死の境界で16人が殺し合う神前決闘

がんた

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第3話 消えていくもの

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膝が地面に触れる、その寸前。

胸の奥が、ちくりと痛んだ。

――誰も、これ以上傷つかないでほしい。

ぼんやりと、浮かぶ。

誰が?

分からない。

でも。

それだけは。

「……だめ」

自分でも驚くほど小さな声だった。

だめ。

眠ったら。

この人も。

誰かも。

止められない。

霧が、一瞬揺れた。

ユメの表情が変わる。

「……え?」

私は何もできなかった。

攻撃もできない。

ただ、立っている。

眠気は消えない。

重い。

足も、頭も。

それでも。

立っている。

「どうして……」

ユメが一歩近づく。

霧が濃くなる。

記憶が、削られる。

名前が曖昧になる。

でも。

消えない。

私は言った。

「……やめて」

その瞬間。

世界が、止まった。

霧が凍る。

水面が波紋の形のまま固定される。

ユメの足が、前に出たまま動かない。

彼女は目を見開いた。

「……進めない」

怒りでも、恐怖でもない。

純粋な困惑。

「あなた、何をしたの」

私は何もしていない。

ただ、やめてほしいと思っただけ。

霧が、薄くなる。

ユメの肩が震える。

眠気が、彼女の方へ返っていく。

彼女の目が閉じかける。

「……そっか」

小さく笑う。

「あなたは……夢を必要としてないんだ」

私は答えられない。

分からない。

ただ、立っている。

ユメはゆっくり膝をついた。

「もう、いいや」

それは敗北宣言だった。

円壇が光る。

彼女の体が、淡く輝き始める。

体が、輝きが、散り散りに消えていく。

その前に、彼女は言った。

「ありがとう」

何に対してなのか、分からない。

彼女は光になり、消えた。

円壇に、私だけが残る。

静寂。

風は吹かない。

空は青い。

胸が、苦しい。

勝った。

でも。

私は何もしていない。

ただ。

立っていただけ。

足元の水面に、小さな波紋が広がる。

遠くで、微かに。

電子音のような音がした。

ピッ……ピッ……。

病室のモニター音。

一瞬だけ。

私は、空を見上げた。

「……まだ、終わらない」
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