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74話 シロッコ、地形の一部を変えてしまい ヒラリエ、アリマの怒りを受ける
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青い空! 輝く太陽! 熱い砂浜! ビーチが君を呼んでいる!
シロッコは洞口家の家族と海水浴に来ていた。
「おじいちゃん! こんな素敵な海を用意してくれてありがとう!」
デッキチェアに横になるシロッコを華音がお礼を言いながら拾ってきた大きなバナナの葉っぱで扇いでくれる。
「なーに、これくらい容易いものじゃよ」
シロッコは上機嫌で返事をした。 華音は先程よりシロッコに近付きバナナの葉っぱで扇いでくれる。 葉っぱがシロッコの顔を叩く。
「ちょ! 華音ちゃん。 それは儂の顔を叩くものじゃないんじゃよ」
バシバシバシ。 華音は無言でシロッコの顔を葉っぱで叩く。 叩く事をやめない。 例えシロッコが泣いても叩くのをやめてくれないだろう。
「か、華音ちゃん一体何をするんじゃあ~」
「うう...... ひどいんじゃよ」
シロッコは目を開ける。 波の音が聞こえ照りつける太陽の陽射しがまぶしい。 バシバシバシ。 そして自分の顔を叩く...... モーリンの尾ビレ。
「な...... 何をしておるんじゃモーリン」
「ぞくちょう! かみさまめをあけた!」
「おお! シロッコ様!」
「「かみさま! よかった!」」
族長が寄ってくる。 シロッコは顔を動かす。 モーリンの姉妹達がやはり尾ビレでシロッコに風を送ってくれていた。 モーリン達の目には涙が。
「儂は......」
シロッコは直前の記憶を思いだそうとする。
「魔力の照射が抑えられん!」
掌から照射されている光はすでに天井にあたる地表を吹き飛ばしさらにその範囲を広げようとしている。
アリマの様子も尋常ではなく、もはやアリマによる制御は期待できない。
「こうなればまさにイチかバチかしか残っとらん!」
シロッコは力を振り絞り強制的にアリマとの魔力接点を絶ちきる。
「ぐううっ!」
「うあぁっ!」
アリマが弾き跳んだ! シロッコもその反動で掌の角度が変わってしまう。
それでも魔力の照射は収まらず、その大きな破壊の力は壁にあたる部分にまで容赦なく襲いかかっていく。
「きゃああ!?」
「か、かみさまぁ!」
「うおおっ!」
逃げ惑う魚人達! シロッコは壁の一部が破壊され始めた時、天井の破片すら残さなかった程の力の性質を変化させる事を試みる。
「正真正銘、儂の奇策じゃああ!」
......そして光は膨張し、辺り一帯を飲み込んだ。
「そ、そうじゃ。 お主ら無事であったか! アリマも無事か!?」
シロッコは急いで立ち上がろうとして...... バランスを崩して地面に手をついた...... ら、地面のその部分がグニュッとへこんだ。
「う、うおお?」
慌てて手を引っ込めるとへこんだ地面がゆっくりと元に戻っていく。
「ど、どうなっておる」
冷静に感覚を確かめれば体の重心も常に揺れている。
周囲の風景も前は広がる海だが背面はそびえ立つ断崖だった。 アリマもシロッコと少し離れた位置に横たわっている。 傍ではモーリンの姉妹達が尾ビレで風を送ってくれていた。
シロッコがいるのは海面で崖に寄り添うように存在している小島、もしくは出島のような場所。
「族長。 すまんが何があったか説明してくれんか? なぜ儂はこんな場所におる」
「は、はい。 ここは...... 神様が最初からおられた場所です。 ただし地形が変わり水位に変化が起きておりますが......」
シロッコ達がいた場所はすでに水没し、かなり深い場所になっているらしい。
「儂は最後抑えられぬ魔力から破壊の力を無力化したつもりじゃったが失敗したのか? ......いや、それならばそなたらが儂の前におる事はないはずじゃ」
