自称無能で無価値で無意味な義妹はやっぱ優秀だと思うんだけど

福留しゅん

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今日から公爵家の娘、ねぇ

 母や妹、弟は貧民街での生活に全く未練は無かったらしく、家からは何一つ持ち出さなかった。
 わたしは別に極貧生活が恋しいわけでもなかったけれど、流石に思い出深い私物は箱一つに詰め込んだ。母からは嫌悪感丸出しにされて貴族様からは理解出来ないと肩をすくめられたのが印象深い。
 家に残された衣服とか家具は残らずゴミとして処分するらしい。貧民街からわたし達が過ごした形跡は片付けられて、もう後戻りは出来なかった。

 貴族様に連れてこられたのはお城なんじゃないかってぐらい凄いお屋敷だった。詳しく説明したくても日々生きるのが精一杯だったわたしは、これを説明出来るような言葉が思い浮かばない。とにかく大きくて立派で……とても息苦しくて疲れる空間だった。

 玄関で大勢の出迎えを受けた先で出会ったのは、あーこの娘を世間一般ではお姫様って言うんだろうなー、とか思うぐらい可愛らしい子がいた。プラチナブロンドの髪とかシミ一つ無い肌とか、本当に同じ人間かよって疑いたくなるぐらい魅力的だった。

「ミッシェル。紹介しよう。今日から私の妻になるシャロンだ。こちらはお前の姉にあたるジュリーで、こっちは妹のポーラ、弟のフレディだ」

 は? 姉? わたしがこの子の?
 色々なことが頭に思い浮かんだけれど、その場では目の前の出来事の状況整理に専念することにした。

 出迎えから晩餐を経て分かったことが幾つかある。母もわたし達もこの家にとっては招かれざる存在だ、と、貴族様が軽蔑されている、と、一番敬われているのは新しく妹になったミッシェルだということだ。

 貴族様はどうもミッシェルが気に入らないらしく、彼女には冷たく厳しい言葉を浴びせるばかり。更には前妻のことを愛嬌がないだの抱きがいがなかっただの口出しばかりでうるさかったなどと、こき下ろし放題。逆に母やわたし達を褒めちぎる有様。貴族様も今日という日が来るのを待ちわびていたのが分かった。

 おかしかった。貴族様がこの家で一番偉い筈なのにどうしてこうまで屋敷で働く人達から不満を抱かれるんだろうか、と。

 とはいえぞんざいに扱われることはなく、晩餐を終えるとわたし達は自分達にあてがわれる部屋へと案内された。わたしの部屋を案内したのは他でもないミッシェルで、彼女はわたし達がつい先日まで住んでた家よりもずっと広い部屋について色々と説明してくれた。正直家具がどこぞの有名な工房で作ったとか、飾られた絵画を描いたのは誰それとか全く興味無かったから聞き流したけれどさ。

「ところでお義姉様。せっかくこうしてお会いしたんだもの。今晩は私とお話しない?」

 で、一周した辺りでミッシェルはそんなことを言い出して自分の護衛や侍女を下がらせた。愛人の娘と二人きりになんか出来ない、って不満が隠しきれていなかったけれど、ミッシェルの命令に素直に従った形だ。
 
 部屋の中に残されたわたしはミッシェルに促されて窓際の椅子に腰を落ち着ける。居心地が悪いわたしをミッシェルはじっと見つめてきた。まるでこっちが丸裸にされそうで、怖さすら感じた。

「ねえお義姉様」
「ジュリーで構いませんよ。わたし、ミッシェル様と年は一つも違わないらしいですし」
「では私のことも敬称をつけないで。お互い、親しくしましょう」
「……変わったヤツ」

 少し緊張が和らいで思いっきり視線を崩した。手を組んで足を組んで、わたしは目の前にいる理解出来ない女を睨みつける。
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