名前のない物語

キィー

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プロローグ〜その1〜

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初めまして
私に名前というものは無いのですが
それでは誰かが困りますでしょうし
ここでは【語り手】と申しておきます。
本当は登場する予定ではなかったのですが
私の主人の意により
今後、また、どこかに
こうしてお邪魔することになるかもしれません

まぁ、全ては主人の気分次第ですが…
"今は"あくまで主人のものなのぇ
私はそれに従うまでです

これを機に私のことが気になった方がいれば
私を…見つけ続けてみてください
いつか…時がくるまで…

これはそう…ですね
プロローグ♪
とでも言っておきましょう

さて、長話はこれくらいにして
始めましょうか

これは"自分"が主人公
誰だ、誰か、誰よ、ではない
"自分"が主人公

"自分だから見えるもの"
"自分で見えるもの"を
知ってほしい

「なんてね、さぁ、物語を語りましょう」





父は病気で外にはあまり出られない
最初からというわけではない
ある日突然、そうなってしまった

父が働くことすらできなくなったので
母が1人が働きに出ていた
恵まれた環境ではなかったが
それなりに暮らしていた

でも、少しずつ
着実に"何か"は変化して
進んでいく

見て見ぬふりは決してできない"現実"が

体調によって入退院を繰り返し
副反応で体型も変わった父
そのせいなのか…情けなさ、怯えからなのか…
「ごめんなさい」や「すみません」
と言うのが口癖になるほど
精神的にも弱くなっていった

仕事に家事…いつの間にか父の介護…
父がいることで援助されるものがある
子供のためには…我慢しなければ
決して多くない収入…
我慢…我慢…それは…いつまで…?
夜遅くに帰ってきた母の小さな泣き声で
目を覚ますときもあった
母は泣いて「ごめんね」と言う

そんな姿を見れば見るほど
悲しくて悔しくて
何も出来ない自分を嫌った
人間関係もなにもかもうまくいかない
出来損ないの自分を突きつけられ
変わることもできない自分を
さらに嫌う


みんな必死だった
耐えて…苦しんでた…だから…
誰かのことを考える余裕なんてなかった


気づけば、それぞれが衝突することが多くなっていた


物に八つ当たりをして
お互いの身体や精神を傷つけ合い
時には…思い出すと震えるくらいの恐怖も…
苦しさと痛みのあまり
自ら傷をつけようとした
でも…できなかった…
それくらい弱かったから

話せる弟や妹、頼れる兄や姉なんていない
父や母にはいたかもしれない
でも…子は自分一人
頼りない無知の自分だけ
苦しみや痛みを分かち合えて
無条件で頼れる存在がいたら
…一人は寂しい

苦しみから逃げることも
楽に終わらせてもくれない現実
それらを背負った自分を憎んだ

嫌って、憎んで
憎むことにも飽きた時
ふと、なんで生きているんだろうと思った
なぜ生まれてきたんだろう
生まれなければ
父も母も誰も苦しまなかったかもしれない
生まれてきてしまったから
こんな現実を見なければいけなくなったんだ



…あぁ

そう考えることも、感じることも
もう…疲れた…どうでもいい…


無意味だと思いながらも
息をするだけの…
薄汚れたボロボロの人形のように生きて
綺麗な"何か"を見つけるたびに
羨ましく思った

"希望"も"夢"もない日々



…ある日
母と父と自分は
それぞれ別々に暮らし始め
父と母の関係は他人となった
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