「は、はい。 神様も我々もその周囲ごと強烈な光に飲み込まれましたが、不思議な事にそれでダメージを受ける事はありませんでした」
「すごくまぶしかった! めがあけられなかった!」
私も私もと姉妹達が騒ぐ。
「そうか。 それはすまんかった。 じゃが一応試みは成功したようじゃな。 土壇場の賭けには勝てて良かった」
シロッコから安堵のため息がもれる。
シロッコが気を失う直前に膨張した光は、ガーディ達のいる砦を越えて届くような広範囲のものだった。 が、結果は謎の光がその場所をしばらく照らしただけに過ぎない。 本来なら破壊の嵐が巻き起こり地形が変わるほどの大災害になっていても不思議ではなかった。
「あの魔力を破壊魔法から照明魔法に変えてやったからの」
そう。 シロッコは破壊魔法が光属性である事を利用し、それを同じ属性の照明魔法に上書きしたのである。
そのため近くの開拓村さえ損害はほとんど出なかった。 だが、騒動が起きた中心部と魔力の放射が向けられた側はさすがに無傷とはいかず、その地形は大きく変貌してしまったようだ。
「壁だった部分が破壊された時、多少の落石が発生しましたが、魔蛸自らが我等の防壁となってくれた為に被害は免れました」
族長の説明でシロッコは視界の中に魔蛸がいない事に気付く。
「魔蛸がおらんのはまさか......」
だが族長は魔蛸の件に触れず話を進める。
「地下からの壁の破壊は地表まで達したようで、神様方が倒れられてから暫くして
今度は大量の土砂や海水が流れ込んできたのです」
「かみさまもみんなもながれでみずのなかグルグルまわされた。 そっちのかみさまも」
「マダコはその時も我々全員を包み込んでくれ、衝撃を一身に引き受けてくれたのです」
「なんと...... それで魔蛸は無事なのか?」
族長はその問いに答えない。
「補佐の確認報告が来ていないのでこれはまだ推測の域を出ないのですが、この地は現在湾の様な形になっていて、周囲は断崖、そして破壊された部分が『渓谷』の様になり外海と繋がってしまったものと......」
「かみさまたちをねかせるばしょもなくなってこまったけどマダコがたすけてくれた」
「はい。 断崖に吸盤で脚をかけて浮島の様になってくれているのが魔蛸です。 つまり我々は今魔蛸の上にいるという事になります」
シロッコは驚く。 確かに良くみれば寝かされていた場所は地面と同じとは言い難い。
「マダコもヒリュウもかみさまたちをしんぱいしていた」
神を助ける為に協力し、随分打ち解けたと族長は説明を加える。 飛竜は断崖に手頃な場所を見つけそこからこちらを見ていた。
「まるで海鳥じゃな。 サイズは違うが」
「ごほっ!」
その時アリマが咳き込み目を覚ます。
「気がついたかアリマ」
「うう? シロッコか? 妾は...... なぜずぶ濡れになっておる」
おまけに水の中に入れられてグルグルかき混ぜられたような気分だと気持ちの悪さを訴えた。
シロッコはかいつまんで事情を説明する。
「......事実だったのかや。 よもやまた水の中に放り込まれるとは」
「なんだかすまんかったの」
「とりあえず無事じゃったのじゃ。 気にする必要ないぞよ。 不可抗力なのは分かっておるからの。 じゃが...... あれは一体なんだったのか」
二人の計画をおかしくした謎の影響力の存在。 シロッコとアリマは神妙な顔になる。
「でもみんなぶじでよかったの! マダコやヒリュウともなかよくなれたし!」
重苦しい空気を吹き飛ばすようにマーリンが言った。 マーリンはそのままずりずりと海面際まで行き、
「かみさまふたりともきがついた! あなたもありがとう!」
と大きな声で魔蛸に伝えた。 すると魔蛸の方も崖に取りついている触腕以外を皆を囲む様に海上へと伸ばし...... 地面の代わりになっている自分の体表の色を七色に次々と変えたのだ。
