バイオレット〜永遠の色〜

Rii

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バイオレット〜告白〜

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誰だったのだろうか。あの男は。
そしてあれほどに色っぽい表情をする彼女に困惑した。

「なんなんだよ…」

その場に居あわせると涙すら出なかったのに
家に帰って浴槽の中で考えていると大粒の涙が自分の目から溢れ出した

初めて恋をして数日で失恋した

何もかも手につかなかった。
初恋が一目惚れなんて信じられる?

はは…バカバカしいや

俺はそのままお風呂の中で目を閉じた

…い
…おい!おきろ!
…さくや!!

真っ暗な中目を開けると目の前にこうきがいた
「…こうき」

「お前何してんだよ!!!お前に渡すものあるからメールも入れて、既読つかないから家に来てみたら風呂場で寝てるなんて。死にてぇのか!!」

「寝てた?俺が?」

「他に誰がいるんだよ」

あきらかに苛立っているこうき
どうしてそこまで苛立っているのか
訳が分からなかった
なんだか何もかもどうでも良くなって俺は笑いだした。こうきはそんな俺を困惑した表情で見つめていた

「はは。初恋が実らないって言葉はほんとなんだな」

「なんだよ。何かあったのかよ。」

「彼氏いないって…。嘘ついてんじゃねーよ!!!!」

ガン!

俺は片手で目元を隠しもう片手を思い切り地面に叩きつけた

「本気になった俺がバカみたいじゃん…。」

「あのお姉さんか?」

俺は泣いた

こうきは俺を撫でながら話を聞いてくれた


「学校行こうぜさくや」

「…だりぃ」

俺のことを心配して家に泊まってくれたこうき
日が明けて学校の準備をするこうきのよこでポーっと壁を見つめる俺

「ほらぁ。早く準備しろよ。授業置いてかれちまうぞ」

俺のことを無理矢理起こし洋服を着替えさせ準備を整え始める

「俺の責任だ。忘れさせてやるから遊びに行こうぜ。可愛い子も紹介してやるよ」

そう言われ数日間俺は花屋に近づくことを拒みながら過ごしていた
だけどどれだけ遊び呆けても彼女が頭から離れることはなかった
可愛い子だって確かにいた。でも、彼女の方が可愛いと一瞬でも思えば彼女のことだけで頭がいっぱいになった。

毎日が苦痛だった

学校も何もかも楽しくなくなってでも、そんな俺とは裏腹に授業で覚えなきゃ行けないものは山ほどある
やらなきゃいけないものは増える一方で俺のやる気は無くなっていった

そんな時たまたま俺は花屋の前を通らなきゃ行けない用事があった

すると

「あれ。さくやくん。最近見なかったけど」

運悪く花屋の入口前の花壇でかなでさんが作業をしていた

どうすればいい

後ろに引き下がろうとした

でも彼女は首を傾げていた

「…あの…か、彼氏…居ないんじゃないんですか」

どもりながら小さな声で聞いた
するとかえでさんは

「うん。いないよ?どうして?」

と不思議そうに俺を見た

「おれ。この間かえでさんが男の人と腕を組んでるところを…その…見ちゃって。」

「あぁ。ふ、ふふ。純粋なんだね?」

「…え?」

「一夜を過ごす人。彼氏じゃなきゃダメ?誰がそんなルール作ったの?」

「…な…なんだよ…それ」

「はは、ガッカリした?」

呆れたように笑う彼女

「かなでさんは!誰とでも、そうゆうこと出来るのかよ!」

「…出来るけど。私の体よ。さくやくんに関係ある?なんだったら今夜相手してあげてもいいけど」

違う。俺はそんなこと望んでない。
俺は肩に下げたカバンをぎゅっと握りしめた。

「だって、私のこと好きなんでしょ?だったら悪くないんじゃない?」

そう言ってハグをしようとした

でも俺は彼女の手を振り払った。

「…どうせあなたも私のこときたないって思ってるんでしょ?」

にやっと右口角だけが上がる彼女
口角は上がってるはずなのに目が寂しそうだった
違う…

「違う…」

俺は何故か泣いていた
どんどん溢れ出てくる涙を俺は精一杯手で拭いた

「汚いなんて…思ってない。俺はあんたに一目惚れしたんだよ。人生で初めての初恋なんだよ。だからあんたがどんな人でも嫌いになんてなれない。」

鼻をすすりながら必死に伝えた
彼女は俺の言葉に切なそうな顔を見せたかと思えばすぐに眉毛がきりっとなり眉間に皺を寄せ力強い目で俺のことをみた

「だからって私は自分のやり方を変えたりしない。汚れたくなかったら私に関わらないで。」

そう言って彼女はお店の中へ入っていった

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