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promitto of memory Ⅱ
第32話 真実と闘いの終結。
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「──ッ!!」
そしてまた自分は、杖を加護で
剣の形に変化させ奴に攻撃を仕掛ける。
それでも攻撃は確実に入らず、
まだ石像は壊されていないと看做していた。
けれどそれと同時に、
奴の体力も限界に近いと自分は感じた。
─第32話 真実と闘いの終結―
そしてそのまま、自分が仕掛けた攻撃を
奴に跳ね返された瞬間に自分に、
その禍々しい鉤爪で攻撃を仕掛ける。
だが二度目の攻撃は通用せず、
自分はその攻撃を間一髪の所で避けた。
そしてまた避けた拍子で自分の髪がなびくと同時に
虹色に輝く耳飾りが、微かに奴の目に映る。
その後に奴の動きが止まると、同時にこう述べた。
「…成程」
「通りで見覚えのある風格だと
思えば、貴様はエデン家の息子か。」
…何故それを奴が知っているのだろう。
第一にその言葉が自分の頭に浮かんだ。
「っだったら何だ…!」
自分は奴をまた睨みつけながらそう答える。
然しその事と奴になんの関係があるのか、
その面については記憶が曖昧で、
自分には分からなかった。
「…まだ思い出せて居ない様だな。」
「まぁ良い、この期に及んで教えてやる。」
そう言った途端、奴の顔が一変して
ニヤリと気味の悪い表情で笑うと綴ってこう答えた。
「エデン家を崩壊させた張本人は、
貴様が今一番恨んでいる者で間違いなかろう。」
…そう言われた途端、言葉より先に
本能で奴に攻撃を仕掛ける。
「漸く理解したか…」
自分の息が、段々と荒くなっていくのを感じた。
此奴が…今目の前にいる奴が、
──母さんを殺した張本人だ。
「──ッお前…!!」
そしてまた一回、二回と
彼の首に攻撃を素早く力強く入れる。
…同時に何か、奴に対する憎悪の様な物を感じ取った。
然しこの感情だけは知っては行けないと、
何故か自分の思考が否定しているようだった。
自分は杖を握っている
手の力を増しつつ涙を流して、怒り
奴を睨みつけながらこう述べた。
「母さんは…ッお前に良くしてたんだぞ…!!」
「なのに、どうして
恩を仇で返す様なことをした…ッ」
…すると奴は自分を見下しながら、その言葉を
躊躇うことなくこう応えていた。
「あの女は、私にとって邪魔だったから消した迄だ。」
…それを聞いて自分は
もう奴が話す事は二度と聞きたくないと、
そう思って綴るようにこう言った。
「…もういい、よく解った。」
「聞くまでも無かったよ、
お前達に人の心が無いことは。」
──プツン、と何かの糸が切れたように
自分は真っ先に奴の方へと、これ迄に無い程の
素早さで奴に漸く攻撃を入れた。
「ぐ…ッ!?」
アギトさんが石像を壊したのか…けれど自分は、
今はそれどころではなかったのか、
…目の前が灰色になった途端だった。
やつの体を跡形もなく…斬って、斬って、
それがやがて灰になって行った。
「──ッッ!!」
怒り、涙を零しながら…杖を勢いよく振りかざし、
それから誰かの声が聞こえてきた気がした。
途切れ途切れに聞こえるその声は、何処かで
自分を止めているような…そんな声だった。
「──アンル…!!」
…自分はハッとして、目の前には奴の亡骸とも
思える塵が地面に敷き積もっていた。
そして後ろには自分の腕を抑えていた彼が居た。
「!…」
「…アギト、さん?」
何やら彼は自分が見たことも
無い顔で焦っているようにも見えた。
「…あぁ、俺だ。」
アギトさんは、安心した様子で自分を見て
問いにこう答えていた。
