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1話 家族への説明
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「すんませんっっっしたぁぁ!!」
俺、洞口朋広(ほらぐちともひろ)は謝罪の言葉と同時に最高のジャンピング振り向き土下座を披露した。そう、まさに生涯で一度出るか出ないかのウルトラCレベルの大技である。
......別にしょっちゅうこんな土下座をしている訳ではないのでそこは誤解をしないでいただきたい。だが現実とは時に非情なもの。自分の最大限の誠意を示す行動に対して愛する家族のとった行動は......寝返りをうっただけだった。
「あなた」
「ひゃい!!」
そんな訳はなかった! 寝返り云々は俺の妄想だったのだ! 愛する家族の一人、妻の幸依(ゆきえ)は上半身を起こし、しっかりこっちを見ていた。俺は再び頭を地面に擦りつけ、謝罪の言葉を口にしようとしたのだが、幸依の言葉が口から出た方が早かった。
「もう起きてたのね、具合は大丈夫? ......何してるの? そんな格好して」
予想に反してわが妻は普段と変わらない口調で話しかけてきた。元々幸依はのんびりした性格で楽天的な所がある。物事に順応しているようで、実は対応ができていないだけ故にそう見えてしまうという事が多々あったりもするのだ。なので、おそらく今回のこの状況もまるで理解していないのだろう。
そしてそんな格好と言うからにはあのウルトラCの大技は見ていなかったという事になる。俺はなぜか少し悲しい気持ちになったが、説明責任を果たすべく口を開く。そう、一家の大黒柱の俺がどこかの政治家のようになる訳にはいかないのだ。
「これはこれは奥方殿、お目覚めですか。身体の調子はいかがですかな?」
......違うぞ!? 今のは俺の発言じゃないからな!? 自分でも緊張しすぎて変な声が出たのかと思って焦ったりしなかったからな!? 今の発言はローマ男(仮)からだ。幸依に続いてローマ男(仮)にも発言を遮られてしまった。そういえばこのローマ男(仮)の名前も聞いた覚えないな。呼称がないと不便なので心の中でローマ男(仮)としてあるが実際に呼ぶ時なんて呼べばいいんだろう。
「これはローマからのお客様、お気遣いありがとうございます。調子は問題ないですわ。本来ならおもてなししないといけませんのに逆にローマに招待までしていただいて」
「幸依もまんまかよ! そしてここはローマじゃねぇぇ!!」
思わず叫んでツッコミを入れてしまった。あれ? だけど常識で考えるなら異世界よりもローマって言われた方が納得できるような??
「え? ここってローマなの?」
「いやいやトモヒロ殿。ちゃんと異世界だと説明したではないですか」
「ちくしょう! やっぱり異世界じゃねぇかぁぁ!!」
そしてまた叫ぶ俺。もはや一家の大黒柱も形無しである。
「うーん、パパうるさい......」
そして思わずあげた俺の二度の咆哮(叫び声)で娘の華音(かのん)が目を覚ました。
「ぶはっ! はぁ、はぁ、はぁ」
時を同じくして息子の正和(まさかず)も飛び起きたが、なぜか起きたと同時に荒い呼吸をしている。
「華音ごめんよ、パパちょっと驚いちゃってねー。正和、呼吸荒いけど大丈夫か?」
俺は娘に謝りながら息子に問いかける。娘の華音は好奇心旺盛で活発な性格なので、すでにこっちの話はきいていない。起きたのが自宅じゃない事に気付き周囲を見回している。正和の方はきちんと質問に答えてくれた。
「ダンジョンの中にいて脱出アイテムを使ったら、転移先が石の中で窒息する夢をみた気がする。苦しくて目が覚めた」
などと言っている。よく考えてみれば家族が目の前に居た時、幸依と華音は仰向けだったけど、正和だけはうつ伏せだったような。床は石だしその影響だろうか。まぁ、見渡す限り石材メインって感じの建造物だしな。ダンジョンだのアイテム云々はゲーム好きな息子の事なので、その辺の影響だろう。息子の見たという夢から冷静に分析していると、
「マサカズ君、カノンちゃん、お目覚めかな? 我が世界へようこそ」
ローマ男(仮)が二人に話しかけた。おいローマ男(仮)! 二人を混乱させるような事言うんじゃないよ! 文句を言おうと口を開こうとした俺だが三度発言を遮られる。
「あ、神様。おはようございます。」
と、正和。
「神様のおじちゃんおはよう! ここがおじちゃんの世界なの? なんかすごいねー」
と、華音。
「......は?」
と、俺。
今この二人から変な単語が聞こえたような? 神? 神って神様? 天上の雲の上に住んでるとかいう? 聞き間違いか? うん、きっとそうに違いない。
「幸依、今二人はあのローマ男(仮)を神様とかって言ったように聞こえたんだが?」
「ええ、そうみたいよ。私はローマの神様のことかしらって思ったから、てっきりローマ法王様かと思ってたんだけど」
幸依の間違いだらけのコメントは置いておくとしても、神様という単語は聞き間違いではないようだ。だとすると、俺はますます家族に言わねばならない事が出来てしまったと実感する。そしてそれは直ぐにでも実行に移さねばならないと。
そう、一家の大黒柱として避けては通れない事なのだ! 俺が言わねば誰が言う! 俺は自らを叱咤激励し、意を決して子供たちに語りかけた。幸いにも発言を四度、誰かに遮られる事もなかった。
「正和、華音、パパとママにも分かりやすく説明してくれないかなー?」
