3 / 15
桜木恵子の殺人美学
殺人美学講座 その1
しおりを挟む【第一回 美学講座 開講】
「んー! むうー!!」
「もう、暴れないで下さいよー。もしあなたの拘束が解けるような事があったら、それこそ私もただじゃ済まないんですから……大丈夫! 痛いのは一瞬だけだし! ……たぶん」
小太りの男は上裸で両手足を拘束され、今から何をされるか分からない恐怖からか、或いは上着を纏っていない肌寒さからか、ブルブルと小刻みに震えていた。
しとしとと垂直に落下する雨の音が、静かに鼓膜を揺らす。
私は鼻歌を交えながら真っ黒な手袋を嵌めた。そして手にピアノ線の束を持つと、男に見えるように一本だけスッと伸ばした。
「んー!! んぅんん!!」
「じゃあ、早速始めるね?」
男の背後へ移動すると、首元にピアノ線を一周回した。刹那、力一杯自分の方へピアノ線を引いた。
ぶじゅ ぶちっ
音を立てて切れた首は、中央程進んだ所で止まった。ぱっくりと割れた肉が、歪な音を不規則に発する。
男は頭を重力に逆らう事なくだらんと垂らし、白目を剥いていた。口からは泡を吹き、股間部はじんわりと湿り気を帯びていた。
「あぁ! ごめんね! こんなつもりじゃなかったの! もっとこう、スパッと切れる感じをイメージしてたの! でもでも、さっき『たぶん』って言ってたよね? だから私、嘘はついてないよ。ほんとだよ?」
既に息絶えている様子の男に言い訳をする私の口元は笑っていた。
ぐじゅ、ぶじゅう
なおも奏でられる不協和音は、空気中に霧散しながら雨の音に呑まれ、存在を消してゆく。
「むぅ、これじゃあまだまだ及第点にも程遠いかな……ワイヤーが駄目でこのほっそいピアノ線でも駄目かー……『あの人』は一体どんな道具を使っていたんだろう。でも、半分までは入るんだよね──あ! もしかして首の骨か! 骨って硬いもんね、薄い所とかあるのかも!」
どれどれと言いながら薄くなった男の髪と首根っこを鷲掴むと、勢い良く分断した。
ごきっ ぶちぶち ぐちぃ
ねっとりとした液体が勢いを増しながら体外へ放出される。肉の繊維が細くなりながら糸を引き、薄くなってはブチブチと切れた。
私はサバイバルナイフを逆手に持つと、男のうなじに刃を突き立てた。
「さすが新品。良く切れる」ぶつぶつ言いながら白い頚椎を力任せに抜き出すと、観察するようにじっくりと眺めた。
「この、間のとこかな……うわっ、なんかぷるぷるしたのが出てきた! やっぱそうか! ここの間のとこ狙って切っんだ。やっぱプロは違うわー」
手袋は粘性のある液体を啜り、更にドス黒く変色していた。
「んー……どうしよ。まだ大丈夫そうだし、いろんな関節使って練習してみようかな。……いや、でも引き際かも。雨も止んできたし」
私は地べたに転がっている道具をリュックサックに押し込むと、「バイバイ」と言いいながら肉塊に向かって手を振った。
着ていた黄色いレインコートは真っ赤に染まっていた。
【第一回 美学講座 閉校】
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
怪異の忘れ物
木全伸治
ホラー
千近くあったショートショートを下記の理由により、ツギクル、ノベルアップ+、カクヨムなどに分散させました。
さて、Webコンテンツより出版申請いただいた
「怪異の忘れ物」につきまして、
審議にお時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした。
ご返信が遅くなりましたことをお詫びいたします。
さて、御著につきまして編集部にて出版化を検討してまいりましたが、
出版化は難しいという結論に至りました。
私どもはこのような結論となりましたが、
当然、出版社により見解は異なります。
是非、他の出版社などに挑戦され、
「怪異の忘れ物」の出版化を
実現されることをお祈りしております。
以上ご連絡申し上げます。
アルファポリス編集部
というお返事をいただいたので、本作品は、一気に全削除はしませんが、ある程度別の投稿サイトに移行しました。
www.youtube.com/@sinzikimata
私、俺、どこかの誰かが体験する怪奇なお話。バットエンド多め。少し不思議な物語もあり。ショートショート集。
いつか、茶風林さんが、主催されていた「大人が楽しむ朗読会」の怪し会みたいに、自分の作品を声優さんに朗読してもらうのが夢。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
彷徨う屍
半道海豚
ホラー
春休みは、まもなく終わり。関東の桜は散ったが、東北はいまが盛り。気候変動の中で、いろいろな疫病が人々を苦しめている。それでも、日々の生活はいつもと同じだった。その瞬間までは。4人の高校生は旅先で、ゾンビと遭遇してしまう。周囲の人々が逃げ惑う。4人の高校生はホテルから逃げ出し、人気のない山中に向かうことにしたのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる