カードデッキの召喚士 〜異世界でサイコーの絆をつなぐ運命のカード〜

立風人(りふと)

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グレーゾーンな少女レイ

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ビュォォォォオオオオオオ!!

 これまでにないほど青い昼の空、白く大きな仲間の背中の上。 若干焦げ臭い煤を鼻に感じながら飛行による風に髪を洗い流される。

 ここまで聞いたら誰もが全員生還したことを喜ぶような澄まし顔にED曲のオルゴールver流したがるだろう。


だが…


「なぜ命令を無視した! あのまま爆発していたらもっと犠牲が出ていたんだぞ!!」

「神官として、国民を守る使命を持つ騎士として、大切な命を助けるために命を懸けただけ。ケーがいればできると確信していたからいった。
 あんたこそなぜ見捨てる決断をした」

「ケースケは外にいた、あの場にいた我々では救出は不可能と判断したから避難を優先した!
それに…あの子供が実験生物という可能性はまだ残ったままだ。」


 実際はその逆。めちゃくちゃギクシャクしている。 正直自分とヴァイスは気まずくてしょうがない。


「ケースケ」


げっ…こっちに火の粉を飛ばすなよ…
ま、仕方ないか


「おい!聞いているのか」

「はい…なんですか」

「お前もなぜあの場でGoサインを出した! もう少しお前が来るのが遅れていたら本当に全員死んでいた可能性があったんだぞ!」

「なら、助けられるかもしれない命を見殺しにするのが正解だったってことですか?」

「なんだと…?」

「フィーラさんも要救助者が居るって言われてすぐに聞いていましたよね「数は?」って、だから言ったんです」

「は? お前何を言って」

「助けられるなら助けようっていう意志があったから咄嗟に詳細を聞いたんだと思いますが、あの場に20人くらい居るって言われてたら少しくらいは迷ってましたよね。」

「助けられる命は絶対に助ける、それは我々の使命だ。
…だが現実はお前の札ほど甘くはない。…今回のように差し迫った状況下では諦める事も時には致し方ない事だ。」

「正しいとは思います。
ですが、総合的に判断して撤退する選択と、命をかけてでも助けに行く選択、どっちの意見も正しい意見だと思ったので、自分にどちらかを選ぶことなんて出来ません。

 当然、あの場でその選択を迫られた時に迷うなんてことは一番やっちゃいけない訳ですが…ジャンケンで決めろって言ってもジャンケン自体を知らないから、ルールの説明をしてる間に3分は要します。

 あの緊急事態に“話し合いましょう”とか“多数決とります”とか言ってても、どのみちドカンです。
 つまり、どれを取ってもお互いを納得させるなんて出来っこないので自分に言えることは1つだけ。」

「ちゃちゃっと助け出してちゃっちゃと逃げる、でありまスル」

「ちょっ!それ自分が言いたかった台詞やつ…!

 と、とにかく…どうせあの場では頑固者のフィーラさんと、真っ直ぐ答えが固まっちゃってるクリフトさんの妥協案なんて出るわけがないので、フィーラさん達は召喚してでも外に出して、クリフトさんと自分が救出に回る他ないなと。
 まさかフィーラさんも救出を手伝ってくれるとは思っていませんでしたが、フィーラさんが居てくれたおかげで全員無事だったんです」

「しかしだな…!」




「おーーい!!」


 会話を遮るタイミングで遠くから聞こえてきた声を辿った先には、先に避難してもらった仲間達。ヴァイスがとばしてくれたおかげで追いついたようだ。


「皆さーん!おーーい!!」





「『ケー! 無事みたいだな!』」

『はい!全員生還です』

「「「『良かった!!』」」」


 クルーザーの直上まですぐに追いついて、一人ずつ順番に甲板に飛び降りていく


「せーのっ」
ピョイッ

ツルン
「うわっ」
ビターんッ
「いだぁい!!」


「「「ケー!」」」

「「「ケースケ!!」」」

「大丈夫か!?」

「だい…じょ~ぶ…です…けど… 痛っ…だぁ…」

「ほら、早くどかないと隊長に踏み潰されるだろ。 ちょっと身体持つぞ」

ガシッ ズリズリズリ…
「ずびばぜーん…」



シュタッ

「この程度の高さぐらい普通に着地しろ」

「そう言われましても…」


「隊長、その子が…?」

「ああ。保護にした子供だ。 人間ではないがな。」


全員の目線が灰色の髪から覗く、額の宝石に集まる。首から下はヴァイスの風呂敷で包んで隠してあるが、分かる人なら胸からも発せられる反応に気づくかもしれない。


「皆さん、自分からこの子がどういう状態にあるのか分かっていることを説明します。

この子は元々は人間で、救世会によって人造人間として命を作り替えられてる途中だった不安定な命。
 心臓や脳がマジックアイテムに直結されていて、本来の人格が残っている可能性はほとんどありません。」

「名前や年齢は? 15歳を超えてるなら神から職業ジョブが与えられる。教会かギルドに調べて貰えば、どこの街で攫われたか調べられるかもしれない」

「年齢は14歳、他は残念ながら…名前は無し、なぜかレベルが…」
「1って出てるんだろ 職業ジョブを授かっていない子供はみんなその表記になるらしいから心配しなくていいぞ」
「いや…1では無いですね」
「1じゃない? いくつだ」


「0です。」


「は!? ゼロ!?」

「そんなことはあり得ないだろ!」

「赤児でもレベルは1じゃないのか!?」

「自分にそう言われましても…」

「他は?何ヶ月前、もしくは、何年前に攫われたかとか分からないのか?」

「それはさっきから鑑定スキルで調べているんですけど……。
救世会のアジトを壊してしまった影響なのか分かりません。
 あと分かっているのは…」

「何だ? 手がかりならなんでもいい、言ってみろ」

「この子に記憶とは別で人間の面は残っていますが、胸についてる魔法石が感情に反応して破壊の力を生み出すリアクターみたいな物で、今…自分の背後で機嫌を悪くしてる誰かさんのマイナスの感情に反応して少し昏く濁っています。 これが濁り切った頃には…」

「「「「「 !! 」」」」」

「私か」

「とりあえず…フィーラさん…いや、フィーラ・アーデルハイト第4中隊長」

「なんだ いきなり畏まって」

「この国の法モラルがどうだか知りませんけど、疑わしきを罰するっていう理論はこの子をあなたが言うところの生物兵器により近づけます。
 今はその剣を振るうべきか、大切な1つの命として見守るべきか、それくらいは分かりますよね」

