規格外の魔法少女は『遊び』と称して魔獣討伐行ってます! 〜王子の機転が国家を救う!?〜

婚后 清羅

文字の大きさ
4 / 5
王子様と遊びへGO!

第4話 今日もバッチリだね!

しおりを挟む
 コレットの町に、朝焼けが再び訪れる。キスティーはいつものように、おばあちゃんと共に裏の畑で土をいじっていた。焼きたてのパンの香りが漂い、鳥のさえずりが聞こえる。昨日の一件がまるで夢だったかのように、すべてが平穏に見えた。

 畑仕事が終わり、朝食を済ませると、キスティーはいつものようにアリシアとギルを誘いに家を出た。町の広場での一件があったにもかかわらず、彼女の足取りは軽やかだ。

 アリシアの家の戸を叩くと、すぐに銀色の髪を揺らして彼女が現れた。その完璧な美しさは今日も変わらない。

「キスティー、おはよう。今日も町に行くの?」

「うん!行こ行こ!」

 キスティーが元気よく答えると、アリシアはふわりと微笑んだ後、すぐに真剣な表情になった。

「あのね、キスティー。今日はもう、絶対に変な騒ぎを起こさないでね。昨日みたいに空を飛ぶとか、本当にやめてよ?」

 アリシアの釘を刺すような言葉に、キスティーは不満そうに口を尖らせた。

「えー、分かってるってばぁ。だって、つまんないもん、普通にしてたら」

「それが一番心配なのよ!」

 アリシアがため息をつくと、ちょうどそこへギルバートがぶっきらぼうな足音を立てて現れた。彼の大きな体が、朝日に影を落とす。

「やれやれだぜ。お前らが昨日みたいに騒ぐんじゃねーぞ。特にキスティー、お前は絶対だ」

 ギルも呆れたように言い放つ。キスティーはすぐに反論した。

「ギルだって昨日、全然支えてくれなかったじゃん!私が落ちそうになったらどうすんのよ!」

「俺のせいかよ!お前が勝手に飛んだんだろ!」

 三人の間で、朝からいつもの言い争いが始まった。アリシアが呆れたように二人の間に割って入り、「もう、やめなさいよ!」と諭す。騒がしくも仲の良い彼らの光景は、コレットの町では見慣れたものだった。

 しかし、町へと足を踏み入れると、昨日とは明らかに違う異様な光景が広がっていた。至るところに、王都の紋章を付けた兵士たちが配置され、行き交う人々に厳重な視線を送っている。昨日の騒ぎでレイエス王子の身分が明らかになったため、警備が強化されたのだ。

「うわ……兵士さんたちがいっぱいだね」

 キスティーが興味深そうに兵士たちを見上げる。アリシアは不安げにギルの腕を掴んだ。

「なんだか、物々しいわね…」

 ギルはうんざりした顔でため息をつく。

「当然だろ。お前らが王子様の前でやらかしたせいで、こんなことになってんだからな」

「私たちだけのせいじゃないもーん!」

 三人はまたもや言い争いながらも、どこか緊張した面持ちで町を歩いた。

 その頃、レイエス王子は宿舎の一室で、コレットの町の地図を広げていた。彼の隣には、不満そうな顔をした騎士団長が立っている。

「殿下、町の視察はすでに終えられました。これ以上、コレットに留まる必要は……」

 騎士団長が口を開くが、レイエスは聞く耳を持たない。彼の指は、町の郊外、地図上で「魔獣生息地」と記された森のエリアをなぞっていた。

「いや、まだだ。このコレットの町には、何かがある。昨日の少女の能力気になる……」

 レイエスは静かに言った。彼の瞳には、まだ見ぬ未知への強い探求心が宿っている。

「まさか……あの民間人の娘が気になると?」

 騎士団長は信じられないといった顔をするが、レイエスは彼の言葉を遮った。

「それだけではない。この町の平穏さ、そしてその裏に隠された何か……それが俺には感じられるのだ」

 彼は椅子から立ち上がり、窓の外の遠くに見える森の方向を見つめた。

「町の中だけでは分からない。郊外、特に魔獣が生息するとされる森……そこにこそ、この町の、いや、この王国の真実を解き明かす鍵があるのかもしれない」

「しかし殿下!郊外は危険です!魔獣だけでなく、不穏な動きを見せる者たちがいる可能性も……!」

 騎士団長は必死に止めようとするが、レイエスの決意は固い。

「だからこそ行くのだ。俺は王宮の机の上で、報告書を読むためだけにここに来たのではない。自分の目で見て、自分の足で踏みしめ、この国の本当の姿を知るために来たのだ」

 レイエスの言葉には、王子の威厳がにじみ出ていた。騎士団長は、これ以上反対しても無駄だと悟り、深くため息をついた。

「……御意。しかし、厳重な護衛をつけさせていただきます」

 レイエスは満足そうに頷いた。彼の心は、すでに未知なる森の奥深くへと向かっていた。

 町中の物々しい雰囲気に、キスティーはうんざりした顔をした。兵士たちの視線が、どこか落ち着かない。

「ねー、アリシア、ギル。なんか今日の町、つまんないね」

 キスティーが、あからさまに不満そうに言う。アリシアも、不安げに周囲を見回しながら頷いた。

「そうね……。昨日もあんなことになっちゃったし、今日はあまり騒がない方がいいのかも」

 ギルは腕を組み、ため息をつく。

「当たり前だろ。俺らのせいで兵士が増えてんだからな。大人しくしてた方が賢明だぜ」

「えー、やだー!じゃあ、いつもの場所に行こうよ!」

 キスティーがぱっと顔を輝かせ、提案した。その言葉に、ギルは一瞬顔をしかめたが、アリシアはすぐにその意図を理解したようだった。

「いつもの場所……森の泉?」

「そうそう!あそこなら誰もいないし、兵士さんたちも来ないでしょ!」

 キスティーは、もうその場にいないかのように小走りで町の外れへと向かい始める。アリシアは苦笑いしながらも、その後に続く。

「おいおい、待てって!」

と、ギルは叫びながら、慌てて二人の後を追った。

 三人が向かうのは、コレットの町から少し離れた場所にある森。町の地図には「魔獣の森」と大きく記載され、誰もが近づかない危険な場所とされていた。しかし、キスティーたちにとっては、そこは幼い頃からの「いつもの遊び場」だった。

