ふわふわ短編集

ho-kiboshi

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落ちた頭 ※暴力表現有り

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 膝下の草をかき分けて進んでいくと、やがて数メートル先にぽつりと青白い光が見えてきた。
 出口だ。
 
 私は四つん這い状態のつらい姿勢で前進することから早く解放されたかったので、目をきらきらさせて光の方へ向かっていった。ああ、たぶん豆粒サイズの虫たちもこうやって光に導かれて吸い込まれていくのだろう。
 
 私が地下道の穴からひょいと顔を出したとき、
 
「待ってたぜえ」

 声と同時に重くて硬い斧が振り下ろされて、私の首が落ちた。ゴトリ
 ばたた……
 血しぶき。真っ赤な。雑草に覆われた緑の地面をどす黒く染める。
 切断面からドロドロと赤黒い血を噴き出しながら私は息絶えた。

 ならばなぜこうして冷静に私の死体について描写できているのか、いや、もっとずっと前から、この地下道に入る前から、私は私を見下ろしていた。

「……あっけなかったな。近道して正解だった」

 私を追っていた敵、虎のような顔をした、獣人の大男は物足りなさそうに斧を振り上げて、刃にこびりついた血を眺めていた。

「うえ……ニンゲンの血はまずい」

 ぺっと舐め取ったものを吐き出す。そのへんの幅広の草で斧に付いた血を拭う。
 鈍い光が私の視界に入る。
 虎男は地面に落ちた私の頭を見やって、グシッ! と勢い良く踏んづけた。
 うわっ
 私は思わず顔をそむけた。そんな扱い方をするやつがあるか。かわいそうな私の頭。
 虎男の様子を見ている私。近くの大木の陰からのぞいている。

「……チッ、頭潰しちまった。殺した証拠持って帰れねえじゃねえか」

 自業自得と言うべきか。ひょっとして頭悪いな……この獣人。

「おい、始末できたのか」

 おや、新キャラの登場だ。たぶん見つかる心配はないだろうと思っているが、私は用心深く木の陰に身をひそめた。
 やって来たのは野性的な虎男の風貌とは反対の、街でお役人をやっていそうな細い男だった。
 しかし気を抜いてはならない。ひょろい雰囲気をしていながら身のこなしが俊敏なのだ。足場の悪い地面を小石につまずくことなく歩いてきた。気配を消しながら。
 たぶん私が地下道を使って逃げるだろうと推測したのもこいつだろう。頭脳役らしい。

「おうおう兄貴ぃ、悪ぃな、頭やっちまったぜ」

 まったく悪びれる様子もなくガハハと笑う虎男。その巨躯の下で盛大にため息をつく細男。

「いくら損したと思ってる」
「でもあんたの口添えがありゃ、奴を仕留めた報酬はもらえるんだろ」
「たしかにそうだが。……それより、僕が来る前に終わらせてしまったことについて、少々気になることがある」
「なんだなんだ」

 細男が何やら興味深い話を始めた。虎男は頭の上の耳をぴょこぴょこさせながら身をかがめた。私も仲間に入れてほしい。近づいて話を聞いてみたかった。奴らから距離があるので声がはっきり届かないのだ。幸いにも二人は周りをはばからない音量で話をしてくれているが。

「あの子は魂抜けを使った可能性がある」
「どういうこった」
「……お前はお人形遊びをしていたのかもしれない、ということだ」
「んんー!?」

 先生、わからないので私にも説明してください。


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