ハァ…
「…第4中隊で一時保護する。 危険だと判断した時は手を下すからな」

「いえ!自分が保護します。 今はフィーラさんに接触させる訳にはいかないので」

「そんなのダメに決まっているだろ! 救世会が生物兵器として作り出したなんて危険な存在を王国として野放しにすることなどしていいわけがない!」

「フィーラさんの殺意がこの子の宝石と反応しているんです。 今は皆さんの“おかえりムード“のおかげで中和されて、ほんのり輝きが出つつありますけど、フィーラさんの行きすぎた真面目はこの子にとって殺意とか恐怖になってしまう。
 この子が本当にバケモノになってしまうなら…フィーラさんはもちろん、破壊対象とも言えるヴィクトリア王国に任せるわけにはいきません。」

「ならば今ここで手を下す。
国民の命を守るために怪しい芽は摘み取らなくてはならない。 どけ!」

パカっ…手札をスッ
「殺しちゃダメだって言ったところでしょ
今この子は邪神化に抗って苦しんでいた時のドラゴルド達と実質同じ状態で、不安定な状態。

 断罪の魔聖剣ジャッジメントカリバーの効果は対象の罪に応じて装備者に膨大な力を与えるもの。 あの倉庫をどストレートに奥の奥、装置ごとぶった斬ったはずなのにこの子だけ斬れなかったのが何よりも証拠です。」

「確かにこの子には罪は無いかもしれない。
それでも完全に兵器になる可能性も0では無い、手がつけられなくなる前に白黒はっきりすべきだ。」

「だからっていきなり黒だと決めつけるのはおかしいでしょ。」

「大義のためだ!!」


 目と目の間にほとばしる雷は話が決裂した証拠としてこの場の空気にビリビリと放電して周りを痺れつかせる


「また石が濁ってる!! ケースケ!隊長も!」


「……自分が保護します。 しばらく彼女に近づいたり、他の人間やドラゴン達に当たり散らしたりしないでくださいね」

「お前こそ忘れるな。現実は」

「"現実はお前のカードほど甘くはない"
そう言ったくれたのは貴方です。 裏返せば自分のカードのどれかには可能性があるということ。
 自分の持ちうる全てをかけてこの子の未来は必ず救いますから、今は見守ってて下さい」

クルンッ

「…ごめんね怖かったね、もう大丈夫だから君のことを教えてくれるかな?
『鑑定スキル』」






「どうして…あいつは…」

「ケーはあの子共を純粋に助けたいだけでありまスル。」

「ヴァイス殿…」

「人間じゃないから、ヤツらの手が加わっているから、種族がどうだから、性格の相性がどうだから、そんな理屈じゃないでありまスルよ。

 ケーにとってあの子共は、大切な命なんでありまスル。 きっと大恩人サマならあの子供も、世界も、ドラゴン族も、そして頑固な騎士サマも分け隔てなく死ぬ気で救うでありまスル」

「……」









「ケー! 無事か!」

「けーおかえりー」

「オレ達の仇を討ってくれてありがとな!」


 祠を通るとすぐに数多のドラゴン達と20名ほどの騎士達が、自分のことを揉みくちゃにせんとせまり囲んでくるが


「ちょっ! ごめん通して! 急いでるんだ!」


 里について間もなく、みんなのおかえりムードも聞かぬまま、少女をおんぶしてあるところに向かった









「ブラスク」

「今は忙しいっての。」

「そう言ってぇ~ 自分用に部屋を片付けて、この子用に布団を敷いといてくれてるあたり、ここに来ることは分かったんだろ?

珍しくゲームがセーブ中なのはどんな用事なんだ?」

はぁ…
「めんどくせぇっての…ふぁ~ァ…キーワードは?」

「ホムンクルスとか人造人間のことについて調べたい。
大賢者なら錬金術にもそれなりに知識があるはずだ。 その研究データをあるだけ見せてくれ」

カタカタカタッ カタタン カタタタタタタタンターーンッ!

ヒューーッ
「ビンゴだっての」



 画面にはホムンクルスをはじめとする人工生命体のデータが所狭しと並んでいた。


 資料(データ)によると、錬金術などで創り出したっていう完全創造タイプと、人間の身体を器にして霊を導き入れて創り出す死者利用タイプの2種類に分かれるが、人間の姿形に限りなく酷似した人型の機械や人形であるという説まである。
 同時に、人工生命体は記憶と感情を持たず、創り主の命令か、破壊衝動に従ってしか動けない。

 この少女は元々は人間だって鑑定スキルで出ていたから死者利用タイプに近いけど、どうやら死んでからって訳でも無いようだ。 つまり…どこぞのアニメの黒髪17号と金髪18号の異世界版ってことだよな…?

 



「この危険な宝石を生きたまま取り出すことは…不可能でもないかもしれないっての。

それでダメでも…いろんな感情に触れて、自らの感情をコントロールできるようになれば、少なくとも安定するはずだっての。」

「OK…ありがとう」

「しっかしメンドくさいのを連れて帰って来やがったっての。 邪神化途中と同じくらい不安定なホムンクルスなんだっての、ソイツ」

「種族なんて関係ない、この子は大切な命だ。 邪神化の時みたいに元には戻らなくても、この子なりの人生を歩む方法はきっとある。
 自分はそのために少し手伝うだけだ。」


「相変わらず秒で誰とでもと共鳴するヤツだっての。人助けのための行動原理が長老とおんなじだっての」


「ん?なんか言った?」

「なんも言ってねぇての。 さっさと使えそうなカードを出すっての」

「『出てこい、全部のカード』」


お腰につけたきび団子…ではなくデッキを、無限収納を全開にして残りのカード全部を取り出す。


「さ~て、どれか使えるカードはあったかな…っっとぉ!?」


カードを手に取るべく山に意識を何気なく集中させると、勝手に光を放ちながら山が宙に浮き、列をなして自分と少女を取り囲んではグルグルグルグルと回り始めた


「うぉっ!? どうしたどうした!?」

「カードが…」


何百枚、いや、何千枚とあるであろうカードの大円柱に取り囲まれながらも、カード一枚一枚が自分に…俺に対して呼びかけてくるようだった


「このカード…これも…これもか…?」


なんだろう、すごく温かみのある声が聞こえる。

 星の代わりにカードが浮いている宇宙に放り出されて、星というか精霊の光のようにカードが自分の周りを舞い踊っている感覚と言えば近いのかな…。
 体育会系の部活で言うなれば、野球場やサッカースタジアムで、観客から関係者から全員自分1人に応援してくれている感覚


