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第三話_安全確認、それは魔法の言葉
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ビオラは巣作りに必要な建材はあるかなと、木箱の中を覗き込む。
「蜜蝋はあるか。でももう固まっちゃってるね。 やっぱり自分で分泌して固まる前に作らないと」
ビオラは板状の大きな蜜蝋の塊を取り出すと、それを抱えて岩場の頂上まで飛び立つ。
岩場はおよそ二十メートルほどの高さがある。頂上まで来たビオラは蜜蝋の板を置き、先ほど巣を作ろうと思った張り出した岩を確認しに行く。
「うん、切れ目とかないし岩場とちゃんと繋がってる。 崩れたりする心配はなさそうね」
よしよし、と満足して頂上に戻ってきたビオラは「やるか……」と決意のこもった顔で呟く。そして勢いよく右手の人差し指と中指を口の中に突っ込んだ。
「ヴォエッ!! オロロロロロロロロロロロロロロロロロロッ!! おろろ……」
ビオラは蜜蝋の板の上に大量の白いクリーム状の分泌物を吐き出した。
フゥ、と口元を袖で拭ったビオラは「初めてだけど上手くできた」と言う。
「でもコレ、めっちゃお腹がへるわね」
お腹を押さえるビオラは一度、木箱にもどると花粉団子を取り出してモグモグと食べ始める。ごくんっ、と飲み込み満足してお腹を擦るビオラ。
「さて、巣作り開始するか。 でもこの格好じゃ作業しにくいか」
ビオラは実家の巣から追い出されたときに着ていたワンピースを着ていた。「着替えとかあるかな?」と木箱を漁ると、なんと一着だけ服を発見した。
「作業服だけ…… 働け、ってお母さんのメッセージ?」
着替えが作業服だけという意図的なものを感じてビオラは苦笑いする。
「……ありがたく、着替えさせて頂きます」
ここに居ない母に礼を言ったビオラは早速着替える。作業着に着替えると何故だかちょっと気が引き締まった。
「うん、なかなか悪くないかな。 動きやすいし」
キュッと作業帽も被ったビオラは「よしっ!」と気合を入れる。
「世界に恵みをもたらす数多の精霊たちよ! 我にご加護を与えたまえ」
そしてビオラは妖精蜂が信奉する精霊に向かって呼びかけ、全身に魔力を籠めて祈りともとれる言葉を、目をクワっと見開いて発した。
「装具点検、ヨシ! ご安全にっ!!」
瞬間、彼女の体を淡い魔力の輝きが覆う。ビオラは防御力UP、集中力UP、素早さUP、器用さがUPした気がした。
多重のバフが掛かり、何だかやる気に満ちてきたビオラはブーンと再び岩場の頂上へ飛ぶ。
「うん、丁度いい固さまで乾いたッぽいね」
そう言うとビオラは、先ほど吐き出したクリーム状の分泌物を手に取ると岩の突端に持って行きペタペタと貼り付け始める。
何度も往復して貼り付け、クリームが無くなると再び吐き出して花粉団子で腹を満たすのを繰り返す。徐々に六角形の部屋が形作られていく。
「ふぅ…… 形はできた。でもまだ乾き待ちだね」
作業を終え、気が付くと日が暮れ始めていた。
「今日はここまでかな。 お腹減ったぁ」
出来たばかりの、たった一部屋しかない巣を満足そうに眺めたビオラは木箱のもとへと戻ると花粉団子を手に取って地面に座り齧る。
「疲れたぁ…… 眠い」
お腹が満たされて眠気に襲われたビオラは地面にゴロンと寝転がる。
「お部屋で寝たいけど、まだ固まってないし今日は仕方ないかぁ……」
目を瞑ると、ビオラはあっという間に眠りに落ちていった。
翌日。カプッという音と、ヌメッとした感触でビオラは目を覚ました。目を覚ましたはずなのに目の前は真っ暗である。
「うぉぉぉぉぉぉっ! え、ちょ、なに? 何事??」
ビオラは虫と間違えられて通りすがりのイグアナに噛みつかれていた。食べるものも少ない砂漠である。イグアナがビオラを捕食しようとしたのも無理はない。
頭がイグアナの口の中にスッポリと収まっているビオラは慌てて手足をバタバタとさせながら逃れようとする。そのビオラの危機感を、すぐそばに植えてあったショット大豆たちが感知した。
ショット大豆は銃口のような花弁をしている。その中に、実ったサヤの中の豆を装填していく。花弁をイグアナに向けると四株のショット大豆は一斉に豆を吹く。
ダダダダダダッ!!
