騎士という公務員になりたい僕は組織を抜けたい~能力は一つで剣を使わない多重万能能力の神速剣士~「お前はもう、死んでいる」

PENGUIN

文字の大きさ
3 / 24
多重万能能力の神速剣士

第3話 木刀でも僕の剣術ならお前を斬れる。(斬ってない)

しおりを挟む
 昨日、あの後、校舎裏、中庭、空き教室等々廻って最後に教室に戻ったけど手紙の差出人とおぼしき人とは会わなかった。

 今日の授業のほとんどは実技演習だ。そのため現在僕は校庭に出ている。一昨日魔人の襲撃があったのにも関わらず校庭は綺麗だった。戦いの後が何もない。
 この学校は特殊な結界に囲まれているため、学校が一晩で自動修復するらしい。ただ膨大な魔力がいるみたいだから大変な労力がいるとのこと。昨日、全校集会で校長が言ってた。

 さて、僕は騎士になるためこの学校に来た。だから僕は木刀を手にし、アーツィー君と手合わせしている。
 アーツィー君は僕よりやや強いくらいだ。この演習の中だと真ん中よりやや下くらいの位置にいる。それが僕の剣の腕前だ。
 ちなみにアーツィー君はこの演習の中だと上の下くらいの強さだ。え?アーツィー君と僕を比較する時、ちょっと盛ってないかって?いやいやぁ、まっさかぁ。

 そんな訳で只今絶賛、涼しい顔したアーツィー君の猛攻を僕は必死な形相をして受け流している。ア、アーツィー君…ちょっと君、いつもより激しくないか?昨日ラブレター(?)を貰った手前、僕はちょっとでもカッコいいとこ見せたいんだよ(怒) いや、今僕のこと見てるかわかんないけど。

「流石は僕の親友、アーツィー君。やるね」

「なに言ってんだよ。レルだって、国内5位の剣をここまで受け流してるじゃないか」

 そう、アーツィー君は魔法無しの剣術大会で国内5位。ただこの実技演習は魔法ありきの実戦向きの演習だ。だからこの演習の中では上の下くらいになってしまう。大会ルールの魔法無しならこの演習の中では1番だと思う。

「ハハハッ、なんだか段々楽しくなってきたよ。もっと速度を上げるね」

「!?」

 いや、待って。きついんだが?もうきついんだが?僕のこの顔見てそのセリフ言ってる?ねぇ?もう、きついんだよ。ぎりぎりなんだよ。今日はちょっと頑張ってるだけだよ。良いとこ見せたいから。

 そんな僕の心の叫びを無視するかのように剣速が上がる。攻撃パターンも増える。

「くっ」

 思わず声が上がる。ホントにギリギリ堪える。だが、ここまで。アーツィー君の得意技、突き攻撃が放たれる。
 僕の腹に木刀が突き刺さる。僕はくの字に折れ曲がり、胃から吐き出しそうになったものを無理矢理飲み込む。

「うっ…、くっ。…はぁ、はぁ、はぁ…」

「あー、レル君大丈夫?レル君があんまりにも俺の攻撃凌ぐからつい本気出しちゃったよ」

 アーツィー君が僕の背中をさすってくれてる。いや、吐くからやめて。苦しくて声が出せない。あと、つい本気を出さないでくれない?アーツィー君。

 …僕は少しの間、喘いだあとアーツィー君につげる。

「僕、しばらく保健室で休んで来るよ」

「大丈夫?俺も行こうか?」

「いや、いいよ。僕一人で行ける。次の演習開始時間までには戻るよ」

「ああ、わかった」


 僕は木刀を手にしたまま保健室へ向かう。


 この学園の実技演習では自分の武器は使えない。演習に熱くなりすぎた生徒達が手加減せずに斬り合って互いに大怪我をしたことがあるからだ。だから演習前に先生がみんなの武器を回収して、模造刀をみんなに渡す。
 僕は模造刀じゃなくて木刀だけど。アーツィー君は僕に合わせて木刀を使っていたけど彼の本来の武器は彼オリジナルのロングソードだ。
 


