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魔力回復ツアー
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ソーマさんに会ったことでラフェに心境の変化があったんだと思う。ラフェがはっきり「魔界へ帰る」と口にしたのは今回が初めてだった。これはいい流れだ。だけど問題なのは魔界の入り口を開く魔力が足りないということ。ソーマさんに会う前の日、ラフェは魔力の蓄積が現状三十%くらいだと言っていた。魔力をためるための生活を二週間くらい続けた成果がこれだ。それにピンク光線を乱射したおかげで今の魔力はもっと少ないだろう。
このままでは魔力が完全にたまるまであと二か月以上かかる。今のいい流れに乗って魔界へ帰すために、俺は一か八か、ある作戦を計画した。
「それで、今日はどこへ行くんだ?」
「それは着いてからのお楽しみってことで。」
土曜日の昼、俺はラフェを連れて学校を出発した。
前にラフェを河原に連れ出したとき、魔力がいつもより多くたまった。エクササイズ動画で運動するよりもランニングの方が効果があるのではないかと思ったが、ランニングマシンでいくら運動してもあの時のような効果はなかった。そこで、もしかしたら「場所」によってたまりやすさが変わるんじゃないかという結論にたどり着いた。だから今日は「魔力回復ツアー」と題して、効果のありそうな三つの場所を巡る。
ただし今回のツアーには何の根拠もない。ソーマさんの一件以降、高木先輩達には「魔力の回復を最優先にしつつ、父親と和解する糸口を探れ」と指示されている。今回の俺の計画を正直に話したら却下されるに決まっている。だから今回の外出は秘密で行う。もし何も成果が得られなかったと思うと今から胃が痛いが、それでも今は望みに賭けたい。
電車に乗って山の方へと向かっていく。駅に着いてすぐ、「今日は大人しくしてろよ。」と釘を刺すと、「分かった。」と言って本当に大人しく俺の後に続いた。前回のことを反省してるのだろうか、今も隣の席で静かに座っている。
ニ十分ほど電車に乗り、降りた駅から少し歩いたところに一つ目の目的地はある。途中の店で花を買い、目的の場所まで歩いた。
「着いたぞ。」
「ここは…なんだ?」
目の前には灰色の石がずらりと並んでいる。お盆の時期でもないし、周りに人はいない。
「墓地。死者の骨を埋葬しているところだ。」
「ほ、ほぅ…」
この様子を見るに、魔界のお墓は日本と様式が違うみたいだ。そもそもお墓という概念があるのかも定かではないが。
「どうだ、魔力を感じそうか?」
俺の言葉に今回の目的を理解したらしい。
「魔力ってそういう事じゃない!」
「そうか…」
魔力って何となくダークなイメージで、死に関係するかと思ったが違うらしい。
まあいい。ここに来た目的はそれだけじゃない。
「着いてきて。」
通路を抜けていき、一つの墓石の前で立ち止まる。
「ここに何かあるのか?」
「そう。ここには俺の家族がいるんだ。」
水を入れ替え、途中で買った花を飾った。
「ふぅん、その花は私にプレゼントじゃなかったのか。ようやく日生が私の素晴らしさに気づいて崇め奉る気になったのかと…」
「ふはっ、何だよそれ。」
ラフェが変なことを言い始めるから思わず吹き出してしまった。俺はお墓に飾った花を眺める。
「これは墓花って言って、お墓に供えるために準備されたものだからなぁ。花、欲しかったのか?」
「べっ、別にっ!」
ラフェはそっぽを向いてしまった。
女子ってよく分からないけど花好きだよな。綺麗だとは思うけど、飾るにも手間がかかるしそんなに欲しいと思わないんだけど…まあ、今度買ってやるか。
俺はお墓に手を合わせた。
じいちゃん、ばあちゃん、久しぶり。今日は二人に見てほしくて、連れてきたんだ。名前はラフェ。魔界の王の娘なんだ。信じられないよな。でも信じられないようなことがたくさんあったんだ。俺はラフェを魔界に帰さないといけない。二人にも力を貸してほしい。頼むよ。じいちゃん、ばあちゃん…
俺が手を降ろすと、ラフェが覗き込んできた。
「今、何してたんだ?」
「じいちゃんとばあちゃんに話しかけてたんだ。変な奴を連れてきたって。」
「んなっ!? 変なやつってなんだ! …でもそれならちゃんと自己紹介しないとだな。」
そう言ってラフェはお墓に手を合わせた。
「はじめまして。私は魔界第二十四代王、ルゼリフ・ドリースの娘、ラフェ・ドリースだ。日生には…まあ、世話になっている。これからも日生をよろしく頼む。」
言い終わると俺の方を振り向いた。
「どうだ、この完璧な挨拶は!」
「ありがとな。でも、口に出さなくてもいいんだぞ。」
