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第54話 勇者の家
しおりを挟む「パエリ、この頃はどこの町にでもいたスラムの子供とか潰れかけた教会の児童施設とかがなくなってないか?。」
ジュネが街を歩きながら言う。
「そうだね。見かけないね。」
「いい事なのかな?何か大変なことになっていなければいいんだけれど。」
サーフラが心配そうに言う。
アスタロトは何言ってんだこいつらと思いながらも黙っている。
「カブス、俺達勇者の役に立っているんだろうか?」
これからカブスら年長の子供達が集まってスラムの盗賊団に囚われた子供の奪還に行くのだ。
街の衛士にも根回しはしてある。
かつての壊れかけた教会の施設は清潔でしっかりとした建物になり、一見学校の様だ。
沢山の部屋に医療、教育、商業、鍛治、錬金術、魔法、などいろいろな部署の部屋がある。
さらに宿舎や教室、食堂まである。
ここはかつて勇者に救われた子供達が作った「勇者の家」と言う組織。
勇者が渡した資金とムールが教えた知恵や知識。
そしてエリミリアやサーフラの父ワーリク侯爵の後見もあって積極的に親や家のない子供を集める。
生きていく力を身につけさせる。
そして生きていく場所をつくっていくんだ。
サヒルはそれこそが勇者パエリの役に立つことだと思っている。
この組織は本部を持たない。
いつのまにか大陸中に出来上がった仲間達とネットワークでつながり、情報を共有しながら運営されている。
スラムなどで子供を犯罪に利用する大人に対抗するグループもここだけではない。
勇者に与えられた命と力と知恵で同じ境遇にある者達を今度は俺達が救うのだ。
「行くぞ!」
カブスは高揚する気落ちを抑えて低く声をかけて出かけていく。
サヒルやシエルが手のひらを向けて答える。
彼らを助ける衛士や冒険者たち、ワーリク侯爵家の従者などの大人が続く。
そりゃ街の問題でもあるんだから子供任せには出来ないね。
もちろん「勇者の家」を支える大人達はたくさんいる。
まあ鈍いパエリ達とは違ってアスタロトは「勇者の家」のことは知っている。
「この先にクレープの美味しいお店がある。」
なんだか近頃はアスタロトに行き先を決められている様な感じ、とムールは思いはするのだけど。
まあ別に目的があるわけでもないし神様のお導きだと思えばそれでいいか?
アスタロトって長生きしているからなのか美味しいお店とか良く知っているんだよね。
パエリ達は気付いていないがそれとなく勇者一行はアスタロトにカブス達が向かっている盗賊団の巣へと導かれている。
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