新人聖騎士、新米聖女と救済の旅に出る~聖女の正体が魔王だなんて聞いてない~

福留しゅん

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第二章 焦熱魔王編

焦熱魔王、死闘を繰り広げる

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「随分と派手にやってるなぁ」

 互いに射線上に入らないためか細かく動き回っているようで、閃光が見える位置や爆音の発生元も安定しない。今から俺達が加勢に向かおうとしたところで大森林内で彼女達には追いつけやしまい。

 土の邪精霊の親玉は始末して闇の邪精霊は戦闘中。そのため、コラプテッドエルフの残存勢力は攻め手を失い、ディアマンテの配下達に討ち取られていく。勝敗は付いた、もう俺達が戦う必要は無いだろう。

「……とりあえず濡れた服を着替えるか」
「そうだね。濡れた服と下着が肌に貼り付いて気持ち悪いよ」

 幸いにも昼間に洗って乾かした着替えは天幕の中に入れていたおかげで雨の犠牲にならずに済んだ。俺達三人は手早く全部脱いで着替えてしまう。脱いだ武具は錆びないように簡単にでも手入れしておくか。

 ずぶ濡れになったかまどにはもう火を付けられない。こりゃあ毛布に包まって暖を取るしかないか、と諦めていたんだが、ミカエラが魔法で火球を作り出してくれた。「褒めなさい!」と胸を張ってきたので頭を撫でてやり、ありがたく温まる。

「で、このままティーナが戻ってくるのを待つか?」
「ティーナが勝ったらこっちに戻ってくるでしょうし、ティーナが負けたらアデリーナとやらがこっちに来るだけです。余達は待てばいいだけですね」
「んー、無性に気になる。何か様子を窺う方法は無いのか?」
「でしたら余に任せなさい! 遠見の奇跡で戦局を覗きましょう!」

 ミカエラは池の畔で控えていたディアマンテに向けて顎をしゃくると、ディアマンテは手の平から水を溢れ出させ、盆を形作った。それを恭しく頭を垂れながらミカエラに献上、ミカエラは水の盆に触れ、力ある言葉を発した。

 すると、透き通って向こう側が見えるだけだった水の盆がゆらめき、次第に別の光景を映し出していった。それはまさしくティーナとアデリーナが死闘を繰り広げる現場で、なんとその場所の音までこちらに聞こえてきた。

「音は空気が振動して伝わるものですから、同じような波で水を震わせれば音源になるんです。凄いでしょう!」
「便利だなぁ。使い魔と視界を共有する魔法はあるらしいけれど、それ以上だな」
「まだお互いに探り合いをしてるみたいですね。どちらが先に勝負に出た時に決着するでしょう」
「にしても、これがエルフの達人同士の戦いか。個人の武力とは思えないな」

 ティーナは矢継ぎ早にアデリーナに攻撃をしかけていた。時には火球魔法を施して、時には相手を追跡する効果を付与して、時には相手の進行方向を阻むように。一呼吸する間に何十もの矢が放たれていく情景は圧巻の一言だった。

 対するアデリーナも負けていない。射られた矢が命中した途端に大樹だろうと岩だろうと瞬間冷凍し、間髪入れずに放たれた第二の矢が突き刺さった途端に対象を粉微塵にする。中には命中すると周囲に冷気を撒き散らす氷魔法が付与されてもいた。

「全く喋らずに黙々と戦ってますね」
「お喋りの時間はとっくに終わってるってことだろ。それにしても……」
「ええ、それにしても……」
「「射撃しかしないんだな/ですね」」

 二人共弓矢を媒体にしなくたって魔法を発動出来るだろう。弓の腕が互角ならそちらに活路を見出してもいいのだが。エルフとしての誇り、矜持がそうさせるのだろうか。それとも己の技量が相手を上回っているとの自信があるからか。

 やがて戦いの場は景色を変えた。どうやらこの二人、エルフの里まで来てしまったらしい。しかし映像に現れるのはコラプテッドエルフばかり。陥落済みの堕ちた集落は、二人にとっては単なる障害物の集合でしかないようだった。

「巻き添え食ってエルフが丸焼きになったり氷像になってるぞ」
「本当にティーナのことしか見えてないんですね。ためらう素振りすら無いですよ」
「あ、ティーナの放った矢が大木を燃やし始めたぞ。ついでにそこを焼き払うつもりなのか?」
「いえ、そんな余裕は無いかと。単に流れ弾が二次被害をもたらしただけでしょう」

 よく目を凝らして彼女達の周辺を観察すると、どうもここはつい昨日に脱出したエルフの中心地ではないか。アデリーナが堕ちたエルフ達を従えていたことからも明白だったが、実際に見たことある場所が滅んだ様子を見せられるのは心に来るな。

 樹が燃え、樹が凍る。人は消え、家は崩れる。栄華を築いたエルフの都市はたった二人の、それも最古参のエルフの手で壊されていく。ティーナは、そして乗っ取られたアデリーナはこの終焉を目に映して何を思うだろうか。

「見える、私にも見えるぞぉぉティーナぁ! お前の弓の腕前には誰も敵うまいと思っていたが、今の私ならお前に決して引けをとらん!」
「闇の邪精霊の力を借りてうちと互角な程度で威張るんじゃない!」
「私は我で我は私! 全ては私の実力だよぉ! さあどうしたどうした!」
「ああもう、しつこいなぁ! このままどっちかが集中力を切らすまで付き合ってやるのも一興だけど、周りへの被害が激しくなっちゃうな!」

 これまでずっと走り回っていたティーナが動きを止めた。遠く離れた位置でアデリーナもまた足を止める。そしてお互いに弓を引き絞り、つがえた矢に膨大な力を加えていく。
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