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本編
50 兄弟
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親父の部屋を出てしばらく歩くと、ハルに呼びとめられた。
「余計なことはするな。彼女は僕がもらう」
向けられる強い視線。
不安も迷いも、悲しみだってあるだろうに。
これが若さってやつなのかね
心の中で独りごちた。
ハルと俺は、そう大して歳は変わらない。けれど長年兄として振舞ってきたせいか、いつの間にか安全マージンを大きく取る癖がついてしまった。弟に格好悪いところは見せたくなくて。
だから
俺にはできねぇな。
こいつみたいに突き進むことは。
もう、無理だとあきらめた。
嬢ちゃんは、こいつのもんだ。
どうしようもない。
嬢ちゃんに対して、こいつと同じ熱量の気持ちを持つことは、俺にはできない。
だから、これ以上どうあがこうと嬢ちゃんはこいつのもんだ。
ため息を吐く。
それでも、惚れた女を攫っていくこいつが可愛いのだから、兄ってのは損なもんだ。
もう一度、ため息をついて首を振った。
「わかったよ。俺は何もしない」
両手を上げて、肩を竦めてみせる。
もともと何をする気もなかったけどな。
嬢ちゃんは、抜けてるところもあるが基本的には異様にシビアなものの見方をする。
だから、もしハルとこの家を逃げ出したりすれば、ハルをとんでもなく厳しい状況に突き落とすことは、よくわかっているはずだ。
だから嬢ちゃんには、そんなことはできないだろう。
……好きな相手に、そんな真似…。
だからきっと、親父が満足するような行動を取るはずだ。腹をくくって責任を取って……
そうしたら、嬢ちゃんは……
ハルをその場に置いて立ち去る。
全身の毛を逆立てて威嚇する子猫みたいな視線を背中に感じて苦笑した。
気落ちしながら歩いていたら、いきなりリンツが肩に腕を回してきた。
「おつかれ」
ニヤニヤ笑う顔をジロリと睨む。しかし奴は、俺の視線など気にした様子もない。
「今夜は飲むか」
そんな事を言ってきた。
じっと見つめると、微かな苦笑が返ってきた。
そうか。こいつも嬢ちゃんのこと割と…
「そうだな。飲むか」
俺もリンツの肩に腕を回した。
こいつはこいつで嬢ちゃんの争奪戦からは早々に降りていたけれど、今の俺と似たような心境だったのかもしれない。
可愛い弟に譲ってやろうって…。
「あ、あたしも付き合ってあげるわよ!」
角で待ち構えていたのか、いらない奴までついてきた。
ララはある意味当事者じゃない。気楽な立場だ。まぁ、万が一エイミーが屋敷から追い出されるような事になれば、荒れるだろうが。
無駄に傷を抉られたくはないが、こういう時に一人じゃないってのは悪くない。
三人で明け方近くまで飲んで、頭痛と寝不足で怠い体を、部門長に怒られた。
ララも眠そうにしていたけど、あいつだけちゃっかり今日は休日だった。くそっ…。
「余計なことはするな。彼女は僕がもらう」
向けられる強い視線。
不安も迷いも、悲しみだってあるだろうに。
これが若さってやつなのかね
心の中で独りごちた。
ハルと俺は、そう大して歳は変わらない。けれど長年兄として振舞ってきたせいか、いつの間にか安全マージンを大きく取る癖がついてしまった。弟に格好悪いところは見せたくなくて。
だから
俺にはできねぇな。
こいつみたいに突き進むことは。
もう、無理だとあきらめた。
嬢ちゃんは、こいつのもんだ。
どうしようもない。
嬢ちゃんに対して、こいつと同じ熱量の気持ちを持つことは、俺にはできない。
だから、これ以上どうあがこうと嬢ちゃんはこいつのもんだ。
ため息を吐く。
それでも、惚れた女を攫っていくこいつが可愛いのだから、兄ってのは損なもんだ。
もう一度、ため息をついて首を振った。
「わかったよ。俺は何もしない」
両手を上げて、肩を竦めてみせる。
もともと何をする気もなかったけどな。
嬢ちゃんは、抜けてるところもあるが基本的には異様にシビアなものの見方をする。
だから、もしハルとこの家を逃げ出したりすれば、ハルをとんでもなく厳しい状況に突き落とすことは、よくわかっているはずだ。
だから嬢ちゃんには、そんなことはできないだろう。
……好きな相手に、そんな真似…。
だからきっと、親父が満足するような行動を取るはずだ。腹をくくって責任を取って……
そうしたら、嬢ちゃんは……
ハルをその場に置いて立ち去る。
全身の毛を逆立てて威嚇する子猫みたいな視線を背中に感じて苦笑した。
気落ちしながら歩いていたら、いきなりリンツが肩に腕を回してきた。
「おつかれ」
ニヤニヤ笑う顔をジロリと睨む。しかし奴は、俺の視線など気にした様子もない。
「今夜は飲むか」
そんな事を言ってきた。
じっと見つめると、微かな苦笑が返ってきた。
そうか。こいつも嬢ちゃんのこと割と…
「そうだな。飲むか」
俺もリンツの肩に腕を回した。
こいつはこいつで嬢ちゃんの争奪戦からは早々に降りていたけれど、今の俺と似たような心境だったのかもしれない。
可愛い弟に譲ってやろうって…。
「あ、あたしも付き合ってあげるわよ!」
角で待ち構えていたのか、いらない奴までついてきた。
ララはある意味当事者じゃない。気楽な立場だ。まぁ、万が一エイミーが屋敷から追い出されるような事になれば、荒れるだろうが。
無駄に傷を抉られたくはないが、こういう時に一人じゃないってのは悪くない。
三人で明け方近くまで飲んで、頭痛と寝不足で怠い体を、部門長に怒られた。
ララも眠そうにしていたけど、あいつだけちゃっかり今日は休日だった。くそっ…。
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