「「「わあ! きれいきれい!」」」
「!? ほう、これは良い。 婿殿らにも見せたいものよな」
「神様、皆喜んでおります」
「うむ。 気を使わせたようじゃな。 礼を言わせてくれ」
そんな中、二頭の飛竜が崖の上へと上昇して行った。 どうやら村の方から誰か来たらしい。 しばらくして、飛竜の背に乗り二人の獣人が降りてきた。 ヒラリエとサトオルである。 何が起きたのか周辺の状況を確認するためにやって来たのだ。
「シロッコ様!? こ、これは一体にゃにがあったにゃり!? あ、アリマ様も一緒だったにゃりね」
低空でホバリングする飛竜からヒラリエとサトオルが降りてくる。
「ぎにゃ! 地面がフニャフニャするにゃ!」
「シロッコ様すごい衝撃があり来ましたがこれは...... それにこの者達は......」
「あー...... サトオルには悪いが地図を修正する必要が出てきてしもうたな」
シロッコは魚人達と獣人達を互いに紹介した。
「その尻尾、少し味見してもいいかにゃあ?」
「いいわけない! かみさまこのひとこわいよ!」
だがヒラリエは自身の興味よりもシロッコ達に伝えねばいけない事を思い出す。
「そうにゃ! シロッコ様、アリマ様、とんでもにゃい事伝えるのを忘れてたにゃり」
それにはアリマが突っ込む。
「忘れる程度の事ならとんでもなくないのではないかや?」
「ふっふーん。 アリマ様、そんにゃ事言うと後悔しますにゃりよ」
ヒラリエは幸依が魔力を回復させる料理を完成させた件を伝える。
「「な、なんじゃと!?」」
シロッコとアリマの驚き様は凄かった。
そしてヒラリエはアリマの逆鱗に触れた。
「愚か者! それは何よりも優先して伝えぬか! 貴様はそのまま一度海に飛び込み頭を冷やすが良い!」
アリマはヒラリエに強制力を発動させる。
「......? ぎにゃーっ!! 水は! 水は嫌にゃりよー! あーっ!!!」
ヒラリエは涙目になりながらも魔蛸の上から海に向かってダイブした。
「いやならとびこまなければいいのに。 へんなひと」
マーリン達にはアリマと亜人の関係がわからないのでこれはごく自然な反応だ。
シロッコは魚人達に優先せねばならぬ事ができたので一度戻る事。 この海の調査と住むのに適しているなら魔蛸と共に自由にしてよいと告げて飛竜の背に乗りアリマ達と戻って行った。
ヒラリエは飛竜につままれ、洗濯物の様に連れていかれる。
「うう...... 後悔の海に旅立ったのはアタイだったにゃ。 ルミにゃとテリーが言ってたのはこれだったのにゃね。 お、恐ろしい」
村に戻ったシロッコは何が起きたか説明し、村の状況も聞いて直ぐに正和回復の準備にかかる事を提案した。
「の、のうシロッコ。 妾らのあれは...... また厄介な事になるのではないかや? 今の段階で婿殿には......」
アリマはシロッコに不安を伝える。
「その不安は最もじゃ。 儂にも全く懸念がない訳ではない」
「ならば......」
「じゃがこれに関しては先伸ばしにしても一緒じゃろう。 原因も正体も何もかも不明なんじゃから」
「あ......」
「しかし何かしらの影響をそなたが受けておるとしても、それは自由自在に行えておる訳でもないようじゃ」
「む。 言われてみれば確かにそうかも知れぬが......」
発現にはトリガーが存在しているのではないかとしてシロッコは続けた。
「お主に闇の力があるのは間違いない。 だが、闇の力の行使がトリガーなのかと言えばそれは違う」
「うむ。 もしそうならば妾はすでに妾ではなくなっておるじゃろうしな」
闇の力はアリマの魔力使用には必ず関わっているのだから。
「一度目は見た。 二度目は体験した。 そして日常の生活を送るアリマ。 儂は盲点を見つけた気がするぞ」
失敗で成長しておる神の儂を侮るなよ?
