僕らを残したこの世界で笑う

Ran

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第1章 取り残された世界で

8. 集(2)

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「話っちゅうのは、白榊家しらぎけの事や。みんな知っての通り白榊家は人間族の間で名の通った陰陽師の家系や。実力は陰陽師の中でもトップクラス。そんな白榊家が人体実験をしてるっちゅう噂を聞いた。こっちで調査中やが、証拠は掴めてない。何かめぼしい情報が入り次第、教えて欲しい。」

 その話を聞いてミャーナ達が驚きの表情になる。
 各種族の協定の内容に「人体実験はしない」と言う規則があるため、もし本当に人体実験をしていたら大事だった。

「ほんなら、昔白榊家で働いていたお前の方が詳しいんやないの?」

 蒐が朝日にそう問う。それを聞いてミャーナとラーグが初耳だ、という風に朝日の方を見る。

「確かに、自分ら朝倉家は代々白榊家に仕えとるが、自分が仕えてた次男のしゅう様が5年前に行方不明になってから辞めとる。人体実験の話が出たのはその後なんや。せやから、自分は何も知らないんや。」

「なんや、使えへんなぁ。」

 朝日がムッとする。また険悪なムードになったのを察してミャーナがさりげなく仲裁をする。

「まぁまぁ。それを暴くのじゃったらレルローに頼んだら1発で分かるのではないか? レルローのネットの技術はピカイチじゃからのっ。」

 レルローとはシルラーの兄で、ネットの事についてとても詳しい者である。
 レルローにかかれば、様々な国家機密レベルのセキュリティを解除し、情報を手に入れるのは朝飯前である。

 その腕前をみこして、様々な機関から紹介をうけているが、レルロー曰く「ネットは趣味でやっている事だから仕事にするつもりは無い。」と全部断わっているらしい。が、それでも様々な機関から様々な依頼が来るらしく、それには応答しているらしかった。

「それならもう、私経由でレルローに頼んでみたよ。けれど、情報は得られなかった。おそらく白榊家はレルローの事をみこして、ネットではなく手書きで実験の情報を残しているんだろうね。」

 レラがミャーナを見ながら言うとそれを聞いて蒐がため息をついた。

「つまり、こっちの問題に関してもめぼしい情報はゼロというわけやね。参ったなぁ…。」

「…めぼしい情報が無いなら、もうこれ以上話が進むようにも思えない。今回の集は解散でいいんじゃないか。」

 ラーグがチラチラと時計を気にしながら言った。どうやらほかの仕事の時間が迫っているらしかった。

「そうだね、今回はこれでお開きにしようか。発病少女と白榊家の事については情報がわかり次第、報告するってことでどうかな?」

 レラがそう言うと、残りの長達が頷く。

「それじゃあ、解散。」

 そう言い、レラがパンっと手を鳴らすと、皆ぞろぞろと去っていく。
 レラ達も帰ろうと席を立つと後ろから声がかかった。

「レラ。少しいいかの?」

 レラが声をした方を振り向くと、ミャーナが少し神妙な顔をしてこちらを見ていた。
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