新人聖騎士、新米聖女と救済の旅に出る~聖女の正体が魔王だなんて聞いてない~

福留しゅん

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第三章 幻獣魔王編

戦鎚聖騎士、ドワーフ国家の近状を知る

「超竜軍、だったかしら。ドヴェルグ首長国連邦をドラゴンが襲うようになったのは……勇者イレーネの聖地で妖魔軍が撃破されたって一報があった頃かしら」
「となると、他の魔王軍と合わせる形で超竜軍が攻めてくるようになった、と」
「ええ。でも今のところは散発的に小規模な部隊が国境を超えてくるぐらいだから、国境警備の部隊で対処出来ているのだけれどね。伝え聞いてる超竜軍の圧倒的な勢いとは雲泥の差だもの」
「ですが、邪神軍や悪魔軍などに攻め滅ぼされた人類国家は小国含めれば数知れません。なのに魔王軍最強とも言われる超竜軍がそんな様子見に留まってるなんておかしくないですか?」

 この段階で俺はもうドワーフの酒は止めている。酔いが回って気持ちいいんだが、これ以上飲むと地獄を見る羽目になるのは分かってるからな。イレーネは浄化の奇跡を自分に施して酔醒まししてズルい。ティーナも早々に牛……じゃないな、何らかの家畜の乳を一気飲みして悪酔いを防いでたし。

 なおそんな俺達を見たダーリアからは「お子様ねぇ」とか言われた。「そっちの方が見た目お子様のくせに!」と言いたいのをぐっと堪えたんだが、ダーリアに悟られたみたいで、危うく酒をぶっかけられそうになった。

「あくまで私の予想だけど、今の魔王軍は過激派と慎重派で分かれてるんじゃないかしら? 悪魔や邪神達が前者で、妖魔やドラゴンは前者と後者で意見が分かれてるとしたら?」
「成程。一理ありますね。じゃあダーリア達ドワーフはこのまま散発的な攻撃を繰り返すドラゴンの軍勢を迎え撃つだけに留まる、と?」
「都市どころか村にも被害が出てないから、攻めに転じる利が無いのよ。このままやり過ごせばそのうち勇者や聖女が魔王を討伐して終戦になるでしょうから」
「消極的ですねぇ。まあ、余裕があるなら保身に走るのも道理ですか」

 ミカエラはまだ料理を口に運んでいる。俺が散々注意するのでさすがに食べ物を口に入れながら喋ってはいない。あと口からぼろぼろ食べカスが落ちてもいない。当たり前なのにちょっと感動してしまうな。

 なお、ミカエラが一番知りたいことはダーリアからは聞けまい。すなわち何故超竜軍が正統派に関与して軍事行動を取るのか、の動機か。こればっかりは正統派超竜軍の頭を捕まえて聞き出す他あるまい。

「ところで、超竜軍の部隊をいとも簡単にやっつけてましたね。ドワーフの竜騎士ってみんなあんなに凄いんですか?」
「ピンからキリまで様々よ。飛竜を飛ばすのが精一杯なだらしない地方基地も少なくないしね。私が派遣されたこの基地は私が鍛え上げてるから精鋭揃いよ」
「正直言っちゃうと、防衛や治安維持だけ務めるには過剰な強さだと思うんですが」
「今度の魔王はこの数年のうちに誕生する、って予測して、次の魔王軍襲来に備えただけよ」

 成程なぁ、と言いたいところだが、そんな魔王の出現を簡単に予測出来たら苦労はしていない。何せ魔王が討伐された一年も経たずに次の魔王が襲来した時もあれば、半世紀にも渡って魔王が現れない平和な時代もあった。だから何時現れても対処できるよう人類圏国家は常時備えなければならないのだ。

 ダーリアの発言は現役魔王のミカエラのみならず魔王経験者のイレーネやティーナの興味も引いたようで、明らかに目つきが変わった。ダーリアもその反応に気付いたようだったけれど、気にならない風に装った。

「どうやって予測したんですか? 教えて欲しいんですけど」
「そこまで喋る義理は無いわね」
「お金なら払いますしいくらでも奉仕しますから!」
「ちょっと止めなさいって! 貴女聖女でしょうよ! ほら、貴女の聖騎士だって困ってるじゃないの!」
「ニッコロさんは余の味方ですよね!?」
「あー、ダーリア。悪いがミカエラはこうなるといくら言っても聞かないから。自分で納得させるか妥協してくれ」

 知識欲を刺激されたミカエラは縋るようにダーリアを問い詰める。口を割らなかったダーリアもさすがに根負けしたらしく、口を軽くするために大ジョッキ内の酒を一気に飲み干した。「ぷはー!」とか大きく息を吐いてからミカエラを見据える。

「新たな魔王が誕生するには魔王継承の儀が執り行われる必要がある、とは知ってる? 一般には秘匿されてるけれど聖女一行の貴女達なら把握してるでしょう?」
「ええ。いつまでも魔王不在だと向こうは都合が悪いんでしょうね」
「魔王出現だけ見ても法則性なんて無いわよ。だって新たに就任した魔王がいつ人類圏に攻めてくるかはその時の都合によるもの。だから、人類圏に伝わる歴史だけをいくら紐解いたって導き出すのは不可能ね」

 後にミカエラが語った補足を加えると、魔王は人類圏侵略に足る軍事力を整えるか内部の統制が取れなくなったら軍事行動に移る。中には内政だけに注力したり趣味に没頭するだけの魔王もいたらしく、それが人類の歴史上で魔王が現れる間隔が不均一になる理由らしい。

 人類圏だけでは把握は無理。つまり、ダーリアはこう言っているのだ。魔王軍側の社会情報を掴むことでおおよその侵攻時期を割り出すのは不可能ではない、と。やり方は腐る程ある。例えば魔物が人間社会に潜むように魔物社会に間者を送り込んでしまうとか。
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