千里眼の魔術師は赤銅の色を知らない

くろいひつじ

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27 常識は非常識

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 スレクツが低年齢層向けの学舎でいじめられた時。
 「顔を見られたくない。 どうしたら良い?」と聞いた時に、ボル父様はスレクツにいろいろな見方があることを教えてくれた。

 「隠蔽魔術を使えるようになった」と初めて顔を布で隠した時も「え、そういう意味だったのかい?」と困惑しながら「外から布の魔術刻印が見えない方が良いと思うよ」と助言をくれた。
 外に刻印があると、魔術刻印に傷がつけられて、解術されてしまうかも、と。

 だから、この助言もすごくためになるはずだ。
 スレクツはしっかりと頷いた。

「そうなんですね、はい……あの、ボル父様もお加減が悪いのではありませんか」
「ん? いいや大丈夫さ、っ、スル、会いに行く時に、役に立ちそうな本を持って行くね」

 大丈夫といいつつ、ボル父様は息を荒げている。
 風の強い屋外にでもいるのかもしれない、とスレクツは考えた。

「はい、分かりました、あの、お大事にとアレス団長にお伝えください」
「もちろんだよ、すごく気持ち良さそうに寝ているから、心配しないで」

 まだ寝るには早い時間なのにもう寝ているなんて、と不安になるけれど、ボル父様がついていれば大丈夫だろうと思い直す。
 はやく、アレス団長の体調が良くなりますようにと願った。

「はい、ボル父様」
「それじゃ、明後日に、っう、でるっ……」
「え?」
「…………」
「あれ、切れた?」

 もしもスレクツが、オンフェルシュロッケンのようによく聞こえる耳を持っていたなら、コントローレの言葉の奥にアレスの声や、様々な音を聞き取っていたのだろう。
 しかし、スレクツは凡人種で、性的な知識も持っていなかった。

 通信具を片付けようとして、新たな知識を与えられたスレクツは、ふと思いたった。
 知らないのなら、教えてもらえば良い、と。

 窓の外に視点を移せば、そこには夕闇が広がり始めていた。

 再び通信具に手を伸ばしたスレクツは、相手の居場所と名前は分かっても、通信番号を知らないことに気がつく。
 緊張しながら、交換手に赤銅アカガネ兵士団の前線野営地へ繋いで欲しい、と頼んだ。

 手が汗で湿るのを感じながら、待つことしばし。

「はい、お待たせしました、赤銅兵士団のアクデムです。 黒鉄クロガネ魔術兵士団のスレクツ・イイン副団長殿でしょうか?」
「はいそうですっ、突然申し訳ありません。 失礼かと思いましたが、一つだけ、どうしても教えて頂きたいことがございまして、ご迷惑をおかけしますが、時間をいただけないでしょうかっ」
「……ええ、構いませんよ、少し場所を変えますね」

 通信具の向こうで少しざわついていた音が、ふ、と静かになるのを感じた。

 
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