騎士という公務員になりたい僕は組織を抜けたい~能力は一つで剣を使わない多重万能能力の神速剣士~「お前はもう、死んでいる」

PENGUIN

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爆裂業雷の純白魔女

第16話 ウルフィリア平原『爆裂業雷の純白魔女』誕生(味方からの新しい呼び名)

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「ここではいつも通りの爆裂魔法か雷魔法でやることにするわ。あと、汚れずにミッション成功させるってのを継続でやってみせようかしらね」

 彼女はウルフィリア平原の上空に漂っていた。そ、今回もまた私でぇーす! え? うれしい? ねぇ? うれしい?


「お? いたいた。ここ、無駄にだだっぴろいから探すのが面倒なのよねぇ」

 そう言い終わった彼女は指パッチンをする。すると彼女が遠目で見つけたモンスターがぜた。あー、きたない花火。

「はい一体しゅーりょー」

 彼女はダルそうな表情をしていた。はぁ、さっきのとこみたいに一ヵ所に固まっててくれれば楽なのに。ウルフィリア平原って名称だけど、森とか山とかダンジョンとかも一括ひとくくりにしてるのよね~、ここ。

「んー、たしかここは『間引け』ば良いのよね。さっきのとこと違って一体一体魔力量計りながらだからホントめんどくさい。……って、愚痴ってても仕方ないか。サーチ」

 探知魔法を使用するが反応がない。あー、やっぱり? 範囲が広すぎるのと漂う魔力が異質なせいで、常に探知自体が阻害されてるようなものね。

「『龍脈』っていったっけ? 私あんまそーゆーの詳しくないのよねー。たしかそんなやつがここを通ってるから魔力がオカシイし、そのオカシイ魔力にあてられてモンスターが突然変異して強くなるんだったっけ? ま、私のミッションはその強いモンスターを消していけば良いのよね」

 彼女はホウキに腰掛けて空を移動しながら呟く。私もそのになるのよね。

「人種なのにこんなに魔力があるし、全属性を使えるなんて『化物ばけもの』よね……」

 顔をうつむかせ彼女は少し感傷に浸る。が、すぐに彼女は顔を上げ、トンチンカンなことを言い出す。

「ま、と言っても、マルチデリーターっていう『本物の化物』の存在を知っちゃえば私なんて化物なんて呼べる程強くないわよね。本当にただの剣技だけで私を超えちゃう本当の化物」

 剣技なんて使ってない彼の剣技を絶賛する彼女。そう、私なんて彼の剣に劣るただの魔法使いよ。

「多重万能能力がるのにその一部の能力しか組織は知らないし、ターゲット始末時は剣しか使わない……いや、十分なのよね」

 能力は一つで剣も使ってない。転移や空を飛んだりはしてないようだから使ようだけど、それでも私の魔法より他の能力の方が上みたいなのよね。

「ん? 『万能能力』のはずなのにそれらが使? ……!? そ、そうよ!!」

 ま、まさか、気づいた!? そう……私は気付いてしまった。彼の能力に。

「使う必要が無いから使だけなのよ! 転移とか空を飛ぶとかっていう『万能能力』が使なんてことないわ」

 そんな能力無い。きっとそうね、そうに違いないわ。もし使ってたら私のこういうミッションも彼がやってしまって私や転移持ちの仕事がなくなっちゃうもんね。そう考えると彼って優しいのかも? それとも力あるのに使わない系の人で何も考えてないって思った方がいいのかな?

 彼女はそんなことを考えながら月明かりに照らされた夜の平原を飛行する。時速で目視で発見した魔力量が高い敵を爆裂魔法か雷魔法で始末しながら--。

















「にしてもほんっっっと広いわねぇ。もう五十体以上は見つけて来たのにぃ」

 そう言う彼女は無傷で始末してきていた。と、いうのもモンスターが彼女に気付いた時には『もう死んでいる』からだ。

「あ、洞窟はっけん。そろそろナザル森林に行かないといけないのよね。もうここに居る標的をやったら向かっちゃお」

 彼女は洞窟の入口まで高度を下げる。ただし地面に足はつけない。汚れるから。そんな理由。彼女は見通しの悪い洞窟の中を覗き込む。

「うへぇ。思った以上に難所かも。でもやりがいはありそうね。『魔法障壁常時エーティーフィールド』展開……さぁ、汚れずに終わらせますか」

 ホウキに座ったまま洞窟に入っていく。魔法で辺りを照らしながら進んで行くとスライムやゴブリンといったザコモンスターが出て来て攻撃を仕掛けるが『エーティーフィールド』によって彼女に攻撃は届かない。
 ザコはこのミッションでは標的ではないため無闇に殺せない。だけど傷は付けられたくない。っていうか、汚れたくない。
 そんな考えで攻撃を無視され続け……無効化され続け、攻撃疲れたモンスター達はへばって座り込んでしまう。

「まったく、ザコモンスターはやっぱり根性無いわね~。よわいよわい。お? もうそろそろでボスって感じ?」



---

 ここにいるのはザコモンスターなんかではない。ウルフィリア平原という地は『大地に流れる魔力の通り道』--龍脈がある。そしてここに流れる龍脈は他の龍脈より太く、そして色濃い。その龍脈の影響を受けたモンスターは突然変異を遂げ、進化する。
 龍脈は地中深くになればなるほど濃い魔力が流れている。では、洞窟。……そう、と続いている洞窟があったとしよう。その洞窟の中は外より濃い魔力が流れている。さらには外とは違い、風で空へと霧散していくことなく洞窟内で循環し、さらに魔力が濃くなる。


 なら、そこで産まれたモンスターは弱いのか?


