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野生を失ってるな
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その夜、俺はなぜか学校にいる。
シノが泊まると決まり、あとはラフェに任せて帰ろうとしたら成瀬先輩に「ちょっと待ってて」と止められた。しばらく待ちぼうけしていると、成瀬先輩が一枚の紙を戻って帰ってきた。そこには「合宿申請書」と書かれていた。
俺は「パン焼き同好会」なる団体に所属し、その合宿として今晩この校舎に宿泊することを許可された、らしい。もちろんこの学校にそんな団体はないし、俺も宿泊許可が欲しいなんて一言も言ってない。十分かそこらの時間でそれだけの偽装をやってのける管理委員の恐ろしさを身に染みて感じつつ、まあ、見張りを押し付けられた形だ。着替えは常に一式持っているし、パン焼き同好会ということで調理室を自由に使えて、強引な外泊なのに困る要素がほとんどないことに腹が立つ。
調理室で適当に夕ご飯を作って食べ、俺はラフェ達がいる部屋に向かった。どうせ泊まらないとなら、見張りとしての役目を形式上は果たしておくか。
「部屋で大人しくしてたか?」
ラフェ達が振り向く。
「おお、日生じゃないか。」
「またあなたですか。」
シノは嫌そうな視線を向ける。その時、ラフェがクンクンと匂った。
「日生、お前いい匂いがするぞ。」
「あー、さっきカレー食べたからそれかな。」
「カレー!?」
ラフェは目を輝かせた。
「なんだそれは! 内緒で食べるなんてひどいじゃないか!」
「内緒でって…ラフェはクリームパン食べたんだからお腹空いてないだろ。」
魔界は一日一食が普通らしく、ラフェには毎朝特製クリームパンを用意している。
「それはそうなんだけど…匂いを嗅いで今食べたくなった!」
確かにカレーって匂いの引力が強いよな…街で歩いててカレーの匂い嗅ぐと無性に食べたくなる。それが魔人にも通用するなんてな。
「待ってくださいお姉さま!」
シノが口を挟んだ。
「これはこの男の策略かもしれません! 『かれー』という食べ物の中に何かを仕込んでいて、それで私達を従わせムグゥ!」
ラフェは得意気に話すシノの口を押さえた。
「食べたい! 持ってきて!」
「…はいはい。」
俺は調理室からカレーライスを二皿盛り付けて、部屋に持ってきた。
「ほら、どーぞ。」
そしてラフェの前に一皿を置いた。
「おおう…これがカレーか…実物は一段と魅惑的な香りだ。それじゃあ、いただきまーす!」
「お、お姉さまっ!」
シノの制止も聞かず、ラフェはカレーを口にした。
「んんんー!」
嬉しそうな声をあげ、頬に手を当てる。
「なんだかよく分からないけどすごく美味しい!」
「よく分からないって…」
「だって辛かったり、甘かったりいろんな味がしてよく分からないんだよ…ハッ!」
何かを閃いたようなラフェは決め顔で言った。
「これ…クリームパンにも合うな。」
「合うか!」
そうだった。凡人の俺に魔王の娘の味覚は難しいんだった。
「あ、う…お姉さま…」
オロオロとラフェの様子を見ているシノの前にもう一皿を置く。
「いらないのか?」
「シノはあなたから施しなんて受けません! こんな美味しそうな匂いで食欲を刺激してきて、魔界から出てくる準備で昨日から何も食べてないシノは…」
苦しそうに眉間に皺を寄せる。すっごく食べたそうなんだけど…
「シノ、疑ってもいい事ないぞ。日生の作る食べ物は何でも美味しいんだ。」
俺から施しを受けまくってるラフェが言った。野生を失ってるな。
「今これを食べたら、私と『お揃い』だな。」
「くぅぅ…!」
シノは震える手でスプーンを手にした。
「いただき…ます。」
そしてひとさじ掬って、口に運ぶ。
「お、おいひぃ…!」
「だろー?」
なぜか得意気にラフェが言う。シノは俺を睨みつけた。
「これで勝ったと思わないでください!」