その1枚1枚…1人1人がどこから手をつければいいか分からない自分にアピールして教えてくれる。


『オレを使え! 周りの目なんかビュビュンとかわしてやるぜ!』

『ワタシが魔法でアシストするわ。 精神的デバフを無視してあげる』

『ボクじゃないんだけど…隣の彼とか…どうかな…即死無効を付与できるって…』
『zzzzzzzzzZZZZZZZZ…』

『ワンッ』

『ウキィッ』

『ケーンッ』

『あいやっ 我が雷を役立てるがいぃ!!』

『チュゥ!』

『ヒヒーーーンッ』




 スキルよ…頼むから全員の会話を人間の言語には直して欲しかった。 まぁなんとなく伝わるけど…


「これ…君も…こんなカードあったんだ…へぇ…このカードいい!」








幻想的な時間も一瞬で過ぎ去り、自覚のないまま手のひらの上には輝いて見えるデッキがひとつ。 そのほかのカードは浮く力を失い、円を描いたまま床の上に散らばっていた。


「どういう魔法原理で動いてるかさっぱりわかんないっての…」


 自分にはなんとなく分かる。 
カードの声が、カードが持つ可能性が、カードとの絆のようなものが。

それに促されるまま、久しぶりに声に出してみる


「『ゲーム…スタート』」


 左手に現れる手札、体力(HP)や魔力(MP)を表示するためのウィンドウ、いつの間にかデッキケースに収まってるカード達、そのどれもが本当にカードゲーマーとしてファンタジーな世界に来てしまったことを痛感させてくる。

 だがそれは同時に、自分がカードゲーマーとしてあるまじき事をしているということでもある。


本来なら

① 机の上にバトルフィールドとなる台紙を敷く

② コスト支払いやエネルギー源として使うプラスチック宝石等を用意。 これはカードで賄う場合もある

③ 所定の位置に山札デッキをおく

④ 4枚から5枚程度の初期手札を引く

⑤ ジャンケンやコイントスで順番を決める


そこから後はゲームによるが


① デッキから1枚ドロー、使用可能コスト回復

② コストを支払ってモンスター召喚、魔法カードの使用、トラップや配置物カードのセット

③モンスターカードの攻防戦+魔法やトラップカードによるアシスト合戦

④ターン終了


まあこんなところだ。

 ところがどっこい、この世界に来てからというもの、ほとんどデッキから直接選ぶという禁忌中の禁忌を侵しまくっている。
 まともな流れを踏んでバトルをしたのって…フィーラさんの決闘の時あたりまでか…。 それも途中で外野からカードを呼び寄せたからまともとは言い難いな…


今はざっと30人も心強い仲間がいるが、バトルの度に実際の仲間をフィールドに立たせるのも、うまく言えないが何か違う




「『ドロー』…よし。
モンスターカード
『職人犬 ー』をレベル2
『犬修医 センセートバーナード』をレベル2
『Dr.ゴブリン』をレベル3で召喚」


ご都合により手のひらサイズとして出てきてくれるモンスター達。 これが効くなら翻訳できたような


「3体で心臓部の魔法石の剥離作業を開始。
同時に魔法カード
『砂時計の逆位置』と『冥探偵の大推理』を使用。」


モンスターカードまたは仲間カード3枚内を指定し、【補助効果:自動回復(中)】を付与できる。

『職人犬工ー技ー』『Dr.ゴブリン』と…この少女を指定して自動回復効果を得る。
 指定したモンスターがぼんやり煌めいているのでデッキ外の人物も可能なようだ。 あ、これってグリフォンの時にも同じ感じだったな


もう一枚の魔法カードの効果で、デッキから4枚ドローして、後に手札全てをデッキの上に好きな順番で戻す。


「とりあえずターン終了。」


なぜだろう…そういえばターン終了とかってこの世界に来てから一回も起きてないような…

そりゃそうか、手札見ている間に敵が待ってくれる訳ないもんな ドローはターン制じゃなくて時間経過制ってことでよろし?


「『ドロー』 魔法カード『トリプルドロー』
よし来たっ!

『石の精霊ストーナ』を召喚。

 召喚時効果、手札を一枚捨てることでレア度C以下の地属性のモンスターカード1枚を手札からノーコスト召喚できる。

 『鉱石獣ゴロンニャン』を召喚。」



「頑張れ…! 俺も死ぬ気で助けるから、あと少し踏ん張って戻っておいで!

『断罪の魔聖剣ジャッジメントカリバー』召喚
不足分はセンセートバーナードのレベルを下げて確保」



「それでは、切除します」と行きたいが、ここから先は医療ドラマの手術シーンになってしまうので血の表現が苦手な方の要望にお答えしまして…

ああやってこうやって とったどーーー!
さらにああやってこうやって とったどーーー!




最後は傷を塞ぐ魔法。いつものお馴染み、みなさん一緒にご唱和下さい 

せーのっ

「『ホワイトヒール』!!」

「1人で言って悲しくないっての?」

「言わないでくれ…虚しくなるから」


キラキラキラキラ…
ホワンホワンホワンホワンホワンホワン…


「『鑑定スキル』」


[名無しの少女]
[救世会に誘拐され、改造実験のサンプルにされた改造人間だったが、異世界の異能の力で生物兵器として暴走する危険性は著しく下がった。
 遺伝子が混血状態なため感情の変化と力加減には引き続き注意が必要]


[名前:未定
 種族:人間系キメラ
 職業:未定
 レベル:0
 称号:世界の運命を握る者、穢されし存在、疑われし者 ]






「なんかよく分からないけど…前よりはマシになったってことか…
よくがんばったね、もう大丈夫だからね」


「初見で…! ほぼパーフェクトクリア…! 
やっぱりケーはただものじゃなさすぎるっての…」

「あ、ブラスク」

「なんだっての?」

「力が入らなくなって…きたからあと…よろし…」
バターーンッ
「…くぅ…」


「マジかっての…よりによってこの部屋で2人も倒れるなっての、初対面は無理だっての。
こういうのは喋れる奴に頼むっての」

シーーーーーン…

「誰に相談すればいいんだっての…?