「ぐぬぬっ!」
ラフェは悔しそうに歯を食いしばった。俺としてはラフェがそう思ってるって知れて、ちょっと嬉しかったんだけど。
「じゃあ、次の場所へ行くか。」
「おー!」
率先して墓石の間を抜けていくラフェの後ろで俺は振り返った。
見ててね、じいちゃん、ばあちゃん。
このままでは魔力が完全にたまるまであと二か月以上かかる。今のいい流れに乗って魔界へ帰すために、俺は一か八か、ある作戦を計画した。
「それで、今日はどこへ行くんだ?」
「それは着いてからのお楽しみってことで。」
土曜日の昼、俺はラフェを連れて学校を出発した。
前にラフェを河原に連れ出したとき、魔力がいつもより多くたまった。エクササイズ動画で運動するよりもランニングの方が効果があるのではないかと思ったが、ランニングマシンでいくら運動してもあの時のような効果はなかった。そこで、もしかしたら「場所」によってたまりやすさが変わるんじゃないかという結論にたどり着いた。だから今日は「魔力回復ツアー」と題して、効果のありそうな三つの場所を巡る。
ただし今回のツアーには何の根拠もない。ソーマさんの一件以降、高木先輩達には「魔力の回復を最優先にしつつ、父親と和解する糸口を探れ」と指示されている。今回の俺の計画を正直に話したら却下されるに決まっている。だから今回の外出は秘密で行う。もし何も成果が得られなかったと思うと今から胃が痛いが、それでも今は望みに賭けたい。
電車に乗って山の方へと向かっていく。駅に着いてすぐ、「今日は大人しくしてろよ。」と釘を刺すと、「分かった。」と言って本当に大人しく俺の後に続いた。前回のことを反省してるのだろうか、今も隣の席で静かに座っている。
ニ十分ほど電車に乗り、降りた駅から少し歩いたところに一つ目の目的地はある。途中の店で花を買い、目的の場所まで歩いた。
「着いたぞ。」
「ここは…なんだ?」
目の前には灰色の石がずらりと並んでいる。お盆の時期でもないし、周りに人はいない。
「墓地。死者の骨を埋葬しているところだ。」
「ほ、ほぅ…」
この様子を見るに、魔界のお墓は日本と様式が違うみたいだ。そもそもお墓という概念があるのかも定かではないが。
「どうだ、魔力を感じそうか?」
俺の言葉に今回の目的を理解したらしい。
「魔力ってそういう事じゃない!」
「そうか…」
魔力って何となくダークなイメージで、死に関係するかと思ったが違うらしい。
まあいい。ここに来た目的はそれだけじゃない。
「着いてきて。」
通路を抜けていき、一つの墓石の前で立ち止まる。
「ここに何かあるのか?」
「そう。ここには俺の家族がいるんだ。」
水を入れ替え、途中で買った花を飾った。
「ふぅん、その花は私にプレゼントじゃなかったのか。ようやく日生が私の素晴らしさに気づいて崇め奉る気になったのかと…」
「ふはっ、何だよそれ。」
ラフェが変なことを言い始めるから思わず吹き出してしまった。俺はお墓に飾った花を眺める。
「これは墓花って言って、お墓に供えるために準備されたものだからなぁ。花、欲しかったのか?」
「べっ、別にっ!」
ラフェはそっぽを向いてしまった。
女子ってよく分からないけど花好きだよな。綺麗だとは思うけど、飾るにも手間がかかるしそんなに欲しいと思わないんだけど…まあ、今度買ってやるか。
俺はお墓に手を合わせた。
じいちゃん、ばあちゃん、久しぶり。今日は二人に見てほしくて、連れてきたんだ。名前はラフェ。魔界の王の娘なんだ。信じられないよな。でも信じられないようなことがたくさんあったんだ。俺はラフェを魔界に帰さないといけない。二人にも力を貸してほしい。頼むよ。じいちゃん、ばあちゃん…
俺が手を降ろすと、ラフェが覗き込んできた。
「今、何してたんだ?」
「じいちゃんとばあちゃんに話しかけてたんだ。変な奴を連れてきたって。」
「んなっ!? 変なやつってなんだ! …でもそれならちゃんと自己紹介しないとだな。」
そう言ってラフェはお墓に手を合わせた。
「はじめまして。私は魔界第二十四代王、ルゼリフ・ドリースの娘、ラフェ・ドリースだ。日生には…まあ、世話になっている。これからも日生をよろしく頼む。」
言い終わると俺の方を振り向いた。
「どうだ、この完璧な挨拶は!」
「ありがとな。でも、口に出さなくてもいいんだぞ。」
「ぐぬぬっ!」
ラフェは悔しそうに歯を食いしばった。俺としてはラフェがそう思ってるって知れて、ちょっと嬉しかったんだけど。
「じゃあ、次の場所へ行くか。」
「おー!」
率先して墓石の間を抜けていくラフェの後ろで俺は振り返った。
見ててね、じいちゃん、ばあちゃん。
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