どうしても認めたくはないらしい。
シノが泊まると決まり、あとはラフェに任せて帰ろうとしたら成瀬先輩に「ちょっと待ってて」と止められた。しばらく待ちぼうけしていると、成瀬先輩が一枚の紙を戻って帰ってきた。そこには「合宿申請書」と書かれていた。
俺は「パン焼き同好会」なる団体に所属し、その合宿として今晩この校舎に宿泊することを許可された、らしい。もちろんこの学校にそんな団体はないし、俺も宿泊許可が欲しいなんて一言も言ってない。十分かそこらの時間でそれだけの偽装をやってのける管理委員の恐ろしさを身に染みて感じつつ、まあ、見張りを押し付けられた形だ。着替えは常に一式持っているし、パン焼き同好会ということで調理室を自由に使えて、強引な外泊なのに困る要素がほとんどないことに腹が立つ。
調理室で適当に夕ご飯を作って食べ、俺はラフェ達がいる部屋に向かった。どうせ泊まらないとなら、見張りとしての役目を形式上は果たしておくか。
「部屋で大人しくしてたか?」
ラフェ達が振り向く。
「おお、日生じゃないか。」
「またあなたですか。」
シノは嫌そうな視線を向ける。その時、ラフェがクンクンと匂った。
「日生、お前いい匂いがするぞ。」
「あー、さっきカレー食べたからそれかな。」
「カレー!?」
ラフェは目を輝かせた。
「なんだそれは! 内緒で食べるなんてひどいじゃないか!」
「内緒でって…ラフェはクリームパン食べたんだからお腹空いてないだろ。」
魔界は一日一食が普通らしく、ラフェには毎朝特製クリームパンを用意している。
「それはそうなんだけど…匂いを嗅いで今食べたくなった!」
確かにカレーって匂いの引力が強いよな…街で歩いててカレーの匂い嗅ぐと無性に食べたくなる。それが魔人にも通用するなんてな。
「待ってくださいお姉さま!」
シノが口を挟んだ。
「これはこの男の策略かもしれません! 『かれー』という食べ物の中に何かを仕込んでいて、それで私達を従わせムグゥ!」
ラフェは得意気に話すシノの口を押さえた。
「食べたい! 持ってきて!」
「…はいはい。」
俺は調理室からカレーライスを二皿盛り付けて、部屋に持ってきた。
「ほら、どーぞ。」
そしてラフェの前に一皿を置いた。
「おおう…これがカレーか…実物は一段と魅惑的な香りだ。それじゃあ、いただきまーす!」
「お、お姉さまっ!」
シノの制止も聞かず、ラフェはカレーを口にした。
「んんんー!」
嬉しそうな声をあげ、頬に手を当てる。
「なんだかよく分からないけどすごく美味しい!」
「よく分からないって…」
「だって辛かったり、甘かったりいろんな味がしてよく分からないんだよ…ハッ!」
何かを閃いたようなラフェは決め顔で言った。
「これ…クリームパンにも合うな。」
「合うか!」
そうだった。凡人の俺に魔王の娘の味覚は難しいんだった。
「あ、う…お姉さま…」
オロオロとラフェの様子を見ているシノの前にもう一皿を置く。
「いらないのか?」
「シノはあなたから施しなんて受けません! こんな美味しそうな匂いで食欲を刺激してきて、魔界から出てくる準備で昨日から何も食べてないシノは…」
苦しそうに眉間に皺を寄せる。すっごく食べたそうなんだけど…
「シノ、疑ってもいい事ないぞ。日生の作る食べ物は何でも美味しいんだ。」
俺から施しを受けまくってるラフェが言った。野生を失ってるな。
「今これを食べたら、私と『お揃い』だな。」
「くぅぅ…!」
シノは震える手でスプーンを手にした。
「いただき…ます。」
そしてひとさじ掬って、口に運ぶ。
「お、おいひぃ…!」
「だろー?」
なぜか得意気にラフェが言う。シノは俺を睨みつけた。
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どうしても認めたくはないらしい。
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