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14 帝都の仕事
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しおりを挟む執務室で魔術を使用していると、視線を感じる。
スレクツは初めてそう感じた時に周囲を視点で確認した。
本当に見られていた。
副団長の肩書を持つ、ほとんど交流のない先輩魔術師二人であったり、執務室に用があって来たはずの一般魔術兵に凝視される。
見られる理由がわからない。
実際に見られているので、自意識過剰すぎる、とも言い切れない。
スレクツがオンフェルシュロッケンを見守るように、見られているようでもない。
なぜ、見られているのか。
見ているくせに、どうして話しかけてこないのか。
スレクツから話しかける勇気がないので、解決できない。
膨大な魔力量に支えられ、日常生活に魔術を使うスレクツは、魔術を手指のように扱う。
一見すると棒立ちのスレクツが紡ぐ魔術は、芸術的な完成度を誇っている。
その上で、構築に発声も起動動作も使っていない。
さらに、信じられないほど速い。
魔術の発動を感知できる魔術師が、スレクツの繊細にして緻密な魔術運用技術に魅入っているだけだ。
スレクツには、見られている事実しか伝わらないが。
若すぎる副団長。
話さず顔も見せず、副団長としての仕事もしない。
スレクツの就任当初は不満を持っていたが、縁故採用ではない、と気がついた副団長たちや一部の兵士たちは、いつか魔術討論をしたいと思っている。
けれど、スレクツは平兵士だった頃は布で顔を隠し、副団長になってからは全身を黒布で覆ってしまった。
近づきがたいのだ。
兄弟子であるクフォーンテ副団長は、スレクツと一般魔術兵たちとの認識がずれていることに気がついているけれど、日々の業務に追われている所に、自分の家族もいる。
成年を超えた兵士たちの関係を取り持つほど、お人好しでもお節介焼きでもなかった。
スレクツは視点を切り替えながら、人が多い道などは避けて、裏路地や暗がりを中心に見ていく。
魔物と戦うことが本職だが、帝都に滞在している間は街の治安維持を手伝っている。
人通りの多い場所は、衛士が見回りをしてくれている。
誰も見ていない、見えにくい場所を見回るのがスレクツの仕事だ。
これは皇帝陛下が直々に勅令を下した職務だ。
皇帝の命でなければ、衛士隊への妨害行為、越権と取られてもおかしくない。
千里眼の視点で現行犯を見つけだし、帝都警備の各衛士詰所に連絡すれば、衛士が現場に駆けつけてくれる。
本来は兵士団所属の魔術兵が、帝都の治安維持に首をつっこむことない。
スレクツが成年を迎えたばかりの頃、兵士を辞めたくなった時の選択肢になれば、と考えたアレス団長が衛士隊に繋ぎをとったことが切っ掛けだった。
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