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B5-2 どうか憎しみを抱くなど Part2
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"B5 クリア"
「くそ…今度こそ、奴を倒せるはずだったのに…。
俺の…計画が…」
水硝は消滅した。
檻が壊れ、中にいた人達が出てきた。
「縒詠!」
「お兄ちゃん!」
糸詠が弟に駆け寄る。
村の人々や采漢紳の仲間達も無事だった。
**********
<山林>
村人が采漢紳に語りかける。
「あなた方は勇者だ。
我々を救ってくれた。
采漢紳。
君が心無いハンター達によって狙われ、人間に心を閉ざしてしまったという話は聴いたよ。
だが人間は彼らのような者だけではない。
これからは村にも顔を出してくれないか?
君が失ってしまった時間を、少しずつでも補わせてはもらえないだろうか?」
采漢紳はしばらくの沈黙の後、答えた。
「断る」
「"断る"って…」
ヨーが間に入って伝えた。
「…」
ヨーや糸詠が説得する。
「何で?
みんなで仲良くした方が楽しいよ」
「そうだよ。
俺と君は、今回の戦いで絆が強くなったじゃん」
「絆が強くなっただと?
…とんだ思い上がりだな」
「え…」
「たった一度、共に戦ったくらいで仲間だ何だと言われても迷惑なんだよ。
お前程度の実力でおこがましい。
それに俺は人間を完全に信用したわけじゃない」
「じゃあ、俺がもっと強くなったらまた会ってくれる?」
「お前が一人で弟を守れるくらい強くなれたら考えてやるよ。
まぁ、だとすればなおさら、俺がお前と会うことはないだろうがな」
「それって俺が強くなれないって言ってるようなもんじゃん!」
「違うか?」
「よし!
いつか必ず見返してやる!」
「もういいか?
既に互いの目的は達成した。
疲れているんだ。俺は帰るぞ」
「うん」
村人とモンスターはそこで別れた。
帰り際、糸詠が叫ぶ。
「采漢紳、ありがとう!」
采漢紳は黙って見ていた。
背を向け、少年達は歩いていく。
遠くへ、遠くへ…段々小さくなっていく…。
「もう、いなくなったよな?」
「ああ…」
シンセの言葉を聞き、采漢紳はその場に倒れ込んだ。
「采漢紳!」
「どうしたの?」
「俺はもうダメだ…」
「様子がおかしいとは思っていたが…」
「巣窟盤での戦いで、想像以上にダメージを負った。
奴に勝利したはいいが、お前達とはここで…」
「そんな…」
「俺がいなくなったことは、村の人々には分からないようにしてほしい。
特に糸詠にはな…。
俺が消えたと分かれば、奴らは自分達を責めるだろう。
そして怒りを募らせる…。
そうなれば、水硝が俺にしたようなことが、繰り返されるだろう…。
それだけは阻止してほしいんだ…」
動揺する仲間達に、彼は最期の言葉を遺した。
**********
あれからしばらく時が過ぎた。
みんな、まだ彼を失った傷から立ち直れてはいない。
彼の纏っていた鎧を素材に、我々は新たな鎧を作って各々が装着することにした。
彼の遺志は鎧とともに仲間達に分けられたのだ。
我々はその土地を離れ、村の者には何も告げず遠くへ移動した。
彼がもういないことを知られてはならない。
そして我々は、それぞれの名を変えた。
ウプシロンは体の一部が黒くなった。
以前の彼の体は、その正義感や純粋さを象徴するように真っ白だった。
彼自身、そのことを誇りにしていたと思う。
他人を憎むことなく、真っ直ぐな心を持っていた彼にとって、その黒さはショックだったようだ。
以前よりも口数が少なくなり、皆と関わらなくなったように思える。
彼は鎧も受け取らなかった。
ヨーは相変わらずのんびりとしているが、泣くことが少なくなった。
彼なりに努力しているのだろう。
ウプシロンと同様、彼は名を変えることを拒んだ。
恥ずかしかったのか、それとも彼と過ごした日々を消し去ってしまうような気がしたのか…。
いずれにしても強制はしない。
私は彼の後を継ぎ、皆を率いることになった。
彼が最期に我々に遺した言葉。
それは守っていかなければならない。
私とて水硝のような者を許すことはできない。
この先、誰にどのような仕打ちを受けても、恨まず受け流すことなどはできないかもしれない。
それでも…。
争いは無いに越したことはない。
しかし、いつかまた水硝のような者が現れるかもしれない。
その時は、皆と立ち向かっていく。
彼の遺志を継ぐ者の一人、龍漢紳として。
「くそ…今度こそ、奴を倒せるはずだったのに…。
俺の…計画が…」
水硝は消滅した。
檻が壊れ、中にいた人達が出てきた。
「縒詠!」
「お兄ちゃん!」
糸詠が弟に駆け寄る。
村の人々や采漢紳の仲間達も無事だった。
**********
<山林>
村人が采漢紳に語りかける。
「あなた方は勇者だ。
我々を救ってくれた。
采漢紳。
君が心無いハンター達によって狙われ、人間に心を閉ざしてしまったという話は聴いたよ。
だが人間は彼らのような者だけではない。
これからは村にも顔を出してくれないか?
