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大切な人

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 「さっき見てたけどレイ君強くなったねー」
 「ありがとうございます」

 夜ご飯は普段よくしてくれている飲食店を営む若い夫婦と話していた。

 「レイは強くなるぞ 俺が保証する」
 「そこまで言われると照れるな、、、」
 「これからはガイ君と二人でこの村を守ってもらうか」
 「任せろ! な?レイ」
 「ま、任せてください」

 少しご飯を食べる前に四人で喋った。
 本当にここの村は良い村だ。若者が少ない事もあってか俺位の子供を見ると子供の様に扱ってくれているし、赤ん坊見たいに何でもかんでもやってくれる訳ではなく、夢に向かって頑張る子を応援をしてくれている感じだ。

 夫婦が席を外しご飯の用意をし始めた。
 そこで師匠が、俺に今日の振り返りを始める。

 「今日の動き、ちょっと悪かったな」
 「わ、分かりましたか……」
 「何年師匠やって来たと思ってるんだ」
 「流石です」
 「どうしてだ?」
 「何か掴んだ様な気がして、考えてたらいつもの動きが出来なくなって」

 あの動きを見て何かに気付いたのかと思ったが、意外とそうでもなさそうだ。
 恐らくあの対師匠専用の練習は基本段階の俺に勝つためだけの動きをしてしまうと、今まで積み重ねて来たものが変な癖がついてしまう可能性があるから注意をしたのだろう。
 「俺に勝つのがゴールじゃない」と言うのはその通りで、勝つのは大前提で、大事なのは勝ち方なんだ。
 

 「今日の試合の話はそれくらいにしてレイがどんな奴か教えてもらおうか」
 「え?」
 「お前はここ出身じゃ無いだろ?どこから来て今まで何をして来たのか知りたいからな」
 「あ………」

 この話はあまりしたく無いな、選択肢があるなら「すみません、話したく無いです」を選択したい。

 「ゾーラ街出身の18歳で、一応冒険者を一年ほどやっていました」
 
 声が聞こえる。
 ルドの声だ。俺にこう話せと言わんばかりに伝えてくる。
 俺にはどうすれば良いのか分からないからここは取り敢えず信じてみようか。

 「ゾーラ街出身の18歳で、一応冒険者を一年ほどやっていました。」
 「おお やっぱり冒険者していたのかどうりで初めから様にはなってた訳だ」
 
 いやあ お世辞かもしれないけど、褒められたのは素直に嬉しいぞ。しかも師匠に、この人も年齢とかは分からないが、かなり幼い感じの骨格をしている。髪もショートで、
 THE体育会系見たいな感じだ。
 身なりも結構しっかりしていて、冒険者として、ある程度の稼ぎを持っているのだろう。

 そして、その後も俺は師匠と話をしながらルドの助言に耳を傾けて、上手く乗り切っていく。

 「で、どうしてここに来たんだ?新しくカードも作って」
 
 結構タイムリーな話題を振ってきたが、これが元々の本題だった。ルドの助言で本題から逸らすように誘導していたが、話終わった所で話が戻ってしまう。
 そして、最悪な事にルドの声が聞こえなくなってしまった。正確に言えば、、聞こえるが、声が小さ過ぎて何言ってるか分からないと言うのが正しい。

 どうするか、、、全部正直に話すか、でも大体の異世界転生系作品は自分が転生者である事を隠す事が多い。
 まあ隠して良いメリットだってあまり無いし、師匠にだけなら言っても何も無いか。
 正直に言えば言いたくない。俺の事を話したら俺が悲しくなるし、ルドも悲しくなる。
 そして、、転生は俺とルドだけの秘密にしておきたかった。
 しかし、今日はいつになく真剣な表情をする師匠に俺は話す事を決めた。

 「実は俺、元々はこの世界の住人じゃ無いんです」
 「何だそりゃ 是非聞かせてくれ」
 「前の世界で俺は死んで、気づいたらこの世界に転生してこの体に生まれ変わったんです。で、この体の持ち主が俺をここまで導いてくれて、それがルドって言うんです。」

 申し訳ないが、全てを話すわけにはいかない。
 ゾーラ街で何があったのかとか俺とルドの過去などは隠させてもらおう。
 声が聞こえる。俺の肩に体重をかける。
 俺は顔を上げると師匠が、泣いていた。

 「お前も大変だったなあ
  でも俺達、カナル村の皆は味方だからな
  安心してここに居てくれ」

 師匠は俺の話を聞いて申し訳なさそうにしてくれた。
 俺はそこまで師匠が悪いとは思っていないし、逆に俺が師匠に救われてばかりだ。

 「ご飯が出来たわよ 沢山お食べ」
 「ありがとうよ おばちゃん」
 「おばちゃんじゃなくて マリさんとお呼び」
 「ありがとうマリさん」
 
 このタイミングでご飯が届いた。
 そして俺はこのご飯をいつもよりありがたくいただいた。


「「ここまで俺の事を考えてくれた人が過去にいたのだろうか」」

 二人は師匠の話を聞いて自分を振り返ると二人とも一人の人間を思い浮かべる。
 ルドはサラを俺は佐藤を思い浮かべた。
 佐藤を俺は下に見ていた事もあったが、向こうからはこんな俺でも前みたいに話しかけてくれた。
 
 そんな人は世界にそう何人もいない、、この繋がりを俺は大切にしようと思った。


 
 
 
 
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