銃弾のように放たれた豆の嵐にイグアナの体はあっという間にズタズタとなった。
「ぷはぁっ!」
力の失われたイグアナの口から、唾液でねちょっとなったビオラが頭を出す。ビオラが見ればイグアナの下半身は豆に吹き飛ばされて無くなっていた。
「げに恐ろしや、ショット大豆…… なんちゅう威力よ」
ビオラはイグアナの血肉が散乱する周囲を見渡し、次いですぐそばに転がっているイグアナの上半身を見て「うへぇ……」と嫌そうな顔をする。
「どっかに捨ててこよう……」
生まれて初めて、生き物の死体を見たビオラは嫌悪感をあらわにイグアナの死体を引きずって岩場の反対側まで来るとポイっとイグアナの死体を捨てる。
巣の近くに戻ってくるとイグアナの散乱した肉片には軽く砂をかけて見えないように処置をした。
「はぁ…… もう朝っぱらから。 やっぱり巣の中で寝ないとダメだね」
袖で額の汗を拭おうとしたところ、ねちょっとした感覚を思い出したビオラは慌ててウォーター芭蕉のところまで飛ぶと、花弁から水を掬って髪や顔を洗う。ついでに口をすすぎ、ガラガラっとうがいも済ませる。
洗面を終えて木箱のもとへ行き、花粉団子が入っている一抱え程の大きさの箱を取り出すと、手を突っ込み取り出すとモグモグと朝食を摂るビオラ。
運動したせいか、まだお腹が満たされないビオラは更に手を突っ込む。が、その手は空を掴んだ。
「ん? え……」
サッとビオラの顔から血の気が引いた。
―――――――――
工場などの現場作業員向けにありそうな安全啓発ポスター。
「蜜蝋はあるか。でももう固まっちゃってるね。 やっぱり自分で分泌して固まる前に作らないと」
ビオラは板状の大きな蜜蝋の塊を取り出すと、それを抱えて岩場の頂上まで飛び立つ。
岩場はおよそ二十メートルほどの高さがある。頂上まで来たビオラは蜜蝋の板を置き、先ほど巣を作ろうと思った張り出した岩を確認しに行く。
「うん、切れ目とかないし岩場とちゃんと繋がってる。 崩れたりする心配はなさそうね」
よしよし、と満足して頂上に戻ってきたビオラは「やるか……」と決意のこもった顔で呟く。そして勢いよく右手の人差し指と中指を口の中に突っ込んだ。
「ヴォエッ!! オロロロロロロロロロロロロロロロロロロッ!! おろろ……」
ビオラは蜜蝋の板の上に大量の白いクリーム状の分泌物を吐き出した。
フゥ、と口元を袖で拭ったビオラは「初めてだけど上手くできた」と言う。
「でもコレ、めっちゃお腹がへるわね」
お腹を押さえるビオラは一度、木箱にもどると花粉団子を取り出してモグモグと食べ始める。ごくんっ、と飲み込み満足してお腹を擦るビオラ。
「さて、巣作り開始するか。 でもこの格好じゃ作業しにくいか」
ビオラは実家の巣から追い出されたときに着ていたワンピースを着ていた。「着替えとかあるかな?」と木箱を漁ると、なんと一着だけ服を発見した。
「作業服だけ…… 働け、ってお母さんのメッセージ?」
着替えが作業服だけという意図的なものを感じてビオラは苦笑いする。
「……ありがたく、着替えさせて頂きます」
ここに居ない母に礼を言ったビオラは早速着替える。作業着に着替えると何故だかちょっと気が引き締まった。
「うん、なかなか悪くないかな。 動きやすいし」
キュッと作業帽も被ったビオラは「よしっ!」と気合を入れる。
「世界に恵みをもたらす数多の精霊たちよ! 我にご加護を与えたまえ」
そしてビオラは妖精蜂が信奉する精霊に向かって呼びかけ、全身に魔力を籠めて祈りともとれる言葉を、目をクワっと見開いて発した。
「装具点検、ヨシ! ご安全にっ!!」