「え? 説明って、父さんが原因でこうなってるのに......」
「パパさいてー。どこかの政治家みたーい」
現実とは時に非情なもの。子供たちのどことなく冷たい視線が俺に突き刺さった。
俺、洞口朋広(ほらぐちともひろ)は謝罪の言葉と同時に最高のジャンピング振り向き土下座を披露した。そう、まさに生涯で一度出るか出ないかのウルトラCレベルの大技である。
......別にしょっちゅうこんな土下座をしている訳ではないのでそこは誤解をしないでいただきたい。だが現実とは時に非情なもの。自分の最大限の誠意を示す行動に対して愛する家族のとった行動は......寝返りをうっただけだった。
「あなた」
「ひゃい!!」
そんな訳はなかった! 寝返り云々は俺の妄想だったのだ! 愛する家族の一人、妻の幸依(ゆきえ)は上半身を起こし、しっかりこっちを見ていた。俺は再び頭を地面に擦りつけ、謝罪の言葉を口にしようとしたのだが、幸依の言葉が口から出た方が早かった。
「もう起きてたのね、具合は大丈夫? ......何してるの? そんな格好して」
予想に反してわが妻は普段と変わらない口調で話しかけてきた。元々幸依はのんびりした性格で楽天的な所がある。物事に順応しているようで、実は対応ができていないだけ故にそう見えてしまうという事が多々あったりもするのだ。なので、おそらく今回のこの状況もまるで理解していないのだろう。
そしてそんな格好と言うからにはあのウルトラCの大技は見ていなかったという事になる。俺はなぜか少し悲しい気持ちになったが、説明責任を果たすべく口を開く。そう、一家の大黒柱の俺がどこかの政治家のようになる訳にはいかないのだ。
「これはこれは奥方殿、お目覚めですか。身体の調子はいかがですかな?」
......違うぞ!? 今のは俺の発言じゃないからな!? 自分でも緊張しすぎて変な声が出たのかと思って焦ったりしなかったからな!? 今の発言はローマ男(仮)からだ。幸依に続いてローマ男(仮)にも発言を遮られてしまった。そういえばこのローマ男(仮)の名前も聞いた覚えないな。呼称がないと不便なので心の中でローマ男(仮)としてあるが実際に呼ぶ時なんて呼べばいいんだろう。
「これはローマからのお客様、お気遣いありがとうございます。調子は問題ないですわ。本来ならおもてなししないといけませんのに逆にローマに招待までしていただいて」
「幸依もまんまかよ! そしてここはローマじゃねぇぇ!!」
思わず叫んでツッコミを入れてしまった。あれ? だけど常識で考えるなら異世界よりもローマって言われた方が納得できるような??
「え? ここってローマなの?」
「いやいやトモヒロ殿。ちゃんと異世界だと説明したではないですか」
「ちくしょう! やっぱり異世界じゃねぇかぁぁ!!」
そしてまた叫ぶ俺。もはや一家の大黒柱も形無しである。
「うーん、パパうるさい......」
そして思わずあげた俺の二度の咆哮(叫び声)で娘の華音(かのん)が目を覚ました。
「ぶはっ! はぁ、はぁ、はぁ」
時を同じくして息子の正和(まさかず)も飛び起きたが、なぜか起きたと同時に荒い呼吸をしている。
「華音ごめんよ、パパちょっと驚いちゃってねー。正和、呼吸荒いけど大丈夫か?」
俺は娘に謝りながら息子に問いかける。娘の華音は好奇心旺盛で活発な性格なので、すでにこっちの話はきいていない。起きたのが自宅じゃない事に気付き周囲を見回している。正和の方はきちんと質問に答えてくれた。
「ダンジョンの中にいて脱出アイテムを使ったら、転移先が石の中で窒息する夢をみた気がする。苦しくて目が覚めた」
などと言っている。よく考えてみれば家族が目の前に居た時、幸依と華音は仰向けだったけど、正和だけはうつ伏せだったような。床は石だしその影響だろうか。まぁ、見渡す限り石材メインって感じの建造物だしな。ダンジョンだのアイテム云々はゲーム好きな息子の事なので、その辺の影響だろう。息子の見たという夢から冷静に分析していると、
「マサカズ君、カノンちゃん、お目覚めかな? 我が世界へようこそ」
ローマ男(仮)が二人に話しかけた。おいローマ男(仮)! 二人を混乱させるような事言うんじゃないよ! 文句を言おうと口を開こうとした俺だが三度発言を遮られる。
「あ、神様。おはようございます。」
と、正和。
「神様のおじちゃんおはよう! ここがおじちゃんの世界なの? なんかすごいねー」
と、華音。
「......は?」
と、俺。
今この二人から変な単語が聞こえたような? 神? 神って神様? 天上の雲の上に住んでるとかいう? 聞き間違いか? うん、きっとそうに違いない。
「幸依、今二人はあのローマ男(仮)を神様とかって言ったように聞こえたんだが?」
「ええ、そうみたいよ。私はローマの神様のことかしらって思ったから、てっきりローマ法王様かと思ってたんだけど」
幸依の間違いだらけのコメントは置いておくとしても、神様という単語は聞き間違いではないようだ。だとすると、俺はますます家族に言わねばならない事が出来てしまったと実感する。そしてそれは直ぐにでも実行に移さねばならないと。
そう、一家の大黒柱として避けては通れない事なのだ! 俺が言わねば誰が言う! 俺は自らを叱咤激励し、意を決して子供たちに語りかけた。幸いにも発言を四度、誰かに遮られる事もなかった。
「正和、華音、パパとママにも分かりやすく説明してくれないかなー?」
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