ふわふわ短編集

ho-kiboshi

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さがしもの

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 ちょいちょい、そこのお兄さん。そう、そうあなた。ちょっとお尋ねしたいことがあるのですが、よろしいですかな。ありがとう。ええとですね、この辺でこれくらいの背丈の、赤い着物を着た子どもを見かけませんでしたか? 十歳くらいの子なんですけどねぇ。初めてこの街にやって来たものですから、ずいぶんはしゃいでいて、気がついたらいつのまにかはぐれてしまいましてね。あはは、はぐれたのは私の方なんですよぉ。まあそんな顔なさらず話を聞いておくれです。
 私たちはこの街で近々開催されるイベントに参加しに来たんですけどね、なんだか思った以上に人が多いし、道は迷路みたいに入り組んでいるし、屋台で売られているお菓子は美味しいしで、街の探索と観光に夢中になっていたら、連れの子がいつの間にか視界から消えていまして……。ああ、はい、私の監督不行届ですごめんなさい。
 で、ですね。道行く人たちに声をかけてあの子に再会できるようお力を貸していただけないかと、こうしてお願いして回っている次第なのです。ええ、お礼はいたしますとも。とは言っても金銭をお渡しするわけではなく……あぁぁちょ待ってください最後まで話を聞いてくださいませ。
 あの子を見つけていただけたなら、ちょっとした「奇蹟」を披露してさしあげましょう。私そういうの得意なんですよぉ。おひとつ、あなたの願い事を叶えてあげますよ。嘘じゃございませんとも。ほら、私の背中を見てごらんなさい。見えますか、黄金のしっぽが。ね、私ちょっと特別なんです。そして、今探している子どもというのは、もっと貴重な存在なんですよ。
 あ、静かにして。……聞こえますか。手を打ち鳴らす音がする。さっき通った公園の方からでしょう。鬼さんこちら、手の鳴る方へ、ってね。どっちが本物の鬼なんだか。
 さ、もう一度確認しておきましょう。捜しているのは赤い着物を着た十歳くらいの子どもです。その子の額をよぉくご覧なさい。まだ小さいが、硬い角がちょこんと生えています。ついでに乳歯がぐらぐらしているのを気にしているから尋ねてみるとよいでしょう。
 あの子はすばしっこいからなかなかつかまらないかもしれません。逆につかまって喰われないように気をつけないと。あら、どうしました? 顔が青くなっているようですが。なに、やっぱり帰るですって? そりゃぁいけません。もう始まっているのですから。よろしく頼みましたよ。お礼は期待してくださいね(にっこり)。


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