 森の入り口には、古びた立て札が立っている。「これより先、魔獣の危険あり。立ち入り禁止」と書かれているが、三人はそんなものには目もくれず、慣れた足取りで奥へと進んでいく。

 木々の間を縫うように進むと、すぐに鬱蒼とした森の中へと吸い込まれていく。涼やかな風が吹き抜け、鳥のさえずりが聞こえる。しかし、それは平和な音ばかりではない。遠くから、獣の唸り声のようなものが聞こえてくる。

「ねー、今日はおおきなカブトムシいるかなー?」

 キスティーが楽しそうに、周りの木々を見上げながら言った。ギルは呆れたように返す。

「カブトムシじゃねぇよ、魔獣だ魔獣。今日こそは、お前が全部倒せよな」

「えー!ずるいー!ギルもアリシアも手伝ってよ!」

 その時、ガサガサと茂みが大きく揺れ、唸り声と共に、体毛が硬い針のようになったニードルベアが飛び出してきた。牙を剥き出しにして、三人に向かって突進してくる。

「あ、早速だ!じゃーんけーん、ぽん!」

 キスティーが突如、魔獣に向かってじゃんけんを仕掛けた。ギルとアリシアは、その突拍子のない行動に顔を見合わせる。

「キスティー!何やってんだお前は!」

 ギルが叫ぶが、ニードルベアは容赦なく迫ってくる。

「はぁ!私が負けた!じゃあ、ギルね!」

 そう言い放つと、キスティーはとっさに身をひるがえし、ギルの背中に隠れた。

「おいっ!」

 ニードルボアの突進を前に、ギルは舌打ちをしながらも、その頑丈な体で真正面から受け止めた。

 ――ズシンッ!

 重い衝撃音が響くが、ギルはびくともしない。その強靭な肉体は、魔獣の攻撃を全く寄せ付けないほどだ。

「アリシア!援護!」

 ギルが叫ぶと、アリシアはすでに手をかざしていた。杖も詠唱もない。ただ彼女の意思に従い、水が凝縮された槍がニードルベアの弱点である眼を正確に貫いた。

 無詠唱の魔法だ。その威力はキスティーほどではないが、アリシアの魔法は制御が非常に精密で、狙った獲物を決して逃さない。ニードルベアは呻き声を上げ、その場に倒れ込んだ。

「よし!今日もバッチリだね!」

 キスティーがひょっこりギルの背中から顔を出し、楽しそうに笑う。

「お前は何もしてねーだろ!」

「大丈夫だった?ギル?」

 アリシアが心配そうにギルに声をかける。

「ああ、別に。こんなのいつものことだろ」

 ギルは肩をすくめ、倒れたニードルベアを一瞥いちべつする。彼らにとって、魔獣との戦闘は、まさに「日常」の一部だった。森の奥に進めば進むほど、彼らがどれほどこの森に慣れ親しんでいるかが分かる。泉で泳いだり、木の実を採ったり、かくれんぼをしたり…そうした遊びの合間に、現れる魔獣を当然のように討伐していく。

 キスティーの全属性魔法を使いこなす圧倒的な力。アリシアの無詠唱かつ精密な魔法。そしてギルバートの魔法も剣も通さない強靭な体。

 それぞれが異なる強みを持ち、騒がしくも互いを補い合うバランスの取れた三人は、今日も魔獣の森で、平和な「日常」を過ごしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

私が騎士団の司令官ってなんですか!? ~聖女じゃなかった私は得意の料理で騎士たちの心を掴んだら食堂の聖女様と呼ばれていました~

あんねーむど
恋愛
 栄養士が騎士団の司令官――!?  元社員食堂の職員・白城千鳥は、ある日突然「聖女」として異世界アルゼリオン王国に召喚される。  しかし期待された聖女の力はまったく発現されず、判明したのは彼女がただの一般人だという事実。  役立たずとして放逐されるかと思いきや、千鳥は王宮食堂で料理人として働くことに。慣れない異世界生活の中でも、栄養管理や献立作りを通して騎士たちの体調を支え、静かに居場所を築いていく。  そんなある日、問題児ばかりを集めた新設部隊アルゼリオン王国騎士団戦術騎士隊【アルタイル】 が発足。なぜか千鳥が司令官に任命されてしまう。  戦えない、魔法も使えない、指揮の経験もない。  困惑する千鳥を待っていたのは、王子である身分を隠している隊長のエドガー、年下で聡明だが一途すぎるノエル、俺様で口の悪い元衛士隊のクラウディオ、外見に反してドSでマッドサイエンティストのフェルナンド、癖も事情も抱えたイケメン騎士たちだった。  最初は反発され、軽んじられ、失敗も重ねる千鳥。それでも彼女は食事、生活管理、観察力といった〝戦えないからこそ持つ力〟で騎士一人ひとりと向き合い、少しずつ信頼を勝ち取っていく。  聖女でも悪役令嬢でもない。戦場に立つことすらできない彼女は、やがて隊員たちを導く司令官として成長していく。    ★にキャラクターイメージ画像アリ〼  ※料理モノの物語ではありません。

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...