君が失ってしまった時間を、少しずつでも補わせてはもらえないだろうか?」
采漢紳はしばらくの沈黙の後、答えた。
「断る」
「"断る"って…」
ヨーが間に入って伝えた。
「…」
ヨーや糸詠が説得する。
「何で?
みんなで仲良くした方が楽しいよ」
「そうだよ。
俺と君は、今回の戦いで絆が強くなったじゃん」
「絆が強くなっただと?
…とんだ思い上がりだな」
「え…」
「たった一度、共に戦ったくらいで仲間だ何だと言われても迷惑なんだよ。
お前程度の実力でおこがましい。
それに俺は人間を完全に信用したわけじゃない」
「じゃあ、俺がもっと強くなったらまた会ってくれる?」
「お前が一人で弟を守れるくらい強くなれたら考えてやるよ。
まぁ、だとすればなおさら、俺がお前と会うことはないだろうがな」
「それって俺が強くなれないって言ってるようなもんじゃん!」
「違うか?」
「よし!
いつか必ず見返してやる!」
「もういいか?
既に互いの目的は達成した。
疲れているんだ。俺は帰るぞ」
「うん」
村人とモンスターはそこで別れた。
帰り際、糸詠が叫ぶ。
「采漢紳、ありがとう!」
采漢紳は黙って見ていた。
背を向け、少年達は歩いていく。
遠くへ、遠くへ…段々小さくなっていく…。
「もう、いなくなったよな?」
「ああ…」
シンセの言葉を聞き、采漢紳はその場に倒れ込んだ。
「采漢紳!」
「どうしたの?」
「俺はもうダメだ…」
「様子がおかしいとは思っていたが…」
「巣窟盤での戦いで、想像以上にダメージを負った。
奴に勝利したはいいが、お前達とはここで…」
「そんな…」
「俺がいなくなったことは、村の人々には分からないようにしてほしい。
特に糸詠にはな…。
俺が消えたと分かれば、奴らは自分達を責めるだろう。
そして怒りを募らせる…。
そうなれば、水硝が俺にしたようなことが、繰り返されるだろう…。
それだけは阻止してほしいんだ…」
動揺する仲間達に、彼は最期の言葉を遺した。
**********
あれからしばらく時が過ぎた。
みんな、まだ彼を失った傷から立ち直れてはいない。
彼の纏っていた鎧を素材に、我々は新たな鎧を作って各々が装着することにした。
彼の遺志は鎧とともに仲間達に分けられたのだ。
我々はその土地を離れ、村の者には何も告げず遠くへ移動した。
彼がもういないことを知られてはならない。
そして我々は、それぞれの名を変えた。
ウプシロンは体の一部が黒くなった。
以前の彼の体は、その正義感や純粋さを象徴するように真っ白だった。
彼自身、そのことを誇りにしていたと思う。
他人を憎むことなく、真っ直ぐな心を持っていた彼にとって、その黒さはショックだったようだ。
以前よりも口数が少なくなり、皆と関わらなくなったように思える。
彼は鎧も受け取らなかった。
ヨーは相変わらずのんびりとしているが、泣くことが少なくなった。
彼なりに努力しているのだろう。
ウプシロンと同様、彼は名を変えることを拒んだ。
恥ずかしかったのか、それとも彼と過ごした日々を消し去ってしまうような気がしたのか…。
いずれにしても強制はしない。
私は彼の後を継ぎ、皆を率いることになった。
彼が最期に我々に遺した言葉。
それは守っていかなければならない。
私とて水硝のような者を許すことはできない。
この先、誰にどのような仕打ちを受けても、恨まず受け流すことなどはできないかもしれない。
それでも…。
争いは無いに越したことはない。
しかし、いつかまた水硝のような者が現れるかもしれない。
その時は、皆と立ち向かっていく。
彼の遺志を継ぐ者の一人、龍漢紳として。
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