異世界転生ワールド

第2章・「歪んだ未来――時の試練」

第46話「失われた記憶――封じられた過去」

新たな試練の始まり

ノワールの登場で、紫苑と悠斗は再び戦いの渦中に引き込まれていた。時空が歪み、二人の周囲には暗い霧が立ち込め、異次元の力が空間をねじ曲げていく。

「お前たちがゼルトを倒したことで、未来は変わった。しかし、その変化は正しいものなのか？」ノワールの声が響く。彼の周囲には黒い霧が渦を巻き、空間を歪ませる力が強くなる。

紫苑は剣を握りしめ、必死に立ち向かおうとする。「お前の言う“正しい未来”がどういうものか、私たちにはわからない。でも、私たちは自分の選んだ未来を守るために戦ってきた！」

悠斗も剣を構え、紫苑に続いた。「たとえ未来が歪んでいたとしても、それは私たちの力で正す。どんな試練が待っていようと、負けるわけにはいかない！」

ノワールは冷徹な目で二人を見つめ、深く息を吐く。「お前たちの意志は尊い。しかし、現実を変えることができる者が、本当に“選ばれた者”かどうかは試さねばならない。」

その瞬間、ノワールが手をかざすと、周囲の時空が歪み、紫苑と悠斗はそれぞれ異なる過去の断片に引き込まれた。

紫苑の過去――封じられた記憶

紫苑は目を覚ますと、見慣れた景色が広がっていた。しかし、それは違った。あたりは暗く、湿った森の中に立っていた。霧が立ち込め、空はどんよりとした色をしている。

「ここは…？」紫苑は不安そうに周囲を見回した。その時、遠くから誰かの声が聞こえてきた。

「紫苑、何をしている？」声の主は、母親のようだった。しかし、紫苑は記憶にその顔を明確に思い出すことができなかった。

「母さん…？」紫苑はその声に引き寄せられるように歩み寄った。しかし、その先に待っていたのは、見知らぬ人物の顔だった。ゼルトの姿がぼんやりと現れる。

「ゼルト…？」紫苑が驚くと、ゼルトは冷たく笑った。

「お前の記憶が封印されていることを、忘れたのか？紫苑、君が選んだ未来には真実が隠されている。」ゼルトの声が冷たく響く。

紫苑は強く息を吐く。「何を言っているのか、わからない。でも、私は自分を信じてここまで来た。ゼルトの言うことに惑わされることはない！」

ゼルトは一歩前に進み、紫苑を見据える。「では、試してみろ。君の記憶を呼び戻すことができるのか？」

その瞬間、紫苑の中に何かが呼び覚まされる。記憶の断片が一気に流れ込んできた。ゼルトとの戦い、そして、その戦いの中で気づいた真実…自分の本当の役割、そして選んだ道。

紫苑は目を閉じ、深く息を吐いた。「これが私の選んだ道だ。どんな試練でも乗り越えてみせる！」

悠斗の過去――不安の中の決意

悠斗もまた、異次元の力に引き込まれ、異なる過去の世界に足を踏み入れた。周囲には見覚えのある街並みが広がり、空には暗い雲が垂れ込めていた。彼はその中で、若き日の自分を見つけた。

「これが…僕の過去？」悠斗は自分に問いかけながら、その場を歩き続けた。その時、遠くから見覚えのある声が聞こえた。

「悠斗！」

それは、母親の声だった。悠斗はその声に引き寄せられるように歩み寄った。だが、前に現れたのは、またも見知らぬ人物だった。ゼルトの姿が再び現れた。

「悠斗、君は真実に向かう勇気があるか？」ゼルトが冷たく問いかける。

悠斗はその言葉に怒りを感じた。「僕はもう、誰かに操られることはない！僕は、自分の力で選んだ未来を守る！」

ゼルトは一瞬だけ微笑んだ。「そうか…。ならば、その未来を守るために、試練を乗り越える覚悟があるのか？」

その瞬間、悠斗の心に何かが呼び覚まされた。過去の記憶が一気に流れ込んできた。家族との絆、そして、戦いの中で得た強さ。自分の力で選び取った未来への決意が、彼の心に確かに刻まれていった。

悠斗はその力を胸に、しっかりと足を踏み締めた。「どんな試練が来ようとも、僕は乗り越える。そして、仲間たちと共に守り抜くんだ！」

再び立ち上がる二人

紫苑と悠斗は、それぞれの試練を乗り越え、再び現実に戻ることができた。二人は互いに見つめ合い、確信を持って言った。

「私たちは、どんな未来でも守り抜く。」紫苑が力強く言い、悠斗も頷いた。「それが、僕たちの選んだ未来だから。」

その言葉と共に、ノワールが再び姿を現した。

「お前たちの意志を見届けた。」ノワールは冷たく言い放つ。「だが、試練はこれで終わりではない。」

――新たなる戦いが、再び幕を開ける。

次回予告

試練を乗り越えた紫苑と悠斗。しかし、ノワールが示す「正しい未来」の本当の意味とは何か？次回、第47話「時の迷宮――明かされる運命の扉」