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参章
激動の始まり
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ウィン。
司令部の自動ドアが開き、セリザワとオザワが入ってくる。
「司令、お戻りですか。」
横からひょいと声をかけてきたのは副司令官であるオキタ。
「すまない。それで、奴はどうなった。」
「はい。現地からの報告によると隊員二名を殺傷したのち、付近に居た少年を連れてどこかへ走っていったようです。」
「では詳しい現在地は不明というわけか。」
「司令、少年が連れていかれたことについては気がかりではないのですか。」
セリザワのすでに知っていたかのような反応にオキタは引っかかっていた。
「いや、もちろん許してはいけない事案だ。現在地の特定を急ぐように。」
「承知しました。」
国家安全保障庁庁舎
国家安全保障庁庁官室。
「失礼いたします。」
トウドウが庁官室のドアを開ける。
「どうぞ。かけなさい。」
トウドウがソファーへと腰を掛ける。
「防衛部の方はどうも大荒れだそうじゃないか。なんでも防衛部で飼っていたバケモノたちが脱走しているとか。死傷者もじき10名に上るようだし、一体どうするつもりだ。もう防衛部だけではどうもできんぞ。」
そう詰め寄るのは国家安全保障庁庁官であるウシオ。
「ええ。そこで一つ、お願いしたいことがあるのです。」
改まってトウドウが静かに語りだす。
「奴は今一人の少年をいわば誘拐しています。隊員にも死傷者を出している旨…」
トウドウがウシオの目をじっと見つめる。
「重要指名手配犯として警察、国民の手もお借りしたい。」
ウシオがふっと笑う。
「指名手配とは考えたな。私も内閣も防衛隊の解散は望まない。わかった。警察庁とは私が話をつけよう。」
二人は強く握手を交わした。
国家安全保障庁庁舎。
司令本部。
「そうですか。承知しました。失礼します。」
セリザワが受話器を下す。
「長官ですか。」
オキタがセリザワに聞く。
「ああ。今回正式に奴を重要指名手配犯に認定。警察庁も捜査に全面協力するそうだ。」
「しかし、動きが速いですね。先の事案発生からまだ1,2時間程度だというのに。」
オキタが不思議そうな顔をする。
「何はともあれ、これで捜査も少しは楽になるだろう。よかった。」
セリザワの妙に落ち着いた様子にもまた、不思議そうな顔をする。
セリザワがちらりとオザワのほうをみる。
まるで生気を失ったかのようにどこか一点を見つめている。
そうしていると別な本部員が話しているのが聞こえてくる。
「そういえば防衛隊内で一人、急に行方不明者が出たらしい。捜索は上からの圧力で禁止されてるそうだ。闇深いよな。」
その話を耳にしたセリザワは少し嫌な予感がした。
神奈川県川崎市内。
戦闘後、ひたすら走り続けてきたハヤカワと少年は、同市内の人気のない場所で空き家を見つける。
戦闘と走ったことに加え精神的な疲労からも、その空き家で休むことにした。
ガラガラ。少年がドアを開け、玄関先に腰を掛ける。
ハヤカワは改めて手のひらを見る。
つけているグローブはすでに元の色を失い、赤く滲んでいる。
「また俺は人を殺した。なぜ殺した。あいつらは俺を撃った。殺そうとした。だから殺したんだ。なぜ俺は生きている。なぜ。。。」
ハヤカワの精神は限界であった。
「僕を守ってくれたじゃない。」
少年がヘルメット越しに頭を抱えるハヤカワに声をかける。
「君は俺が怖くないのか」
助けを求めるように、ハヤカワが少年に聞く。
「助けてくれたヒーロー。それをなぜ怖がるの。」
「俺が。ヒーロー。」
ハヤカワは心救われたようについに涙を流した。
「僕、家出してきたんだ。田舎から。やっと東京に来たと思ったらあんなことがあって。」
少年があの場にいた事情を話し始める。
「なぜ君は防衛隊に狙われていたんだ。」
ハヤカワが聞くと少年は笑顔で
「わからない。わからないけど僕には兄ちゃんがいる。もう何も怖くない。」
ハヤカワがそっとヘルメットを外す。
そして少年の目をまっすぐ見つめる。
「君は俺と同じか。決めたよ。俺は君を守ることにする。防衛隊の手には渡さない。何があっても。」
「同じ?」
「そう、同じだ。」
ハヤカワはフッ、と軽く笑う。
そうすると少年はカメラを構える。
パシャッ。
「いい顔してるね、ちゃん。フーンフーンフフンフン、たがーためにーたたかうー。」
鼻歌を歌う少年を見て、改めて少年を守る決意する。
「さあ、ここを出よう。いつまでもここに居てはいずれ場所が割られてしまう。」
「うん。どこまででも行くよ、兄ちゃん。」