シロッコは誰に向けるともなく笑った。
シロッコは洞口家の家族と海水浴に来ていた。
「おじいちゃん! こんな素敵な海を用意してくれてありがとう!」
デッキチェアに横になるシロッコを華音がお礼を言いながら拾ってきた大きなバナナの葉っぱで扇いでくれる。
「なーに、これくらい容易いものじゃよ」
シロッコは上機嫌で返事をした。 華音は先程よりシロッコに近付きバナナの葉っぱで扇いでくれる。 葉っぱがシロッコの顔を叩く。
「ちょ! 華音ちゃん。 それは儂の顔を叩くものじゃないんじゃよ」
バシバシバシ。 華音は無言でシロッコの顔を葉っぱで叩く。 叩く事をやめない。 例えシロッコが泣いても叩くのをやめてくれないだろう。
「か、華音ちゃん一体何をするんじゃあ~」
「うう...... ひどいんじゃよ」
シロッコは目を開ける。 波の音が聞こえ照りつける太陽の陽射しがまぶしい。 バシバシバシ。 そして自分の顔を叩く...... モーリンの尾ビレ。
「な...... 何をしておるんじゃモーリン」
「ぞくちょう! かみさまめをあけた!」
「おお! シロッコ様!」
「「かみさま! よかった!」」
族長が寄ってくる。 シロッコは顔を動かす。 モーリンの姉妹達がやはり尾ビレでシロッコに風を送ってくれていた。 モーリン達の目には涙が。
「儂は......」
シロッコは直前の記憶を思いだそうとする。
「魔力の照射が抑えられん!」
掌から照射されている光はすでに天井にあたる地表を吹き飛ばしさらにその範囲を広げようとしている。
アリマの様子も尋常ではなく、もはやアリマによる制御は期待できない。
「こうなればまさにイチかバチかしか残っとらん!」
シロッコは力を振り絞り強制的にアリマとの魔力接点を絶ちきる。
「ぐううっ!」
「うあぁっ!」
アリマが弾き跳んだ! シロッコもその反動で掌の角度が変わってしまう。
それでも魔力の照射は収まらず、その大きな破壊の力は壁にあたる部分にまで容赦なく襲いかかっていく。
「きゃああ!?」
「か、かみさまぁ!」
「うおおっ!」
逃げ惑う魚人達! シロッコは壁の一部が破壊され始めた時、天井の破片すら残さなかった程の力の性質を変化させる事を試みる。
「正真正銘、儂の奇策じゃああ!」
......そして光は膨張し、辺り一帯を飲み込んだ。
「そ、そうじゃ。 お主ら無事であったか! アリマも無事か!?」
シロッコは急いで立ち上がろうとして...... バランスを崩して地面に手をついた...... ら、地面のその部分がグニュッとへこんだ。
「う、うおお?」
慌てて手を引っ込めるとへこんだ地面がゆっくりと元に戻っていく。
「ど、どうなっておる」
冷静に感覚を確かめれば体の重心も常に揺れている。
周囲の風景も前は広がる海だが背面はそびえ立つ断崖だった。 アリマもシロッコと少し離れた位置に横たわっている。 傍ではモーリンの姉妹達が尾ビレで風を送ってくれていた。
シロッコがいるのは海面で崖に寄り添うように存在している小島、もしくは出島のような場所。
「族長。 すまんが何があったか説明してくれんか? なぜ儂はこんな場所におる」
「は、はい。 ここは...... 神様が最初からおられた場所です。 ただし地形が変わり水位に変化が起きておりますが......」
シロッコ達がいた場所はすでに水没し、かなり深い場所になっているらしい。
「儂は最後抑えられぬ魔力から破壊の力を無力化したつもりじゃったが失敗したのか? ......いや、それならばそなたらが儂の前におる事はないはずじゃ」
「は、はい。 神様も我々もその周囲ごと強烈な光に飲み込まれましたが、不思議な事にそれでダメージを受ける事はありませんでした」
「すごくまぶしかった! めがあけられなかった!」
