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一月ほど前、旦那様であるテレンス侯爵家の現当主アドラ様と初夜を迎え3日ほど前に妊娠が発覚した。
が、初夜以降旦那様と顔を合わせていない。それもそうか行為中のオメガを初めて見たのだろう。そしておそらくドン引きしたのであろう。ただでさえ普段から品行方正なお方だ、よがり狂う僕の下品な姿に嫌気がさしたのだろう。
まさか僕も一晩で身籠るとは思っても見なかった、…まぁ、あんだけ中に出されたら妊娠もするか、ははっ。
「…父様にはいつ会えるんですかねー?」
なんて言ってお腹に語りかける。妊娠が発覚してからと言うものあまり動くなと言われ部屋に篭ることが増えて来た。その為暇な時間が増え考える事が多くなった。
「ただでさえやる事がなかった人間が更に時間を貰ってどうすればいいのさね。」
無意識にうなじをさすると初夜を迎えた番にはある筈の物が無く何度触っても真っさらな肌しかない。
惚れた男に嫁げると知った頃の僕に言ってあげたい。あまり期待し過ぎるな、どうせ僕はΩだ。と。
僕が10の頃第二性がΩである事がわかった。わかった途端剣術や勉学に費やしていた僕の人生が変わった。貧乏男爵家の生まれの僕は次男で、その前まではβで出来の少し悪い兄に変わり期待を一手に引き受けていたがそれも全て無駄だと。Ωは子を産むのが仕事だと、それからは酷かった。優しかった両親も兄も僕の存在を忘れたように最初から無かったかのように無視された。一応人並みの暮らしはさせてもらっていたが、ただ生きていたと言った方が正しいかもしれない。
成長し、夜会に出る歳になるとそれまで無視されていた僕を着飾らせ引っ張り出して行くのだ。位の高い貴族に嫁がせたかったのだろう、相手が決まるまで純潔を散らすような事はさせなかった。
ある日の夜会に行くと何やら騒がしい。どうやら僕がいつも出ていた低位貴族の夜会では無くある程度位の高い貴族の参加する夜会だったらしい。そんな事は僕が知るわけが無かったが、その中でも一際目を引く方がアドラ様であった。一目見ただけでわかるαの風格。
目を奪われるとはまさにこう言う事なのだろうな。会場の壁際から真ん中の大きな階段を優雅に降るアドラ様をボケッと見つめていると、母が
「…何をしているんです、貴方はこちらです。」
母に腕を引かれついて行くと最近よく母が夜会では話をする中年の男性がいた。……あぁ、決まったのか。
「マクベス様お久しぶりでございます、ミリアン挨拶なさい。」
「…はい、母様。お会いできて光栄です、マクベス様。レブル男爵家次男のミリアンでございます。」
ニコッと笑いかけると相手方の頬が赤く染まる。やはりΩなだけあって男を誘惑する見た目ならしい。
「ああ、私も会えて嬉しいよ。実物はやはり美しいなぁ。夫人早速話を進めよう。」
「まぁ、ありがとうございます。では後日、よろしくお願い致します。」
オヌル・マクベス伯爵か。…良くて後妻、悪ければ性奴隷ぐらいかな。あまりいい噂を聞かない人だけど、母なら何処にでも突き出すだろう邪魔な僕を追い出す為に。
その後も夜会が終わるまでマクベスに腰を抱かれ身体中触られたが僕に拒否することなど出来るわけもなく最悪な時間が続いた。周りの人間も僕をΩだと気付いているようだし助けなどはなから期待してはいないけど、……なんだか気持ち悪くなって来たな。あ、倒れるかも
「……!」
バタッ
身体の力が一気に抜け立っていられなくなった。
「お、おい、どうしたと言うのだ!おい、しっかりしなさい!夫人どうなっているんだ!」
「ああ!申し訳ございません、ミリアン、ミリアン!しっかりしなさい!早く立ち上がるのです!さぁ!」
母が僕の体を強くさする……誰も僕の心配なんてしてくれない、わかってる。早く立ち上がらないと。
「手を退けなさい。」
誰かがそう言い母の手を掴み退かす。ああ、ありがとうと言いたいけど起きていられない。ごめんなさい、僕なんかを助けてくれて。
気が付けばアドラ様の家に居た。何故こんなことになっているのか僕にもよく分からないが、大方、母が何かしらの理由をつけて公爵家に引き取らせでもしたのだろう。αは性欲の強い者が多いと聞くし、侯爵家なんだから愛妾は何人でも抱えているだろうし。……僕はΩなんだから。
「起きたか、今日は母が庭で茶会を開くそうだお前も行くといい。」
「い、いえアドラ・テレンス様、私には勿体無い場でございます。それに、私は必要な時にお呼び頂ければ自分で参りますし、そもそもこのような立派なお部屋を用意してくださらなくても宜しいのですよ?」
ここに来てからアドラ様は何かと僕に構ってくれている。自分で連れて来たから面倒を見ているだけなのだろうけど、こんな侯爵様のご子息が使いそうな豪華な部屋に案内され使用人の方々も僕を貴族として扱ってくれている。…なんだか落ち着かないんだが。
「私が来たくてここに来ているんだがダメか?それに母も貴方を気に入っているようだから招待している。」
「い、いえ!滅相もございません!アドラ・テレンス様が構わないのであればそれで良いのですが…。」
「その呼び方やめないか?長くて呼びにくいだろう。」
「……アドラ様、でしょうか?」
合っているか不安で俯きながら目を泳がせた後、眼だけでアドラ様を捕えるような感じになってしまった。
「っ!」
「あ、間違えてしまいましたか?申し訳ございません!」
え、何が間違ってたんだろ!耳まで真っ赤になるくらい怒ってるってことだよね?
「いや、何でもない。ティータイムの時間にまた来る。」
「え、あ、はい。かしこまりました、お待ちしております!」
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