その後に、自分は涙を流しながらこう問いかける。
「もう、終わったんですか…?」
「あぁ…終わった。」
そう答えながら、アギトさんは自分の涙を拭う。
…後に自分は静かに慟哭しながら彼を抱きしめた。
──あれ程までに、心が苦しくて
痛くなる出来事は無かったと思う。
アギトさんはあの後みんなを率いり、
…泣き疲れて眠った自分を両手で抱えて
カフカさんの元へ連れて行った。
あの塵灰は、せめて自分から
カフカさんに渡そうと思っていた。
…けれどあの時になり、長年に亘って
隠されていた真実を知ったばかりな事もあった為、
アギトさんが渡すことになった。
「…お師匠、ごめんなさい」
寝台に寝転がっていた自分に、椅子に
ちょこんと座っていたリウラが自分に
そう言った後、顔を俯けてこう述べた。
「ぼく…お師匠の怪我を
回復してあげる事しか出来ませんでした。」
リウラはその事について少し反省している様だった。
…と言っても、リウラは何も反省する様な事は
していないと思った自分はこう答えた。
「謝る事はありませんよ、回復魔法だけでも
十分助かる状況だってあるのですから…」
「でもお師匠は優しすぎます…!」
リウラはそう言いながら自分の
手を握りしめて、綴るようにこう答えた。
「ぼくもお師匠を守れるようになりたいんですよ…!」
「みんなだって…そう思っているはずです!」
…その言葉に自分は、また救われた気がして
またそれと同時に、こんなにも
慕われていると今更ながら実感していた。
「…ありがとう、リウラ。」
ふわふわとした笑顔でリウラにそう答えた後、
ドアの向こうからアギトさんの声がした。
「アンル、邪魔するぜ。」
「…あ、どうぞ。」
自分がそう言ったあと、扉を開く音が
少しだけ部屋に響くと同時に彼が入ってくる。
そして後にアギトさんは、
自分に心配そうな目をしながらこう言った。
「歯車の国に行く前に、
ロストが俺らを出迎えてぇんだとよ。」
「…どうする、行けそうか?」
そう言われた後、自分は寝台から立ち上がって
自分の手のひらを少しばかり見た後、こう答える。
「ええ、話したい事もあるので…
直接会って聞いてみようかと。」
──そして自分達は歯車の国に向かう前、
ロストに出迎えられるその序に
知りたい事があってそれ等を聞くことにした。
「ロストさん、向かう前に少しだけ
聞きたい事があるのですが…宜しいでしょうか?」
自分がそう言ったあと、目の前にいる彼女は
その声に気がつきこう答える。
「内容次第によっては
返答できないけれど…大丈夫だよ。」
「…エデン家の崩壊、
あの事件はアズデラが黒幕でした。」
そう問いかけた後、綴って
自分は息を揃えながらこう述べた。
「何か…知っていることがあれば教えてください。」
そう言ったあと、一瞬だけ場の空気がザワついて
後にロストさんは顔を少しだけ俯かせてこう応えた。
「僕たちはエデン家と
直接会って話した訳でもないから…」
「…力になれなくてごめんよ。」
ロストはそう言いながら
申し訳なさそうに顔を俯かせていた。
自分は罪悪感に見舞われてこう言う。
「いえそんな…謝らないでください。」
そしてその暗い顔から一変して、
ロストは少し悲しそうな笑顔でこう答えた。
「ありがとう、それと…
…これを最後に渡しておかないとね。」
そう言われて手に渡されたのは袋に入ったラピツだった。
後にロストは、自分たちに笑顔を見せてこう言った。
「依頼人の分際でと思うかもしれない…
けれど、君達がまたここに来たら歓迎するよ。」
──ああ、どうか…
彼女達が報われる未来があるのなら…
自分はその道を、彼女達が歩めるように祈っていたいと。
…そう思えた気がした。
そして自分の怪我と体調は、
