
発言を撤回する。」
「チッ…テメェは何の役に立たねぇんだからそこらで指咥えて大人しく見てろ。
巻き込まれたくなけりゃ動くな」
「っ…
…返す言葉も…ない…」
また、一方その頃
「ケヴィンしゃんを強化レベル3…
まほぉかぁ…」
カクンっ
「寝ちゃダメでありまスルーー!!」
ドコドコドコドコ!!
シャンシャンシャン!!
パブパブパブッ!!
ビッピキピッピーーー!!!
「おーーきろーーーー!!!
頑張るでありまスル!!
フレーー!フレー!!ま・ぶ・た!!
開け開けっ!お・め・め!!」
「ベッドがひとつ…
枕がふたつ…
毛布…しょうかぁん…」
「ダメーーーーーーーー!!」
またまた戻って現場は
「よし、みんないくぞ!」
『「おう!」』
「『共鳴』!!」
この場にいる仲間の身体がオーラに包まれ、全員のステータスがさらに上がる。
「技を重ねるぞ!」
「「「ああ!!」」」
「『真・水龍の舞』!!」
一度諦めた“水竜”との共闘の代わりに、彼のスキルと水流剣によって造り出された“水龍”が天を目指し飛び上がる。
「『大地の槍砲!!』」
「『一発入魂』!!
『超成長の矢』」
矢のように放たれた苗枝は、飛翔しながら大地のの槍を苗床とし、とてつもないペースで巨大な矢へ変貌する。
「『表裏の憂鬱』…
『運子・踏邪汰スラッシュ!!』」
「「技名キモっ!」」
「こうしないと運が悪くなるんです!」
心なしか茶色がかった聖なる斬撃が先陣を飛び、鏃となる。
水龍は自然の恵みたっぷりの矢を丸呑みする。
呑み込まれた巨木の矢は水龍から水を受け取り、そのまま体内でその身を拡げ、ついには水龍より大きな龍へと生まれ替わる。
最終的に4つ技が完全にかけ合わさり、龍の矢を形成する。
『「 『森龍の矢』!!! 」』
各々の長所と短所を理解し合うことで、駆け出しだの若僧だの言われるレベルで不可能とされる技の合成を見事やってのけたのだ。
しかしその矢も前に飛ばす想定の大技、ましてや練習中の技が重力と竜巻の影響が出ないわけもなく…
「まずい…勢いが竜巻に負けてる…」
「このままでは…」
「頼む…踏ん張ってくれ…」
「ダメだ…落ちてる!」
「オレ忘れて諦めんな!!」
タッタッタッタッ!
「クロ!オレをぶん投げやがれ!!」
「ん。『変化』」
「ほっ!」
ビョイーーンっ!
「借りはコレでチャラだかんな」
「おうっ
なんなら1つ貸し付けてもいいぜ、フルスイングで頼んだ!」
「クソナメたこと言ってくれんな、どうなっても知らねーぞ」
「へっ! んなもんオレらは始めっから考えねえタチだろ、後のこたぁ動いてから考えりゃいいんだよ!」
「だな。」
「おらよ!!」
「ぅおおおーーーーー!!」
黒い巨体から打ち出された男は絶叫でも畏怖でもない新たな感覚に心躍らせつつ、超巨大な龍の矢との距離を縮めていく。
「ヒャッホーー!!
あーーらよっと!!」
ザクッ
刀身を3分の1ほど突き立て、体勢を安定させる
「よっ でっけぇドラゴンさん まだ生きてっか?
…なんだよ返事しねぇタイプか ま、なんでもいいけどよ、ちょっくらオレらの力も混ぜろ!!
『飛ぼうぜ、一緒に!』」
グルゥォォォオオオオオオオオオオ!!
「おっいい返事すんじゃねぇか
いくぜ!!」
「森龍の矢が…」
「勢いを取り戻した!?」
「すげぇ…!
いけ!!ザックさん!頑張れ森龍!」
再び天高くそびえ立つ死の矛に食らいつく二つの存在は、日本昔ばなしのOPに登場する[龍の子太郎]を彷彿させる。
もっとも、現実の激しさは[龍の小太郎]の2、3桁倍。
「いいなぁ…」
「ケヴィン、ジード、ベクター 」
「ん?」「なんだ」「どした」
「まだ、ぶち込めるか?
無理ならまじないだってなんだっていい。」
「ああ」「そうだな」
「言われなくてもやるさ!」
ベチョっ
「またベクターう○こ踏んでるぞ」
「だぁぁぁぁ!!」
「頼む…ザック、
ケぇ…くそっ」
「おおらぁぁぁああああーーーー!!」
『「いけぇええーーーーーー!!」』
龍の矢が竜巻を貫き、龍の小太郎が街を覆う雲を一刀両断。
黒々闇々した雲の隙間からは月の光柱が無数に照らしつけ、雲が四散し増えていく夜空から照らす冷たくも温かい光が、つい先ほどまで恐怖のどん底にあった街の全てを優しく包み込んだ。
「っしゃああーーーーー!!」
『「やったーーーーーー!!」』
ヘナヘナ…
「やってのけた…たかが5人の人間が…」
「月やっぱでっけーな…
ひょー!街ちっちぇーー!
