空飛ぶダンゴムシ

むひ

文字の大きさ
1 / 1

空飛ぶダンゴムシ

しおりを挟む
 僕はダンゴムシ

いつか空を飛びたいなって思ってるんだ

だってお友達は空を飛べる子もいるから

ちょうちょさんだって、てんとう虫くんだって空を飛べる

なんで僕は飛べないんだろう


「ねぇねぇ、ちょうちょさん。なんでお空を飛べるの?」

「そうねえ、飛べるからよ」

「でも僕は飛べないよ」

「私はあなたみたいに石の裏に入れないわ」


石の裏に入れたって空を飛べた方がいいさ


「ねぇねぇ、てんとう虫くん。なんで君は空を飛べるの?」

「何でって羽があるからさ」

「でも僕には羽がないよ」

「僕は君みたいに丸くなれないよ」

丸くなれたって空を飛べる方が良いに決まってる

僕だって頑張れば空を飛べるかもしれない

よし、葉っぱの上から飛んでみよう


葉っぱの上から飛び降りたダンゴムシはそのまま地面に転がりました。


「いててて。やっぱり飛べないや」

羽がないから飛べないのかな

羽を付けてみよう

鳥さんが落としていった羽なら飛べるかもしれない


鳥さんの羽を持ったダンゴムシくんは羽ばたかせながら葉っぱの上から飛び降りました。

でもやっぱり飛べません。


「いててて。やっぱり飛べないや」


その時、草の影からダンゴムシくんを狙うカマキリくんがいました。


「へへへへ。美味しそうなダンゴムシだな。いただきまーす」

「わぁ!やめてよー」


とっさにダンゴムシくんは丸まり身を守りました。


「くっそー。固くて食べれないや。命拾いしたな」


カマキリくんはそう言って草むらに去っていきました。

それを見ていたちょうちょさんが言いました。


「ダンゴムシくん凄いよ!硬い殻で守れるなんて羨ましいわ」

「たまたま僕は守れるだけで凄くないんだ。僕は空が飛びたいんだ」

「あなたには羽が無いもの。無理だわ」

「ほんとに無理なのかな…頑張っても無理なのかな…」


ダンゴムシくんは空を飛ぶために一生懸命頑張りました。

来る日も来る日も葉っぱの上から飛び降りました。

その姿は傷だらけ。

その姿を見ていた神様が言いました。


「そんなに羽が欲しいか?」

「はい、欲しいです。自由に空を飛べる羽が」

「よし、では一日だけじゃぞ。その代わり、その硬い殻は無くなるが良いな」

「はい!お願いします!」

神様は「えい」っと杖を向けるとダンゴムシくんに羽が生えました。


「わーい!やったー!羽が生えた!これで空が飛べるんだ」


羽が生えたダンゴムシくんは空に向かって飛びました。

どこまでもどこまでも。


「僕はどこまでも飛べる。このまま世界の果てまで行けるかな」


その時でした。ダンゴムシくんはクモの巣に引っかかってしまいました。


「へへへ、美味しそうなダンゴムシがかかったぜ」


クモくんが舌なめずりして出てきました。


「うわー!そうだ、今は丸まれないんだ。ごめんなさい食べないでください」

泣きながらダンゴムシくんはお願いしました。

しかしクモくんは聞いてくれません。

すると。


「この獲物は俺様のだぞ」


と、カマキリくんはクモの糸を切ってダンゴムシくんを下に下ろしました。


「ありがとうカマキリくん」


泣きながらダンゴムシくんはカマキリくんにお礼を言います。


「飛べるようになったからって無闇に飛ぶからこうなるんだぞ。空には空のルールってもんがあるんだぞ。大人しく俺に食べられてればよかったんだ」


「ふん」とカマキリくんは向こうに行ってしまいました。


ダンゴムシくんは思いました。

今は硬い殻が無い。

食べようと思えば食べれたんだ。


「ごめんなさい、カマキリくん。もう空を飛ぶのをやめるね」


ダンゴムシくんはとぼとぼと家に帰ります。

するとちょうちょさんが話しかけてきました。


「ダンゴムシくん、空を飛べたんだってね。どうだった?」

「うん、でも怖かった。食べられるかと思った。もうこりごりだよ」

ダンゴムシくんは思いました。

僕はこのままがよかったのかもしれない

そうすれば自分の身を守れる

ちょうちょさんには無い硬い殻で

でもまだ空を飛びたい気持ちもありました。

そして思ったのです。

今度こそたくさん空の勉強して自由に空を飛んでやると


空飛ぶダンゴムシ。

おわり
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

真実の愛ならこれくらいできますわよね?

かぜかおる
ファンタジー
フレデリクなら最後は正しい判断をすると信じていたの でもそれは裏切られてしまったわ・・・ 夜会でフレデリク第一王子は男爵令嬢サラとの真実の愛を見つけたとそう言ってわたくしとの婚約解消を宣言したの。 ねえ、真実の愛で結ばれたお二人、覚悟があるというのなら、これくらいできますわよね?

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

処理中です...