僕らを残したこの世界で笑う

Ran

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第1章 取り残された世界で

6. 最強

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 妖の存在に気づいた2人が同時にそう叫ぶ。
 それから両手を体の前に持ってきて握き、左手の人差し指と中指をたて、自分たちの式神を呼ぶポーズを作る。

「式!!」

 すると「はいなっ」という声と共に朝日と結良ゆうらの式神が姿を現す。
 「陰陽師」。これが2人の職業だった。

 その間に夕顔が素早い動きでサッ、と朝日の前に回り込み、剣を抜いて臨戦態勢をとる。
 夕顔と同様、レラも剣を抜き、結良のまえに回り込む。それと同時に「シールド!」と叫びこの辺り全体のビルや建物をすべてシールドで包む。

 そうすることで崩れた建物の破片が人に当たらないようにしたのだ。

 4人の動きは手慣れていてとても素早い。熟練された動きだった。
 そして、もちろん桃菜も例外ではない。

 道路の中央に配置についた4人から素早く距離をとり、あまり離れ過ぎず、かといって近過ぎない距離に着く。この距離が4人の後方支援が出来つつ、ケガ人を治療できるちょうどいい距離なのだ。

「みんな、力を貸して。」

 桃菜の声と共に、地面から植物の枝やツタが何本も出てきてケガ人の体にシュルルと巻き付くとそのまま桃菜の元へ持ってくる。
 ケガ人を1箇所に集めると、桃菜の治療が始まる。
 
 桃菜はケガ人達の前にたつと両手を前に出し、自分の力を両手に集中させる。限界まで集中させ
 
 「バルグ!」

 するとケガ人達のケガがみるみる治っていく。

 「すごい…! こんな何十人ものケガを一気に治すなんて並の治療魔法じゃ出来ないぞ…!」

 

「…なんや、桃菜ちゃんもう治療終わったみたいやな」

「朝日。気をつけて。よそ見をしていると隙をつかれるよ。」

 桃菜が治療している間、レラ達4人は妖が破壊した建物の破片を式神を駆使して妖と戦っている結良と朝日があびぬよう、レラと夕顔が剣術で守りつつ交戦をしていた。

 2人の剣術は見事で1つの隙もない、綺麗な剣さばきだった。
 互いが互いの邪魔をすることも無く、2人に当たるであろう瓦礫をすべて剣術のみでさばききっていた。
 それだけの技術が2人にはあった。

 そして、もうすでに一体は倒しており、残すはもう一体だけだった。

「だーいじょうぶやろ。剣術の達人の夕顔だけやなくて、剣術も魔術も上級のレラちゃんがいるんやから何の心配もないやろ。」

 朝日は妖への攻撃を続けながら言う。朝日の攻撃を受けビルの上に乗っていた妖がバランスを崩し、落下しそうになる。
 この気を逃すまいと結良が畳み掛けようとした瞬間

「──朝日!」

 夕顔の声に反応して朝日が後ろをむくと、後ろから新しい妖が朝日に向かって襲いかかる所だった。

「っ!!」

 もう間近に迫っていた妖は距離的に避けられる位置ではなかった。

 ───刹那、「和華っ!」と言う結良の2体目の式神を呼ぶ声と共に目の前の妖が攻撃を受け、一瞬で消えていく。
 けして弱い妖ではなかった。むしろ上級の手強い妖を結良は1回の攻撃で一瞬にして殺す事ができた。
 陰陽師としてはトップクラスの実力だった。