長老は色々踏んで壊すし…
シアンは…精密機械に水が入りそう…サンディは土だらけで入り込むからもっとダメ。
ヴァイスは…整理整頓しだして部屋の配置が変わるしダメ、ネロは逆に散らかすし…
姉貴は論外だっての。雷で機械何度壊したか…


…あと残ってるってのは…」



キーボードを叩き、防犯カメラにアクセスする。
 

カタカタカタカタッ
そこに長々とプログラムを打ち込むと自動で絞り込みを行い、この部屋にあるコンピュータを壊さずに力を貸してくれるドラゴン兼、自分自身が話せる相手をピックアップしていくが…

【ERROR】 【NOTHING】

「ダメだっての…頼りにならないっての…」



「んっ…んん…」

「ゲッ なんで麻酔かけてないんだっての」

「ここは…? あなたは…?」

「うっ…ここはっ えっと…あのっ…そのっ」
あたふたあたふたっ
「やっぱり無理だってのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
ピューーーーーーーーンッッ!




「フンフン♪  フフーン♪  今日はみんなでお祭りだ♪ 焼きそば出るかな~♪」

「見つけたぁああああああ!!!」

「なにっ!? どうしたのブラスクにぃちゃん!」
ムンズッ
「ちょっと来るっての!!」

「なに!? なんでつかむの!? ギャンっ」



「なんでぇぇぇぇーーーーーーーーーーー!!!」










「…というわけなんだっての…」

「もうっ それ先言ってよぉ! いきなり引っ張るからびっくりしたよ」

「ごめんっての。」

「いいよ。 おはなししてみるね」


トコトコトコトコ…


「こんちわ」

「あなたは?」

「ぼくはグレン。 サイキョーのドラゴンになるドラゴンだよ」

「ここは…?」

「ここはブラスクにぃちゃんのお家だよ。
ほら、あっちにいるちょっと人見知りの風のドラゴンのおにぃちゃん」

「ひっ!?」

「ふーん ねぇ、グレン」

「なーに?」

「わたしは…誰なの?」

「さぁ、ぼくには分かんないや。 ごめんね」

「そう…」


ふと、何を示し合わせたわけでもなく部屋の端に倒れてる人間に視線が向く。



「ケーだよ。 ケースケ・カミヤ。 別の世界から来た人間で、ぼく達ドラゴン族を助けてくれたヒーローなんだよ。」

「死んでるの?」

「んーん 生きてるよ。 魔力が尽きたんだ。 
もうちょっと経ったらすぐ目を覚ますと思う。」

「ケー…ケースケ・カミヤ…いい人?」

「とっても強くていい人間だよ!
だってね、カードで魔法とか天使さんとかドーンってやってドラゴン族と人間の街を守るんだよ!」

「カー…ド…?って何?」


散らばっている数枚をかき集め、少女の前に自慢げに見せる


「これだよ、カード。 たしかね、これが倒した魔物を呼び出して力を借りるモンスターカード、こっちは魔法を使うためのカードで、これは建物とか置物から不思議なパワーをもらう配置カード、こっちは剣とか鎧とかを作り出す武器ウエポンカード。
 あとこっちが、最近増えたって言ってたトラップカード。 敵の攻撃とかに反応して魔法を使ったりするんだって。」
「へぇ~ いっぱい持ってるんだね」
「そうだね。 あ、このカードすごいんだよ!」
「これ…他と違う…」
仲間フレンドカードって言うんだ。
このカードは他のカードとは違って、ケーと友達になった時にキラキラッパァーー!って出て来て、仲間しか使えないスキルが使えたり、ケーが魔力を使うと遠いところにいてもケーの近くにいくことができたり、強いのがもっともぉーっと強くなるんだ!」
「キラキラ…ぱぁ? 友達? 強くなる?」
「うん! ちょっと待ってね。」


 もう一度ソファから立ち上がり、今度は魔力切れでダウンしてる人間に近づいて懐を探る


「たしかいつもこの辺りに…あった」


 デッキとは別だが特別な薄い箱に入れられたデッキくらい枚数があるカードを取り出し、「どれだっけ」とカードを探す。

目的のカードを見つけると残りは箱にしまい、懐に突っ込み直す。


「これがぼくの仲間フレンドカードだよ。
カッコいいでしょ」


 キャラカードとスキルカードの2枚にはドラゴン形態のグレンが実際より少しだけ誇張されたデザインの絵柄で描かれている。


「なんて読むの?」

「『紅蓮爆轟ぐれんばくごう』、それがぼくの固有スキルだって。 ぼくの心に火がついたらすんごい炎パワーを発揮するんだ」

「こころ…炎パワー…」

「そう炎パワー。 でも、今まで一回も使えたことがないんだけどね」

「…~る」

「え?」

「感じる。 すごく熱いけど、すごく温かいチカラ」

「でしょ! あ、そうだ。 このカード君が持っててよ」

「いいの?」

「いいよいいよ ケースケってデッキに仲間カードは入れたがらないんだ。」

「なんで? 他のこれより強い感じがするのに」

「それはね、ケーがぼく達のことを大事に思ってるから」

「?」

「友達を戦いに巻き込みたくないんだって。 痛いし、もし死んじゃったらとっても悲しいから」

「優しいんだね、ケーは」








 ヤバい、起きるタイミングを失った。 すっごく恥ずかしい…
 いや、本当ならもっと上手いタイミングで起きれたかもしれないんだけど、初対面で仲良く話せている2人の会話を邪魔するのもいかがなものか…


