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それから、数年経ち僕はまだ侯爵家に居たその後も特にΩとしての役割を果たす事はなく。たまに侯爵夫人とお茶会をさせてもらったり、アドラ様とお出掛けをさせてもらったりとなんだかくすぐったい体験ばかりさせてもらっている。ここ最近は食事も侯爵家の方々と同席している。
「ミリアン、手が進んでいないようだが口に合わなかったか?」
「へっ?とんでもございません!マテオさんの作る料理はどれも美味しいです!」
「そうか、私もそう思う。」
ぼーっとしていると侯爵様に声をかけられ慌てて返事をする。何故かなんでかは本当に分からないのだけど侯爵様もご夫人も僕に優しくして下さるのだ。
昼食を食べ終わり侯爵様が部屋を出る直前、
「ああ、そうだミリアン。あとで大事な話があるからアドラと一緒に私の書斎へ来るように。」
「は、はい!かしこまりました!」
「そんなに緊張しなくても良いんだぞミリアン。あとで部屋へ迎えに行く。」
そういい僕の頭を撫で微笑みながら去るアドラ様を見送り僕も部屋へ戻る。
「なんのお話だろうか。やはり長居し過ぎているからそろそろ出て行けと言われるんだろうか。」
元々僕もすぐに出て行こうと思っていたんだけどなかなかタイミングがなくて、出て行こうと少ない荷物をバックに詰めて置いておくと、元の場所へ戻されているし。侯爵様にお話しようとすると旅行に連れ出されてしまったり、うまくいかない。
でも、アドラ様のお近くにΩである僕が居るとなればお相手も見つけにくいだろうし。侯爵家の次期当主であれば正妻にはαのお相手というのが一般的なんじゃないだろうか、一部のαはΩをとても嫌悪しているという話も聞くしその話で間違い無いだろうな。
数刻経ち、ドアの向こうからアドラ様の声が聞こえてくる。分かっていてもドアをノックする音に身体をびくつかせてしまう。ドキドキしながら返事をしてアドラ様の元へ向かう。
「お待たせ致しました。」
「待ってない、行こう。」
アドラ様と侯爵様の書斎へ入り、アドラ様並び侯爵様と夫人と対面して座る。
お二人ともニコニコとして僕の方を見てくるのはどうしてなんだろう?
「ミリアン、もうこの侯爵家での暮らしには慣れたかい?」
「え、あ、はい!皆さんとても良くして下さいますし、僕には勿体無いくらい過ごし易い、です…。」
「そう、良かった!それなら大丈夫そうだね?」
侯爵様と夫人が嬉しそうに話しているが、やはりもう慣れたのなら出て行け、……とか?
「もうそろそろアドラの結婚相手を決めなければいけないんだが…」
ハッ!やっぱりそうだ、ここはもう潔く自分から言った方が迷惑が掛からないだろう!
「ミリアン、是非アドラの伴侶になってもらえないだろうか?」/「分かりました!直ぐにでも出て行きます!!」
「は?」
へ??
「ミリアン今何と?出て行くだのと聞こえたが間違いか?」
僕も聞き間違いだろうか伴侶にとか何とか?三人ともポカンとしている、何なら側についている使用人も。
「え、はい?だっ、だってアドラ様にお相手が出来るから、??」
「ミリアン、落ち着いて聞いてくれ。俺が望んでいるのはミリアンだ。だから、出て行くなだなんて言うな。」
「………っ!」
アドラ様が僕を抱き寄せ、頭を撫でる。ほ、本当に良いのかな?僕みたいなΩが侯爵家に嫁いでも……。
「………良いのですか?僕でも?……Ωですが良いのですか?」
「ああ、ミリアンがいい。」
っ!!僕が良いなんて言われたの初めてかな?嬉しくてしょうがない、
「Ωで駄目だなんて言う奴はここには居ないよ、ミリアン。じゃなきゃ私だってここに居ないさ。」
そう夫人が僕に優しく言った。……え!
「へっ!?ご、ご夫人もΩだったのですか??」
「そうだよ?まさか気付いてなかったの?あははっ!!」
「……き、気付きませんでした。」
確かに美しい方なんだけど、Ω特有のか細い感じでは無くて力強くキリッとした方だからα何だと勝手に思っていた。
「まあ、分かりづらいよね。」
「……っ!だから僕の事を気にかけて下さっていたのですか?」
「うーん、それもあるんだけどねぇ。アドラが君を家に連れて帰って来た時は、同じΩとして君の境遇は少し理解出来たから少しだけ落ち着くまで居場所になってあげたいと思う程度だったんだけどね?私もアドラもすっかり気に入っちゃってね!ミリアンったら本当に良い子なんだもん。誰だって構いたくなるに決まってる!」
そ、そんな事無いと思いますけど。だってそもそも人と関わることがなかったし。
「で、ミリアン。どうだろうか?無理強いはしない、嫌だったら断ってくれて構わない。」
………良いんだよね、
「ぼ、僕で良ければ貰って下さいませ。」
「違う、ミリアンが良いんだ。……大切にする。」
だ、抱きしめられてるっ?!こんな幸せで良いのかなぁ?
「アドラったら親の前で大胆だなー!」
「微笑ましいなぁ、……して、アドラ。」
侯爵様が真面目な表情に変わった。
「はい、父上。何でしょう。」
「二人の結婚を機に私は当主の座を降りようと思う。後は若い二人に任せたい。」
「もちろん私達も二人が仕事に慣れるまではちゃんと手伝いはするからね。」
……こんな学の無い人間に務まるのだろうか。と俯きていると
「大丈夫だ、ミリアン。私が居る。」
「……っ!は、はい!」
口数は少なくともアドラ様の一言でこんなに安心できる。だ、大丈夫、僕がうじうじしてたらダメだろう。
そうして、二年の婚約期間が過ぎその間に当主もアドラ様が引き継ぎ僕達の結婚式も行われた。前侯爵夫妻は領地で隠居されるそうだ。
僕が力不足なのもあり、大半の仕事はアドラ様が変わってくれているが最近はアドラ様の従兄弟でαのリュード様が手伝いをしてくれている。
たまに、本当にたまにではあるがすごく冷めた視線が送られてくるのが少し怖い。
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