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#46 そんなわけはない
しおりを挟むもしかしてここへきてわたしったら新しい力が目覚めた?
あのあとわたしは気を失ってしまったらしく、朝になると宿屋のベッドに戻っていた。なんでも、別の見回り隊の人がわたしを発見してくれたのだそうだ。わたしにとって幸運だったのはそこに、一緒にご飯を食べたおねえさんたちがいたことだった。
「おはようございます。ご気分は?」
「うん、大丈夫」
部屋に誰もいなかったのでドアを開けて出るとコセムくんがスタンバイしていた。その目を見るより早くわたしは勝手をしたことを謝罪する。
「心配かけてごめんなさい。その、……目が覚めちゃって、すこし、風に当たりたくて」
「あなたが謝るべきことは何もありません」
怒られることを想定していたのに、コセムくんはむしろわたしをいたわるように言った。ただ、と続ける。
「自分のせいであなたを危険な目に遭わせてしまったと愚かな男が下でひどく落ち込んでいますから、時と状況を考えて物を言えとこっぴどく叱ってやってください」
どうやらわたしが眠っている間にお説教は終わっているようだ。この言われようから察するに、アレクくんは洗いざらいコセムくんに話をしたのだろう。彼がわたしにしたあれとかこれとかも、全部。
(なにその羞恥プレイ)
アレクくんも相当ダメージ受けたと思うけどこっちにもばっちり被弾してます。わたしは頭を抱えるようにしてその場にうずくまった。無理だよさらなるハードモード加算でますます顔見せられないよ!
「もしあいつの顔を二度と見たくないとあなたが望むのなら、俺があなたをさらいましょうか?」
「えっ」
気持ちが揺れる。盗賊はあってもハンサムな魔法使いにさらわれるなんてシチュ、なかなかないのでは? とかときめいてたら選択肢がきた。
▽ぜひお願いします!
▽ありがとう
文面だけ見るとどっちもお願いする流れに見えるけどコセムくんは本来アレクくんと二人で旅をしたかったわけで、よもや本当にアレクくんをおいてエスケープするという流れは考えにくい。SDキャラの表示を見る限りコセムくんはわたしに対して親愛の域を出ない段階だし、わたしだってアレクくんと二度と会えないなんて言われたら困る。
(しっかりしなきゃ)
コセムくんに慣れない悪役をさせてしまった。わたしは心から彼の気遣いに感謝する。
「だいじょうぶだよ。ちょっと思いだして恥ずかしくなっちゃっただけだから」
「それは残念です」
言いながら、コセムくんがちっとも残念じゃなさそうに笑む。好感度が上がって、わたしはじっとコセムくんを見つめた。
(コセムくんて、アレクくんのことほんとに大好きだよね……)
一見わたしの側に立ってアレクくんを悪く言ってるようで、その実コセムくんがしてるのはアレクくんのフォローだ。アレクくんの気持ちから逃げないでほしいって言ってるんだよね。たぶんだけど、もしお願いする方を選んでたら好感度下がってたんじゃないかなあ。
意地張ってないで仲良くすればいいのにって思うけど、だからこそアレクくんが自分を卑下したりコセムくんのことを特別みたいな言い方するのに我慢できなかったんだろう。などと思いをはせながらわたしはアレクくんと対決すべく、階段を下りた。
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