少しだけ体を動かせる程度に回復した。
あの後、リウラは【回復魔法】の力に目覚めたらしく
それ関連の勉強に励んでいるようだった。
一方ラミジュは、アギトさんに稽古という名の
手合わせを申し込み承諾を受けたものの…
正直心配で…自分はその様子を、
舟内の稽古場まで見に来ていた。
「やぁっ!はぁっ!!」
ラミジュは短剣に見立てた木刀を使い、
アギトさんにその一撃を届かせようと精一杯だった。
「ん。前よりかは上達してんなァ、だが──」
そう言った瞬間、アギトさんは
ラミジュの背後に素早く移動し頭に木刀を向けた。
「…俺に比べりゃまだまだって所だな。」
「つ…」
「…強すぎ…!反則でしょ今のはぁ…!」
ラミジュは頬の汗を
ゴシゴシと腕で拭い、そう言いながら
悔しそうにアギトさんを見つめていた。
その様子を見た彼は、フッと
笑いながら冗談的にこう答える。
「おいおい…本気で相手してやってんだぜ?」
…やっぱりアギトさんの繰り出す技は、
見る限り動きに無駄がなく
素早いようで、一つ一つの威力が重い。
ラミジュもそんな彼と手合わせして、
その後に自主練習に励んでいた。
「まぁでも…付き合ってくれてありがとう、」
そう考えていた内にラミジュが、恥ずかしげに
アギトさんにそうお礼を言っていた。
そのまた後に彼がニッ、と
悪い笑顔を浮かべるとこう答える。
「おう、まぁ俺が暇な時は何時でも頼んでくれよ。」
そして、ラミジュがこの場を
離れた後にアギトさんは自分の方に視線を向け、
木刀を肩に乗せて少し笑いながらこういった。
「…そんでお前は、久々に俺の剣術が
恋しくなっちまったみてぇだな。」
自分は入口前から部屋に入り
アギトさんの方へ向かって行った後、
その言葉にニコッと笑いこう答える。
「そうですね…久しぶりに
アギトさんと手合わせしたくなってきました。」
その後…自分たち二人は定位置に立ち、
始めの合図が部屋に少し響いた後
先行に自分から攻撃を仕掛ける。
カンカン、と木刀同士が
ぶつかり合う乾いた音が響いていった。
そしてその終いには──
「!」
自分はアギトさんの顔の前に木刀を向けていた。
少しだけ驚いたのか、彼は自分にこう言う。
「…まさかお前に一本取られるとはな、」
「やるじゃねぇか。」
そう言われた後…自分も正直驚いていた。
まさかあのアギトさんに…と思っていたが、
自分はそれを言わずに微笑みこう答える。
「ありがとうございます、鍛錬の成果でしょうか…」
そう言った後、自分は少しばかり照れていた。
するとアギトさんが、自分に
真剣な眼差しでこう問いかける。
「なぁアンル、」
「そういやお前に言っておきてぇ事があるんだが…」
自分はその言葉に純粋な疑問を持ちながらこう言った。
「…言っておきたい事、ですか?」
その言葉に頷いた後、
アギトさんは綴って自分に問いかける。
「お前の過去を、俺にも聞かせてくれねぇか。」
「…無理なら断ってくれりゃ
それでいい、俺からは何も言わねぇ。」
…
──その言葉ひとつで自分は、ふとこう思った。
あの時…自分が彼の過去を知ったように、
アギトさんも、自分の過去を
知りたくなったのだろうと。
「…分かりました、話します。」
──千紡世界戦争が開戦している最中、
自分はエデン家当主の『ユリシス』の元に生まれた。
…然し何を思ったのか、自分の父は
それをめでたいとは思わず、寧ろその感情が
自分を虐げる物にまで変わっていった。
けれど、その感情から母さんが自分を
護ってくれていた故に恐ろしくはなかった。
…然し自分が家を出ていたある日、
雪が降り積る夜に何者かが
エデン家の者たちを虐殺し、家に火を放った。
それを見た自分は…
燃え盛る炎の中で座り込んだ母さんと、
…その目の前に居るアズデラの影を自分はこの目で見た。
