22 / 69
本編
22 軽口
しおりを挟む
「嬢ちゃん、今日も可愛いな!」
「ありがとうございます!ニックさんも、とっても格好いいですよ!」
朝、屋敷に向かう途中で見かけたニックさんと挨拶を交わす。
使用人同士のこういう軽口は好きだ。全然本気じゃないってわかっているから。
前の屋敷でもよくやった。
バト爺は、私に可愛いって言ったり、既婚のマリアさんに「死んだ婆さんと出会っていなければ…」なんて言ってよく褒めてた。
私も小さい頃には、使用人のみんなにプロポーズをして回ったりしたものだ。
その日は、ニックさんとリンツさんとお昼が一緒になった。
「俺もそろそろいい年だ」なんてニックさんが言うので、なんとなく聞いてみた。
「ニックさんは結婚しないんですか?」
「俺か?俺はなぁ…なんというか、花嫁候補に逃げられた…?」
「え…冗談…?」
「ではなく」
ニックさんは珍しく、少し苦そうに笑った。リンツさんも、苦笑していた。
悪いことを聞いてしまったかもしれない。
「…その人は惜しいことをしましたね」
「………そう思うか?」
「そりゃそうですよ。ニックさんならきっといい人が見つかります!保証します!」
せめて励まそう。
「そうか…ならいっそ嬢ーー」
「おい、ニック!」
リンツさんが、何か言いかけたニックさんを肘でつついて止めた。
なんだろう。嫁探しの旅にでも出るのかな?
この地で応援してますよ!
ちなみにリンツさんは
「結婚するなら、俺の作った菓子を美味そうに食う女だな」
って言ってた。
「そんなの世の中の女性全員じゃないですか」
って呆れたら、何故か大きなため息をつかれた。ニックさんにまで。
なんでだろう。それくらい本当に、リンツさんのお菓子は美味しいのに。
「エイミーの理想の男性はどんな人?」
この日はどうしてだか、休憩中におしゃべりしていたハルさんとまでそういう話題になった。
「私ですか?」
理想の男性…考えたことなかった。
お父様みたいな頼りない人は論外だから…
「うーん…しっかり稼ぎのある人、でしょうか…」
「エイミーらしいね」
苦笑されてしまった。
ちょっとムッとする。大事なことなのに。
お金、とっても大事。
「そういうハルさんは?」
「僕?そうだなぁ…一緒にいて楽しい子、かな?」
「ああ、それは大事ですよね!」
納得して大きく頷いた。
私もそうかもしれない。次誰かに聞かれたら、そう答えよう。
そんなことを考えていたら、
「僕はエイミーといると楽しいよ」
…………豪速球が飛んできた。
ニコニコ笑ってるし深い意味なんて無いんだろうけど、この流れでそういうこと言うのはやめて欲しい。勘違いしてしまいそうになるから…。
うっかり赤くなった顔を背けて隠した。
「ありがとうございます!ニックさんも、とっても格好いいですよ!」
朝、屋敷に向かう途中で見かけたニックさんと挨拶を交わす。
使用人同士のこういう軽口は好きだ。全然本気じゃないってわかっているから。
前の屋敷でもよくやった。
バト爺は、私に可愛いって言ったり、既婚のマリアさんに「死んだ婆さんと出会っていなければ…」なんて言ってよく褒めてた。
私も小さい頃には、使用人のみんなにプロポーズをして回ったりしたものだ。
その日は、ニックさんとリンツさんとお昼が一緒になった。
「俺もそろそろいい年だ」なんてニックさんが言うので、なんとなく聞いてみた。
「ニックさんは結婚しないんですか?」
「俺か?俺はなぁ…なんというか、花嫁候補に逃げられた…?」
「え…冗談…?」
「ではなく」
ニックさんは珍しく、少し苦そうに笑った。リンツさんも、苦笑していた。
悪いことを聞いてしまったかもしれない。
「…その人は惜しいことをしましたね」
「………そう思うか?」
「そりゃそうですよ。ニックさんならきっといい人が見つかります!保証します!」
せめて励まそう。
「そうか…ならいっそ嬢ーー」
「おい、ニック!」
リンツさんが、何か言いかけたニックさんを肘でつついて止めた。
なんだろう。嫁探しの旅にでも出るのかな?
この地で応援してますよ!
