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相棒ができました

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新たな決意として2人は「レイ」と「ルド」と呼ぶ様になった。
 因みにだが、「レイ」が俺で、「ルド」が、心の中の俺だ。

 「レイになったから少し前と服を変えてみない?」
 「まあいいけどルドは良いのか?」
 「いいんだ。その見た目だと、前の負のイメージがついてるから」
 「そうなのか じゃあそうするか」

 先日まで名前を大切にしていたのに、名前を切り離した途端に身なりですら変えても良くなってしまった。
 正直、そこまでする必要があるのかとは思うが、俺に期待してくれているからこそルド自身も壊して変わっていかないといけないと言う自覚をしたのかもしれない。

 でも、、変わるのは俺だけで良いのにな。
 ルドはそのままで、良かったのにと、申し訳なくなってしまった。
 
 今までは装備も冒険者は無料で配布される弱い防具と、薄い白色の肌着に、ボロボロなベージュの短パンと、見るからに生活に困ってます!!見たいな服装だった。
 それを新調するとのことだ。
 


 となるとまずは洋服店を探すとしよう。
 ここは少し外観が他とは違って綺麗な感じだから、高級店だろう。そこまでオシャレする必要はない。新品にしたいだけだからな。
 ここら辺にはあまり服が売ってないらしい、なので昨日歩いた、あの事件があった方面に仕方なく戻る事になった。

 「怖い?」
 「……ああ もちろん怖えぇでも行くしかないからな」

 こんな所でビビるわけにはいかない。
 ビビってたらルドに申し訳ない、信じてもらっておいてこのザマなら、失望してまた無視されて俺が困るそんなオチだ。
 この先詰むくらいなら、今少し恥ずかしいくらいの方が断然マシだ。
 そう心の中で思い込んで、意を決して進む。
 
 結構歩いたが、その日のうちには戻って来れた。
 この町は昨日案内されたから、すぐに洋服店には着いた。
 しかしそこで事件が発生。

 「あれ、俺の金がない!!」
 「ああ 寝てる時に盗まれちゃったのかもね、外で寝たから仕方ないよ」
 「じゃあイメチェンはどーするんだよ?このままで良いんか?」
 「大丈夫君の目つきは変わってるもう名前さえ偽れば僕だと思う人まあないと思う。」

 自分では気づかなかった。
 そうか、優しい口調、人を落ち着かせるかの様な言葉遣い。元々の俺はかなり優しい目をして、ニコニコしていたのか、
 それに比べたら、まあ別人だな。
 目には余裕なんて無いし、なんなら焦っているくらいだ。笑顔がない。
 服だって、変わっては無いけど全部支給品だし、貧乏な新人冒険者としか思われないのかもしれない。
 となると後は髪型か、髪色は普通だが、男にしては髪が長い、首にかかるくらいには髪が長い。それだと、俺を認識する人が出てしまうだろう。
 

 「髪の毛は切るか」
 「え?」

 聞いてみるとこの世界には髪を切る概念がそもそもないと言う事だ。
 となると自分で切るしかなかった。
 しかし、バリカンとかハサミの様な大層なのはこの世界には無いし、元々この世界の住人は髪の毛の伸びが、極めて遅いらしい。つまり散髪屋の需要自体ほぼゼロに等しいとの事。
 かく言うこの体も一度も髪を切った事が無いそうだ。

 「剣で切るしか無いか」
 「いやいや危ないよそのままで大丈夫だって」
 「そうか ならこれで行こう」

 俺もこのままで行こうと思っていたが、誰かの賛同が欲しかった。
 まだこのあたりの癖は治っていない様だ。

 「服も欲しいからまずは硬貨を手に入れよう」
 

 この町にもう用は無くなったので、一刻も早く隣町へ行き、無料の宿から探す。

 「さっきのとこには泊まれる宿はあんのか?」
 「さて?あまり行った事がないから分からないな
  でも、ここはやめた方がいいかもね僕ってわかる人もいるだろうし。」

 ここで立ち止まっていても、他の通行人にも邪魔になるし、いくことは決定してるんだし、動くか
 荷物なんか何も無い。無一文のボロボロの服と装備を身につけた1人の少年が動き出した。



 「あの子、昨日の子かしら?」
 「そうじゃないっすか?
  どしたんすか?気になるんすか?あの人」 
 「ええ 少しだけ、、、ね」

 何やら俺の話題で話をしていた、2人の女性がいたらしいのだが、相手は俺の名前すら知らないし、俺はこことは別れを告げたから、結局、相対する事は無かった。
 
 もしかしたら俺が、別人みたいになって帰ってきた時に出会えるのかもしれない。



 「今持っている剣さ あっちの町で変えた方がいいよここのより断然優れてると思うから」
 「おっそうなのか、さっきこの剣握ってたんだけどよ、結構重くて扱いが難しそうだったんだよな 助かるぜ」
 「やっぱ重いよね こっちの剣とか装備の多くは輸入された物ばかりだから量産型の剣は輸入するのは硬貨が勿体無いから作り手がいないから粗末な物しか無いんだよ」

 それはいいことを聞いた。
 もっと聞いてみると、隣町はここほど栄えていると言うわけでは無いと言うのは、分かっていたけど、鍛冶屋として、有名な小さな村なのだそう。
 人口もこの町より数十、百倍少ない静かな村。
 人が少ないってのも俺にとっては好都合だった。

 次向かう場所はあっさり決まった。
 
 
 
 
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