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6.説明
「という訳なんだけど……大丈夫かな?」
まずは今日一日のデートプランを確認しようという事になり、駅構内にあるカフェに入ったところで、智明は早速シマに「レンタル彼氏」を頼むに至った事情を話していた。
「なるほど……結構深刻な状況ですね」
事情を聞いた最初の反応が「無理はしていませんか?」「大丈夫ですか?」という、智明に対する心遣いばかりで、友人よりもずっと真剣に智明を心配してくれるシマの様子に、感動してしまう。
確かにこれなら、「恋人」だけではなく「友人」や「相談役」としても、引っ張りだこに違いない。
正直なところ、「そんな面倒なことに巻き込むな」と怒鳴られる覚悟もしていたので、シマの優しさが心にしみる。
「もし無理なら、遠慮なく断ってくれて良いから」
「そんな事情を聞いて、「はいそうですか」って帰れませんよ。でも、どうしたら良いんでしょうね?」
「入り込む隙もないような本命がいるんだって見せつけたら、諦めて貰えないかなって思ってるんだけど……」
冷静に考えると、追い詰められた末の無茶な計画だとは思う。
恐怖というのは、判断力を奪ってしまうものなのかもしれない。
だが、徐々に言葉尻が小さくなる智明とは違い、考え込んでいたシマは「なるほど!」と同意する様にパッと明るい笑顔で顔を上げた。
「つまりトモさんの恋人として、いちゃいちゃを見せつけてやれば良いって事ですね! 任せて下さい」
「い、良いの?」
「もちろんです。もともと俺は今日、その為に来てますから。得意分野です」
「本当に助かる、ありがとう」
「ちなみに……今そのお相手は……」
「いる。俺の斜め後ろにある二人席」
朝から感じていた纏わり付くような視線は、気のせいだと思いたかったのだが、やはりそうではなかった事が、カフェに入ってから判明していた。
出来るだけ周りに聞こえないように事情を話したくて、智明とシマはカウンターに並んで肩を寄せ合いながら小さな声で話している。
これだけでも、一見親密そうに見えているはずだ。
ストーカー女性に内容は聞こえていないはずだが、こちらにじっと視線を向けて会話を盗み聞きしようとしているのは、簡単に把握できる。
智明に存在を知らせたいタイプなのか、ストーカー女性はいつも智明の見える範囲に存在していることが多い。
恐らく、智明が少しでも声をかけたら「許可を得た」とばかりに、距離を詰めてくるに違いなかった。
だから、気付いていても全く気付かないふりをして普段通りの生活をしなければならないのが、かなりのストレスになっている。
シマは智明の示した方向に視線だけをチラリと向けて存在を確認すると、右手を智明の肩に回してぎゅっと引き寄せた。
「今日は俺に全部任せて。嫌なことは忘れてください」
「う、うん」
頼りがいのある言葉に頷くと、チュッと軽いキスが頬に触れる。
突然の触れ合いに智明が驚きながら顔を赤くして横を向くと、爽やかな笑顔が目の前に広がっていて言葉を失う。
ガタンっと斜め後ろから動揺した音が聞こえてきたので、どうやら「本命彼氏見せつけ作戦」は効いているようだが、破壊力のありすぎるシマの行動に、智明も大いに動揺することになった。
まずは今日一日のデートプランを確認しようという事になり、駅構内にあるカフェに入ったところで、智明は早速シマに「レンタル彼氏」を頼むに至った事情を話していた。
「なるほど……結構深刻な状況ですね」
事情を聞いた最初の反応が「無理はしていませんか?」「大丈夫ですか?」という、智明に対する心遣いばかりで、友人よりもずっと真剣に智明を心配してくれるシマの様子に、感動してしまう。
確かにこれなら、「恋人」だけではなく「友人」や「相談役」としても、引っ張りだこに違いない。
正直なところ、「そんな面倒なことに巻き込むな」と怒鳴られる覚悟もしていたので、シマの優しさが心にしみる。
「もし無理なら、遠慮なく断ってくれて良いから」
「そんな事情を聞いて、「はいそうですか」って帰れませんよ。でも、どうしたら良いんでしょうね?」
「入り込む隙もないような本命がいるんだって見せつけたら、諦めて貰えないかなって思ってるんだけど……」
冷静に考えると、追い詰められた末の無茶な計画だとは思う。
恐怖というのは、判断力を奪ってしまうものなのかもしれない。
だが、徐々に言葉尻が小さくなる智明とは違い、考え込んでいたシマは「なるほど!」と同意する様にパッと明るい笑顔で顔を上げた。
「つまりトモさんの恋人として、いちゃいちゃを見せつけてやれば良いって事ですね! 任せて下さい」
「い、良いの?」
「もちろんです。もともと俺は今日、その為に来てますから。得意分野です」
「本当に助かる、ありがとう」
「ちなみに……今そのお相手は……」
「いる。俺の斜め後ろにある二人席」
朝から感じていた纏わり付くような視線は、気のせいだと思いたかったのだが、やはりそうではなかった事が、カフェに入ってから判明していた。
出来るだけ周りに聞こえないように事情を話したくて、智明とシマはカウンターに並んで肩を寄せ合いながら小さな声で話している。
これだけでも、一見親密そうに見えているはずだ。
ストーカー女性に内容は聞こえていないはずだが、こちらにじっと視線を向けて会話を盗み聞きしようとしているのは、簡単に把握できる。
智明に存在を知らせたいタイプなのか、ストーカー女性はいつも智明の見える範囲に存在していることが多い。
恐らく、智明が少しでも声をかけたら「許可を得た」とばかりに、距離を詰めてくるに違いなかった。
だから、気付いていても全く気付かないふりをして普段通りの生活をしなければならないのが、かなりのストレスになっている。
シマは智明の示した方向に視線だけをチラリと向けて存在を確認すると、右手を智明の肩に回してぎゅっと引き寄せた。
「今日は俺に全部任せて。嫌なことは忘れてください」
「う、うん」
頼りがいのある言葉に頷くと、チュッと軽いキスが頬に触れる。
突然の触れ合いに智明が驚きながら顔を赤くして横を向くと、爽やかな笑顔が目の前に広がっていて言葉を失う。
ガタンっと斜め後ろから動揺した音が聞こえてきたので、どうやら「本命彼氏見せつけ作戦」は効いているようだが、破壊力のありすぎるシマの行動に、智明も大いに動揺することになった。
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