巻き込まれ体質の俺は魔王の娘の世話係になりました

亜瑠真白

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連れていけ!

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 俺は『開かずの間』の扉を開けた。
「おはよう、ラフェ。大人しくしてたか。」
 テレビの目の前で釘付けになっていたラフェはこちらを振り向く。
「日生! この板は面白いな!」
「テレビね。あんまり近くで見てると、目が悪くなるぞ。」
 いや、魔王の娘も視力落ちたりするのか? まあ、いいや。
「気に入ったようでよかった。」
 昨日は成瀬先輩達に電話した後、クリームパンを餌にラフェを再びこの部屋へ連れ戻した。そこで待っていた成瀬先輩達とこれからの行動について決まりを作った。
 まず、俺はラフェが魔界へ帰りたくなるように努力すること。そのためであれば、目立たないように配慮したうえでラフェの外出も許可された。ただし、ラフェを帰らせるための作戦については進捗状況を逐一報告するように念押しされた。
 次に、ラフェはこの『開かずの間』で生活すること。ラフェの存在は隠されているから出来るだけ人目につかないほうがいい。成瀬先輩達にとってもこの学校内にいたほうが監視しやすいという事みたいだ。さすがに部屋に何もないのはかわいそうだから、使っていなかったテレビと読み終わった本、クレーンゲームでとったよく知らないキャラクターのブランケットなんかを家から持ってきた。食料としては水とクリームパンを用意しておいた。ラフェは初め、「話が違う!」と怒っていたが、クリームパンを渡してやると途端に機嫌がよくなった。
 最後に、もしも万が一、ラフェが別の世界から来た存在だとバレる、あるいは誰かに危害を加えた場合、俺に罰が与えられる。高木先輩曰く、『一度飼うって決めたら最後まで責任を持つのが飼い主の役目』という事らしいが、俺の方が先輩達に手綱を握られているみたいだ。
「日生、これは何だ?」
 そう言ってラフェがテレビの画面を指さす。『行列のできるスイーツ店特集』で、映っていたのはシュークリームだった。
「シュークリームだよ。薄い生地の中にカスタードが入ってるんだ。」
 ラフェはよく分からないといった感じで首を傾げた。
「あー…、クリームパンの上位互換みたいな。」
「クリームパン!」
 その単語に反応して目を輝かせた。テレビでは女性アナウンサーが食レポをしている。
『サクサクのシュー生地にトロッと濃厚なカスタードクリーム。行列に並んででも食べたい美味しさです!』
「私、ここに行きたい! あっ、昨日のこと、怒ってるんだから連れていけ!」
「あって言ったろ、あって。」
 今思い出したみたいな言い方だったが、それを出されると弱い。店名で検索すると、学校から歩いて二十分くらいの場所だった。
「じゃあ、放課後な。それまで大人しくしてるんだぞ。」
「おー!」

 放課後、部屋の扉を開けるとラフェが仁王立ちして待っていた。
「遅かったな。早く行こう!」
「ちょっと待って。」
「どうした?」
 ラフェが首を傾げる。
 シュークリーム屋へ行くと決めた後、俺は成瀬先輩に連絡した。外出する時は行き先と目的を伝えるのが決まりだったからだ。目的は「故郷の味に近い料理を探して帰りたくなってもらうため」ということにしておいた。近くに高木先輩もいたらしく、絶対に目立たないようにと念を押された。
 ラフェは、中身はいきなり魔法だかなんだかで命の危機を与えるヤバい奴だけど、黙っていればただの美人だ。艶のある綺麗な黒髪、ワンピースから見える白くて細い手足。それに少し幼さのある整った顔立ち。最近テレビでよく見るアイドルグループの中にいてもおかしくない。俺も最初に見たときは可愛いとか思ってしまった。今は危険性が上回っているが。
 中でも見た目で一番特徴的なのは目の色だ。赤なんて日本ではまず見ないし、これをどうにかしないと目立って仕方ない。放課後までその解決策を考えていた。
「外に出る前にカラコンをつけてもらおうかと思って。カラコンっていうのは…目に入れて使う、色のついた薄いシートみたいなもののことなんだけど…」
「目に入れる…薄いシート…」
 ラフェは怯えたように言葉を繰り返した。やっぱりダメか…
「じゃあ、サングラスにしよう。それなら目の赤さも目立ちにくいだろうし。」
 目の色は隠せても、有名人のお忍び休日感は出そうだけど、それくらいは仕方ない。
「目の色か? それなら変えられるぞ。」
「え?」
 ラフェが目を瞑る。そして再び目を開けると、黒色の瞳に変わっていた。
「ちょっと魔力を使っているからあんまり長い時間は出来ないが…」
「でかした、ラフェ! この部屋から出るときはいつもそれで頼む!」
「ま、まあ…そこまで言うなら仕方ないなぁ。」
 そう言って指で髪をくるくると巻いた。これで目立つ問題も解決。
「じゃあ、制服に着替えてくれ。扉の外で待ってる。」
 学校内で生活するからには必要だろうと、高木先輩達が女子の制服も用意してくれていた。今の時間はまだ生徒が多く残っているし、私服で校舎にいるところを見られたら騒ぎになるだろう。
「絶対覗くなよ?」
 ラフェが口を尖らせて言う。
「誰が覗くか。」
 俺の言葉を聞いてラフェは扉を閉めた。しばらくすると制服に着替えたラフェが出てきた。着方は成瀬先輩から教わっていたのか。
「やっぱり何でも似合うなぁ、私。」
「はいはい。」
 うっとりとしているラフェの首元に手を伸ばす。ネクタイは上手く結べないらしい。生徒指導に見つかったら面倒だしな。
「これでよし。行くか。」
「おう!」
 校舎を二人で歩いていると数人の生徒とすれ違ったが、誰も気に留める様子はない。上手く溶けこんでいるみたいだ。
「私、ここの生徒に見えてる?」
「みたいだな。」
「さすが、魔界第二十四代王ムグゥッ…」
 俺はラフェの口を手で押さえた。
「それはまじでやめてくれ。」
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