 保健室前まで腹部を擦りながらたどり着いた僕は中に入ってベットで休もうと思い、ドアを開ける。するとそこには結界が張ってあった。
 保健室内だけという限定的な結界だ。これは遮音結界か。結界の内外の音を遮断するだけの結界。

 中に踏み入れるとそこには悪魔が半分服が脱げている女子生徒をベットに押し倒していた。悪魔といってもこいつはサキュバスか。
 
「んふふ。可愛い娘。食べちゃいたい」

「い、いやー! だ、誰かぁー! 誰か助けてぇー!!!」

「ふふ。可愛い悲鳴。私が結界を張ったから誰も助けに来ないわよ」

「ひ、や、やー! やめて!!! ………八ッ! 保健室の先生は!?」

「アぁー、ホント可愛い。ここにいた年増は今頃お寝むよ。私、年増に興味ないのよ。だから、ね?年増はお寝む中」

「へ?」

「あぁ!その表情とてもいいわ!」

 とかなんとか会話している。僕はただベットで横になりたいだけなんだけど。
 あと、保健室の先生のことを年増とか言うのはタブーだから。あの人に言わせれば29歳はまだ『ピチピチの20代』だから。あの人に年齢と独身のことツッコムのはマジで怖いからやめとき。

 あ、僕に気付いた。

「んもう! 誰よあんた!」

「え? え!?」

「折角良いところだったのに。邪魔をした報いを受けて貰うわ」

「た、助けて! お願いです! 助けて下さい。うぅ、ひっぐ、えっぐ、うぅ…」

「あぁーあ。しらけるわーこの展開。この表情。…私、可愛い女の子の絶望して泣き叫ぶ表情を見ながらその子にエッチなことするのが大好きなのよねぇ。だから、さぁ!!! あんたという希望が死ねば、この子は絶望してくれるよねぇ!?」

 僕はちょっと疑問に思っていたサキュバスって男を襲う悪魔じゃなかったっけ?という問いを勝手に答えてくれた。このサキュバスはそっち系の子か。
 そんなどーでもいいことを考えながら、僕は手に持っている木刀でホームラン予告みたいなポーズをとる。

「アッハハハハ、アハハハハッ。ぼ、木刀!?そんなもんで私を殺せるとでも思ってんの?ただの木の棒じゃ私を斬ることもできないんじゃない?アハハハハッ。おっかしー。アハハ」

「いや、できるよ」

「?」

「木刀でも僕の剣術ならお前を斬れる。そしてお前を殺せる」

「アッハハハハ。あんた悪魔を笑わせる才能はあるよ。いいよ、斬れるもんなら斬ってみな!そして私を殺してみせな!」


 ビュン!
 

 僕は木刀を降り下ろす。そしてサキュバスに背を向ける。

「な!? あんた何してんだ? 馬鹿にしてんのか!?」

「馬鹿になんかしてないよ。それにお前はもう斬った。だから『お前はもう、死んでいる』」

 僕は木刀をゆっくり腰に差していく。ゆっくり、ゆっくり。徐々に、徐々に。タイミングを合わせて…。













 3


「は、ハァ!?」


 2


「斬ったあぁ?」


 1


「まだ間合いにさえ入って-」


 スッ。


「なァアガガアアァイイィ!!!」

 サキュバスは大量の血を吹き出し消滅する。悪魔は魔人と違い、死ねば霧散するものだ。魔人は死体が残って後処理が面倒。

 あーあ。ベット3つあんのに3つとも血だらけじゃん。仕方ない。教室で座って休むか。ちなみに襲われていた女の子は放置した。リザさんに任せるとしよう。









「あれが噂のマルチデリーター。組織の人間が気付けないような小さく、ごく限定的な結界を素早く察知し、保健室に行く口実のため、わざと演習中にダメージを負い、人が襲われるすんでの所で助けに入る。これが組織のナンバーワンか…」

 じゅるりと舌舐めずりをする双眼鏡を持った女の子が呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...