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栄光は次へと受け継がれる③
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◇◇◇
「こんばんは」
「ん? あぁ、幽幻ゆうなか」
試合を観戦する宵闇よいちに声をかけたのは幽幻ゆうなだった。彼女は宵闇よいちの隣のパイプ椅子に腰を落ち着け、同じように試合を観戦する。一応配信時間なのもあって試合を視聴者に届けているが、怪奇談を挟もうとはしなかった。
「それで、七尺二寸さん達って凄い選手だったの?」
「凄いなんてもんじゃない。数十年前に世界大会で何度も優勝した当時世界最強のチームだったらしい。七尺二寸って君が呼んでる選手は当時最も活躍して、東洋の巨人とまで呼ばれて恐れられてた、って記録が残ってる」
「じゃあどうして彼女達が怨霊になって現役選手を襲うの?」
「どうせ君自身はとっくに調べているんだろう? その質問は徘徊者諸君に教えるためか。いいだろう、こっちもアブダクティの諸君に知らしめたかったところだ」
宵闇よいちはかく怪奇を語りき。
七尺二寸にまつわる悲劇、そして無念を。
◇◇◇
「七尺二寸の本名は篠原優姫。数十年前に全日本女子バレーボール代表だった名選手だった。その持ち前の身長から繰り出されるサーブやブロックは海外からも最大の脅威と見なされていたね」
「五輪を含めた世界大会で何度も優勝して、黄金時代を築き上げた。男子チームの体たらくがこき下ろされるほどだったらしいよ」
「そんな彼女達に悲劇が起こった」
「強化合宿のために貸切バスに乗っていたチームメンバーは、交通事故に巻き込まれた。全員帰らぬ人になったそうだ」
「都合がつかなかったり病欠でバスに乗っていなかった数人だけが助かった。ほら、今女子バレーの監督やってる宮本監督も当時の日本代表メンバーの一人さ」
「宮本監督も相当頑張った、って昔見たドキュメンタリー番組でやってたけれど、いかんせん実力の差は埋め難かった。その後はさっぱり世界相手に勝てなくなって、黄金時代は幕を下ろしたってわけさ」
「その後は知ってのとおり、良く言えば群雄割拠の時代に突入、悪く言えば日本代表の苦戦が続いている。それが七尺二寸には不甲斐なく見えるんだろう」
「七尺二寸が辻切り同然に現役世代を襲っているのか、それとももっと別の思惑があるのか、それは彼女本人にしか分からないね」
試合は日本代表チームが1セット取り返し、第四セットの最中。次第に勢いづいた日本代表チームが点数を重ねるペースを増していく。七尺二寸達も負けじと脅威の粘りを見せて追いすがる。
「いい試合になってるじゃん。今の日本代表チームが強いのかな?」
「世界全体のレベルが上がってきているのもあるんだろうけれど、一番の要因は七尺二寸達の方だ。何せ、彼女達は連戦だ」
「あー、直前に日本リーグ優勝チームと戦ってたんだっけ」
「さすがに手を緩められるほどの相手じゃなかったようだ。おかげで、スタミナにも陰りが見え始めている」
しかしやがて日本代表チームが優勢となり、第五セットに入る。両チームの選手共に最後に力を振り絞って勝負に挑む。日本代表チーム選手が流す汗が蒸発して蒸気が発生し、七尺二寸達も生前の名残からか汗を拭う仕草をする。
デュースにまで持ち込まれた試合は、谷田が吠えながら放った渾身のアタックがコーチに突き刺さり、ゲームセットとなった。現役日本代表チームが勝利したのだ。
歓喜しながら抱き合う選手達。幽幻ゆうなや宵闇よいちは拍手を送り、視聴者達も一斉に世紀の大一番に万雷の喝采で讃えた。そして、負けた七尺二寸達もまたやりきった満足感から笑みをこぼした。
「勝ちましたよ、篠原先輩」
そんな彼女達に後輩、宮本が歩み寄る。
「これで大人しく成仏してくださいよね」
「そうねー。及第点ってところだけれど、何よりあたし達が堪能しちゃった。もうこの世に留まる未練は無いわー」
「今までお疲れ様でした。そして、お世話になりました!」
「……ええ。これからを、未来をよろしくね」
七尺二寸達は整列し、日本代表チームに向けて一礼した。すると彼女達の身体は透けていき、最後には消えてしまった。まるで初めからこの場にいなかったかのように。日本代表チームはそんな七尺二寸達に深々とお辞儀をするのだった。
幽幻ゆうなは感動の一幕を見届けた宵闇よいちの肩を叩き、ポータブルテレビを見せる。そこに映されていたのは今まさに放送されている宵闇よいちの配信だったが、画面にはノイズや音飛びは一切見られなかった。
「これで体育館階は怪奇から解き放たれた、か」
「七尺二寸さん達、嬉しそうだったね」
「そりゃあそうだ。後輩達が自分達を超えていったんだから」
最後、日本代表チーム選手達が片付けをし、体育館全体の照明を落とし、一同立ち去っていった。