『ブラスク~助けてぇ~』

『無理だっての。 初対面の人間とはうまく話せないっての』

『頼むって! めちゃくちゃ恥ずかしいの!』

『別に悪口言われてるわけじゃないからいいっての』

『よし、こうなったらやむを得まい。 この部屋のオールスターズに連絡を…』

『なんとかするから絶対呼ぶなっての!』




「ケー、起きてる」

ギクッ!!
「ひっ!?」

「え? ケー起きてるの?」

「い、いえ…寝てまーす…」

「寝てるって」

「寝てるひとは寝てるって返事しない」

「そっか。そうだよね。
 ねぇケー? 起きてるんでしょ? 起きてよー」

「こちょこちょこちょこちょ 」

「ギャアハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

「本当に起きたぁ! ぼくもやろっと」

「やめへへへへ!! いひひひひひ!」


「はいピコハン」
ガシィッ
「やめなさーい!」
ペコンッ ペコンッ   ペコンッ
「うっ」 「あたっ」 「解せぬっての」

ゼェ…ゼェ…ゼェ…ゼェ…ゼェ…ゼェ…ゼェ…ゼェ…

「い、いつから起きてたの?」

「“急に引っ張るからびっくりしたよ”、“ごめんっての” らへん」

「最初から起きてたんだね…」

「盗み聞き…?」

「人聞きの悪いことを言わないでくれよ
思ってた以上に2人が一瞬で打ち解けたから邪魔すると悪かったし寝たままのフリしてたんだよ」

ジトーーーーーーッ

「いや本当だって。 それより気にするべきところがあるだろ」

「お昼ご飯なら、かあちゃん達が作ってくれるよ」

「この子の記憶と名前! お昼ご飯はその後で!」

「そっか」

「何か覚えてない?」

「んー 覚えてない。」

「じゃあ、君が覚えてることで1番前の記憶は? なにも覚えてない?」

「狭い部屋の中…今よりずっと前…」








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ピッ ピッ ピッピッピッピ

「被験隊80号ノ遺伝子合成 成功。
『聖なる心臓石』の反応に変化あり、魔力と瘴気のパワー上昇、目標点に到達まで残り8%。」
「ついに…ついに我らが救世会の悲願が達成される!!
このパラメータを破壊神様がご覧になれば褒め称えていただけるに違いない!!」




 前面を特殊ガラスによって晒され、とても硬いロックをかけられた狭い箱の中。 冷たい薬液と無数のチューブやコードに完全に沈み込み、体温はおろか呼吸も心音も感じる余裕もない異質な空間にわたしの身体は置かれていた。


 この透明な壁の外にいる人間達が何を言っているのか全く分からない
 なぜ自分がここにいるのか、いつからここにいるのか、この身体に彼らが何をしているのか、なんの目的があるのか、考えられるだけ考えた。

 もちろん答えは出ない。 なぜならこの身体を閉じ込めているこの箱のせいで外の会話は聞こえないし、目の前を真上に通り過ぎる気泡のせいで口の形もわからない。


 分かるのはただ一つ、この身体の中で何かが侵食してきているということだけ。
なぜか怖くはなかった。 以前はあったあはずの怖いという感情も、侵食してきている何かによって喰い尽くされたのかもしれない


 夜になるとすごく頭と胸が痛くなる。
強いチカラで身体ごと握りつぶされる息苦しさと、この身になかったはずの誰かに居場所がどんどん追い込まれていく恐怖に、逃げ出したくても、振り払いたくても、鉄か何かでできた輪っかによって身体中を固く押さえつけられて全く叶わなかった。





 ある日、わたしの夢の中に何人もの女の子と、たくさんの大きい魔物さんがやって来た。

 耳がとんがっている女の子、ツノが生えてる女の子、耳が頭の上から生えてる女の子、背中から羽が生えてる小さな子…特徴はみんな違う

 変な色の水をダラダラとこぼしているサソリさん、顔の半分が無くなってしまったオオカミさん、紫色のおっきい骨のおじさん、青いお化けさん…こっちもみんなバラバラ


みんなはわたしに揃って言った
「お前の体をよこせ」と


怖かった。苦しかった。痛かった。気持ち悪かった。



殺してやりたかった。 壊し尽くしてやりたかった


それを感じる感情は奴らにくらい尽くされたはずなのに。











 また別の日、もう形も残っていないわたしの前にある影が現れ、目の前が突然眩しい力で塗り替えられた。
 左手に薄くて四角い何かを持って、そこから一枚を選んではわたしの心に呼びかける温かい影。


「もう少しだけがんばれ」
「絶対助けるから」
「大丈夫だから」


初めて光を見た気がした。

 限り無い飢えの中、そこから引き戻そうと死ぬ気で手を伸ばしてくれる誰かの手を、わたしも初めて手が動いた。



 でも、その人は1人じゃなくて、隣にはいろんな誰かがいっぱいいた。 それを見た時、わたしは迷った。

温かい影はわたしに手を差し伸べてくれている


でも、その隣の冷たい影は剣を向けている












“この人たちはわたしをどうしたいんだろう”

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「覚えているのはこれくらい」

「…」

「そっか 教えてくれてありがとう」

「なんで…ありが…とう?」

「ん? なんでって?」

「わたしは人間じゃない…多分、怪物。 ケーは怖くない…?」

「もちろん、怖くないよ」

「なんで? 友達を傷つけるかもしれないのに」

「うーん…それとこれとは別かな」

「別?」

「カードを使ってモンスターを呼び出して戦う自分だって周りの人間からすれば怪物なんだって。
 それなら広い意味で人間だって魔物みたいなものだよ」

「人間も魔物?」

「そう、ほとんど魔物。 後はそうだな… そうだグレン、元の姿を見せてあげて」

「うん、変化へんげ



 少年の姿からデカめのぬいぐるみサイズのドラゴン形態に変わってもらい、警戒していないことを示す。



「ここはたくさんのドラゴンが住んでる里なんだ。 もちろんグレンはドラゴンで、そっちに居るブラスクもドラゴンだよ。 人間じゃないから人間から見ればドラゴンも魔物だ」

「ブラスクは…ドラゴンになれないの?」

「なれるっての。 ただ家の中で変化へんげは絶対しちゃいけないっての」

「ぼく達ドラゴン族は、お家の中ではみんな人間みたいな姿なんだよ。 
 元の大きい姿だとお家も大きく作らないといけないし、お肉も野菜もいっぱい食べるから足りなくなっちゃうしね」

「グレンはまだ身体が大きくないから家の中で元の姿でいられるけど、成長したら家の中でドラゴンの姿ではいられない。 家とかいろいろ壊れちゃうからな。」

「ケーは人間で、グレンとブラジャーはドラゴン」
「ブラスクだっての!」

「わたしは…なに…? これから…どうすればいいの…?」

「大丈夫だよ」


少女の両手を優しくそっと包むように持って、まっすぐ目を見る。

 種族がどうとか、セクハラがどうとか考えられる余裕はなかった。
 ただ目の前のこの子を助けたい、そのために自分ができることはなんでもやってあげたい。 ただそれだけで充分だ。