「ありがとう、結良くん。」

「いえ、朝日さんにケガがなくてなによりです。」

「助けて貰ったんやから、お返ししなくちゃやなぁ。」

 さっき朝日が攻撃してバランスを崩した妖はまだかろうじてビルの上にいた。

 朝日をそれを見て「藤、小夜、おいでや」ともう2体の式神を呼ぶ。

「3人とも、あの妖頼んだで。」

  朝日に頼まれ、式神達は嬉しそうに「はいなっ」と言い攻撃を始める。
 3人の連続攻撃に妖は悲鳴をあげて消えていく。

「…やっと本気をだしたか。」

 夕顔が少し呆れつつ朝日の方を見る。

「こんなん、自分が本気を出せばちょちょいのちょいやっ。」

 ドーンと胸を張り嬉々とした顔の朝日を見て、だったら最初から本気を出せばいいのに、と言う言葉を夕顔は飲み込む。
 すると4人のもとに桃菜が戻ってくる。

「みんなお疲れ様~っ、…あれ? レラちゃんは?」

 この場にレラが居ないことに気づいた桃菜がみんなに問う。

「ああ、朝日さんが妖を倒した直後に路地裏に向かってった。おそらく───。」

 すると4人の前に路地からシールドで包まれた上、拘束された青年がゴロゴロと転がりながら電柱にぶつかって登場した。

「ぎゃふっ!」

 青年は悲鳴をあげた。まだ状況が理解出来ていないようでキョロキョロと困惑したように周りを見ている。

「…扱いが雑やなぁ…。」

 そして青年を拘束し雑な扱いをした張本人のレラが路地から出てきた。

「あの妖達を違法に使役していた本人だよ。あんな強い妖を3体も使役してるとなると、相当妖を使役するのに慣れているんだろうね。おそらく違法な使役を何回も繰り返しているんだろう。」

 レラは冷静にそう言い放つ。
 それでやっと自分が捕まり危機的状況にいると理解した青年が焦り出す。
 レラの仕事が早すぎて、理解する間もなく拘束されてしまったのだ。

「…酷い人だね。」

 桃菜が嫌悪感を露わにしてそう言うと少し離れた所から声が聞こえた。

「警察です! すいません、ここで何があったのかお話聞かせてくれますか?」

 みると制服姿の警官が2人こっちに向かってやってくる。

 警察を見てレラは一瞬、憎々しげな表情を浮かべる。
 しかし、それを警察に気付かれる前に直す。

「あの、ここで妖に関する事件があったみたいなんですけど
……あれ? もしかして、陰陽師の朝倉朝日さんですか?」

 警察が朝日の存在に気づき、そう問う。

「せやで! 事件ならもう平気や。自分らで倒してしまったからな!」

 気付いてくれたことが嬉しそうに朝日は胸を張って言う。

「いやぁ、凄いですね! 情報によると妖は合計3匹。うち2匹は1番上の特急クラスで、もう1匹はその下の上級クラスの妖だと報告を受けています。その妖を倒してしまうなんて、さすが陰陽師の中でも名高い朝倉家の次男なだけありますねっ!」

「そんな事ないで! 妖を倒せたのは自分だけの力やないからな。」

「えっ、そうなんですか、それは───。」

「悪いけれど、私達急いでいるんだ。時間が無いからもう行くよ。」

 警察官がなにか言おうとしたが、それをレラが遮る。
「行こう、4人共。」レラはそう言うと警察官達に背を向け勝手に歩き出す。
 明らかに冷たい対応だった。
 レラに続いて結良と桃菜も警察官達に背を向ける。

 警察がその態度に唖然としていると

「申し訳ないが、俺達には急用がある。話は後日必ずするのでこの番号に連絡をくれ。」

 夕顔がそう言って警察官に名刺を渡す。

「わるいなぁ、どうしても外せない用事なんや。堪忍してや。」

 朝日は両手を合わせ警察官達に謝る。
 そしてレラ達に続いてその場を去っていく。

 二人ともレラ達の態度に悪い感情は抱いていない。
 2人がどうしてそんな態度をとるのかも、嫌悪感を露わにするのかも知っているからだ。

「……あの人らは悪い警察なんかなぁ…。」

 朝日がボソッと言う。

「…どうだろうな。」
 
 3人の子供の後ろ姿を見つめながら夕顔が返す。


 凛とした3人の後ろ姿。その背中に多くの傷を抱え生きていると知っているのは何人もいないだろう。
 もう思いながら、夕顔はレラ達を見つめるのだった。
 
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