その後、この体育館で影の選手達が出現することはなかった。
「こんばんは」
「ん? あぁ、幽幻ゆうなか」
試合を観戦する宵闇よいちに声をかけたのは幽幻ゆうなだった。彼女は宵闇よいちの隣のパイプ椅子に腰を落ち着け、同じように試合を観戦する。一応配信時間なのもあって試合を視聴者に届けているが、怪奇談を挟もうとはしなかった。
「それで、七尺二寸さん達って凄い選手だったの?」
「凄いなんてもんじゃない。数十年前に世界大会で何度も優勝した当時世界最強のチームだったらしい。七尺二寸って君が呼んでる選手は当時最も活躍して、東洋の巨人とまで呼ばれて恐れられてた、って記録が残ってる」
「じゃあどうして彼女達が怨霊になって現役選手を襲うの?」
「どうせ君自身はとっくに調べているんだろう? その質問は徘徊者諸君に教えるためか。いいだろう、こっちもアブダクティの諸君に知らしめたかったところだ」
宵闇よいちはかく怪奇を語りき。
七尺二寸にまつわる悲劇、そして無念を。
◇◇◇
「七尺二寸の本名は篠原優姫。数十年前に全日本女子バレーボール代表だった名選手だった。その持ち前の身長から繰り出されるサーブやブロックは海外からも最大の脅威と見なされていたね」
「五輪を含めた世界大会で何度も優勝して、黄金時代を築き上げた。男子チームの体たらくがこき下ろされるほどだったらしいよ」
「そんな彼女達に悲劇が起こった」
「強化合宿のために貸切バスに乗っていたチームメンバーは、交通事故に巻き込まれた。全員帰らぬ人になったそうだ」
「都合がつかなかったり病欠でバスに乗っていなかった数人だけが助かった。ほら、今女子バレーの監督やってる宮本監督も当時の日本代表メンバーの一人さ」
「宮本監督も相当頑張った、って昔見たドキュメンタリー番組でやってたけれど、いかんせん実力の差は埋め難かった。その後はさっぱり世界相手に勝てなくなって、黄金時代は幕を下ろしたってわけさ」
「その後は知ってのとおり、良く言えば群雄割拠の時代に突入、悪く言えば日本代表の苦戦が続いている。それが七尺二寸には不甲斐なく見えるんだろう」
「七尺二寸が辻切り同然に現役世代を襲っているのか、それとももっと別の思惑があるのか、それは彼女本人にしか分からないね」
試合は日本代表チームが1セット取り返し、第四セットの最中。次第に勢いづいた日本代表チームが点数を重ねるペースを増していく。七尺二寸達も負けじと脅威の粘りを見せて追いすがる。
「いい試合になってるじゃん。今の日本代表チームが強いのかな?」
「世界全体のレベルが上がってきているのもあるんだろうけれど、一番の要因は七尺二寸達の方だ。何せ、彼女達は連戦だ」
「あー、直前に日本リーグ優勝チームと戦ってたんだっけ」
「さすがに手を緩められるほどの相手じゃなかったようだ。おかげで、スタミナにも陰りが見え始めている」
しかしやがて日本代表チームが優勢となり、第五セットに入る。両チームの選手共に最後に力を振り絞って勝負に挑む。日本代表チーム選手が流す汗が蒸発して蒸気が発生し、七尺二寸達も生前の名残からか汗を拭う仕草をする。
デュースにまで持ち込まれた試合は、谷田が吠えながら放った渾身のアタックがコーチに突き刺さり、ゲームセットとなった。現役日本代表チームが勝利したのだ。
歓喜しながら抱き合う選手達。幽幻ゆうなや宵闇よいちは拍手を送り、視聴者達も一斉に世紀の大一番に万雷の喝采で讃えた。そして、負けた七尺二寸達もまたやりきった満足感から笑みをこぼした。
「勝ちましたよ、篠原先輩」
そんな彼女達に後輩、宮本が歩み寄る。
「これで大人しく成仏してくださいよね」
「そうねー。及第点ってところだけれど、何よりあたし達が堪能しちゃった。もうこの世に留まる未練は無いわー」
「今までお疲れ様でした。そして、お世話になりました!」
「……ええ。これからを、未来をよろしくね」
七尺二寸達は整列し、日本代表チームに向けて一礼した。すると彼女達の身体は透けていき、最後には消えてしまった。まるで初めからこの場にいなかったかのように。日本代表チームはそんな七尺二寸達に深々とお辞儀をするのだった。
幽幻ゆうなは感動の一幕を見届けた宵闇よいちの肩を叩き、ポータブルテレビを見せる。そこに映されていたのは今まさに放送されている宵闇よいちの配信だったが、画面にはノイズや音飛びは一切見られなかった。
「これで体育館階は怪奇から解き放たれた、か」
「七尺二寸さん達、嬉しそうだったね」
「そりゃあそうだ。後輩達が自分達を超えていったんだから」
最後、日本代表チーム選手達が片付けをし、体育館全体の照明を落とし、一同立ち去っていった。
その後、この体育館で影の選手達が出現することはなかった。
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