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第6話 怪人❪ゴミ出しコッソリ許さんマン❫

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◆都内某所
深夜0時頃

カサッ、カサカサカサカサッ

何か、黒い影がある路上にあった。

「っ、うい~っ、飲み過ぎだーっ、足元ふらふら、母ちゃん、お怒り、やってらんねーっ、とくりゃ」
そこに、千鳥足の酔っぱらい男が通りかかる。
酔っぱらい男は、住宅街のゴミ集積場の前に来ると、持っていた空の日本酒パックをその前に投げ捨てた。
ゴミ集積場には以下の立て札があった。


【市指定ゴミ袋で分別して下さい。ゴミ収集車指定日以外の日にゴミ出しはしないで下さい。ゴミ出しはマナーを守り出しましょう】


ジョロジョロジョロジョロッ
寝ぼけ眼でその立て札の前に立つ酔っぱらい男。なんと、不謹慎にも立て札に向かって立ちションを始めた。
当然、投げられた日本酒パックはションベンパックになってしまった。
酷い話だ。


カサッ、ガサガサガサ
その時、男の周辺で何かが動いた。

「あ~なんだ~っ?、ひっく」
酔っぱらいが何かの気配を感じ顔を上げた時、ソイツはイキナリ現れた。

ガバアァズオオオーッ

「?!う、うあああ、ば、化け物!だ、誰か、誰か、助けてくれぇ!!」

酔っぱらいの前に現れたのは、大きな黒い虫のような姿。
酔っぱらいが驚いて腰を抜かしていると、大きな黒い虫のような物は、輝く赤い目を細めて酔っぱらい男の前に立ちはだかる。
そのシルエットには特徴があった。

黒光りするへらべったいボディー。
尖った頭から伸びるのは、左右に伸びる触角に見える。
そして、ジリジリと酔っぱらい男にニジリ寄る黒い虫の様なシルエット。
酔っぱらい男は失禁しながらうずくまるしかない。
「や、止めろ!止めてくれ、俺が悪かった!助けてくれーっ!!」

命乞いの様な言葉を上げる酔っぱらい男。
だが、虫シルエットは止まらなかった。




「ギャアアアーッ!!!」

間もなく、深夜の住宅街に響く男の断末魔のような叫び。

し━━━━━━━━━━━━━んっ

だが、すぐに辺りは静寂が陥れ、住民達が事態に気づくのは翌朝となる。
一体どんな凶行が行われたというのだろうか?



ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサッ


そのシルエットはその後、誰にも気づかれる事なくゴミ収集場を通り過ぎ、狭い路地に消えていった。


◆◇◆


◆都内某河川敷
日曜日午前7時30分

『え~今日は【都内の川を守る会】清掃ボランティアに参加頂き有り難う御座います。本日は幅広い層からご参加頂き、総勢30名で行います。くれぐれも自身の安全を最優先に清掃作業をお願いします』

とある河川敷に集まったボランティア団体のメンバー達。
構成されているのは親子連れや近隣の人々。
いわゆるゴミ拾い清掃作業会である。
参加者は公共の活動に参加出来、団体での交流会も体験出来る慈善事業だ。

団体まとめ役が集まったボランティアに号令をかけ、早速本日の清掃活動が始まった。
30人のボランティアは散らばり、まちまちに清掃をしている。


「あ、あった。こんなところに自転車だ。酷いねぇ」
「うーん、缶やペットボトルは当たり前だけど自転車はないね」
「いやいや向こうを見てよ。あれ」

「え~っ!?」
「やだ、大丈夫なのアレ?」
「窓割れてるし人が居るわけないよ」


ボランティア活動の外れ、一番離れたところを清掃していた三人が声を上げた。
三人はこのボランティアの常連組、近隣に住む中学生達。
その中には、魔法少女レディース▪バイオレンスである向陽中学三年、豪鬼美麗ごうきみれいがいた。
今年で14歳。
豪鬼財閥の次女である。

髪は、茶髪ポニーテール。
肌はやや日焼け肌。
その瞳は茶目。
身長155Cm。
バスト77、ウエスト60、ヒップ78

その美麗みれい含む中学生三人チームが先ほど粗大ゴミの自転車を発見していたようだが、更にその先、何かを見つけたらしい。


「どうしたんですか?」

「「「?!」」」

三人が途方に暮れていると、野球帽子を深くかぶりラフな服を着た甘いマスクの男が現れ声を掛けた。
その人物は、朝のボランティア集会に一緒に参加していた人物で、遠目には三人も目撃している。
ニコニコしながら近づく人好きそうなマスクの人物に、三人はドキマキして迎えた。

「あ、あの、あの先に見えるんですが……」
「私達、さっき見つけたんです」
「ビックリしちゃって」

「あれね……君達、危ないから近づかないで。私が確認するから」
「「「はい」」」


男は三人が下がるのを確認すると、広がる葦の中をかき分けつつ、その物体に近づく。

その物体は、廃棄された軽自動車だった。
軽自動車のトラックタイプだが、明らかにその土手沿いから落とされた跡がついでいる。
それは意図的に廃棄されたと疑う余地がないものだ。

おそらく廃車業者が廃車費用を浮かせる為に行われたものだろうが、道徳心も何もない、不法投棄という完全な犯罪である。

「屑が……」

男は手を拳に握り何か言ったが、三人には届いてない。
その顔は、先ほどまでの人好きそうな顔ではなく、怒りに満ちた鬼の形相だ。
だが、振り向く彼は再び人好きそうな甘いマスクに戻っていた。

「不法投棄だね。後は私が清掃会主催に話して対応するから大丈夫だよ。君たちは他の場所の清掃をお願いします」

「!わ、分かりました」
「美麗、あっち、行こう!」
「う、うん?!」

お辞儀をしてゴミ袋を抱えながら反対方向に歩いて行く三人。
その後ろ姿をニコニコして見送る男は、何やら決心したような顔つきをしていた。

ふと、その男の雰囲気に何かを感じた美麗みれい、二人に付いて行きながら後ろに目線をやった。

「あれ?」
「どうしたの、美麗みれい?」

「うん、さっきの人、もういない」
「え?」
「本当だ。離れて1分も経ってないよね?」

美麗みれいの友人、舞と夢がギョッとして見ている。
それもそのはず、辺りはだだっ広い河川敷。
例え近くの土手に駆け上がったとして、今の僅かな時間で姿を隠せるだろうか?
また、そうする理由が分からない。

三人はしばらく、唖然と立ち尽くしたのだった。
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