アイツらどれだ?
おっ いたいたっ! おーーーい!」
バッサ バッサ バッサ
「クソ楽しそーなとこ悪りぃんだがよ、ダンナ」
「お、クロ!」
「着地どうすっか考えてきてっか?」
「ん?まぁビュンバリ丸あるしなんとかなんだろ」
「その体でか?」
「はははっ やっぱ似たもん同士相手じゃバレっか。
さっきので思っくそパワー持ってかれてよ、ちっとも体動かねぇ。
体力底なしなはずなんだがよ、それ以上にコイツのバケモン具合はヤベェぜ」
「「動いて考える」っつっといて策なしかよ」
「でもま、クロが来てくれてんなら落ちて死ぬこたぁねぇだろ。」
「…貸し1追加な」
バッサバッサバサ…
「よっ 無事みてぇでなによりだぜ」
「「ザックさーん!!」」
「「副隊長!」」
「ザック…!」
ヨロ…
「ぉっ…とと…」
「「ザックさん!!」」 「「副隊長」」
「へへへっ…」
「…」
「おうフィーラ、オレ達8人で街1個ぶっ壊れずに済んだんだぜ?
もっと喜んでもバチあたんねーぞ」
「お前達のようには喜べない…
私には…その資格がない」
「ったくノリわりーな
うっしおめぇら!フィーラとっ捕まえて宴行くぞ! こいつぁ副隊長命令だ!」
『「はっ!!おーせのままに!!」』
「やっやめろお前達、職務中だぞ!
ちょっ掴むな離せ!隊長命令だ!」
「無視して連れてけーー!!」
『「イェッサー!」』
「やめろぉおおおーーーー!!」
後日、被害が出る前に不気味な災害を止めたのは騎士団の活躍であると大きく取り上げられた。
ここまでの死闘は避難した住民の目線では竜巻に相対する一本の棒状の何かにしか見えておらず、その中にドラゴンがいたこと、召喚士が裏でサポートを(寝ながら)していたことなどの詳細情報は、救世会の暗躍加減も考慮して広げるべきではないと、隊長判断により伏せられた。
後日
「自分が寝てる間にそんな大変ことがあったんだ…」
「本気で覚えていないでありまスル…?」
「全然…」
「あれだけドンチャンピッピラ鳴らしたのに!?」
「覚えてない…な」
「その後に大きくなっていっぱいシェイクしたのに!?」
「覚えてないけど、扱いおかしくない?」
「泉に顔からドボンさせたのも!?
頬っぺを連続ビンタしたことも!?
激辛唐辛子を大量に食べさせたのも!?
全部覚えていないでありまスル!?」
「覚えてない以前に、2度と起きれなくなるからそういうことするのやめよっか。」
「け~、かえってきたって~」
「分かった。」
「今後の夜中の対応は要検討でありまスルね」
「そうだな。
このままじゃ命が何個あっても足りないからな…」
「お疲れ様です」
ツカツカツカツカ…
「どうしました?」
「早速貴様に話がある。」
「何でしょう」
「いろいろ聞かないといけないが、取り急ぎ…」
「な、なんでしょう…?」
「なぜ彼らはたったの3日間でレベル30超えしているか説明してもらおう」
「あ、そっちですか」
「そっちというのは?」
「事件の時にぐっすり寝ちゃってたことかと…」
「そのことは深追いはしないと決めている。
伝承の儀という名の仕返しが怖いからな」
「サンちゃん呼ばなくて正解ですね」
スッ
「交渉材料に使うのはやめろ!」
「で、どうなんだ?」
「ソレについて、一応報告書作りましたけど見ます?」
「ああ」
「2ページの赤い下線引いてるところから読んでください」
「1ページ目は読ま…なんだ目次か。」
[今回のレベリングについて]
その1 カタカナの限界
その2 武器についての風習や考え方
その3 自分のスキルについて。
「…」
中身をまとめると、
①カタカナの限界
そもそもこの国(この世界)には平仮名と漢字が存在しないのか、遺っていないのか、解読できる者がいない。
仮説だが、職業が分かっても正しく使える者がそう多くない。
だから合わないことを知らないままで、延々と伸び悩み続けることになり、最終的には早くに死ぬことになる。
② 武器についての風習や考え方
よくよく考えてみれば、自分が今まで出会った人達で剣以外を携えている人を一切見たことないような気がする。
予算だの、動きの不揃いなどの理由で剣以外持てない雰囲気があるからこそ、他の武器を使う人は早死にするか、騎士団以外の傭兵だとか冒険者だとかに転職してしまうんだそう。
剣を捨て、思い思いの武器を手に入れた人たちは伸びる伸びる…。
今まで何種類もカードゲームをやってきたが、普通に盾や矛、槍を持ったキャラ、モンスターはたくさん出てくる。何なら稀にハンマーとか弓、砲撃手もいるくらいだ。
素人の自分でも分かる。騎士に1番向かない性格のザックさんを副隊長にする勇気があるなら槍とか魔法の杖や盾を持たせた方が絶対早い。