司令部の自動ドアが開き、セリザワとオザワが入ってくる。
「司令、お戻りですか。」
横からひょいと声をかけてきたのは副司令官であるオキタ。
「すまない。それで、奴はどうなった。」
「はい。現地からの報告によると隊員二名を殺傷したのち、付近に居た少年を連れてどこかへ走っていったようです。」
「では詳しい現在地は不明というわけか。」
「司令、少年が連れていかれたことについては気がかりではないのですか。」
セリザワのすでに知っていたかのような反応にオキタは引っかかっていた。
「いや、もちろん許してはいけない事案だ。現在地の特定を急ぐように。」
「承知しました。」
国家安全保障庁庁舎
国家安全保障庁庁官室。
「失礼いたします。」
トウドウが庁官室のドアを開ける。
「どうぞ。かけなさい。」
トウドウがソファーへと腰を掛ける。
「防衛部の方はどうも大荒れだそうじゃないか。なんでも防衛部で飼っていたバケモノたちが脱走しているとか。死傷者もじき10名に上るようだし、一体どうするつもりだ。もう防衛部だけではどうもできんぞ。」
そう詰め寄るのは国家安全保障庁庁官であるウシオ。
「ええ。そこで一つ、お願いしたいことがあるのです。」
改まってトウドウが静かに語りだす。
「奴は今一人の少年をいわば誘拐しています。隊員にも死傷者を出している旨…」
トウドウがウシオの目をじっと見つめる。
「重要指名手配犯として警察、国民の手もお借りしたい。」
ウシオがふっと笑う。
「指名手配とは考えたな。私も内閣も防衛隊の解散は望まない。わかった。警察庁とは私が話をつけよう。」
二人は強く握手を交わした。
国家安全保障庁庁舎。
司令本部。
「そうですか。承知しました。失礼します。」
セリザワが受話器を下す。
「長官ですか。」
オキタがセリザワに聞く。
「ああ。今回正式に奴を重要指名手配犯に認定。警察庁も捜査に全面協力するそうだ。」
「しかし、動きが速いですね。先の事案発生からまだ1,2時間程度だというのに。」
オキタが不思議そうな顔をする。
「何はともあれ、これで捜査も少しは楽になるだろう。よかった。」
セリザワの妙に落ち着いた様子にもまた、不思議そうな顔をする。
セリザワがちらりとオザワのほうをみる。
まるで生気を失ったかのようにどこか一点を見つめている。
そうしていると別な本部員が話しているのが聞こえてくる。
「そういえば防衛隊内で一人、急に行方不明者が出たらしい。捜索は上からの圧力で禁止されてるそうだ。闇深いよな。」
その話を耳にしたセリザワは少し嫌な予感がした。
神奈川県川崎市内。
戦闘後、ひたすら走り続けてきたハヤカワと少年は、同市内の人気のない場所で空き家を見つける。
戦闘と走ったことに加え精神的な疲労からも、その空き家で休むことにした。
ガラガラ。少年がドアを開け、玄関先に腰を掛ける。
ハヤカワは改めて手のひらを見る。
つけているグローブはすでに元の色を失い、赤く滲んでいる。
「また俺は人を殺した。なぜ殺した。あいつらは俺を撃った。殺そうとした。だから殺したんだ。なぜ俺は生きている。なぜ。。。」
ハヤカワの精神は限界であった。
「僕を守ってくれたじゃない。」
少年がヘルメット越しに頭を抱えるハヤカワに声をかける。
「君は俺が怖くないのか」
助けを求めるように、ハヤカワが少年に聞く。
「助けてくれたヒーロー。それをなぜ怖がるの。」
「俺が。ヒーロー。」
ハヤカワは心救われたようについに涙を流した。
「僕、家出してきたんだ。田舎から。やっと東京に来たと思ったらあんなことがあって。」
少年があの場にいた事情を話し始める。
「なぜ君は防衛隊に狙われていたんだ。」
ハヤカワが聞くと少年は笑顔で
「わからない。わからないけど僕には兄ちゃんがいる。もう何も怖くない。」
ハヤカワがそっとヘルメットを外す。
そして少年の目をまっすぐ見つめる。
「君は俺と同じか。決めたよ。俺は君を守ることにする。防衛隊の手には渡さない。何があっても。」
「同じ?」
「そう、同じだ。」
ハヤカワはフッ、と軽く笑う。
そうすると少年はカメラを構える。
パシャッ。
「いい顔してるね、ちゃん。フーンフーンフフンフン、たがーためにーたたかうー。」
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「さあ、ここを出よう。いつまでもここに居てはいずれ場所が割られてしまう。」
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作家 蔵屋日唱
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