【完結】異世界悪役改善計画

かおり

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番号は優しさの証

第12話「笑わせるだけじゃ、済まない空気──潜入、開始」

学園最大の行事――卒業パーティー。

大広間には、煌びやかな装飾と音楽が響きわたっていた。

その片隅。
俺たちは、予定通り無事に潜入していた。

***

「……おいルーク、何その格好。」

「は? これが“カリスマ留学生スタイル”だろ。
 イメトレしてきたから完璧だ。」

「いや、どう見てもスカした道化だろ。」

「うっせぇ! てめぇこそ、何その羽飾り!」

「……これは、正統派貴族のフォーマルコーデだ。」

「いやいや、村祭りの踊り子にしか見えねぇから!」

相変わらず騒がしい二人に、
エリが呆れ顔で小声を飛ばす。

「……アンタら、もうちょい静かにしろって。」

その隣では、スタッフ用のベストを着込んだリオが
エリに付き従って動いている。

「……これで本当にバレませんか?」

「平気だって。お前、意外と使えるじゃん。」

「……そう、ですか?」

リオは首を傾げつつ、
エリの指示通りに会場内を歩き回る。

──俺たちはそれぞれの持ち場につき、
 カルロを探していた。

そして。

舞台袖の暗がりに、
例の男――カルロ・エインズを見つけた。


「……いた。」


完璧な貴族の次男。
優雅な立ち振る舞い。

──いつもの、カルロ。

……の、はずだった。


(……なんだ、あれ。)


妙に落ち着きがなく、
そわそわと周囲を見渡している。

まるで、何かに追い詰められているように。


俺は、懐からメモ帳を取り出し、
静かにページをめくった。


「……そのメモすげぇな。」

隣でルークが呆れたように囁く。


「一年目、“孤独な支配者”。
 二年目、“仮面の毒蛇”。
 三年目、“影の操り人形師”。」


パタン、とメモを閉じ、
カルロを見据える。


「……今年で、逃げ場はない。」


毎年、転校でリセットしてきたカルロ。
だけど、今年は卒業。

──最後の舞台。


「……本気で“悪役”になろうとしてる。」

俺の声は、思わず低くなった。


ルークもグランも、黙り込む。

エリまでもが、表情を曇らせた。


その時、
ルークが小さく指を動かして、奥を示した。

「……なぁ、あれ。」


控え室の扉が、
わずかに開いている。

中から、ひそひそと声が漏れ聞こえてきた。

****

「……今年こそ、終わらせる。」

「笑い話で済ませるのは、もう終わりだ。」

「公爵家の看板も、命も……全部、潰してやる。」

***

――凍りついた。


冗談じゃ、なかった。


ルークが顔をひきつらせる。

「……これ、マジでヤバいやつだ。」

グランも、
「笑わせて終わらせるだけじゃ、済まねぇぞ……」
と低く唸る。


俺たちは、顔を見合わせ、
慌てて合流ポイントに戻った。


「おい、ディック!」

ルークが、
グランが、
エリが、
一斉に駆け寄ってくる。


「控え室……被害者たちが、本気でカルロを潰す気だ。」

「笑いじゃねぇ。
 家ごと、人生ごと、終わらせるつもりだ。」


エリが、リオと並んで口を開く。

「警備も、変に固められてる。
 ……何か仕掛ける気、満々だよ。」


空気が、重く沈む。


ルークが、
「……ディック、どうすんだよ」
と問いかける。

グランも、
「やるなら、ちゃんとやれ」
と睨みつけてくる。

エリも、
「アンタが決めな」
と、静かに告げる。


……クソ、こんなはずじゃなかったのに。


でも、
逃げる気なんか、
最初からなかった。


俺は、
全員の顔を順に見渡し、
ゆっくりと頷いた。


「……やるしかない。」


「どんな手を使ってでも、
 俺たちで、止める。」


ルークが拳を握り、
「……乗った」と呟く。

グランは、
「逃げんなよ」と肩をぶつけてくる。

エリは、
「……ほんと、面倒なやつ」とため息をつきながらも、
小さく笑った。


俺たちは、
それぞれの位置へと散っていく。

***

「……笑いに変えて終わらせるつもりだった。」

「でも──」

「冗談じゃなく、本気で止めなきゃ、
 ……誰も、笑えなくなる。」

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