私も私もと姉妹達が騒ぐ。
「そうか。 それはすまんかった。 じゃが一応試みは成功したようじゃな。 土壇場の賭けには勝てて良かった」
シロッコから安堵のため息がもれる。
シロッコが気を失う直前に膨張した光は、ガーディ達のいる砦を越えて届くような広範囲のものだった。 が、結果は謎の光がその場所をしばらく照らしただけに過ぎない。 本来なら破壊の嵐が巻き起こり地形が変わるほどの大災害になっていても不思議ではなかった。
「あの魔力を破壊魔法から照明魔法に変えてやったからの」
そう。 シロッコは破壊魔法が光属性である事を利用し、それを同じ属性の照明魔法に上書きしたのである。
そのため近くの開拓村さえ損害はほとんど出なかった。 だが、騒動が起きた中心部と魔力の放射が向けられた側はさすがに無傷とはいかず、その地形は大きく変貌してしまったようだ。
「壁だった部分が破壊された時、多少の落石が発生しましたが、魔蛸自らが我等の防壁となってくれた為に被害は免れました」
族長の説明でシロッコは視界の中に魔蛸がいない事に気付く。
「魔蛸がおらんのはまさか......」
だが族長は魔蛸の件に触れず話を進める。
「地下からの壁の破壊は地表まで達したようで、神様方が倒れられてから暫くして
今度は大量の土砂や海水が流れ込んできたのです」
「かみさまもみんなもながれでみずのなかグルグルまわされた。 そっちのかみさまも」
「マダコはその時も我々全員を包み込んでくれ、衝撃を一身に引き受けてくれたのです」
「なんと...... それで魔蛸は無事なのか?」
族長はその問いに答えない。
「補佐の確認報告が来ていないのでこれはまだ推測の域を出ないのですが、この地は現在湾の様な形になっていて、周囲は断崖、そして破壊された部分が『渓谷』の様になり外海と繋がってしまったものと......」
「かみさまたちをねかせるばしょもなくなってこまったけどマダコがたすけてくれた」
「はい。 断崖に吸盤で脚をかけて浮島の様になってくれているのが魔蛸です。 つまり我々は今魔蛸の上にいるという事になります」
シロッコは驚く。 確かに良くみれば寝かされていた場所は地面と同じとは言い難い。
「マダコもヒリュウもかみさまたちをしんぱいしていた」
神を助ける為に協力し、随分打ち解けたと族長は説明を加える。 飛竜は断崖に手頃な場所を見つけそこからこちらを見ていた。
「まるで海鳥じゃな。 サイズは違うが」
「ごほっ!」
その時アリマが咳き込み目を覚ます。
「気がついたかアリマ」
「うう? シロッコか? 妾は...... なぜずぶ濡れになっておる」
おまけに水の中に入れられてグルグルかき混ぜられたような気分だと気持ちの悪さを訴えた。
シロッコはかいつまんで事情を説明する。
「......事実だったのかや。 よもやまた水の中に放り込まれるとは」
「なんだかすまんかったの」
「とりあえず無事じゃったのじゃ。 気にする必要ないぞよ。 不可抗力なのは分かっておるからの。 じゃが...... あれは一体なんだったのか」
二人の計画をおかしくした謎の影響力の存在。 シロッコとアリマは神妙な顔になる。
「でもみんなぶじでよかったの! マダコやヒリュウともなかよくなれたし!」
重苦しい空気を吹き飛ばすようにマーリンが言った。 マーリンはそのままずりずりと海面際まで行き、
「かみさまふたりともきがついた! あなたもありがとう!」
と大きな声で魔蛸に伝えた。 すると魔蛸の方も崖に取りついている触腕以外を皆を囲む様に海上へと伸ばし...... 地面の代わりになっている自分の体表の色を七色に次々と変えたのだ。
「「「わあ! きれいきれい!」」」
「!? ほう、これは良い。 婿殿らにも見せたいものよな」