ちなみにリンツさんは
「結婚するなら、俺の作った菓子を美味そうに食う女だな」
って言ってた。
「そんなの世の中の女性全員じゃないですか」
って呆れたら、何故か大きなため息をつかれた。ニックさんにまで。
なんでだろう。それくらい本当に、リンツさんのお菓子は美味しいのに。
「エイミーの理想の男性はどんな人?」
この日はどうしてだか、休憩中におしゃべりしていたハルさんとまでそういう話題になった。
「私ですか?」
理想の男性…考えたことなかった。
お父様みたいな頼りない人は論外だから…
「うーん…しっかり稼ぎのある人、でしょうか…」
「エイミーらしいね」
苦笑されてしまった。
ちょっとムッとする。大事なことなのに。
お金、とっても大事。
「そういうハルさんは?」
「僕?そうだなぁ…一緒にいて楽しい子、かな?」
「ああ、それは大事ですよね!」
納得して大きく頷いた。
私もそうかもしれない。次誰かに聞かれたら、そう答えよう。
そんなことを考えていたら、
「僕はエイミーといると楽しいよ」
…………豪速球が飛んできた。
ニコニコ笑ってるし深い意味なんて無いんだろうけど、この流れでそういうこと言うのはやめて欲しい。勘違いしてしまいそうになるから…。
うっかり赤くなった顔を背けて隠した。
611
あなたにおすすめの小説
俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。
結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした
三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。
書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。
ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。
屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』
ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく――
※他サイトにも掲載
※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!
ブサイク令嬢は、眼鏡を外せば国一番の美女でして。
みこと。
恋愛
伯爵家のひとり娘、アルドンサ・リブレは"人の死期"がわかる。
死が近づいた人間の体が、色あせて見えるからだ。
母に気味悪がれた彼女は、「眼鏡をかけていれば見えない」と主張し、大きな眼鏡を外さなくなった。
無骨な眼鏡で"ブサ令嬢"と蔑まれるアルドンサだが、そんな彼女にも憧れの人がいた。
王女の婚約者、公爵家次男のファビアン公子である。彼に助けられて以降、想いを密かに閉じ込めて、ただ姿が見れるだけで満足していたある日、ファビアンの全身が薄く見え?
「ファビアン様に死期が迫ってる!」
王女に新しい恋人が出来たため、ファビアンとの仲が危ぶまれる昨今。まさか王女に断罪される? それとも失恋を嘆いて命を絶つ?
慌てるアルドンサだったが、さらに彼女の目は、とんでもないものをとらえてしまう──。
不思議な力に悩まされてきた令嬢が、初恋相手と結ばれるハッピーエンドな物語。
幸せな結末を、ぜひご確認ください!!
(※本編はヒロイン視点、全5話完結)
(※番外編は第6話から、他のキャラ視点でお届けします)
※この作品は「小説家になろう」様でも掲載しています。第6~12話は「なろう」様では『浅はかな王女の末路』、第13~15話『「わたくしは身勝手な第一王女なの」〜ざまぁ後王女の見た景色〜』、第16~17話『氷砂糖の王女様』というタイトルです。
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
小石だと思っていた妻が、実は宝石だった。〜ある伯爵夫の自滅
みこと。
恋愛
アーノルド・ロッキムは裕福な伯爵家の当主だ。我が世の春を楽しみ、憂いなく遊び暮らしていたところ、引退中の親から子爵家の娘を嫁にと勧められる。
美人だと伝え聞く子爵の娘を娶ってみれば、田舎臭い冴えない女。
アーノルドは妻を離れに押し込み、顧みることなく、大切な約束も無視してしまった。
この縁談に秘められた、真の意味にも気づかずに──。
※全7話で完結。「小説家になろう」様でも掲載しています。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
地味で無才な私を捨てたことを、どうぞ一生後悔してください。
有賀冬馬
恋愛
「お前のような雑用女、誰にでも代わりはいる」
そう言って私を捨てたディーン様。でも、彼は気づいていなかったのです。公爵家の繁栄を支えていたのは、私の事務作業と薬草の知識だったということに。
追放された辺境の地で、私はようやく自分らしく生きる道を見つけました。無口な辺境伯様に「君がいなければダメだ」と熱烈に求められ、凍っていた心が溶けていく。
やがて王都で居場所をなくし、惨めな姿で私を追いかけてきた元婚約者。
「もう、私の帰る場所はここしかありませんから」
絶望する彼を背に、私は最愛の人と共に歩み出します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる