THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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持たざる者

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 ヤバイ、このままでは、仮とはいえイーグルさんと同格の素養があると認めてくれたエヴァさんに面目が立たなすぎる。

「すみません、もう一度……もう一回だけお願いします」
「あっ……ああ。やろうか」

 結果、泣きのもう一回は、8秒で1000ポイントを刻まれ地面に転がってしまった。この際だから言っておくが、イーグルさんは2回とも0ポイントから動いていない。
 それほどまでに、私達2人の実力は掛け離れているのだ。

「念のため確認だけど、君……ほんとにタタラ君だよね?」

 返事と同時にお詫びの意味も込めて、うなずくというより頭を下げた。

「【アーツ】がからっきしだとは聞いてたけど、ワームロワを単独撃破した男がまさか剣の基本すら出来ていないとは」

 そうっすよね、なまじ実績があるだけにこの体たらくはマズイっすよね。自分でもまさかここまで出来ないとは思ってなかったです。

「あえて良いところをあげるとすれば、攻撃を受ける反応は素晴らしい、ただそのあとが全体的に疎かになりすぎだ。今までそれでどうやって生き残って来たんだい?」

 グフッ。あえてあげた良いところですら結局ダメ出しか。

「えっとですね。スキルに【刃流し】や【いなし】というものがありまして」
「武術スキルか……それを使う時はどういった感覚なんだい?」

 どういった感覚と言われると考えたこともなかったけど、なんというか、メニューのスキル一覧から選択すると体が勝手に動くというか、何かに操られてるような感覚?かなぁ。
 ちなみに私の場合、メニューウインドウをスマホぐらいの最小サイズにして戦闘中は常に右人差し指のあたりに表示し続けてブラインドタッチで操作しているよ。

「スキルを使うと自動で体が勝手に動くというか……みんなそんな感じじゃないんですかね」
「ごめん、僕にはその感覚はちょっとわからないんだよね」
「えっ?」
「僕は……持たざる者なんだ」
「持たざる者?」

 イーグル・コロナ、年齢27歳レベルは280。コロナの名は冒険者の世界では知らない者はいないほどの有名冒険者一族で両親は共に元Sランク冒険者。そんなコロナ家で4人兄弟の長男として生まれたイーグルさんは、幼少から厳し訓練をみずから率先してこなし10歳の頃にはレベル50を超え、神童と呼ばれるほど周囲から将来を有望視されていた。
 だが、14歳を過ぎた頃、スキルや魔法を一切習得する気配がないイーグルさんが天性調査を行うと自分にスキルはおろか魔法を習得するための素養が一切なく、さらに魂職ソウルジョブすらないことを告げられ、周囲のイーグルさんを見る目は神童から一転、落ちこぼれのレッテルを貼られてしまう。
 この世界ではどんな人でも魂職ソウルジョブを持ち、必ず何か1つはスキルや魔法を持っているらしく、全くの無才というのは前例すらないらしい。
 しかし、イーグルさんの凄いのはここからだった。手の平を返したような周囲など気にもとめず、前にも増して訓練を積み16歳でレベルは100を超え冒険者デビューをすると兄弟で結成した【青の剣】は功績を積み上げまたたく間にその名を世界に轟かせた。初めこそ才能豊かな兄弟のおかげと罵る者もいたらしいが、イーグルさんの完成された戦闘技術が知れ渡ると次第にその声は賞賛に変わり今では、【剣爪けんそうの王鷲】の二つ名で呼ばれるほどになったらしい。
 つーか、あなた凄いっす。なんすか無才でSランク冒険者って、あれですよ、漫画だった絶対主人公ですやん、イケメンですし。なんだか自分が恥ずかしくなってきたよ……情けないなぁ。

「あと最後に1つだけ自慢していい?」
「はい!」
「あはは、元気いいね……魂職ソウルジョブがないって言ったけど、今は違うんだ」
「えっ?魂職ソウルジョブって変わることあるんですか?」
「そういうことは滅多にないらしいし、僕の場合ちょっと特殊なんだ」
「って、いうと?」
「今の僕の魂職ソウルジョブは【アーツマスター】世界で僕しかいない特殊ジョブさ」

 【アーツマスター】ジョブスキルなどは無く、ステータス補助も無い称号のような魂職ソウルジョブだが、自分の積み重ねてきた努力の結晶してイーグルさんはこの魂職ソウルジョブを誇りに思っている。

「僕が【アーツマスター】になった時に開発した【アーツ】体感してみるかい?」
「ただでさえ、このありさまなのに!?さらにボコボコにする気ですか!?」
「使っていいよ、スキルと魔法」
「マジっすか、手加減はできませんよ」
「いいよ、そのかわり僕もしないから」

 みずからの努力で魂を覆すほどの男の全力がどれほどのものか、私の心臓は激しく脈打ち、全身に鳥肌を立てながら、不本意にも笑ってしまっている自分がいた。
 スキルを使うことのみを追求してきた男と、スキルを持たず【アーツ】に人生を捧げた男の本気の勝負が始まる。
 うん、なかなか良い脳内ナレーションだった。

「大丈夫?準備は良い?」
「あっすみません、大丈夫です大丈夫です」


 

 
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