③ 自分のスキルについて
召喚士としてのスキルはご存知の通りモンスターや仲間と認め合った者や武器の召喚、魔法カードの使用などがメイン。
他方で、経験値共有と成長率上昇のおかげで通常ダメージや活躍に応じた分配をされる経験値を何割か増しで仲間と均等に分けることができる。
レベリングにはこれ以上ないくらい好スキルだ。
・正しい職業の判別
・意味のない風習等のフル無視
・条件に合う武器カードの選定、実験
・現場に出て要所要所サポート
↓↓↓
◎ 楽々レベリング
◎下がりきった活気の飛躍的向上
数分後
「…おい」
「はい?」
「この報告書、嘘偽りの物ではないだろうな」
「嘘は1つも書いてませんよ。
ただ仮説6割、結果4割を感じたまま書いただけなので完璧な報告書というよりほとんど観察日記の中間報告ですけどね。」
「そこまでは聞いてない。
私はこんな夢物語のようなスケジュールで10もレベルが上げることが本当に可能なのかを聞いている。」
「そう言われても…出来ちゃったものはどうしようもなくないですか?」
「そうではない」
「え?」
「だからその…分かるだろ」
「残りの騎士団の人たちにも的な?」
「ああ。」
「次のページ目出してください。
気になっていることを何個か聞きたいので。」
厳密には2日と半日。
カード武器でそこら辺にいる魔獣を狩っては他のを試し、1番合うカードというものが1人1種類(人によって複数)を選定、必要に応じてカード合成を行った。
流剣士には
『水流剣スプラッシャー』
堅者には
『要塞機甲トー・タンクス』
狩人には
『森番の弓 ノビル ・プラント』
または
『プラントシードライフル』
万年厄年の白騎士には
『シールドクロ』
『残念な聖剣』
『アーマー・ゴーレム』
流れる身のこなし・剣撃を繰り出す水流剣使い
仲間を支える鉄壁の守りと高火力援護のタンク
木の上なら無敵の一撃必中スナイパー
見た目クソダサ、逆アンラッキーナイト
それぞれ各自の長所、短所を生かす作戦に出た。
4人の他で言えば『天空斬刀 風雷丸』を預けたザックさん。
[戦士]という職業が前衛寄りであり武器の縛りがないので最終的にはスキルと性格による相性頼りにはなる。
荒ぶる天空の刀 + パワープレイ戦士
=最強の特攻隊長
①職業&職業スキル
②固有スキル
③性格
④周囲の環境
この4点が重要なのに対し、気になることが
・なぜ剣以外持っていないのか
・職業の分類が雑すぎないか
・この現状でまともに機能しているのか
これとは別にもう一つ、
・なぜヴィクトリア王国騎士団の隊長は30歳前後と比較的若いのか
「そこを触れてしまうのか…」
「明らかに原因そこですから。
別に言いたくなければ結構です。」
「貴様のことだ、私でなくても遅かれ早かれ聞くことにはなるだろうから教えてやる。
4年ほど前だったか、当時の旧第一騎士団長と旧第四騎士団長、今で言う中隊長を含む幹部連中が姿を相次いで消した。
調べてみれば出るわ出るわ汚職の数々。
言ってしまえば騎士団員を奴隷のような扱いをして浮いた金を懐に入れていたらしい。
武具に掛ける金はナマクラ以下、設備や飯は家畜以下、睡眠は甘え、団員の家族の命すら人質であるかのように言って聞かせて…想像するだけで吐き気がするクズっぷりだったらしい。
その事件をきっかけに旧騎士団は完全に解体。
制度も一から見直され、現在の騎士団に至る。
当然大勢の団員が辞めていき、半数以上は無理がたたって病に伏したり亡くなったとも聞いたことがある。
後に残ったのは、当時の半分ほどの騎士と旧騎士団から受け継いだ偏見と「当時よりマシ」という親や学園の教育方針だけ。
カムロや私の父やダンパーさん、アベル、後から私も加わって騎士団の強化に乗り出していたのだが貴様のいう通り騎士団は剣を持っていないといけないと教えられた新人しか来ない。
というのが貴様の知りたい真相だ。…ん?」
「すみません、最後の方に新しい人物が2名…」
「あぁ、貴様は私の父とダンパーさんを知らないんだったな。
私の父は前の4番隊隊長で、ダンパーさんは3番隊の隊長だ。
父が一昨年病死して私がその役を継いだんだ。
ダンパーさんは旧第三騎士団長であり、私の父と元同じ団員同士だ。」
「なるほど…っと」
メモメモ~…
「そんなに書き込む内容か?」
「ドラゴン達でさえ多いのに人間もとなれば、こうでもしないといっぺんに名前覚えられる気がしませんからね。
よしっ…。それでは行きましょうか」
「行くってどこにだ」
「決まってるじゃないですか」
「デッキと4番隊の『編成』です。」
0
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