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第3話●安住の地
しおりを挟む多分ここは大荒野のどこかで、大きな岩に取り囲まれた窪地。
ヒナが体の具合が悪くなって本能的に自分の巣を選んで降りたんだろう。
強者の臭いなのか魔力の残滓なのかが残ったこの場所に中途半端な魔獣などは近づいてこない。
まあまあ安全な場所だ。
窪地の端まで行って周囲を見る。
黄土色の土とゴロゴロとした岩の荒野が地平線まで続いている。
建造物の類いや立ち木などはない。
ゲームではサンドワームやデザートサーベント、スコーピオンなどが良く出てくる。
強い装備を作るのに都合の良いアイテムをドロップしてくれる。
ここでしか手に入らない鉱物系のアイテムが手に入る場所だった。
この世界はコンピューターゲーム「ロストヒストリーワールドDXll」の中なんだと思う。
ゲーム進行のどの時期なのかはよくわからない。
この体の持ち主のレイアンもゲームには登場していない。
レイアンの出身はカルナガリア王国のフエツの街から歩けば4日程の距離にあるトリミド村。
農家の三男だ。
この世界では長男以外は家を継ぐ事はできないので剣士のジョブを生かして村の自警団にいた。
その後に幼馴染でジョブが斥候のマウジェと魔法師のカンパーナを誘ってフエツの街に出て冒険者になった。
今は19か20歳ぐらいだろう。
他人事のようだが別人格だからしょうがない。
レイアンの記憶では勇者が魔王を討伐したのはずーっと昔のようだ。
そうするとゲームの知識は殆ど役に立たない。
お尋ね者になっているであろうこの体の持ち主のレイアンには逃亡させないとまずい。
この前科だと捕まったら死刑になってしまう。
とりあえず偽装のスキルを使って名前を変更。
スキルレベルの問題なのか今の名前からの文字列の組み替えぐらいしか出来ない。
「アレインでいいか。」
あとは目の色と髪の色を変える。
どっちも前世と同じ黒でいいだろう。
ギルドカードはないし、鑑定の偽装もできたから顔見知りにでも会わない限り大丈夫だろう。
「王様ー。なにして遊ぶ?」
たくさんの魔獣が人化して懐いたせいか王様のジョブのレベルが上がって呼び名も「あるじ」から「王様」になったみたいだ。
ヒナが俺の周りをぐるぐる回っている。
他の魔獣達はそれぞれサンドワームをとっておやつにしたり、スタースコーピオンを振り回しておもちゃにしている。
あんまり生活感がないなー。
俺、大丈夫かな?
「とりあえず大山脈地帯へ行くぞー。」
と言ってみる。
一斉に魔獣達がこっちを向いて返事をする。
「はーい。」
辺境を目指すのでまず人目につくことはないし、急ぐわけでもない。
と思っているとヒナがポヨーンと人化を解いた。
まだひよこだがでかい。
ぎゅっと足で掴まれた。
そして飛ぶ。飛べたの?
ひよこなのに?
他の子達も飛べない子は飛べる子と組みになってついて来る。
大荒野の最東端に至るとそこからは徐々に標高が高くなり壁の様な大山脈地帯になる。
あまりに山が高いのでここから先は今のところ世界の果てとされてほぼ人は行かない。
岩山の斜面に沢山の洞窟がある。
「ヒナ、あの洞窟がいっぱいあるところに行こう。」
ヒナの足につかまえられてぶら下がりながらアレインは言う。
見た感じはちょっと情け無い感じ。
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