「神様、皆喜んでおります」
「うむ。 気を使わせたようじゃな。 礼を言わせてくれ」
そんな中、二頭の飛竜が崖の上へと上昇して行った。 どうやら村の方から誰か来たらしい。 しばらくして、飛竜の背に乗り二人の獣人が降りてきた。 ヒラリエとサトオルである。 何が起きたのか周辺の状況を確認するためにやって来たのだ。
「シロッコ様!? こ、これは一体にゃにがあったにゃり!? あ、アリマ様も一緒だったにゃりね」
低空でホバリングする飛竜からヒラリエとサトオルが降りてくる。
「ぎにゃ! 地面がフニャフニャするにゃ!」
「シロッコ様すごい衝撃があり来ましたがこれは...... それにこの者達は......」
「あー...... サトオルには悪いが地図を修正する必要が出てきてしもうたな」
シロッコは魚人達と獣人達を互いに紹介した。
「その尻尾、少し味見してもいいかにゃあ?」
「いいわけない! かみさまこのひとこわいよ!」
だがヒラリエは自身の興味よりもシロッコ達に伝えねばいけない事を思い出す。
「そうにゃ! シロッコ様、アリマ様、とんでもにゃい事伝えるのを忘れてたにゃり」
それにはアリマが突っ込む。
「忘れる程度の事ならとんでもなくないのではないかや?」
「ふっふーん。 アリマ様、そんにゃ事言うと後悔しますにゃりよ」
ヒラリエは幸依が魔力を回復させる料理を完成させた件を伝える。
「「な、なんじゃと!?」」
シロッコとアリマの驚き様は凄かった。
そしてヒラリエはアリマの逆鱗に触れた。
「愚か者! それは何よりも優先して伝えぬか! 貴様はそのまま一度海に飛び込み頭を冷やすが良い!」
アリマはヒラリエに強制力を発動させる。
「......? ぎにゃーっ!! 水は! 水は嫌にゃりよー! あーっ!!!」
ヒラリエは涙目になりながらも魔蛸の上から海に向かってダイブした。
「いやならとびこまなければいいのに。 へんなひと」
マーリン達にはアリマと亜人の関係がわからないのでこれはごく自然な反応だ。
シロッコは魚人達に優先せねばならぬ事ができたので一度戻る事。 この海の調査と住むのに適しているなら魔蛸と共に自由にしてよいと告げて飛竜の背に乗りアリマ達と戻って行った。
ヒラリエは飛竜につままれ、洗濯物の様に連れていかれる。
「うう...... 後悔の海に旅立ったのはアタイだったにゃ。 ルミにゃとテリーが言ってたのはこれだったのにゃね。 お、恐ろしい」
村に戻ったシロッコは何が起きたか説明し、村の状況も聞いて直ぐに正和回復の準備にかかる事を提案した。
「の、のうシロッコ。 妾らのあれは...... また厄介な事になるのではないかや? 今の段階で婿殿には......」
アリマはシロッコに不安を伝える。
「その不安は最もじゃ。 儂にも全く懸念がない訳ではない」
「ならば......」
「じゃがこれに関しては先伸ばしにしても一緒じゃろう。 原因も正体も何もかも不明なんじゃから」
「あ......」
「しかし何かしらの影響をそなたが受けておるとしても、それは自由自在に行えておる訳でもないようじゃ」
「む。 言われてみれば確かにそうかも知れぬが......」
発現にはトリガーが存在しているのではないかとしてシロッコは続けた。
「お主に闇の力があるのは間違いない。 だが、闇の力の行使がトリガーなのかと言えばそれは違う」
「うむ。 もしそうならば妾はすでに妾ではなくなっておるじゃろうしな」
闇の力はアリマの魔力使用には必ず関わっているのだから。
「一度目は見た。 二度目は体験した。 そして日常の生活を送るアリマ。 儂は盲点を見つけた気がするぞ」
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