上 下
50 / 67

天災級魔獣兵器

しおりを挟む
◆レッド視点


リンレイ「うあ、あ、あ、あ」


天災級魔獣鎧鬼熊だと?!リンが危ない!!くそ、足が思うように動かない?!

俺は肝心な時に間に合わないのか?奴が腕を上げた!!

ああ、止めるんだ、誰か、誰か、


「誰か、リンを助けてくれぇ!!」


「オリビアーッ!アイスウイング!!!」


ビュンッ、ザシュッ


一瞬だった。

ルケル兄上が背に氷の翼を生やすと、矢のような早さでリンと魔獣の間に割り込んだ。

鮮血が?!

だが、リンは無事だ。

俺は立ち上がり、なんとか駆け出した。

魔獣がまた、リンに近づく!


「うおおーっ!」


こっちに注意を、!振り向いた。


タン「ワウウウッ、ワウッ!」


よし、タンのお陰で完全に奴の注意はこっちだ!


グオオオッ、ウオオッ


カル「レッドさん!」


いつの間にか、カルが横を走っていた。


「リンは無事だ!奴の注意をこっちに!」


カル「はい!」


グリン「ウッド▪プリズン!!」


「!」


バキッ、バキッ、バキッ


奴の周りを樹木が取り囲む。

よし、閉じ込めた。

グリンとイエルがそのまま、リンの方に走っていく。

タンが後を追う。

俺も行きたいが、奴を抑えなければならない。


「カル、俺達で奴を」


カル「わかっています」


その直後、樹木の牢獄が吹き飛んだ。


「?!」


カル「!」


おかしい!?いくら天災級でもこの力は異常だ!


「カル!気をつけろ、この鎧熊は異常だ」


カル「はい」


俺とカルは警戒しながら、左右から同時に斬りつけた。


ガキイィン、ガン、キイィン


グルルルルッ


なんだ?奴の周りが、何かが動いて??


シュルッ、シュルッ、シュルッ


!!


「カル!避けろ!」


ザシュッ


カル「うあっ!」


これは魔法だ!


「カル?!」


カル「大丈夫、肩を斬られましたが、かすり傷です」


「これは風魔法、ウインドカッターだ!」


カル「じゃあ、奴は?」


「魔獣兵器だ!」


最悪だ、天災級魔獣兵器だと?!

しかも、攻撃魔法でもっとも有効で強力に成りやすい風!もし、こいつが市中に放たれたらハルージャは滅ぶ。

さらに俺の炎魔法との相性は、く、だめだ!グリンとイエルの力が必要だ!


「グリっ!」


リンレイ「うあああ、あ、あ、あ、、あああああ、あ、あ、あ」



ズン


「!!リンが泣いている?まさか、兄上?!」


ガウウッ


シュルッ、シュルッ


カル「レッドさん!」


「!」


く、服が切れただけだ、だが、このままではジリ貧だ。

グリンとイエルを呼びたいが、あの状態のリンを一人には出来ない。

どうすればいい?


カル「おれが囮になります、レッドさんがその隙に攻撃をしてください」


ズン


「?だが」


カル「他に方法がありますか?!」


「…………頼む」


カル「はい」


ズン


さっきからわけの分からない振動があるが、目の前のコイツを倒すのが先だ。


グアオオオッ


カル「行きます!」ダッ


「すまん」


カルが奴に向かって走りだす。

奴がカルに合わせて動きだす、今だ!

俺は一気に跳躍し奴の急所に槍を突き立てた。


キイィンッ


くそ、あの位置でも弾かれるだと?!なんて硬い!

む、奴が身体を縮めて丸くなる?なん


グオオオオオオオオオオオオッ


しまった!奴が一気に力を全方位へ風魔法を


ザシュッ、バシュッ、


「ぐはぁ!」


カル「うわぁ?!」



◆◆◆



◆グリン視点


イエル「大変だ、グリン兄上、レッド兄上が?!」


「?!」


レッド兄さんと共闘していた冒険者が、共に地面に倒れている。

いけない、直ぐにレッド兄上のところに向かわないと!

だが、こんな状態のリンを置いていくわけには

いかない。

そうだ、観客席にマリンが居たはず、彼女にリンを預けられる。

彼女は?ぼくはマリンが居るはずの観客席を見た。

その直後だった。


ドッカーンッ、ガカァアーンッ


「な?!」


その観客席が吹き飛んだ。

マリンは?!は、無事だ。

マリンはミンとメイサといっしょだ。

マリンの結界魔法で防いだようだが、煙が引いた時、とんでもないものがマリン達とぼく達の間にあった。


それは巨大な石でできた腕だった。


ぼくらは完全に分断された。

どうすれば?


タン「ワウッ」


そうだ、獣化したタンが居た、いささか頼りないがやむを得ない。


「タン、ぼくらはレッド兄上に加勢にいかないといけない。リンを頼めるか?」


タン「ワウ!」


リンはまだ、ルケル兄上にすがって泣いている。離れたくないが仕方ない。


ぼくはイエルと頷き合って、駆け出した。



◆◆◆



◆エミリー視点


「お母さん、早くこっち、聖女様を助けないと」


エテルナ「待って、今、行くわ」


やっと展望席横の侍女控え室から、闘技場に降りてこられた。

いた、聖女様だ。


「?!大変、聖女様が血だらけたわ」


エテルナ「ええ?」


私は聖女様のところへ駆け出した。

そして聖女様がすがって泣いているのを見てビックリした。

だってそれはお母さんを殺した憎いあいつだったから。

でも、明らかにソイツは死んでいた。


「うっ」


あまりの惨状におもわず吐き気がこみ上げた。


リンレイ「あ~んっ、あ~んっ、あ~ん」


聖女様はまるで小さな幼児が泣くようなしぐさで泣いていた。

そんなにこんなヤツの事が好きだったんですか?

私は少し胸がチクッとしたけど、そのまま知らない振りをした。

背後ではあの化け物と、四人の見知らぬ男達が戦っている。

なんか、聖女様の周りを仔犬が歩き回っている?

早く聖女様をあの人のところに連れていかないと。


「お母さん、早く、聖女様の肩を持って、さ、聖女様、安全なところに行きますよ」


聖女様は泣きながら、それでも従順な幼子のごとく私の言うことに従って立ち上がった。


エテルナ「待ってエミリー?、ひぃ?!お、王太子殿下?」


「大丈夫よ、もう死んでる。いい気味だわ」


エテルナ「エミリー?そんな事を言ってはいけないわ」


「なんで?お母さんは覚えてないかも知れないけど、私は目の前でお母さんを殺されたのよ?絶対、許せない」


エテルナ「エミリー……………」



◆◆◆



ワウッ


「な、なに、さっきからこの仔犬?、シッ、シッ、あっち行って!」


エミリーがタンに他に行くような仕草をするが、タンは離れるわけにはいかない。

三人と一匹が入場者通用口にたどり着いた時だった。


ボスッ「ギャンッ?!」


タンが一瞬で宙を舞った。

何者かの蹴りでとばされたのだ。

そのまま、壁にぶつかり動かない。

リンレイは放心状態で天井を見ていて気付かない。


「きゃっ?!な、何?」


「よう、ご苦労様、ヘへ、また会ったな?




そこに居たのは、武官ハベルだった。


しおりを挟む

処理中です...