【完結】ヤンデレに恋愛フラグを仕込まれた俺の末路

かおり

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第14話 檻の中の自由

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 朝の光が、やけにまぶしく感じた。

「……昨日のこと、ごめん」

 俺は、なるべく平静を装って口にしたつもりだった。
 けれど黒川は、一瞬だけ目を見開いて──そして、柔らかく微笑んだ。

「ううん、大丈夫だよ」
「……でも、ボク、もうレン君じゃないと気持ちよくなれないみたい」

 そんなの、冗談めかして笑えばいいのに。
 けど、黒川のその瞳は、冗談のかけらもなかった。

「だから、また……ボクのお願い、聞いてくれる?」

 その声は優しくて、静かで、逃げ道がなかった。

 ……気づいたときには、俺はもう、うなずいていた。

 ⸻

「君がしたいならでいいんだけど……明日も、キスしてくれる?」

 黒川は、ふと不安そうに俺の顔を覗き込んで、
 俺が返事をしようとする前に、そっと手を重ねてきた。

 その手の温度が、思考を止めた。

「……うん。俺も、したかったし」

 自分でも驚くくらい自然に出た言葉。
 本心かどうかなんて、もうわからない。
 でも、黒川は安心したように目を細めて、ぎゅっと俺の手を握り返した。

 ──優しいな、って思った。
 でも、どうしてだろう。

 ……なんで、断れないんだろう。

 ⸻

 下校途中。
 偶然、桐生先輩とすれ違った。

「よっ、桐生先輩。……偶然っすね」

「黒川? うん、最近めっちゃ優しいしさ。……なんか、前みたいにギクシャクしてなくて、良かったっていうか」

 俺は笑って言った。自分でもちゃんと、笑ってるつもりだった。

 けど──桐生先輩は黙って俺を見ていて、ぽつりと言った。

「……レン、それ、本当に“君の意思”か?」

 呼吸が、ひとつ止まった気がした。

 ……でも俺は、すぐに笑って、肩をすくめた。

「あはは、なに言ってんすか。ちゃんと、自分で選んでますよ」

 ──そうやって笑う自分が、何より“選ばされた”人間に思えた。

 ⸻

 夜。

 風呂上がり、鏡の前。
 タオル越しに自分の顔を見て、ふと手が止まる。

 ……笑ってる。
 でも、それはどこか引きつっていた。

「ほんとに……笑えてたか? 俺……」

 ちらりと机に視線をやる。
 “ノート”が、そこにある。
 見ないふりをしてたはずなのに、また目が行く。

「……でも、黒川が望むなら……」

 そう呟いて、何かをごまかした。

 ⸻

 ぴ、とスマホの通知音が鳴る。

 黒川からだった。

【また明日も、少しだけ会ってくれる?】

 指が自然に動いて──「うん」と返信した。

 画面の光が、部屋を青白く照らす。

 その明かりの中で、俺はまた、笑っていた。

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