「“俺達は”、どんなことがあっても君の仲間だから。 今は…ほら、みんなと一緒に生きるところかは始めよう」

ポロ…ポロ…
「なにこれ…悲しく無いのに…怖く無いのに…」

「大丈夫だよ 安心した時も涙が出ることだってあるから。
ゆっくりでいい、一緒に前に進もう。 レイ」

「レイ?」

「君の名前だ。 いつまでも君って呼んでるのも変だからな。
 君の綺麗な灰色の髪色、グレーからグ取ってレイ。いやなら他の名前を考えるけど…」

「嫌じゃないっ!」

「「「 っ! 」」」

「レイがいい。 わたしレイ!」

「自分はケースケ、あだ名はケーだ よろしくな、レイ。」

「うん。よ、よろしく…」























一方その頃

「それで? そのガキンチョを連れてどこ行ったんだよ」

「確かザックのダンナのチームにトーネルってクソ元気なのいたろ、アイツの双子の弟で風のドラゴンのブラスクのとこだ。」

「あーアイツの そういやあんま見たことねーな」

「コンピュータールーム、ダンナに分かるように言やぁ、大賢者の魔法の本棚その2に住んでるヤツで、ブラスクのところに行けば大抵のことはすぐ調べられる。
 だからホムンクルスに関する情報でも調べに行ったんだろ」

「ほーん んで? そのガキンチョは治んのか?」

「さぁな ホムンクルスとか人造人間とかは見たことねーからオレにも分かんね。」

「なら見に行ってみようぜ」

「待てやめとけ。 …殺されるぞ」

「んお? 珍しいな クロがそんなこと言うのは。 そんなつえーのか?」

「いつもならそんなでもねぇが、前にあそこに置いてあるマジックアイテムを長老が踏んじまって…」


いつもは「クソだりぃ」が口癖のドラゴンが背筋を冷やし、顔を青くし、脂汗を垂らす


「半殺しにされて1週間寝込んだ」

「嘘だろ!?」

「ああ、半分ウソだ。」

「なんだ嘘かよ」

「半分は、な。」

「まぁ…金のダンナもよくサンちゃんに怒られてるけど、1週間寝込むくらいまでケチョンケチョンにできる奴はさすがにいねーよな」

「逆だ。」

「逆?」

「力でやって敵わねえのはクソ当然だ。
だからアイツは長老にしか聞こえない蚊の羽音を風魔法で四六時中かけて長老をクソ狂乱状態に追いやってやがった。 それも常に10,000匹分の蚊の羽音だってよ」

「地味だけど大人しく半殺しにされた方がマシだな」

「オレがクソ強く言いすぎた時も、伝承の儀の中でクソ長くてクソつまんねーとこの録音をクソデッケェ音でリピートで聞かされたな…
あの時は死のうか迷った記憶が今でもあるぜ…」

「大人しい代わりに仕打ちはエグいんだな…行くのやめとこ」












その晩、ドラゴン族総出で祝いの祭りが行われた。


「らっしゃい!」

里の端から端まで屋台が並び

「あそ~れ」
ドドンガドンっ! カカカッカ! ドドンガドンっ!

至る所でハッピを着たドラゴン達が、五人囃子はやしどころか50人囃子はやしだと言わんばかりに鼓や笛に加えて、腹太鼓に口笛に指笛と、文字通りのドンチャン騒ぎだ



「ガァーーーーハッハッハッハハ! 今日はめでたいじゃモン! さぁたくさん呑むんじゃモン」

トクトクトクトクッ ジャブジャブジャブッ
「おとととととととっ すとーっぷ! ありがとよ、ダンナもほれ」


 スクっと立ち上がり、その身の1.5倍はあろうひょうたんを、ヒョイっと持ち上げ慎重に傾ける。 この時ばかりは酒を一滴も無駄にしまいと、こめかみに汗を垂らしながら体全体で酒をご返盃する。

ピタッと最後の雫が落ちるときには器の水面に大きな満月がゆらゆらとなびきながら微笑んでいた。


「おおっ! 今日は満月じゃったモンか! いやぁめでたいじゃモン!」

「よっしゃ今日は宴だ! 呑めや食えや歌っておどれだー! クロもこっち来いよ!」

「フン…先につぶれんなよ」






自分やグレンも少女を連れ、祭りのお囃子はやしに誘われてその騒がしさに身を投じていた。


「綺麗…」

「すっごいでしょ! このお祭りは年に一回しかやらないんだけど、今日は特別にお祝いのお祭りなんだって」

「あれは…?」

「お魚すくいだね。 やってみる?」

「うん」

「ケーもやるでしょ」

「そうだな。 久しぶりにやってみるか」

「オジちゃん、ぼくとこの子とケーで1回ずつやらせて」

「おうっ! がんばりな グレン、ケー、そっちの嬢ちゃんもな」


おじドラからバケツとポイを受け取り、3人並んでプールの前にしゃがみ込む。

ん? なんでバケツ?




