消えた探偵と呪われた村

ユキワラシ

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第一章 封じられた村

第4話 影の呼び声

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桐生は目を開けると、再び暗闇に包まれていた。冷たい空気が肌を刺し、耳元で微かな囁き声が響く。それは、誰かが彼の名前を呼んでいるようだった。しかし、声の正体は見当たらない。ただひたすらに深い闇と霧だけが広がっている。

「蓮…?」

桐生は呟くようにその名を呼んだが、返事はない。暗闇の中で、ひとしきりの沈黙が続いた。彼は足元を見つめながら、何かの影がじわじわと近づいてくるのを感じた。動かないようにしていると、その影はゆっくりと、しかし確実に彼に近づいてきた。

突然、足元に冷たい手が触れた。桐生はその感触に驚き、思わず後ろに飛び退いた。足元に目をやると、見えない手が霧の中から這い寄り、桐生の足に絡みつこうとしているのが見えた。

「何だ…?」

桐生は足を振りほどこうとしたが、その手はあまりにも強く、何度も絡みついてきた。霧の中で視界が再び歪んでいく。あたりの景色が変わり、桐生は何かの叫び声を聞いた。遠くから響くような、女性の悲鳴のようなものだ。

「誰だ…?」

桐生はその声に引き寄せられるように、霧の中を進んだ。足元に絡む手を振り払いながら、声の元へ向かって歩き続けた。視界が次第に開けてくると、目の前に古びた家が現れた。その家は、桐生が最初に蓮と一緒に訪れた場所に似ている。だが、そこには何か異様なものがあった。

家の扉は開いており、暗い中から光が漏れていた。その光の中に、何かがうごめいているのが見えた。桐生はその光に吸い寄せられるように、足を踏み出した。

「中に誰かいる…?」

桐生は心の中で自問自答しながらも、その家に足を踏み入れた。扉を開けると、冷たい空気が一気に流れ込んできた。家の中は静かで、どこか不気味な気配を感じさせる。しかし、その不気味さが桐生をさらに引き寄せるような感覚を与えた。

「助けて…」

突然、再び女性の声が響いた。桐生はその声に導かれるように、家の奥へと足を進める。薄暗い部屋に入ると、足元に何かが触れる感覚があった。桐生は一瞬、立ち止まり、床を見た。その床には無数の手形が残されており、まるで何かが這い寄ってきた証拠のように見えた。

「これは…」

桐生は恐怖を感じながらも、さらに奥へと進んだ。部屋の中央には、大きな鏡が立てかけられている。その鏡の前には、ひとりの女性が座っていた。彼女の顔は見えないが、髪が乱れ、無表情で座り込んでいた。

「誰だ?」

桐生は思わず声をかけた。その瞬間、女性はゆっくりと顔を上げた。桐生はその顔を見て、息を呑んだ。彼女の顔には、あまりにも見覚えのある特徴があった。それは、桐生の知っている女性、蓮の姉――神楽坂玲子の顔だった。

「玲子…?」

桐生は驚きながらも、玲子に近づこうとした。しかし、彼女の目は空虚で、何も答えようとしなかった。桐生が手を伸ばした瞬間、彼女はゆっくりと立ち上がり、鏡の方へと歩き始めた。桐生はその後ろを追いかけるようにして歩き出したが、彼女が鏡の前に立つと、その顔が再び空虚になり、そして突然、鏡の中に消えた。

「玲子…!」

桐生は必死で鏡の前に駆け寄り、鏡を叩いた。しかし、鏡の中には玲子の姿はなく、ただ虚無が広がっているだけだった。桐生は鏡を叩き続け、震える手でその表面を触れた。その瞬間、鏡の中に現れたのは、再び蓮の姿だった。しかし、今度は彼の目が完全に黒く塗りつぶされており、その顔はまるで死人のようだった。

「桐生…お前も…」

その声は、どこか冷たい響きを持っていた。桐生はその声を聞きながら、再び鏡の中で蓮がゆっくりと歩き始めるのを見つめた。その足音が次第に近づき、桐生の背後にまで響いてきた。桐生は背筋が凍るような恐怖を感じ、その場から動けなくなった。

「お前も、もう戻れない。」

その言葉が耳元で響いた瞬間、桐生は思わず振り返った。しかし、そこには何もいなかった。ただ、霧と冷たい空気だけが漂っている。

桐生はその場で立ち尽くし、深い恐怖に包まれながら、次第に視界が黒くなっていくのを感じた。何かが近づいてくる。彼の背後で、無数の手が這い寄ってくる音がした。

その手が桐生の肩を掴んだとき、すべてが一瞬で消えた。
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