欲望のままに

姫川 林檎

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知らない真実 6

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初めて水族館に来た朔は子供も様に目を輝かせて見ている。
普通は水族館等は小学生の遠足なので来ているものだが朔は違った。俺が思っていた以上に親に愛されてはいなかった・・・。こいつは遠足だけじゃなく修学旅行にも金が掛かる物やいつもと違う時間帯に帰って来る遠足にも参加させては貰えなかったらしい。

3っ下に病弱な可愛い弟がいて両親はそちらに構って、入退院を繰り返していたので余計なお金は掛けらない理由で休みにさせられていたらしい、しかも入退院を繰り返す弟が可哀想だから旅行に連れて行くのは分るが金が掛かると置いて行かれるのはおかしいだろ!なのに本人は納得しているし!この学校を選んだのも寮があるからみたいだし、朔は家族が好きだが家族は家族とは思ってはいないだろう・・・。必要最低限しかお金が送られて来てないからここでも学校行事を我慢しようとしていた。

お金は俺が自由に出来る自分で稼いだ金があるし、
愛情は俺がたっぷり愛してあげればいいだけの事だ。

「先輩!綺麗な魚がいますよ!!・・・先輩?」

「あぁ、すまん。色々な魚が居るなと思ってぼぅっとしてた。」

「はい!色も形も色々なのがいます。」

こいつの家族を思ってイラついた心もこいつの笑顔で癒される。
手を繋いだまま順番に見て行く、書いてある説明を見てそれを俺に教えてくれながら実に楽しそうだ。最悪な家族のお蔭で今俺は県外に住んでいた朔と一緒にいられるのだから少しは感謝してやってもいいかも知れない。

「朔、そろそろイルカショーを見に行こうか。」
「はい。イルカ楽しみです。」

嬉しそうに笑う朔の頭を撫でて会場に向かう、少し早かったので未だ人はまばらで好きな所に座れる。水しぶきがギリギリ掛からない位の所に決め座り時間が来るまでさっき見ていた魚たちの話をして待つ。


『こんにちは!!』

飼育員のお姉さんと一緒にアザラシも出て来て挨拶をしショーが始まった。

アザラシ・イルカ・小型のクジラ・シャチ等大型の海獣のショーは迫力があり、隣では1つ1つに大きな拍手をしながら感動している朔が可愛かった。

ショーが終わっても感動で動けない朔を暫く眺めていたいがこの後の予定もあるので声を掛けて移動する。移動の際もショーの事で盛り上がりいつも以上にお喋れな姿が嬉しくなる。これが本来の朔の姿、それを最悪な家族と不躾視線のせいで怯えて暮らしている、俺が一緒の時は自由に素直に笑ってて欲しい。

残りのコースもしっかり観て出口のお土産コーナーに向かう。

「朔、お土産を買って帰ろう。」

「じゃぁ、僕は・・・あそこで待ってます。」

「そうじゃなくて、朔に選んで欲しい。帰ってから一緒に食べるお菓子とか今日の記念に何か買って帰りたいんだが選んでくれないか?」

「記念・・・僕が?」

「朔と選びたい。駄目か?」

「・・・はい。」

俯きながら頬を少し赤らめて頷いてくれた。
二人でお菓子をみたり、謎の低学年向けの玩具で遊んでみたりしながら回っていると朔がシャチのぬいぐるみの前で止まり抱くのに丁度いい大きさのシャチを抱き締めて微笑んでいる。気に入ったのか?

俺が見ているのに気が付くと直ぐに置いてこちらに向き照れ笑いをしながら先に進む。聞いてもはぐらされるだろうから気にせず先に進みお土産を選ぶ。

定番のクッキーにクランキーチョコを買い、記念品にはペンギンの付いたボールペンをお揃いで買う。朔がトイレに行った間に会計を済ます。結構な人が並んでいて俺が終わった頃に朔が戻って来た。

近くの海岸を散歩する。これさえ朔には初めての事、街で生活していた朔は山にも海にも行った事がないらしく海を見て感動していた。夏休みには色んな所へ連れて行ってやろう。

「朔、そろそろ行こうか。」

「・・・はい。」

未だ少し海に見とれていたがそろそろ移動しないと食事の時間に遅れてしまうので今日はここまで。
タクシーを拾い目的地に向かう。今日は色々見て興奮して疲れたのか朔はうとうとし始める、肩を抱き寄せ優しく叩くと眠りについた。目的地までは少し時間が掛かるし今夜は長くなる今の内にしっかり休ませてあげないと後で辛くなるだろう。

もうすぐ着くという所で朔が目を覚ました。

「ぅうん・・・せん ぱい?」

「ん?起きたか。もう直ぐ着くぞ。」

「すいません!僕寝ちゃって・・・。」

「構わない。この後は寝れないから今の内に寝て正解だ。」

「え?」

「着いたぞ。」

今日最後の目的地最新の高級ホテル。
ドアマンに促され中に入りエレベーターに乗り上に上がる、着き店に入り予約の名前を言い案内され個室に入る。入った途端に視界に広がる都会の夜景を観てここで初めて朔は声を出した、ホテルに着いてから口をパクパクしながらキョロキョロしてはいたが声は出ていなかった。まぁ、「わっ!」っと言ったきり又無言ではあるが。

「・・・凄い。」

「気に入った?」

「えっ?先輩!?」

「お前、俺の存在忘れてたろ・・・。」

「えっ!?いえ!違くて!あの!その。」

俺に責められたと思って慌てている姿も可愛いが可愛そうなのでここまでにして、抱き締めると最初はオドオドしていたが俺に身をゆだねてくる。

「夜景が綺麗だったんだろ?」

朔が窓の方を見たので力を緩めるとそちらに向きを変える、後ろから優しく抱き締めながら「綺麗だな。」と言うと嬉しそうに「はい。」と返事をしたが、俺が行ったのは窓に映った朔の事を言ったのだが勘違いした様だ。

暫く眺めているとノックがして食事が運ばれて来た。
急に人が入って来て驚いて軽くパニック状態だ少し強めに抱き締めると落ち着いたみたいだ。

今日はコースではなく始めに全部持って来て貰っている、食事中に何度も知らない人が来ると落ち着かないと思ったからだ。ホテルの人間が不躾視線を送る事は無いとはいえ朔には未だ無理だろうからな。

席に着くと現実に戻った朔はオドオドし始める。

「先輩!これは!?僕こんなお金ありません!!」

「気にするな。俺のおごりだ。」
「ダメです!おごってもらう理由がありません!!」

「いつも美味しい物作ってくれるお礼だ。まぁ、お前はお礼は要らないと言うだろうから出世払いで構わない。」

まぁ、受け取るつもりは更々ないがな。
こうでも言わないと終わらないだろうしな。素直に受け取ればいいものをこいつらしいが・・・。

「・・・分りました。必ず返します!」

「あぁ、待っている。今は美味しく食べようお腹が空いた。」

「あっ!すいません気が付かなくて・・・頂きます。」

申し訳なさそうにしながら食事を始める。
しかし食事を始め水族館の事を聞くと直ぐに嬉しそうに今日の感想を話してくれた。相打ちしながら少し聞くといっぱい答えてくれる。気が付けば楽しく食事を終える。

そして、
上の部屋に向かう。




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