それから自分は近くの森に逃げ込み、
翌日に師匠が行く宛も無かった自分を拾ってくれた。
「──あの時の出来事を
思い出すと、いつも思うんです。」
「あの時自分がもっと強ければ、
なにか出来ていればって…だけど──」
そしてその時、話を聞いたあとにアギトさんは
自分の事を抱きしめてこう言った。
「辛い事を、思い出させちまったな。」
申し訳なさそうな顔と、
悲しげな声でそう言った彼を見た後、
自分は彼に向けて咄嗟にこう言った。
「…違うんですよアギトさん…」
「貴方はただ、自分の事を知ろうとして…」
「それだけなのに…どうしてそんな顔をするんですか…?」
…その表情に釣られて、
何処か自分も少し悲しくなってしまう。
綴って彼は目を細めながら、自分の
頭を撫でた後、自分の出した問いにこう答える。
「…なんでだろうなァ。」
どれだけ哀しんだとしても、
失われた命はもう戻る事は無い。
…そんな事は十分知っていた。
けどそれは、知っていたつもりでいただけで…
それがいつ失われるかは分からない。
…だからこそ自分は恐れてしまうのだろう。
「──オレ、嘘をついていたんです。」
自分が顔を俯かせてそういった後…
アギトさんは、その言葉を放った自分にこう問いかけた。
「…どんな嘘なんだ?」
その問いに自分は、下を向いていた顔を
彼の方に向けて…目を合わせた後にこう答えた。
「自分に…オレは大丈夫だと、
…いつも嘘をついていました。」
その後、自分はいつも流していた筈の涙を流した。
けれど今だけは…
流した分だけ気が楽になれるような、
…そんな感じがしていた。
「でも…言葉に出した途端、
嘘をつけなくなってしまったから…」
「…もう辞めます!自分に嘘をつくのは…!」
何時も自分の視界を妨げていた涙が…
今だけは、こんなにも優しく感じた。
「…」
「…あぁ、そうだな。」
そしてまた自分は、杖を加護で
剣の形に変化させ奴に攻撃を仕掛ける。
それでも攻撃は確実に入らず、
まだ石像は壊されていないと看做していた。
けれどそれと同時に、
奴の体力も限界に近いと自分は感じた。
─第32話 真実と闘いの終結―
そしてそのまま、自分が仕掛けた攻撃を
奴に跳ね返された瞬間に自分に、
その禍々しい鉤爪で攻撃を仕掛ける。
だが二度目の攻撃は通用せず、
自分はその攻撃を間一髪の所で避けた。
そしてまた避けた拍子で自分の髪がなびくと同時に
虹色に輝く耳飾りが、微かに奴の目に映る。
その後に奴の動きが止まると、同時にこう述べた。
「…成程」
「通りで見覚えのある風格だと
思えば、貴様はエデン家の息子か。」
…何故それを奴が知っているのだろう。
第一にその言葉が自分の頭に浮かんだ。
「っだったら何だ…!」
自分は奴をまた睨みつけながらそう答える。
然しその事と奴になんの関係があるのか、
その面については記憶が曖昧で、
自分には分からなかった。
「…まだ思い出せて居ない様だな。」
「まぁ良い、この期に及んで教えてやる。」
そう言った途端、奴の顔が一変して
ニヤリと気味の悪い表情で笑うと綴ってこう答えた。
「エデン家を崩壊させた張本人は、
貴様が今一番恨んでいる者で間違いなかろう。」
…そう言われた途端、言葉より先に
本能で奴に攻撃を仕掛ける。
「漸く理解したか…」
自分の息が、段々と荒くなっていくのを感じた。
此奴が…今目の前にいる奴が、
──母さんを殺した張本人だ。
「──ッお前…!!」
そしてまた一回、二回と
彼の首に攻撃を素早く力強く入れる。
…同時に何か、奴に対する憎悪の様な物を感じ取った。
然しこの感情だけは知っては行けないと、
何故か自分の思考が否定しているようだった。
自分は杖を握っている
手の力を増しつつ涙を流して、怒り