これが何か分からずに目が右往左往するレイに持ち方を見せてやると、その通りに持ち替え、今度は何をするものなのかわからず固まっていた。


「いいか? よく見てろよ~ ここだっ」


スゥ…サッ… チャプンッ

ポイの一部を削りながらも、バケツにお引越ししてきた魚は生命力をアピールするかのようにライトの光を銀色にして撒き散らしていた。



「やっぱり本場の人間はすげぇな。 1発で破らずに取るヤツはなかなかいないんだぞ」

「あれ? なぁ、この魚って金魚じゃないよな…」

「あぁ。 これは稚魚すくいっつってな。 食うための魚の子どもをすくって、後で川に放流するんだ。 大きくなっても食糧に困りませんようにって願いを込めてな」


 鮎の放流と金魚すくいのコラボレーションみたいなことか。 日本の文化とドラゴン族特有の文化に、食糧的な事情もいい感じに織り交ぜてやっているようだ。


「金魚すくいは反対側の屋台でやってるから、金魚が欲しいならそっちに行ってみろ。 
金魚は本物の魚じゃなくてグミで出来てるからな、放流せずに食うんだぞ」

「グミあんの!? ってか泳ぐの!?」

「なに言ってんだ、グミは泳ぐだろ」

「日本のグミは泳がないよ!」

「え…嘘だろ…? じゃあどうやって捕まえんだ? 泳がないとなっちゃ宙に浮けないだろ」

「ちょい待ち。グミは絶対に宙には浮かない」

「新鮮ピチピチじゃないのか?」

「ピチピチしないし、生まれて一度も微動だにしない。」

「そうなの!?」

「どんな魔法の発想で作るんだよそんなクオリティの高すぎるグミは」

「グミ婆のところで毎年やってるよ
他にもスーパーグミすくいとか、ポヨンポヨンした数だけジューシーになるヨーヨーグミ釣りとか、グミの型抜きもやってるよ」

「いやグミ多いな!!」

「ははははっ 確かにゲームはグミだけどな、娘のグミミと孫のグミミミがその隣の屋台でアメとかラムネとかなら置いてるぞ」



グミにミ1個つけただけって…名前がグミすぎるって…グミに人生捧げすぎだって。 他の駄菓子も泳がせてやれよ



「いない…」

「「?」」

寂しそうなレイの声に引っ張られてみんなの顔が一斉に向く

ドッサリ! ピチッピチピチピチピチピチピチピチピチ!!
「さかな…どこ」


「「「獲れすぎだよ」」」


 寂しそうだった声とは裏腹にバケツの水すらも足りず、山盛りに盛られた未来の命は山なりに積み上げられ、魚だらけだったプールには閑古鳥が叫び散らかしていた。

チーーーン…
「…」


水ドラゴンのおっちゃんを可哀想に思いながらも、店じまいと立て看板が立った稚魚すくい屋を後にする。
もちろん魚はかわいそうなので生け簀を借りて。 容赦なぁ…









 続いて向かったのは、焼きそばの出店。
グレンの大好物のうちの一つらしく、当然のように「超大盛りで!」って。

 店主ドラゴンも大盛り注文が普通というような感じで「あいよっ!ちょっと待ってな!」とだけいって、ジュゥゥゥーーー!!!と心地よい音を奏でる。

ドラゴン族のうち、男衆はほとんどがそうなんだろう。 慣れた手つきで鉄板に乗ってた麺をごっそり大皿に乗せ、一言

「おまちどう、いっぱい食ってデッカくなれよ」


「わーいありがとうっ いっただっきまーす!!」

「2人は?」

「そうだな…他にも食べ歩きしたいから少なめがいいかな」

「あいよ」


どれだけ火力が出ているのか分からないが、地の祭りの比じゃない速さで焼き上がっていく


「お待ちどう。 肉の量少しサービスな」

「ありがとう」「ありが…とう」

「そういえば見ない顔だな。 その子が例の?」

「ああ。 新しくこの里の仲間になるレイだ。
ほらレイ、挨拶」

「よ…よろしく」

「ゴウだ。 これからよろしくな、レイ」

「うん。 ゴウ…イケおじ」

「おいおい、そいつはちと失礼だなぁ。 オレはまだ117歳だぞ」

「…?おじいさん?」

「ドラゴン族じゃおにいさんなんだよ。」


ズルズルッズルズルズルズルズルズル
「うんまっ 幸せっ」

「んん~!! 味濃いめで美味い!」

「美味しい…」

ニャァ…デレェ~…はっ
「ほ、ほら、お前ら行った行った!
こんなところで油売ってたら祭り終わっちまうぞ」

「そうだな。 ありがとなゴウ」

「ぶつかって落とすなよっ!」






次は射的屋。

パァン パンッ パァンッ

「全然当たらないや」


パァンッ スカッ…

「あれ?」

よ~く狙って 撃つ! スカッ…

「ん?」


しっかり狙ったはずなのに結構左上方向に外れたな…そんなに自分って武器の才能ないかな?

 この里には通貨自体が存在しないため、祭りはあくまでもお金を払って何かするタイプのものでは無いから、わざわざインチキをするとは思えないが…

 あ、もしかしてこの射的用の銃も手作業で作られている過程で誤差とか、長年の仕様の影響とかで、歪みが生じてるのか?

 ん~……そう見てみれば見えなくもない気もする。

そりゃあ銃自体は結構丈夫なこと以外は普通の 射的銃。 子どもですらレベル2桁相当の普通なドラゴン一族が老若男女問わずに遊ぶものだからこの程度の消耗は全然あり得る。

「なら右下に狙いを振ってやれば…ここかな」

パァンッ パチコーンッ! 

「あったりぃ!!」

狙い所が分かればあとは

パチコーンッ! パチコーンッ! パチコーンッ!

「ふぅっ カードが景品になってたこともあったから、やってた経験が生きてるんだな。
 どうせ実戦じゃあなんの役にも立たないんだろうけど」


「1発撃ってエイムの誤差が修正できないくせにしゃしゃんなっての。」

「ブラスク、来てたんだ」

「滅多にない3次元のゲームイベントだっての。
みすみす逃すヤツはにわかだっての」


そう言うとその目に炎が宿って、聖剣の刃先のように研ぎ澄まされる。

 流れるように射程銃のピストンレバーを引きながらトリガー部分から銃口の先までを一瞬で見定める。 コルクを詰めながら的に難易度をつけ、風向きや台の傾きの計算をコンピューターのような速度で済ませる



パチコーンッ! パチコーンッ! パチコーンッ! パチコーンッ! パチコーンッ!

「すごっ…」

「ブラスクにぃちゃんすごーーい!」

「こんなのチョロいっての」

ジィーーーーーーーーーーーーーーー…
「ふむふむ。」

カッチャンっ! ジィ~~っ 
「?」

「…ほい、ていっ…」
パァンッ


彼女の撃った弾丸は当たるどころか大きく外れ、台に跳弾する。


「そんな構えで当たるならイージーゲーム過ぎるっての。 …え?」

カンッ カンッ カンッ カンッ カンッ カンッ 

跳弾は止まることが無く、むしろ屋台の中を勢いを増しながら飛び回る。

その異様な光景にその屋台や通行客の動きと思考が止まり、次に動き出した時には的が全て倒れていた。



「倒れ…ちゃった…」

「どういうお笑い?」

「シューティングゲームで初めて負けたっての…」

「1発で全部なんて魔法使わないとできないだろ!
どうやって倒したんだ嬢ちゃん!?」

「普通に…こう」

「ありえねぇ…おいケー! なんかカード使ったろ!」

「自分は何もしてないぞ。 使ったらすぐ分かるだろ」

「それもそうか…なら嬢ちゃん!」

「…?」

「お前さん、オレは負けたぜ。 景品のアクセサリー、好きなだけ持ってきな」

「いいの?」

「ああ。 オレは嬢ちゃんのとんでもない力に惚れたぜ。 持ってきな」

「ありがとう…大事にするね」

「ああ。」










こうして祭りのゲーム屋台を狩り尽くし、食べては食い、みんなと交流を深めることができた。

そして最後の大事なイベントである、稚魚の放流をしに里で1番大きな川までやってきた。



「どうだったレイ? 今日の祭りは」

「初めて見た。すっごく綺麗で…みんな笑顔で…優しくて…暖かくて…」
グズッ グズッ
「わたし…」


となりから聞こえた感情の音に対して、自分は抱き寄せずにはいられなかった。


「生きてても…いいのかなぁ…?」

「当たり前だろ?」「もちろんだよ」

「!!」

「ちょっと昔話をしよう」

「?」

「むかーしむかーしあるところに、1人の人間がいました。
 その人の名は『如月 知也』。 職業は賢者、桁違いの魔力と全属性の魔法が使えるすごい職業持ちの人で、今の時代には大賢者フレアとして伝説に残ってるすごく強い人になるのです。」