瞬間、彼女の体を淡い魔力の輝きが覆う。ビオラは防御力UP、集中力UP、素早さUP、器用さがUPした気がした。
多重のバフが掛かり、何だかやる気に満ちてきたビオラはブーンと再び岩場の頂上へ飛ぶ。
「うん、丁度いい固さまで乾いたッぽいね」
そう言うとビオラは、先ほど吐き出したクリーム状の分泌物を手に取ると岩の突端に持って行きペタペタと貼り付け始める。
何度も往復して貼り付け、クリームが無くなると再び吐き出して花粉団子で腹を満たすのを繰り返す。徐々に六角形の部屋が形作られていく。
「ふぅ…… 形はできた。でもまだ乾き待ちだね」
作業を終え、気が付くと日が暮れ始めていた。
「今日はここまでかな。 お腹減ったぁ」
出来たばかりの、たった一部屋しかない巣を満足そうに眺めたビオラは木箱のもとへと戻ると花粉団子を手に取って地面に座り齧る。
「疲れたぁ…… 眠い」
お腹が満たされて眠気に襲われたビオラは地面にゴロンと寝転がる。
「お部屋で寝たいけど、まだ固まってないし今日は仕方ないかぁ……」
目を瞑ると、ビオラはあっという間に眠りに落ちていった。
翌日。カプッという音と、ヌメッとした感触でビオラは目を覚ました。目を覚ましたはずなのに目の前は真っ暗である。
「うぉぉぉぉぉぉっ! え、ちょ、なに? 何事??」
ビオラは虫と間違えられて通りすがりのイグアナに噛みつかれていた。食べるものも少ない砂漠である。イグアナがビオラを捕食しようとしたのも無理はない。
頭がイグアナの口の中にスッポリと収まっているビオラは慌てて手足をバタバタとさせながら逃れようとする。そのビオラの危機感を、すぐそばに植えてあったショット大豆たちが感知した。
ショット大豆は銃口のような花弁をしている。その中に、実ったサヤの中の豆を装填していく。花弁をイグアナに向けると四株のショット大豆は一斉に豆を吹く。
ダダダダダダッ!!
銃弾のように放たれた豆の嵐にイグアナの体はあっという間にズタズタとなった。
「ぷはぁっ!」
力の失われたイグアナの口から、唾液でねちょっとなったビオラが頭を出す。ビオラが見ればイグアナの下半身は豆に吹き飛ばされて無くなっていた。
「げに恐ろしや、ショット大豆…… なんちゅう威力よ」
ビオラはイグアナの血肉が散乱する周囲を見渡し、次いですぐそばに転がっているイグアナの上半身を見て「うへぇ……」と嫌そうな顔をする。
「どっかに捨ててこよう……」
生まれて初めて、生き物の死体を見たビオラは嫌悪感をあらわにイグアナの死体を引きずって岩場の反対側まで来るとポイっとイグアナの死体を捨てる。
巣の近くに戻ってくるとイグアナの散乱した肉片には軽く砂をかけて見えないように処置をした。
「はぁ…… もう朝っぱらから。 やっぱり巣の中で寝ないとダメだね」
袖で額の汗を拭おうとしたところ、ねちょっとした感覚を思い出したビオラは慌ててウォーター芭蕉のところまで飛ぶと、花弁から水を掬って髪や顔を洗う。ついでに口をすすぎ、ガラガラっとうがいも済ませる。
洗面を終えて木箱のもとへ行き、花粉団子が入っている一抱え程の大きさの箱を取り出すと、手を突っ込み取り出すとモグモグと朝食を摂るビオラ。
運動したせいか、まだお腹が満たされないビオラは更に手を突っ込む。が、その手は空を掴んだ。
「ん? え……」
サッとビオラの顔から血の気が引いた。
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工場などの現場作業員向けにありそうな安全啓発ポスター。
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