奴を睨みつけながらこう述べた。
「母さんは…ッお前に良くしてたんだぞ…!!」
「なのに、どうして
恩を仇で返す様なことをした…ッ」
…すると奴は自分を見下しながら、その言葉を
躊躇うことなくこう応えていた。
「あの女は、私にとって邪魔だったから消した迄だ。」
…それを聞いて自分は
もう奴が話す事は二度と聞きたくないと、
そう思って綴るようにこう言った。
「…もういい、よく解った。」
「聞くまでも無かったよ、
お前達に人の心が無いことは。」
──プツン、と何かの糸が切れたように
自分は真っ先に奴の方へと、これ迄に無い程の
素早さで奴に漸く攻撃を入れた。
「ぐ…ッ!?」
アギトさんが石像を壊したのか…けれど自分は、
今はそれどころではなかったのか、
…目の前が灰色になった途端だった。
やつの体を跡形もなく…斬って、斬って、
それがやがて灰になって行った。
「──ッッ!!」
怒り、涙を零しながら…杖を勢いよく振りかざし、
それから誰かの声が聞こえてきた気がした。
途切れ途切れに聞こえるその声は、何処かで
自分を止めているような…そんな声だった。
「──アンル…!!」
…自分はハッとして、目の前には奴の亡骸とも
思える塵が地面に敷き積もっていた。
そして後ろには自分の腕を抑えていた彼が居た。
「!…」
「…アギト、さん?」
何やら彼は自分が見たことも
無い顔で焦っているようにも見えた。
「…あぁ、俺だ。」
アギトさんは、安心した様子で自分を見て
問いにこう答えていた。
その後に、自分は涙を流しながらこう問いかける。
「もう、終わったんですか…?」
「あぁ…終わった。」
そう答えながら、アギトさんは自分の涙を拭う。
…後に自分は静かに慟哭しながら彼を抱きしめた。
──あれ程までに、心が苦しくて
痛くなる出来事は無かったと思う。
アギトさんはあの後みんなを率いり、
…泣き疲れて眠った自分を両手で抱えて
カフカさんの元へ連れて行った。
あの塵灰は、せめて自分から
カフカさんに渡そうと思っていた。
…けれどあの時になり、長年に亘って
隠されていた真実を知ったばかりな事もあった為、
アギトさんが渡すことになった。
「…お師匠、ごめんなさい」
寝台に寝転がっていた自分に、椅子に
ちょこんと座っていたリウラが自分に
そう言った後、顔を俯けてこう述べた。
「ぼく…お師匠の怪我を
回復してあげる事しか出来ませんでした。」
リウラはその事について少し反省している様だった。
…と言っても、リウラは何も反省する様な事は
していないと思った自分はこう答えた。
「謝る事はありませんよ、回復魔法だけでも
十分助かる状況だってあるのですから…」
「でもお師匠は優しすぎます…!」
リウラはそう言いながら自分の
手を握りしめて、綴るようにこう答えた。
「ぼくもお師匠を守れるようになりたいんですよ…!」
「みんなだって…そう思っているはずです!」
…その言葉に自分は、また救われた気がして
またそれと同時に、こんなにも
慕われていると今更ながら実感していた。
「…ありがとう、リウラ。」
ふわふわとした笑顔でリウラにそう答えた後、
ドアの向こうからアギトさんの声がした。
「アンル、邪魔するぜ。」
「…あ、どうぞ。」
自分がそう言ったあと、扉を開く音が
少しだけ部屋に響くと同時に彼が入ってくる。
そして後にアギトさんは、
自分に心配そうな目をしながらこう言った。
「歯車の国に行く前に、
ロストが俺らを出迎えてぇんだとよ。」
「…どうする、行けそうか?」
そう言われた後、自分は寝台から立ち上がって
自分の手のひらを少しばかり見た後、こう答える。
「ええ、話したい事もあるので…
直接会って聞いてみようかと。」