「ふれあ?」

「あ、ドラゴン族が呼んでる大賢者フレアっていう名前は賢者の職業が進化した大賢者に、彼の得意としていた闇属性と火属性の合成魔法『混沌の業火カオスフレア』から取って『フレアの大賢者』が少しずつ変化したあだ名な。
 大賢者フレアの方が有名になりすぎて本名の方が残ってないんだ。」

「闇魔法と火属性魔法…カオスフレア? 悪い人なの?」

「違うよ。 全部の魔法が使える大賢者の得意な魔法が混沌の業火カオスフレアなだけで、他にも、水属性で汚れた海を綺麗にしたり、荒れ果てた森に緑を宿したり、回復魔法でいろんなケガや病気を治したりしてたんだよ」

「そういうこと。 実際には賢者フレアはいい人で、人々を襲う魔物を倒したり、ドラゴンやエルフを守ったりして、いつの間にかたくさんの人や魔物から人気者になっていました。

…表向きには」

「表向き?」

「ああ。強くて、あんまり弱音を吐かないタイプのいい人だったから、大賢者の苦労をよく知らない王様から「争いを止めて来てくれ」とか、「魔王を倒して来てくれ」みたいな無茶苦茶な仕事をどんどん頼まれたり、大賢者フレアとその子分の魔物を戦力にしようと国同士で争いが絶えなくなっていって、逆らったら仲間が殺されたりして、最終的に心が壊れたんだって。」

「…ひどいね」

「居場所をなくした大賢者フレアは、マジックアイテムを作って異次元空間を何個か作り、その中の一つに手下だったドラゴン一族と逃げ込んで新しい生活を始めたんだ」

「それがこの里?」

「正解っ」

「人間嫌いになってしまった大賢者フレアはいろんな知恵や技術をドラゴン達に教えて、人間が居なくても生活できるようになったんだ

外から人間が来ないように見張るドラゴン
外に狩りをしに行くドラゴン
作物を育てるドラゴン
家を作るドラゴン
料理をするドラゴン
勉強を教えるドラゴン
物を作るドラゴン
料理を作るドラゴン
魚を獲るドラゴン
お菓子を作るドラゴン

 大賢者フレアの願った通り、みんな得意なことを活かして、時々喧嘩したりもするけど、800年間平和に生活してた。
 しかし、ここ数年状況が大きく変わった」

「きゅーせーかいが動き出して、ぼく達ドラゴン族も世界を破壊するための道具として狙われたんだよ。 悪い神様の力で心を支配して、あとちょっとでぼく達は暴走させられそうになったんだけど、ケーが来たんだ。

ケーはぼく達を殺さないで、悪い神様の力だけを倒して、弱ってたドラゴン族全員と大火事だったこの里をいっぱい助けてくれたんだ。」

「もう分かってるとは思うけど、レイもその被害者の1人だ。 感情に反応して破壊の力をもたらす魔法石を心臓に、レイを思い通りに動かすための魔法石を脳に埋め込んで、大勢の命を奪うための生物兵器にするつもりだったんだと思う。」

「わたし…やっぱり…!」

「魔法石なら2つともカードの力で取り除いたし、暴走することはないから安心していいぞ。」

「え…? なら、もう…怪物じゃないの…?」

「ああ。 普通の人間とはちょっと体の特徴が違うだけの女の子だ」

「そうなんだ…ありがとう。ケー」

「いやぁ…それほどでも…あははははははは…」



「でもよかった。 レイが無事で本当に良かった」

「うん。 ケーは命の恩人」


 レイの目からマイナスの感情が無くなったのを見て、少しだけ未来の話もする事にした。


「これから自分は、このドラゴン族の里と、外の世界を守らなければいけない。

 自分は人間だけど、ドラゴン族と一緒にいることになるし、守からにはいろんな危険がつきまとう。
 レイにはできる事なら平和に暮らしてほしい。
救世会にいろんな魔物の遺伝子を混ぜられたとはいってもレイは元々人間だ。 外の世界に戻って安心安全な生活を送る権利がある。 お友達や家族を作る事だって…」

「嫌!」

「…え?」

「ケーと一緒にいたい! 一緒じゃなきゃ嫌なの!」

「でも…」

「ケーが里とか世界を守るなら、わたしはそのお手伝いがしたい! 危険だっていい! 家族や友達もケーがいればそれでいい!

だから…」

「分かった分かった…。 なら、側にいてくれるか?」

「うん!」




 里の空で微笑む満月と生け簀から旅立った多くの命に見守られ、明日からどうしようかと話し合ってるうちに肩に重みを感じる。

隣の少女少年の寝息が、命の重みや自分が背負っている責任の重さを優しく告げてきた。



「ここにいたでありまスルか」

「お、ヴァイス 心配かけてごめんな」

「ブラスクから話は聞いたでありまスル。
…嬉しそうな寝顔でありまスルね」

「そうだな。 これから、守っていかなきゃいけない顔だ。」

プニップニッ
「忙しくなるでありまスルね」

「ああ。」



ヴァイスの手を借りて寝てる2人を起こさないように如月邸に運び、自分1人では持て余していた大きなベッドに並べて寝かせる。


バタンッ

「しっかし…今日は大変だったなぁ」

「運動不足解消になったでありまスルか?」

「1週間はお休みをいただきたいね」

「そうもいかないでありまスルよ。 ほら」

「ん?」


 ヴァイスに促されるまま暗闇に月明かりが照らす外を見てみると、険しい表情をしたバカ真面目隊長が邸宅に入ろうと門に手を置いていた。

2人を起こさないように気をつけながら階段を降り、こちらから出迎える


「お疲れ様ですフィーラさん。 報告書なら手がつけれてないので、すこし待ってください」

「そんな物のために来たのではない。」


声に圧がかなり入っている。 これはただ事ではないと判断し、考えられる最悪の返答に備えて自分も玄関から出て扉を完全に閉める。


「なら、こんな真夜中になんの用ですか」

「あの子供について、話がある」


「~~~~~~~~~~~~~~~~~」

「…は?」


彼女の放った言葉は一瞬にして、互いのつながりとその証を消し去った。
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