新人聖騎士、新米聖女と救済の旅に出る~聖女の正体が魔王だなんて聞いてない~

福留しゅん

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第三章 幻獣魔王編

戦鎚聖騎士、晩餐会で脇役に徹する

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「聖女殿は既に魔王軍の軍団を幾つか撃退していると聞いている」
「撃退だなんて……。余は脅威を取り除いたに過ぎませんよ」
「既に勇者殿や他の聖女殿も幾つか軍団に勝利していることも伝わっている。この勢いのままいけば我々があの忌々しきドラゴン共を討ち滅ぼせば、此度の魔王軍は壊滅させたも同然。あとは魔王城まで攻め入って魔王の首を取れば良い」
「けれどそれには超竜軍を倒す必要がありますよね。良い考えが?」
「グランプリが終わった後に竜騎士達を結集させて打って出る。これまでの散発的な襲撃から察するに今回の超竜軍は恐れるに足らず! 問題は無かろう」

 ドワーフの首長の晩餐会に誘われた俺達、出されたドワーフ料理の数々は意外にも中々美味しかった。けれど格式張った食事だと肩がこって楽しくないんだよなぁ。よほどダーリアと遠慮なく語り合った夕飯の方が俺好みだ。

 出席者は聖女ミカエラ一行こと俺達四人と、ドワーフ側は首長の家族らしき首妃、息子一名に娘二名の計九名。首長一家は残らずいかつくてヒゲモジャで背丈が低かった。ようやく老若男女の区別がつくようになったんだが、やっぱり見分けが難しい。

「よろしければ超竜軍の襲撃具合を聞きたいんですけれど」
「勿論だとも。将軍、聖所殿に説明してさしあげろ」
「はっ」

 首長の命令を受けて壁際で待機してた全身鎧の戦士が一歩前へ歩み出た。

 将軍の説明によれば、超竜軍は今のところ大規模な侵攻は仕掛けてきてないらしい。しかし屈強なドラゴン共の猛攻を全て国境で撃退出来ているわけでもなく、地方都市が戦火に晒されることも少なくないんだとか。

 超竜軍は一方向からではなく四方からまんべんなく攻め込んでくる。陸の国境は魔王軍勢力圏と接しているわけではなく、隣国を超えてながら遠路はるばる空を飛んで襲来してくるんだとか。

「それだとまだ軍長代理が率いる超竜軍の本軍は姿を見せてないんですか」
「うむ。幸いにもまだ災害のような圧倒的暴力を持つ個体は来ていない」
「それだと打って出るのは時期尚早じゃあないですか?」
「かといってドラゴン共を待ち受け続けるのにも限界がある。他の魔王軍の軍勢を撃退出来ている今こそが好機と考えているが、いかに?」

 あー、すまんね。今人類圏に攻め入ってるのはミカエラの妹を担ぎ上げる正統派の連中なんだわ。なので魔王軍の規模から言うと多分半分ぐらいだろうか。魔王城に攻め込んでも残り半分近くの大軍勢と戦う破目になるんだろうな。ご苦労なことだ。

 しかしそれはミカエラが魔王だからこそ入手出来た情報だ。人類側は正統派魔王軍の連中の口が軽くない限りは知る由もない。なのでドワーフ首長の自信満々な計画を黙って聞くのが無難だろう。

「それで保険ですか」
「左様。万が一にも我々の想定を上回った場合に備えねばならん。聖女殿には我らの切り札になっていただきたい」

 成程、ただ根拠なき自信にゆだねて突き進むつもりは無いようだ。しかしミカエラは聖地巡礼中。生粋の聖女だったならまだしも彼女は魔王でもある。反撃の狼煙のために悲願を保留にする選択はしないだろう。

「返事は後でも構いませんか? グランプリが終わった後にでも」
「ん、問題無いな。じっくりと考えてくれ」

 意外にもミカエラはドワーフ首長の希望を保留した。一体何のつもりだろうか、とミカエラを窺うも、あいにく顔色から彼女の思惑は読み取れなかった。元々グランプリは観戦するつもりだったので予定に変更は無いし、別にいいか。

 雰囲気が重い超竜軍についての話題はこれで終了し、いよいよ開催されるグランプリへと話題は移った。大会開催日の天候はこう予想される、とか、優勝候補の選手は誰それだ、とか、話は盛り上がった。

「何を隠そう、俺もまたグランプリには参加する予定です」

 と自慢げに語ったのは首長嫡男。自分の胸元を強く叩いて意気込む。

「俺が並み居る強豪を抜き去って真っ先にゴールインしてみせましょう!」
「随分と大きく出ましたね」
「勿論根拠なく宣言しているわけではありません。多くの大会を制覇している実績から申しているに過ぎませんよ」
「へえ、成程」

 どうやら首長一家は一流の飛竜乗りである嫡男が自慢のようで、何年前にどのレースでどのような展開で勝ったかを事細かに説明してくれた。悪いね。俺の頭の容量はそこまで大きくないんで、明日には忘れてると思うわ。

 ふと、気になってしまった。いや、別に彼女の名が出てきてないからって彼女の実力が渓谷本場まで届いてないだけかもしれない。しかし首長達に声をかけられた際の第一印象を信じるなら、ここで切り出すのは悪くない筈だ。

「そう言えばグランプリ本戦参加者と道中知り合いまして。国境近くの地方都市で隊長を務めてたダーリアって言うんですけど」
「「「……!?」」」

 ダーリアの名を口にした途端、首長達の顔色が変わった。

 首長は複雑な表情を見せ、首妃は怯えの色が見られ、嫡男は嘲り、娘二人は鼻で笑った。三者三様の反応は意外だった。

「ダーリア、か。あの娘は一番超竜軍を撃退出来ているな。多くの竜騎士達からも慕われていると報告を受けている」
「はっ! その程度など俺でも出来ますよ! 父上は買いかぶりすぎです!」
「あの髭も無いガリガリなお姉にはそれしか取り柄はないですって」
「あんな見窄らしい上姉なんて視界に入れたくもない! 竜騎士になった途端に地方に左遷させたのはお父様の英断ですよ」
「ダーリア……アレは化け物よ……」

 やはりか。ダーリアが姫様と呼ばれていたのは決して竜騎士部隊の紅一点だからではなく、本当に首長の娘だったからか。そして彼女の真紅の髪は遺伝だったわけだ。しかしあの見た目だから兄や妹から嫌われている、と。
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