──そして自分達は歯車の国に向かう前、
ロストに出迎えられるその序に
知りたい事があってそれ等を聞くことにした。
「ロストさん、向かう前に少しだけ
聞きたい事があるのですが…宜しいでしょうか?」
自分がそう言ったあと、目の前にいる彼女は
その声に気がつきこう答える。
「内容次第によっては
返答できないけれど…大丈夫だよ。」
「…エデン家の崩壊、
あの事件はアズデラが黒幕でした。」
そう問いかけた後、綴って
自分は息を揃えながらこう述べた。
「何か…知っていることがあれば教えてください。」
そう言ったあと、一瞬だけ場の空気がザワついて
後にロストさんは顔を少しだけ俯かせてこう応えた。
「僕たちはエデン家と
直接会って話した訳でもないから…」
「…力になれなくてごめんよ。」
ロストはそう言いながら
申し訳なさそうに顔を俯かせていた。
自分は罪悪感に見舞われてこう言う。
「いえそんな…謝らないでください。」
そしてその暗い顔から一変して、
ロストは少し悲しそうな笑顔でこう答えた。
「ありがとう、それと…
…これを最後に渡しておかないとね。」
そう言われて手に渡されたのは袋に入ったラピツだった。
後にロストは、自分たちに笑顔を見せてこう言った。
「依頼人の分際でと思うかもしれない…
けれど、君達がまたここに来たら歓迎するよ。」
──ああ、どうか…
彼女達が報われる未来があるのなら…
自分はその道を、彼女達が歩めるように祈っていたいと。
…そう思えた気がした。
そして自分の怪我と体調は、
少しだけ体を動かせる程度に回復した。
あの後、リウラは【回復魔法】の力に目覚めたらしく
それ関連の勉強に励んでいるようだった。
一方ラミジュは、アギトさんに稽古という名の
手合わせを申し込み承諾を受けたものの…
正直心配で…自分はその様子を、
舟内の稽古場まで見に来ていた。
「やぁっ!はぁっ!!」
ラミジュは短剣に見立てた木刀を使い、
アギトさんにその一撃を届かせようと精一杯だった。
「ん。前よりかは上達してんなァ、だが──」
そう言った瞬間、アギトさんは
ラミジュの背後に素早く移動し頭に木刀を向けた。
「…俺に比べりゃまだまだって所だな。」
「つ…」
「…強すぎ…!反則でしょ今のはぁ…!」
ラミジュは頬の汗を
ゴシゴシと腕で拭い、そう言いながら
悔しそうにアギトさんを見つめていた。
その様子を見た彼は、フッと
笑いながら冗談的にこう答える。
「おいおい…本気で相手してやってんだぜ?」
…やっぱりアギトさんの繰り出す技は、
見る限り動きに無駄がなく
素早いようで、一つ一つの威力が重い。
ラミジュもそんな彼と手合わせして、
その後に自主練習に励んでいた。
「まぁでも…付き合ってくれてありがとう、」
そう考えていた内にラミジュが、恥ずかしげに
アギトさんにそうお礼を言っていた。
そのまた後に彼がニッ、と
悪い笑顔を浮かべるとこう答える。
「おう、まぁ俺が暇な時は何時でも頼んでくれよ。」
そして、ラミジュがこの場を
離れた後にアギトさんは自分の方に視線を向け、
木刀を肩に乗せて少し笑いながらこういった。
「…そんでお前は、久々に俺の剣術が
恋しくなっちまったみてぇだな。」
自分は入口前から部屋に入り
アギトさんの方へ向かって行った後、
その言葉にニコッと笑いこう答える。
「そうですね…久しぶりに
アギトさんと手合わせしたくなってきました。」
その後…自分たち二人は定位置に立ち、
始めの合図が部屋に少し響いた後
先行に自分から攻撃を仕掛ける。
カンカン、と木刀同士が
ぶつかり合う乾いた音が響いていった。
そしてその終いには──
「!」
自分はアギトさんの顔の前に木刀を向けていた。
少しだけ驚いたのか、彼は自分にこう言う。