 否、強い。ただのゴブリンだろうと一体でC級ハンターを凌ぐ強さを持っている。通常のゴブリンは馴れてしまえばハンターランクの下から二番目のE級ハンター一人で30体1くらいはさばける。だが、突然変異体のゴブリンは一体でB級ハンターと互角。戦闘センスや武器の扱い方、そして知能がB級ハンター並である。
 B級ハンターは武器や職業が熟練の領域にある証だ。B級ハンターで剣を使っているのなら剣を教える師範代を名乗って剣術道場を開けるレベル。ちなみにルークさんは準A級ハンターのライセンスを持っている。
 話を戻そう。つまり突然変異体のゴブリンは武器や職業の師範代レベルの化物であるということである。

 スライムにいたってはF級ハンターどころか村人Cみたいな人でも倒せるモンスター。でもそれはもちろん通常のスライムの話。
 突然変異体のスライムは溶かす。攻撃しようにも剣は溶かされ、防御しようにも盾も防具も溶かされ、あげくそのまま体を溶かされる。魔法攻撃でさえ魔力を喰われ、スライムがより大きくなってしまう。そんな化物。

 そして、その洞窟の最深部ではより濃い魔力が満ちていて、洞窟の入口付近にいたモンスターより遥かに強いモンスターがいるのは道理である。



 え? 今までのそんな化物モンスターの攻撃をし続けて一番奥まで来れる化物がいるって? え、どこに? そんなやついるわけないじゃない。ましてや最深部のモンスターをたったいち……--。

---

「うわー、広いわねぇ。なんかキラキラ光っててキレイね、ここ。あ、あの色した結晶とかもいいかも。んー、たしか名前は……」

「まずはここまで来れたことを褒めてやろう」

 突然響く低い声。ここはただの石が龍脈の魔力を浴びてそれが結晶となり発光して辺りを照らしている。そしてその結晶が散らばる空間の奥。そこから人の言葉で彼女に話かけられた。

「ここってやっぱり魔力がオカシイからモンスター一体一体の魔力量測って倒すってのが出来ないのよねぇ。あー、よかった。あんたみたいに分かりやすく強そうなやつがいてくれて。ウルフィリア平原ここでのミッションはとりあえずあんたをやれば完了ね」

「ほう、我の魔力の波動を浴びて怯むどころか啖呵たんかを切ってこようとは。ふむ、ここまで辿り着けるだけの強者ということか」

 彼女が話しているは魔人。それも突然変異体の。魔人は個体差が激しいが、たった一体でもA級ハンターのパーティーが決死の覚悟で挑む化物モンスター。それが突然変異体ともなれば魔王といわれてもおかしくはない。それくらい強い。

「悪いけど戦って汚れたくないから一撃で死んでもらうわよ」

「ぬ、ヌハハハハハ!! 我を一撃で葬るだと!? 嗤わせてくれるわ! 小娘が!!」

「『死してなお、死を--』」
「ヌン!」

 彼女が呪文を紡ぎ、魔人が彼女に急接近し攻撃を仕掛ける。が--。

「『エーティーフィールド』だと!? ばかな!? 人間が! 人間ごときが使える魔法ではない!!」
「『--時とともに、過去にして--』」

 魔人が狼狽うろたえ、驚いた表情であとずさる。彼女はなんてことのない表情で呪文を続ける。

「!! 我が……我が下がる……だと!? ふ、ふざけるな!」
「『--黄泉に還りしは、死の--』」

 魔人は拳を握り締め、彼女に殴りかかる。ラッシュラッシュ。殴る蹴るのラッシュの嵐。魔法で強化された魔人の攻撃で彼女の周りの壁や床はその余波で壊れ崩れていく。だが、彼女は無傷で服に汚れ一つ付いてない。そして彼女は呪文を続ける。

「な、なんなのだ。なんなのだ貴様は!? ハッ! そしてその呪文は何の呪文なんなのだ!? 我は聞いたことないぞ! その呪文」
「『--始まりは死で、終わりは死--』私はただの魔法使いよ。で、この魔法はくらってみれば分かるわよ」

 魔人は彼女の呪文がそろそろ終わるのを感じ距離をとり身構える。彼女は呪文の最後のセリフを言う。

「く! 『エーティーフィールド』出力最大!! そして前面展開!! これで貴様の魔法を受けきってみせよう!」
「『--始まりは爆発、次に光--』あんた、良い度胸してるじゃない? でも私の魔法を受けきれないわよ。『--爆裂業雷マキシエクスプロージョン』」

 彼女の攻撃が魔人に届き、『エーティーフィールド』に亀裂が走り砕け散る間際……魔人が敗北を認めた時に魔人は思わず口にしてしまう。

「バ、バケモノめ!!」

「だ、誰がバケモノよ! 見た目はあんたの方がバケモノじゃない!!」




















「あんたは本当の化物を知らないから私のことをバケモノって呼ぶのよ。彼を知ったら私なんて、なんてことないただのか弱き乙女よ」


















 大爆発と共に洞窟は崩壊し、ウルフィリア平原に洞窟というものが消えた。

 彼女の今の魔法は彼女が爆裂魔法と雷魔法を混ぜて創ったオリジナル魔法。では、彼女が得意な魔法同士を混ぜて創った魔法なら威力は--。

「標的の始末を確認。……って、洞窟ごとやっちゃったわ。どうしよう。ま、いいや、どうせ後処理班がなんとかしてくれるでしょ。さ、次行きましょ。次!」





 彼女の爆裂業雷魔法を見た者がいた。そして彼女が白い服を汚さずに化物を吹き飛ばしたところを知った者もいた。それらは新魔王軍の配下の者でもあった。

「『組織の白い化物』め……」

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