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しおりを挟む「じゃ、みんなワタシの家に持ち帰るね!」
そうして、私たちは抵抗する間もなく少女の家に持ち帰られることになった。
30分くらい経ったのかな。辺りは日が落ちて真っ暗になってきた。でも、少女はそんな事気にもせず、明かりもつけずにガシガシ進んで行くから、びっくりした。この子、暗くて明かりもつけていないのに、なんで道を間違えないんだろう……。
「ちょっとあんた、本当にこの道で家に着くの?さっきから草をかき分ける音しかしないんだけど。獣道行ってない?」
赤髪の女性はまたイライラしている。
「着くよ~!もう、任せといて!」
少女は、相変わらず能天気だ。
しばらく歩くと、少女は立ち止まった。
「うん、着いたよ!」
やっと着いたか…早くこの狭いカゴから出たい。
すると、1番最後に入れられて外の様子が見えるアイドルの子が騒ぎ出した。
「ギャア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ーーー!!何コレ!?キモっ」
まどか「えっどうしたんですか?」
「蜘蛛の巣ダ…蜘蛛の巣ぅーーー!!アタシの顔にぃ!!!」
まじっすか…。もしかして、この家…手入れとかされてないのかな。
まどか「あの!外の様子見えるんですよね?どんな感じなんですか?」
「ヴゥゥゥ…取りたいのに!取れないよおおお!!ムカつく!イヤァァ!」
アイドルの子は私の声が聞こえてないみたい…。
「あ、あのぅ…その…」
どうしよう。名前を呼んで気付いてもらいたいが、アイドルの子は名前が無いに等しいから、どうすればいいんだ…?困っていると、やっと着物の少女が気付いたようだ。
「うわ、あ!ごめんね!」
少女はアイドルの子の蜘蛛の巣を取ってくれた。
アイドル「Wow…!アリガトウ…!!」
ふぅ…これで家に入れるかな?安心した…。
すると、少女は私たちを入れてるカゴを下ろした。え?どうしたんだろう。
「ちょっと待ってて!」
着物の少女はそう言うと、先に家に入ってしまったようだ。
……え。私たち、ここに放置?そう思った時、家の中からガタガタ、ドタバタ騒がしい音が聞こえてきた。
赤髪「あいつ何してんのよ」
まどか「さ、さぁ…?」
水色髪「たぶん…家の中片付けてるんだと思う」
しばらく待っていると、少女がドアを開ける音がした。
少女「よし、これで中に入れそう!」
少女は再び私たちのカゴを背負うと、中に入っていった。
家の中に入っても物をかき分ける音しかしなかったが、あるタイミングでその音はあまりしなくなった。それと同時に、上のわずかな隙間から光が射し込んでるのが見えた。しかも、さっきより暖かい。
どうやら、居間らしき場所に着いたっぽい。そこで、私たちはカゴから出され、少女の前の床に並べられた。
それにしても、ホコリ臭いな。生首だからちゃんと横は見えなくて、横目でしか見えないけど、正面の感じからしても、この家…というか山小屋?はいろいろ散らかってる。
「はぁ…」
水色髪の、生首の少女がため息をつく。
しかし…落ち着いてこうしてみんなを見てみると、私たちはどうやら、〝マネキンヘッド〟になってるみたい。それに、変わったとこといえば髪型だけでなく、私の場合は眼鏡もなくなってる。眼鏡がなくても、遠くまでよく見える。これも、人形になったからなのかな。
「マネキンヘッドってなに?」
アイドルの子が訊ねてきた。そこで、赤髪のマネキンヘッドの女性が説明する。
「マネキンヘッドっていうのは、簡単に言うと人形の生首よ。ほら、美容師が練習でよく使うじゃない?あれのこと。」
「最近だと、100均でも発泡スチロールでできたマネキンヘッドが売ってるね。ちょっと高いけど。」
水色髪の少女も説明する。
「っへぇー!なるへそマン!」
アイドルの子はニコニコ、わかってるようなわかってないようなどっちつかずの反応だった。
少女「…あ!」
赤髪「何?」
少女「そういえば、そこの、金髪の、〝あいどる〟?ってヒト以外は名前あるの?」
赤髪「そりゃあるわよ」
少女「やっぱあるんだね!そっかそっかぁ…」
赤髪「なんなの?」
すると、着物の少女は急に顔を赤らめ、もじもじしながら私を指さした。え、なに…?
少女「実は…ずっと気になってたんですよねぇ…えへ、エヘへへへ……/////」
なんだかニヤけて鼻息も荒くなってる。うわ、きm
「「きもちわる」」
あ、水色髪と赤髪が代わりに言ってくれた。でも、なんで私?
少女は、みんなが引いているのも気にせず、鼻息を荒くして近づいて聞いてきた。…あ、なんだかこの光景見覚えある。
少女「可愛いねぇ……/////アナタ、なんて名前なのかなぁ……/////??」
…オタ活してる自分の姿見てるみたい。他人からはこう見えてたのか………
私は少しショックを受けた。
「た、立花 まどか…です」
七葉「まどかちゃんかぁ…可愛い名前だねぇ……/////ワタシ、七葉(ななは)っていうの…!よろしくねぇ……/////」
まどか「よ、よろしくお願いします…」
その後も、七葉さんはずっと私のことをだらしない笑顔で見つめてきた。うっ……いつまで見続けるの?
赤髪「…ったく。なんでこんな人に拾われたのかしら」
水色髪「確かにね。」
まどか「あの、赤髪の方…」
赤髪「私は如月 美麗(きさらぎ みれい)よ。」
まどか「美麗さんですね!わかりました!ありがとうございます。」
美麗(今のは何に対しての〝ありがとう〟?)
美麗は疑問に思った。
美麗「あなた、美麗って呼ばないでくれる?見たところ、私より年下よね。苗字で呼びなさいよ」
まどか「……あ…わかりました。如月さん…」
美麗「ふん…」
辺りに不穏な空気が流れる。気まづい…。
すると、アイドルの子がそんな空気を壊すように口を開いた。
「ねぇねぇ!あのさあのさ!そこのブルーヘアーのYouはなんてゆーの!?」
アイドルの子の言う〝ブルーヘアーのYou〟とは、ずっと口数の少ない、水色髪のマネキンヘッドの少女だった。
水色髪の少女は目をパチクリさせ驚いている。
「え…」
七葉「そうだよー!最後に名前があるのはアナタだけー♪」
七葉さんは水色髪を指さす。みんな目線を彼女に送る。彼女も自分のことだと気付いたらしい。
「わたしは……しのん」
美麗「は?フルネームで言いなさいよ」
心温「あ……小森 心温(こもり しのん)です…」
アイドルの子は、納得したようだ。キラキラした笑顔を心温さんに向ける。
「心温ちゃんかぁ!!よろしくね♡心温ちゃん!」
心温「……よろしく」
まどか「あ…!私も、よろしくお願いします!」
心温「よろしく………。…え?なんであなたが………」
アイドル「んォ?なになにどーしたのー!?」
心温「あ、いや。なんでもない」
あれ、どうしたんだろう。心温さんは私のことを見た途端、疑問を呟いて黙ってしまった。
美麗「あなたのことは、〝心温〟て呼ぶわ。よろしく」
心温「…よろしくお願いします」
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