「…まさかお前に一本取られるとはな、」
「やるじゃねぇか。」
そう言われた後…自分も正直驚いていた。
まさかあのアギトさんに…と思っていたが、
自分はそれを言わずに微笑みこう答える。
「ありがとうございます、鍛錬の成果でしょうか…」
そう言った後、自分は少しばかり照れていた。
するとアギトさんが、自分に
真剣な眼差しでこう問いかける。
「なぁアンル、」
「そういやお前に言っておきてぇ事があるんだが…」
自分はその言葉に純粋な疑問を持ちながらこう言った。
「…言っておきたい事、ですか?」
その言葉に頷いた後、
アギトさんは綴って自分に問いかける。
「お前の過去を、俺にも聞かせてくれねぇか。」
「…無理なら断ってくれりゃ
それでいい、俺からは何も言わねぇ。」
…
──その言葉ひとつで自分は、ふとこう思った。
あの時…自分が彼の過去を知ったように、
アギトさんも、自分の過去を
知りたくなったのだろうと。
「…分かりました、話します。」
──千紡世界戦争が開戦している最中、
自分はエデン家当主の『ユリシス』の元に生まれた。
…然し何を思ったのか、自分の父は
それをめでたいとは思わず、寧ろその感情が
自分を虐げる物にまで変わっていった。
けれど、その感情から母さんが自分を
護ってくれていた故に恐ろしくはなかった。
…然し自分が家を出ていたある日、
雪が降り積る夜に何者かが
エデン家の者たちを虐殺し、家に火を放った。
それを見た自分は…
燃え盛る炎の中で座り込んだ母さんと、
…その目の前に居るアズデラの影を自分はこの目で見た。
それから自分は近くの森に逃げ込み、
翌日に師匠が行く宛も無かった自分を拾ってくれた。
「──あの時の出来事を
思い出すと、いつも思うんです。」
「あの時自分がもっと強ければ、
なにか出来ていればって…だけど──」
そしてその時、話を聞いたあとにアギトさんは
自分の事を抱きしめてこう言った。
「辛い事を、思い出させちまったな。」
申し訳なさそうな顔と、
悲しげな声でそう言った彼を見た後、
自分は彼に向けて咄嗟にこう言った。
「…違うんですよアギトさん…」
「貴方はただ、自分の事を知ろうとして…」
「それだけなのに…どうしてそんな顔をするんですか…?」
…その表情に釣られて、
何処か自分も少し悲しくなってしまう。
綴って彼は目を細めながら、自分の
頭を撫でた後、自分の出した問いにこう答える。
「…なんでだろうなァ。」
どれだけ哀しんだとしても、
失われた命はもう戻る事は無い。
…そんな事は十分知っていた。
けどそれは、知っていたつもりでいただけで…
それがいつ失われるかは分からない。
…だからこそ自分は恐れてしまうのだろう。
「──オレ、嘘をついていたんです。」
自分が顔を俯かせてそういった後…
アギトさんは、その言葉を放った自分にこう問いかけた。
「…どんな嘘なんだ?」
その問いに自分は、下を向いていた顔を
彼の方に向けて…目を合わせた後にこう答えた。
「自分に…オレは大丈夫だと、
…いつも嘘をついていました。」
その後、自分はいつも流していた筈の涙を流した。
けれど今だけは…
流した分だけ気が楽になれるような、
…そんな感じがしていた。
「でも…言葉に出した途端、
嘘をつけなくなってしまったから…」
「…もう辞めます!自分に嘘をつくのは…!」
何時も自分の視界を妨げていた涙が…
今だけは、こんなにも優しく感じた。
「…」
「…あぁ、そうだな。」
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「わかりました。あなたには、がっかりです」
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